赤龍帝ストラトス(仮)   作:超人類DX

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はいせーの……ラウラたーん!!


…………すいません。


銀色の福音と闇より生まれし黒炎
後日と始まり


 やはり居なくなった方が良いのかもしれない。

 

 癌として本当に取り返しが付かなくなる前に消滅をひそかに考え始めた一誠。

 

 虚の言う通り、己は病原菌でそれを撒き散らす存在。

 

 だとするならやはり自分は消えてしまうべきである――

 

 

「イチ坊が成人するまでは消える訳にはいかない。

そうでなくても俺はあまりにも踏み込み過ぎたんだ、今更都合よく消えて終わりにはなれない」

 

『だろうな。そうでなくてもあんな小娘に言われて聞いてやるなど俺が納得いかん』

 

「お前が直接言われた訳じゃないだろうに……」

 

 

 ―――しかし少なくとも、今はまだ消える訳にはいかない。自分が蒔いた種に対するケジメをつけるまでは。

 

 

 

 

 

「大浴場が使えるようになりました!」

 

「は?」

 

「大浴場?」

 

 

 目標を持つ事が一誠に宿る異常性にその特性を注ぎ込む事になる。

 復讐相手を殺害してからというもの、実はその異常性が大幅に弱まっていた故に進化の速度が低下していた。

 

 しかしドライグにのみ打ち明けた密かなる()()が徐々にかつての全盛期を取り戻し始めていた。

 

 

「今まではお二人とも男性だった為にお部屋のシャワーしか使えませんでしたが、この度大浴場を使えるようにもなりました」

 

「はぁ……」

 

「大浴場か……ふーん?」

 

「あ、あれ? 嬉しくありませんか?」

 

「いえ嬉しいっちゃ嬉しいんすけど、そんな大喜びする程かと言われたら微妙っすね。なぁおっちゃん?」

 

「サウナとかあるんすか?」

 

「え、ええっと、サウナは簡易的なものでしたら……ご

ごめんなさい!」

 

「え、何故に謝られたの俺? あの別に責めてるとか――」

 

「ひぃぃっ!? ごめんなさいごめんなさいごめんなさいぃぃ!!!」

 

「…………………俺、そろそろ泣いて良いの?」

 

 

 と、まあ一誠が新たに打ち立てた目標と進化が果たして一夏や千冬……楯無と簪にとって良いものかはさておき、いよいよ明日にはラウラが授業に復帰できるらしいという吉報を聞いて一人年甲斐も無く勝手にウキウキしていた時に一夏共々、例の件以降、完全に化け物として恐怖されている相手である副担任の山田真耶から、大浴場の解禁を言い渡される。

 その際、やはり一誠に対して異様に怯え、何もしていないのに謝り倒されてしまうというハプニングがあった訳だが、一誠にとってこの副担任の先生は自分の好みほぼ全部盛りという神々しき相手な為に、こうまで怯えられてしまうとそろそろ泣きたくなる。

 

 

「ま、元気出せよおっちゃん。少なくとも俺と千冬姉はあんな風に一度おっちゃんの力を見た程度で怯える様な奴とは違うんだからさ」

 

「…………おぅふ」

 

「というか空気読まずに言っちゃうけど、あの副担任にはこの先永久に怯えてほしいね。

そうすればおっちゃんは俺と千冬姉だけのおっちゃんになれるし」

 

「…………………うへははは」

 

「あの眼鏡とビッチさえ居なければパーフェクトなんだけど」

 

 

 相変わらず一誠と千冬第一にしか考えてない一夏のフォローになってないフォローに一誠はヘコみ過ぎて変な声で笑うしかできない。

 一夏が成人するまで――いや、この件だけは最速で変えなければならないという使命感めいたものを感じるしかない程に徹底した価値観はここまで来ると最早見事としか言えない。

 

 セシリアや箒、鈴音や簪からの好意を悉く鬱陶しいと言い放ち、一誠と千冬にのみ年相応の姿を見せる。

 ある意味であの束にも近い排他的な思想はなんとしてでも緩和させなければ織斑家は途絶えてしまう――――等々と、中に宿るドライグが『アホか』と呆れるくらいに真面目にこの先を考えまくりつつ、一夏に引っ張られながら折角解禁された大浴場に行くことになる。

 

 

「え、大浴場に?」

 

「あぁ、俺とおっちゃんだけでな。あぁ、お前は女だから無理だがな……くくく!」

 

「一々意地悪っぽく言うなやお前は……まあでもキミが女の子なのは事実だし、こればかりは申し訳ない。

どうしても使いたかったら俺とイチ坊が出てから……とかになるな」

 

 

 その際、シャルル・デュノアとして学園に在籍中のシャルロットに大浴場解禁の話をしたり、その時一夏が自慢にすらならない自慢をしたりという一幕がありつつ、念願でも無かったりする大浴場へとやって来た。

 

 

「軽いスーパー銭湯だなこりゃ」

 

「はん、こういうのを無駄金って言うんだろうぜ。税金の無駄遣いって奴か?」

 

「その無駄遣いの結晶を使わせて貰ってるんだから、そういう事は言うもんじゃない。しかしこういう大きな風呂場は懐かしいなぁ。

ちーちゃんとお前を拾ったばっかの時はよく安い銭湯を探して入れてたっけ」

 

 

 二人が使うにはあまりにも広すぎる大浴場の扉の前に立ち、湯気が立ち上る景色を前に千冬と一夏を偶然拾った直後の思い出に浸る。

 

 

「ヤー公の事務所を目出し帽被って襲撃し、そこの金庫ぶっ壊して金盗んだり、その金を元手に人に言えない真似して増やしたりして違法に戸籍を作ってやっすい家買ったりと、本当色々とやったもんだわ」

 

 

 全く褒められない方法での生き方を湯に浸かりながら自嘲っぽく笑って話す一誠。

 今でこそこんな感じだが、この世界に流れ着き、千冬と幼い一夏を拾ったばかりの頃の一誠は相当に行動が乱暴的であり、その姿を知っているのは千冬だけだったりする。

 

 

「戸籍を違法に入手した後は毎日バイトでな。

お前とちーちゃんを食べさせる金だけはまともな金にしたかったから――って理由なんだが、そんな真似をした時点で意味なんてなかったかもな」

 

「俺と千冬姉がそんな小さい事を気にするかよ。おっちゃんが居てくれたから今の俺達があるんだ。死んでも感謝しきれないぜ」

 

「所詮、当時も今も痩せこけた良心を満足させるだけの自己満足なんだけどな……」

 

 

 授業参観があればスーツを着て行く。

 運動会があればビデオカメラと弁当を持って応援に行く。

 徐々に姉弟に情を持った一誠はとにかく二人に親の居ない寂しさを感じさせまいと出来るだけの事はし続けた。

 

 

「お前とちーちゃんと違う点は、俺は大好きだった両親を目の前で殺されてるからな。

………ドライグが居たとはいえ、親が居ない寂しさってのはよくわかってるつもりだ。

だからどうしても仇を取りたかった」

 

「おっちゃんから全部奪ったクソヤローの事か?」

 

「あぁ、世間じゃそれを復讐って言ってよくない事だと言うかもしれない。

失った両親が戻る訳じゃないとでも言われるし、許す事が大事だと知ったような事を言う奴も居るだろう。

でもな、世の中には許せることと許せない領域があるんだよ。

『邪魔だから』だとか『お前が主人公なんぞ認めない』だの『変態がこの先モテるのがありえない』だのと、訳の解らん事をほざいた挙げ句、両親の命すら簡単に奪いやがった奴を許して忘れて生きるなんて俺にはできなかったし、ましてや友達になりたかった奴まで殺しやがったやつを放置できる筈もなかった。

だから俺は自分の人生を取り戻す為に奴を――奴の取り巻きもろとも殺した」

 

 

 一思いにでは無く、考えうる全力の苦しみを与えながら殺した時の事は今でも忘れられない。

 だからこそ一誠は一夏に言う。

 

 

「お前は俺みたいには絶対になるな。いや、お前やちーちゃんをそうはさせない。

それがお前達に教えてしまった俺の責任だし、その為ならどれだけ憎まれても構わない」

 

「……おっちゃん」

 

 

 傷だらけの醜い傷跡を持つ一誠に真っ直ぐ見据えられ、一夏は何も言えなかった。

 

 

「―――――ま、これも偉そうに俺が言える事じゃあないけどな! あっはっはっはっー!」

 

 

 誰にも理解されない英雄の末路――それが一誠なのだと思いながら、背丈は近づけても尚未だに大きな背中を感じて。

 

 

「つーか何辛気臭い話してんだよな? 折角だし背中でも流し合うか?」

 

「おっちゃん………あぁ! 俺がやってやるよ!」

 

「お、そうか? ふふ、これも懐かしいな……再会してからなんやかんなでこういう機会はなかったからなぁ」

 

 

 

 

 

「……………」

 

「突撃しないんですか?」

 

「私とてそこまで無粋なつもりはない。お前達もそうだろう?」

 

「ええまあ……ああも楽しそうな声を聞いちゃうとねぇ」

 

「邪魔してはいけない」

 

 

 楽しげな一夏の声を大浴場の更衣室へと続く扉の影から聞いている複数の人影にも気づかずに。

 

 

 

 

 翌日、大浴場にて遺言めいた言葉を受けた一夏は久々に敬愛する一誠と過ごせたということもあってか、朝っぱらから異様に機嫌が良かった。

 機嫌が良すぎて、昨晩シャルルが何か決意表明していた気がしたけど、全然聞いてなかった。

 

 

「えーっと、皆さんに転校生を紹介したいと思います。

あ、でも転校生というのとは少し違うのですけど……」

 

 

 副担任の山田先生が昨晩何かの作業でもしていたのか、微妙に疲れた顔をしながら曖昧な紹介をしつつ扉の向こうに居る誰かに入ってきてくださいと言う。

 

 

「くっくっくっく……!」

 

 

 その間も一夏は隣の一誠から『おいイチ坊』と揺さぶられてるのにも関わらずニタニタしっぱなしで、入ってきた『転校生』については見向きもしていない。

 それが却って変な誤解を作ってる―――かと思えば別にそうでは無く、既にクラスどころか学年全体でも織斑一夏はとにかく兵藤一誠以外には見向きもしない人扱いされている為、変な邪推も一瞬で『あ、無いな』で済まされた。

 

 ―――一部を除けば。

 

 

「シャルロット・デュノアです。

皆さん改めてよろしくお願いします!」

 

 

 丁寧にお辞儀をするのだ………では無く、お辞儀をしながらどこから見ても女子という姿で微笑むのは、シャルル・デュノアの殻を自ら脱ぎ捨てたシャルロット・デュノア。

 暫し唖然としていたクラスの皆は一体どういう事なんだと山田先生に視線を向ける。

 

 

「ええと、デュノア君はデュノアさんでした。ということです……ね?」

 

「デュノア君って女の子だったんだ…」

 

「なぁんだ、おかしいと思ったわ、美少年じゃなくて美少女だったわけね」

 

 

 そんなオチに対して、この学園の生徒達は一誠から見ても良い子ちゃんだらけという評価通りに、驚きつつもすんなりと受け入れてる。

 今時珍しいくらい良いクラスだなぁ……とか、別に学生の経験がある訳でもない癖に知ったような感想を呟いていると、ふと一人と生徒が思い出した様に言い出した。

 

 

「ちょっと待って、ということは今までずっと織斑君と同室だったって事?」

 

 

 その生徒に決して悪気があったわけじゃなく、ただひとつの疑問として口に出してしまった感が強かった。

 しかしながらその言葉が一気に一夏へと視線を集中させるに十二分だったりする訳で、未だニタニタと昨日の出来事の記憶に浸ってる一夏の頭を一誠が軽く小突く。

 

 

「んへ? なんだ?」

 

「お前のお声を聞きたいんだってさ」

 

「……何が?」

 

 

 現実に引き戻された一夏が若干間抜けな顔で周囲を見渡すと、コメント待ちをする生徒達がこっちを見ており、教壇へと視線を移すとそこには女子の姿をしてるシャルロットの姿が……。

 

 

「あれ、何でアレは女子の格好なんだ?」

 

『だぁぁぁ!』

 

 

 どこぞのコントみたいに見事なタイミングで全員がズッコケた。

 

 

「俺が知る訳がねーだろ、あの子と同室なのはお前だろうが」

 

「いや知らないし。なにお前、何で男装やめたの?」

 

「き、昨日の夜寝る前にもう隠すのはやめるって言ったんだけどなぁ……。いや、一夏らしいといえば一夏らしいけどちょっとショックかも……」

 

 

 心底どうでもよさげな質問に昨晩かなり勇気を振り絞って話をしていたつもりだったシャルロットは少し傷ついた顔で苦笑いだ。

 

 

「あぁ、そう……まぁ精々頑張るんだな」

 

 この淡白すぎる態度こそ一夏なのである意味予定調和だったりするのだけど、あまりにもシャルロットが可哀想だったせいか、一夏と同室だったという羨ましさ等々のシャルロットへの若干の嫉妬は一気に消え去った。

 

 

「お、お前! その態度は知ってたんだな!? デュノアが女だって事を!」

 

「あ?」

 

 

 だがその中でも箒だけは色々な思いがグチャグチャになった挙げ句ヒステリックに騒ぎ出しており、一夏に詰め寄るが……。

 

 

「お静かに篠ノ之さん! 今は授業中ですわよ!!」

 

 それを止めたのがセシリアだった。

 

 

「なっ!? お、お前は何も思わないのか!? 一夏が女子と同室だったんだぞ!?」

 

 

 自分だけが騒いでると気付いたのか、納得いかない様子の箒にセシリアは寧ろ冷静に返す。

 

 

「だから? ご主人様の様子をみて幼馴染みを自称する貴女にはわからないのでしょうか? どう見てもご主人様はデュノアさんには何もされてませんわよ。ねぇ、そうでしょうデュノアさん?」

 

「とにかく兵藤さんか織斑先生……それとある意味で更識さんとかボーデヴィッヒさんの事ばかりで刑務所みたいな空気だったよ……あはは」

 

 

 何かある度に――つまり一誠が気にくわない女子に対して優遇する(一夏目線)等があった度に殺意むき出しで部屋の隅に体育座りしながら爪を噛んでるのだから、箒が邪推する事なんてまずありえないと言ったシャルロットにセシリアも同調し、箒はぐっと言葉をつまらせた。

 

 

「ほら。篠ノ之さんだって最初の方はご主人様と同室だったのですから、何にも無い事くらいお察しできるでしょうに」

 

「くっ……だ、だが……! いや待て! 確か昨日大浴場が解禁されたという話を聞いたぞ! その時はまだデュノアは男装してたし、一緒に入った可能性が――」

 

「誰がそんなつまんねー事するかよ。昨日はおっちゃんと入ったよ。

くく……幸せ過ぎて何時死んでも良いぜ俺は……くくく!」

 

「……それは確かに俺が保証するよ。まさか高々風呂入っただけでそう思われてるとは思わんかったけど」

 

「ま、またアナタが……!」

 

 

 ニタニタしまくり一夏の様子を見て一誠に飛び火する。

 実は影から千冬と更識姉妹がみてたりするけど、それは今関係ない事だった。

 

 

「朝からご主人様がとてもご機嫌だったのはそういう事でしたか。

はぁ……少し羨ましいですわ」

 

「俺としては是非キミ達にその役目をやって貰いたいものだけどね……」

 

「冗談じゃねぇ、おっちゃんと千冬姉と入ってのんびりするだけで良いぜ」

 

 

 流石とも言えるブレなさに千冬を加えてる辺りがまた一夏らしいのだが、その言動のせいで箒が思いきり一誠に殺意を向けてたりする中、その千冬の登場により微妙な空気だった教室内に程好い緊張が戻る。 

 

 

「デュノアの紹介は終わったのですか?」

 

「あ、はい……色々とありましたが概ねは……」

 

「そうですか、ではもう一人改めて紹介させよう……入ってこいラウラ」

 

 

 どうやら遅れて来た理由は、シャルロットに続いて本日より授業に復帰する事になったラウラを連れてきた為らしく、千冬に言われて教室内にラウラが入ってきた瞬間――

 

 

「あぁ師匠! ラウラ師匠!!」

 

 

 ある意味一夏の親代わりをやって来ただけの事があると納得させられる若干の空気の読めなさを発揮した一誠が、アイドルのおっかけでもやってるようなテンションでラウラを見るなりアホ丸出しに騒ぎだした。

 

 

「今日より授業に復帰する事になった訳だが……」

 

「師匠! こっちこっち! 右隣が空いてるから一緒に勉強しようぜ!!」

 

 

 千冬が咳払いと共にラウラの紹介をしようとしてるのに、一誠はアホのままバンバンと空いている自分の隣の席を叩きまくっており、クラスの女子達の誰もが今の一誠から犬の耳か尻尾が見えた気がした。

 

 

「……………」

 

 

 その際、今度は一夏が凄まじい形相でラウラを睨み付けたり、千冬が若干泣きそうになってたりする訳だけど、一夏の場合は自分が普段やってる事がブーメランの様に戻ってきてるだけなので、微妙に――特に本音辺りからはザマァ見ろと思われていた。

 

 

「そういえば師匠のISは?」

 

「あ、あぁ、コアは無事だったので予備のパーツで組み直した。例のアレももう無い」

 

「そっか……へへっ!」

 

『…………』

 

 

 子供より子供してる顔で笑う一誠にクラスの女子達は皆また何とも言えない気分だった。

 というかすぐ隣で一夏が物凄い嫉妬した視線をラウラに向けてることに気付いていないのだろうか……という心配が後を絶たない中、先程から少しだけ様子が可笑しいラウラが意を決した様な目付きになる。

 

 

「なぁイッセー」

 

「? どうした師匠?」

 

 

 とにかくラウラが復帰できて良かった良かったな気持ちしかなかった一誠がキョトンとしながらラウラを見る。

 するとラウラは普段していた眼帯を外し、赤い右目とは異なる金色の左目を露にさせた。

 

 

「私の目は……変か?」

 

 

 それが一体何を意味してるのか……固唾を飲んで見るしか出来ないクラスメートや警戒心マックスの一夏を背に一誠は言われた質問に対して極々普通に答えた。

 

 

「んーん、変だなんて思わないぜ俺は。寧ろ言った奴が居るならぶっ飛ばしてやるぜ」

 

 

 変な訳が無いとハッキリ答える。

 変なのは自分のこの醜い傷だらけの身体なのだから――そんな風に思いながらラウラの肩をポンと優しく叩いたその瞬間。

 

 

――Chu♡

 

 

「………………はぇ?」

 

 

 限りなく唇に近い頬にラウラの唇が落とされた。

 

 

「なっ!?」

 

「ぁっ!?」

 

『ええっ!?』

 

 

 悪意が無い相手に対してとことん後手にまわってしまうせいか、完全に反応が遅れた一誠はこれでもかと目を見開いて照れ臭そうにするラウラを見上げた。

 

 

「師匠……?」

 

 

 楯無の時もそうで、今更照れてテンパる年齢では無いが、それでも驚いてしまう一誠にラウラは言う。

 

「師匠だからな私は。ふっ、ちょっとした褒美だ」

 

 

 とても年相応の少女らしく、はにかみながら言うラウラに一誠は口の端に触れながらボーッとしてしまう。

 

 

「貴様ァァァッ!! このクソチビがぁぁぁっ!!!!!」

 

 

 まあ、その瞬間大爆発した一夏のせいであっさりと現実に戻される訳だけど。

 

 

「ぶち殺してやらぁぁっ!!!」

 

「ふん、相変わらずだなお前は。一々イッセーに何をするにしてもお前の許可なぞ要らんだろうが」

 

「知るかボケ! 死ねや!!」

 

 

 プルプルしてる千冬が気になる所だが、とにかく一夏の激昂具合が半端なく、それでも恐怖する事無く啖呵を切って見せたラウラに飛びかかろうとするのを一誠が止めようとする。

 

 

「お、落ち着け! お、俺もちと驚いたけどそんなお前がキレる話じゃないだろうが!」

 

「キレるわ!! こんなチビにおっちゃんが汚されたんだぞ!!」

 

「その表現は寧ろ逆だろ!」

 

 

 アマゾン域に生息する野鳥みたいな奇声を発しながらラウラに飛びかかる一夏を止める一誠にラウラが声を出す。

 

 

「別に止めなくても良いぞイッセー。私だってむざむざと殴られてやる程弱くは無くなってるつもりだからな」

 

「あぁ!? テメェ、随分な自信だなぁ!!」

 

「ちょ、師匠――「ラウラ」―――お、おう、じゃあラウラ。

あんまりイチ坊を挑発するのはだな……」

 

 

 不敵に笑って師匠呼びを訂正させたラウラに一誠が忠告する。

 だがそれでもラウラは妙に自信を持っており、その理由も直ぐに発覚する。

 

 

「大丈夫だ、私がお前のISの師匠であり、あの時お前に助けて貰った際に貰ったものはちゃんとここにある」

 

 

 物凄く母性的に微笑んだラウラが自分のお腹に触れ、妙な誤解が生まれそうな言葉を放ったと同時に小さな身体から赤いオーラが放たれた。

 

 

「!?」

 

「な、なにぃ!?」

 

「!? あ、アレは一誠さんの……!」

 

 

 その変化は激昂していた一夏ですら驚いて動きを止め、プルプルと涙目になっていた千冬も驚愕させ、クラスメート達は困惑し、ある程度知る箒や本音は驚愕とショックを受けた。

 

 

「そ、その力は……」

 

 

 そう、それはタッグ戦の時に一誠が一度だけラウラに贈り物として送り込んだ力。

 

 

『俺の力を消さず取り込み、独自に進化させたのか……』

 

 

 ドライグの力の一部分の独自進化のそれだったのだから。

 

 

(なっ!? あれって確か一時的な譲渡で時間が経てば無くなる筈だろ!?)

 

『普通はな、だがお前の異常は何だ? 無限に進化し続ける異常だろう? 恐らく譲渡の力も使いはしなかったが進化したお陰であの小娘に永久的に埋め込める譲渡へと昇華したのだろう。

もっとも、あの小娘が俺の力の適正が尋常じゃなく高かったからというのもあったのだろうがな』

 

(う、嘘だろ。じゃあ俺はまた……)

 

『そこまで悲観することでも無いだろ。どうであれ本人は受け入れているんだからな』

 

 

 一誠並みとはいかないが、それでもドライグに近い力を放つラウラに譲渡の力を使った事を後悔する一誠だけど、ドライグ本人はあっけらかんとしている。

 

 

「私だって只医務室で寝ていたわけじゃない。

あの時イッセーから貰ったコレを織斑一夏――お前に対抗する為だけに瞑想し、使い方を覚え、何時でも引き出せる様にした」

 

「て、天才かこの子は……」

 

『恐らくあの戦いで一度使ったのが身体に染み込んだのだろうな。確かに飲み込みの速度はガキの頃のお前の上だ』

 

 

 逆にショックを受けている一夏に不敵に微笑みながら赤いオーラを消したラウラを見て一誠が思わず溢す。

 

 

「私はイッセーの片側、つまり教官やお前側の事はわからない。だが逆にもう片方をお前は持ってないだろう? だから私は逆側からイッセーを理解してみせるよ。なんといっても私は師匠だからな!」

 

「く、ぐぬぬぬ!!!! こ、これで勝った気になってんじゃねぇぞ!!!」

 

「まさか、そこまで自惚れてはないさ。お前の強さは嫌というほど味わったからな。だから何れは越えてやるさ……」

 

 

 ドライグの力を取り込んで独自に使いこなすラウラの一言に一夏は地団駄を踏むが、本人はケロっとしながらイッセーの隣に座る。

 

 

「ISの事は引き続き教える。その代わりにこれの使い方を教えてくれ。

教えてくれたら……ふふ、ぎゅってしてやるぞ? あぁでもイッセーは胸のデカい女が好きだったな……私じゃだめか……」

 

「………」

 

「ふふ、何だかお前を見てると甘えさせてやりたくなる……何だろうなこの気持ち?」

 

「さ、さぁ……?」

 

 

 ラウラ・ボーデヴィッヒ

 

 ドイツ・黒兎隊所属

 

 

 備考……赤龍帝からの贈り物を独自にモノにした一夏や千冬達とは反対側に立てたイッセーの師匠。

 

 

 

 

 

 

「!? ま、またアイツの力……クソ! また一瞬すぎてどこだかわからねぇ!!」

 

「私も感じたが……うーん、何故かシンパシーを感じる様な……」

 

 

終わり




補足

逆側に立つ。つまり神器的な力で一夏に対抗しようとするラウラたん。
まあ、送った本人も送られた本人も想定外だった訳だけども。


その2
多分この一誠はラウラたんが何かする度にいの一番に大騒ぎするんだろうね。
まるでアイドルのおっかけみたいに。


その3
ある意味マドカさんと気が合うのは彼女なのかもしれない……。


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