今までの宿主と比べるまでもなく、一誠という宿主の人生はドライグ見ていても奇妙なものだと思っていた。
復讐の為に力を進化させ続け、一度はその復讐を果たすことで封じられた進化が二度になる世界の移動により復活する。
そして一度目の世界から狂気を孕んだ女が来た訳だが、その女もまた一誠にその才は無いと言われたにも関わらず、ドライグにとっても頭のおかしい方法で克服してみせた。
「そういえばこの時代には白龍皇がいるんだよな?」
『その筈だが、それがどうした?』
「いや、ドライグ的にどうなのかなってさ。一応宿敵なんだろ?」
『まぁな』
「白龍皇ってなに?」
「赤龍帝の対となる存在のこと。
赤い龍……つまりドライグと対となる白い龍を宿す人間の事を白龍皇と呼ぶんだけど、この時代ではまだ生きてる筈だからドライグ的にどうなんかなぁって」
この時代では高校生である為、IS学園に通わされた時と同じく勉強をしないと進級も危うい一誠が、束に死ぬほど頭を下げて宿題を手伝って貰いながらふと思い出した様にかつて因縁を含めて完全に勝利してみせた白い龍についてドライグに聞きつつ、束に赤龍帝と白龍皇の因縁に説明しているのを中で聞いているドライグ。
一誠の言う通り、転生者が居た一誠とドライグの生きた本来の時代と違い、この世界ではまだ白い龍もその宿主も存在しているのは間違いない。
一誠は恐らくその生きている白い龍との因縁をどうするのかと聞きたいようたが、ドライグの考えは決まっていた。
『どうでも良いな。この時代ではどうかは知らんが、俺にとって最早白いの等過去の存在であり、今更殺し合う相手にするには不足すぎる。
この時代の白いのの宿主が俺達の時代と同じく女であろうが、男であろうがな』
「あ、そう。まあドライグがそう言うなら俺も別にって感じだから知らん顔するけど、確かにこの時代の白龍皇が男なのか女なのかは気になるよな。
あの木場って下僕悪魔が男だった訳だし」
「木場? ああ、あの持て囃されてる男子君のこと? アナタの本来の時代ではあの木場ってのは女だったんだ?」
「そう。名前までは知らないけど、あの金髪と顔立ちには若干の面影があるからね」
『恐らく俺達の時代とこの時代の性別の差異の理由は、転生者にとって『都合よく』なる様に転生の神とやらがやったのだろう。
よってこの時代の白いのの宿主が男の可能性が高いが――どちらにせよ今更過ぎる』
歴代最強クラスの宿主である一誠との親和性が100%に近い今、今更白い龍との決着などどうでも良く、一度は完璧に勝利をした今となっては相手にするだけ時間の無駄にしかならないというのがドライグの考えであり、出会したら適当に相手をするかそのまま『自分の敗けで結構』とでも言って放置するか………微妙に適当になってしまってるドライグの考えはこんな感じだった。
『無限の龍神も殺した、真なる赤龍神帝も塵にした、神話系統、冥王――とにかく転生者に与したあらゆる存在を殺し尽くした今となっては、何もしない相手にわざわざ喧嘩を売っても無意味だろうし、それは一誠としても不本意だろう。
まあ、転生の神を殺してやりたい気はするが、今のところどうやって探し出せるかわからんしな』
「ふーん、確実に揃って地獄行き確定な殺生の数だね」
「まあ、碌な死に方はしないと思ってるわな」
油断とかではなく、確実にどんな相手でも負ける気がしないドライグの今は一誠のこの先を見届ける事。
それ以外は今の所全く興味が無いのだ。
『そんな事より、例の小僧とは何時になったら話せる様になるんだお前は?』
「いや、うん……どうやって話し掛けたら良いか解らなくてさ……」
そのひとつが、この時代に今もまだ平和に生きている友達になりそびれた少年に対して勝手にテンパってる姿を見るというのだが……。
ドライグの言う例の小僧。
それはこの時代を平和に生きている、元の時代でも唯一友達になれたかもしれない少年の事だった。
「………」
「………。なにしてんの?」
「いや、匙君は今日も元気そうだなと……」
違うクラスの扉から隠れて中の様子を伺うという、一見しなくても怪しすぎる行為をする姿に、束が呆れながらもその視線の先を辿ると、そこには明るいクリーム色をした髪を持つ少年がおり、どうやら一誠が以前言っていた『友達になりそびれた奴』のこの世界を生きる姿らしい。
「ちょっと、変態三人組の兵藤がこっち覗いてるわよ!」
「篠ノ之さんも居るけど……なんなの?」
「どうせ兵藤は女子を汚らわしい目で覗いてるに違いないわ」
いつの間に元浜と松田を含めた変態三人組の一人にされ、微妙に名が広まってしまったせいで一誠が女子を覗いてると勘違いして騒ぎ立てる。
「ん?」
その騒ぎに匙少年が気付き、扉の影から覗いていた一誠と目が合う。
「!? ひ、引き上げじゃあ!!」
その瞬間一誠は完全にテンパり、進化の技法を使った魔王が勇者の村を襲撃した後みたいな台詞と共に束を抱えて一目散に逃げた。
「アイツ確か別のクラスの兵藤って奴だよな……」
「ん? ああ、変態三人組のな」
「何でこのクラスを覗いてたんだ?」
「さぁ、もしかして奴のお眼鏡にかなった女子が居たとかじゃね?」
「ふーん?」
そんな姿を見てクラスメートと首を傾げた匙少年が理由を知るわけも無く、女子を覗いていたと処理される悲しきオチになってしまったのは多分仕方ないのかもしれない。
「………………」
「言いたか無いけど、アンタってホモなの?」
「それは無い。無いけど、話し掛けようとすると緊張するんだ。
…………友達になってくださいって言って断られたらと思うと……」
束を抱えて教室に戻ってきたという事で中に居た生徒達に大層驚かれてたりする中、自分の席に戻った一誠はぐったりした様子で突っ伏してしまう。
すると、束を抱えて戻ってきたという画が面白かったのか、桐生やら元浜やら松田が面白そうな顔でやってくる。
「束をお姫様だっこしながら来るなんて見せつけてくれるじゃん?」
「まったくうらめしいぜこの野郎!」
「俺達も是非あやかりたいぜ!」
「チッ、また来た」
「……………」
明らかに茶化したいって様子の三人に露骨に鬱陶しそうな顔をする束と、返事すら出来ずに突っ伏したままの一誠に、様子が変だなと察した三人は互いに顔を見合わせながらどうしたのかと問う。
「えーっと、なにかあった?」
「何時ものイッセーじゃないじゃんか?」
「誰かに振られたのか?」
どう見ても意気消沈な様子の一誠に三人が各々訝しげに聞くが一誠は何でもないと答えるだけだった。
「はぁ……」
そこから半年、夏休みも冬休みも終わり、話し掛ける理由やら機会が分からなすぎて今の今まで匙少年を遠くから眺めるだけというホモと勘違いされかねない結果のまま時は無情にも過ぎて行く。
相変わらず変態三人組の括りだし、桐生は束に親しげで流石に面倒と思ったのか束もある程度応じる様になったしとで変化があったり無かったりだが、匙少年と一言でも会話できた試しはなかった。
「新しい生徒会役員決め?」
「おうよ! その立候補者の人達がまた可愛い女の子だらけなんだよ!」
「ふーん……?」
そんな中、一誠が入学した年に生徒会長を勤めていた先輩役員達が引退し、新しい生徒会に代が変わるという話になった時、当初はどうでも良さげだった一誠は、その立候補者の中に匙少年が居るとわかったのと、その生徒会役員の殆どがかつて転生者に股を開きまくった悪魔とその下僕共だと分かった瞬間、俄然興味が沸いた。
「なるほど、
そしてクソ野郎に言われるがままに見殺したのも……」
『この度生徒会長に立候補する支取蒼那です』
かつて転生者もろとも葬り去った女悪魔の演説を聞き流しつつ、何故匙が転生悪魔になったのかを理解した一誠は、少し緊張した面持ちで演説を待つ匙を見つめる。
「あの先輩も中々可愛いじゃないか」
「他の立候補者も良いぜ。な、イッセー?」
「え? あーうん、まぁ……」
「? なんだよ、あんまり乗って来ないな」
全校生徒が体育館に集められ、壇上から立候補者が軽い演説をする形になってる中、目ざとく立候補する女子達を見てハシャぐ元浜と松田に一誠の返事はかなり微妙であり、近くで聞いていた桐生が口を開く。
「彼女達はアンタのタイプじゃないの?」
「タイプとかタイプじゃないというか……」
「…………」
ジーッと桐生のすぐ後ろから束がこっち凝視してる事に気付いた一誠が曖昧に答える。
嘘でも元浜と松田に合わせてはしゃいだら何か嫌味が飛んできそうだ。
「あの唯一の男子は大丈夫なんかなーってさ」
「え? あぁ、アイツは確かC組の匙だろ? ったく、上手いことあの生徒会に入り込んでハーレムでも満喫したいんだろうぜきっと」
「匙が立候補した役員に競争相手がいないからぁ。あぁ、恨めしいぜ」
「………」
匙少年の演説が始まる同時に文句を垂れる二人を軽くスルーし、バレない程度に真剣に演説を聞く一誠は、例え他に立候補者が居なくて自動的に役員が確定しても投票する気満々だった。
が、やはりそれ同時に心配なのは、恐らくそれを経て先程の生徒会長立候補者の女悪魔により悪魔に転生した後の事だった。
この世界には一々女を口説いて抱かなきゃ生きていけない様なバカは居ないが、それでももしかしたらという不安が常に付きまとう。
かつて助ける事が出来なかった自分が、せめてこの世界を平和に生きようとする匙少年にしてあげられる事。
それは元浜や松田みたいに匙の立場を嫉妬するだけに留まらず、その立場をも奪おうとする輩からバレずに守る事。
「……。友達になる資格なんて俺には無い。だからせめてアイツから奪おうとする奴等から守る……俺に出来るかなドライグ?」
『それはお前次第だな』
女々しいのかもしれないけど、それが一誠の出来る精一杯の行動。
助けてあげられなかった事への、重圧から逃げてしまった事への贖罪……。
「頑張れよ匙君……」
束だけが聞こえる声で小さく緊張しながら演説をする匙少年を応援した一誠の目には誰にも理解されないだろう決意が宿っていた。
……END
所詮勝手なエゴだった。
しかしそれでも逃げ延び続けた男は影に徹しようとし続けた。
「大丈夫だよな? 大丈夫なんだろうな?」
『そればっかりだなお前は……』
「やっぱりホモなんじゃないの?」
生徒会――ひいては悪魔の下僕になった匙少年を影からハラハラしながらも見守る姿に呆れるドライグと束。
勿論本人達は悪魔の仲間にはなっていない。
「おおっ! オカルト研究部の人達だぞ! ウヒョー!」
「うひょー(棒)」
周りに溶け込む為に中途半端に乗ったりするのも忘れず。
「一年生でオカルト研究部に入った子が居るんだけど、それがまた可愛いらしいぜ!」
「またあの部活? ふーん……」
「んだよノリ悪りぃなイッセー!」
「しょうがないでしょう? 兵藤には愛しの束が居るんだもん。ね?」
「いや、ね? って言われても困るし。何回も言うけど俺もあの子も互いにそんな――」
「もうバレてるから隠さなくても良いっての、そもそも幼馴染なのに何で束の事を名前で呼ばないのよ? たまに呼んでも束ちゃまとかおちょくった様な呼び方だし……」
「………」
束の事で桐生に弄られたり。
「周りが一々やかましくてしょうがないから、アンタの事をいーちゃんとでも呼ぶよ。
だからアナタも束さんの事を呼ぶときは別の呼び方にして」
「別……束ちゃまじゃなくて? ………………………束……タバ……バタ………バタコさ――」
「ぶち殺されたいの?」
「悪い。けど良い感じのが無いから、誰かの前の時は呼び捨てにするよ。
………微妙に気恥ずかしいけど」
さも仕方なしといった態度の束に言われて、取り敢えず呼び捨てにする事にしたり。
「おっとごめんよ?」
「いえ大丈夫―――――あ……」
「? なに?」
「ね、姉様……?」
「は?」
その束が、偶然廊下の角で接触した白髪の新入生に姉様とか呼ばれたり……。
「束さんはキミが誰かだなんて知らないし、興味もないんだ。だからその姉様呼びはやめてくれない? ………今も昔も妹はあの子だけだと思ってるし」
「ご、ごめんなさい……でも、その……」
「キミの背景なんか知らないよ。とにかく今後はやめてよね」
「…………」
変にその新入生に懐かれてしまったり。
「先輩……よかったらご飯を一緒に……」
「あらら? 束ったらこんな子を引っかけたの? 隅に置けないわねぇ?」
「……」
「ちょっとおい束……コイツはちょっとヤバイんだけど」
「わかってるよ、いーちゃん。………あのさ、キミが来ると嫌でも目立つんだ? で、無駄に目立つのは趣味じゃないから一々来るのは――」
「あの、確かアナタは変態三人組とかいう内の一人ですよね? 先輩とはどんなご関係なんですか?」
「え、まさかの俺に対する質問? いや別にキミの知るところでも無い感じというか……なぁ?」
「私が誰とどうしてようがアナタに何の関係があるのかな? 本当にキミって子は何なの?」
挙げ句一誠がその新入生に嫉妬されたり……。
「小猫が何時もお世話になってるらしいから、少しお礼がしたいのよ……お時間あるかしら?」
「ほーらこうなった! 最悪だぞこれ!」
「一々ビビんなよ、適当に相手でもして終わらせれば良いんだよ、束さんに任せなさい」
「……果てしなく不安なんだけど」
運命力なのか呪いなのか、遂に絡まれてしまったり。
「先輩、これあげます。一緒に食べましょう」
「本当にタバネに懐いてるわね小猫は……」
「はっきり言って迷惑なんだけど、おたくの方から言ってくれない?」
「あ、思い出した。
なぁ束、そういや今日ウチで飯食わないかって母さんが言ってんだけど……」
「先輩は束先輩の何なんですか? 聞けば常に一緒らしいですけど」
「………それ、一々キミに説明しないといけないの?」
早く帰りたくて仕方ない一誠が切っ掛け作りに勤しむ横で小猫なる後輩にナチュラルに妨害されたりと……。
「あ、そうだ。元浜と松田ってクラスメートが居るんですけど、どうせなら俺と束よりそっちを招待してあげた方が泣いて喜ぶと思いますよ」
「…………。私達ってアナタの癪に触る真似でもしたのかしら?」
「してないしてない、本当にもうかんべんしてください! ほら帰るよ束!」
アレルギーの如く悪魔達とは関わりたくない一誠はこの日も大変だった。
「ちきしょう……」
「イライラしてんの? ふーん、イライラしたからこのまま束さんを組伏せちゃうの? そして欲望のまま服を引き裂いて孕むまでやめてくれないの? 嫌だよそんなの、全力で抵抗するからね!」
「………」
『……。じゃあ一々こっちを伺いながら一誠のベッドの上で服を脱ぐなよ……』
桐生のせいで日に日に変な方向に進んでる束も含めて。
何時になるかわからたいエセ予告……終了。
補足
軽くホモと疑われるくらいやってることが匙少年に対してのみヘタレな一誠。
結果、影から出来るだけフォローすることにしたとか。
その2
エセ予告のみ、変に懐かれた束ちゃま。
そして逆に嫉妬される一誠くん。