赤龍帝ストラトス(仮)   作:超人類DX

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皮肉にもこんな事があったせいでイチ坊とかんちゃんが……。

※その頃話の追加


閑話休題

 当然の事ながら、シャルル・デュノアからシャルロット・デュノアへと戻った事により一夏との同室は終わりを迎える事になる。

 

 まあ、シャルロットはともかくとして一夏はその話が出た途端テンションを上げるし、再び同室に戻れるのではと箒も内心ドキドキしたりしたのだが……。

 

 

「だぁぁかぁぁらぁぁっ!!!! おかしいだろうが!? 普通男同士でおっちゃんと同室が常識じゃないのかよ!!」

 

「そ、そうは言われても……」

 

 

 自分の思った通りに中々ならないのが世の中の流れという奴なのか、おっちゃんこと一誠とはまた同室にはなれないという副担任の言葉に一夏は絶望の雄叫びをあげていた。

 

 

「俺もそこの所は思うんだけどな……」

 

「だろ!? そうだよな!? 普通俺とおっちゃんでコンビだよな!?」

 

 

 常識的に考えれば……と非常識の塊二人が言った所で果たして説得力があるかどうかは別にして、流石に一誠もおかしいのではと興奮しまくりな一夏を落ち着かせつつ山田先生に言うのだが、未だに一誠に恐怖を持つ山田先生は露骨に目を逸らしながら言葉を詰まらせてしまうだけだった。

 

 

「せめてちー――じゃなくて織斑先生と俺の部屋に加えるとかさ」

 

「あ、それが良い! 寧ろそれでパーフェクトだ! よし山田先生、それで登録してください!」

 

「わ、私が決めてる訳じゃないので……」

 

「は? …………チッ、使えねぇ」

 

「あぅ!? ご、ごめんなしゃい……」

 

「このバカ! 泣かせてどうするんだよお前は!」

 

「いてっ!?」

 

 

 一夏の使えない発言に泣いてしまったのを見た一誠の拳骨が飛ぶ。

 結局どれだけ騒いでも一夏と一誠が同室になる事は無く、気になる一夏の新たな同室相手はというと――

 

 

「嫌じゃあぁっ!! 絶対嫌じゃあ!!!」

 

「何だかよくわからないまま唐突に言われたんだけど、一夏のお部屋にお引っ越しだったんだね? ふふ、これからよろしく」

 

 

 水色の髪に赤い瞳を持つ一夏がある意味で一番意識しているんじゃないかと言われる大人しそうな女の子にて、一誠による進化の体現者の一人………そう、皆大好きかんちゃんこと簪だった。

 

 

「あぁ、まぁかんちゃんなら良いか。イチ坊のことよろしくな?」

 

「うん任せておじさん」

 

「嫌だ嫌だ嫌だ!!!」

 

 

 誰が同室だろうと喚いていただろう一夏が今時の幼児でもやるかわからない方法で床に転げ回りながら嫌だを連呼してるが、その場に居合わせた誰もが無視をしてる―――

 

 

「私は反対かなぁ~ だっておりむーって眼鏡萌えなんでしょう? かんちゃんが危ないよ~」

 

「わ、私も反対だ!」

 

「私も反対です、簪お嬢様に暴力をふるう可能性があります」

 

 

 訳でも無く、反一誠派筆頭の三人が意を唱えた。

 

 

「別に私は平気なんだけど」

 

 

 強がりでも何でもなく、一夏に対して戦闘能力という意味では若干劣るが、それでも一誠を相手にすら本気になれば触れられなくなる異常性を持ち、一誠との再会と一夏との出会いを経て進化させている簪は、自分が弱くないと気が済まないらしい従者姉妹とそれに乗っかってる箒に対して問題ないと言う。

 

 

「出来れば私がという願望はありましたが、更識さんなら私もある程度納得しますし、平気だと思いますわ」

 

 

 意外な事にそんな簪を援護する様にしてセシリアが声を出す。

 

 

「布仏さんの事は聞いておりますが、お二人とも少し更識さんに対して過保護じゃありませんの?」

 

「キミに何がわかるのかな?」

 

「別に興味はございせんよ、理解しようともせず否定ばかりする方々達なんて」

 

 

 ある意味セシリアは三人と同じで一夏達の持つ性質・人間性に対して理解できない部分はある。

 だが三人との違いは、セシリアはセシリアなりに理解しようという気持ちが強く、どれだけ異常な面を目の当たりにしても盲目なまでに一夏を慕っている。

 

 

「従者だからと更識さんの意思をねじ曲げる権限は無いんじゃありませんこと?」

 

「「……」」

 

 

 少し険悪な空気が流れる。

 

 

「嫌だぁ……!」

 

 

 そんな空気でも空気を読まずに一夏は嫌だの連呼を止めない。

 夕日が窓に射して茜色に染まる教室内が、やがては茜色から鮮血の朱へと変わるのではなかろうか……という空気になり掛けたその時、手を叩きながらその空気を壊したのは一誠だった。

 

 

「いっそジャンケンか何かで決めれば良いんじゃないの~………とか空気を読まずに発言してみたりする俺」

 

 

 皆仲良くだなどというお花畑みたいな事は考えてないが、それでもある程度は緩やかな人間関係であって欲しいと思うからこその一誠のこの発言に、全員の視線が突き刺さる。

 

 

「いやさ、イチ坊が人気者なのは見てわかる訳だし? 皆が皆イチ坊の同室を望むっていうのなら、いっそジャンケン――いや、アミダくじとか何かで決めてみたらいかがですかなぁ――みたいな……」

 

「目が腐ってるんですあアナタは? 私と本音は少なくとも彼と同室なぞ望んでいません」

 

「同じくー……なにされるかわからないしー?」

 

 

 一誠の発言に対して嫌悪丸出しで辛辣に返す虚と本音。

 

 

「そんなもの見ててわかってるよ。

けどここでごちゃごちゃ言い争ったって終わりが見えないだろ? まあ、俺とイチ坊が同室になればそれで終わりなんだろうけど――」

 

「ダメだ! 一夏をこれ以上洗脳させてたまるか!!」

 

「―――――と、いう意見もあるみたいだし」

 

 

 箒の言葉に一瞬一夏が立ち上がりながら殺意を持ち始めたが、一誠に肩を掴まれて未遂に終わる。

 

 

「キミ達二人はかんちゃんとイチ坊が同室になるのに反対、篠ノ之ちゃんは俺とイチ坊が同室になるのに反対…………となればもう時の運という概念に委ねてしまうしかないだろう?」

 

「「「………」」」

 

 

 何気に床に転げ回って嫌嫌していた一夏の制服についた汚れをセシリアがいそいそと払ってたりする変なやり取りを横に展開される運要素に三人は押し黙る。

 一誠に言われるのは気に入らないが、確かにここで何時までもあーじゃないだのと問答を繰り広げた所で解決には至らないのだから。

 

 

「よし、そうと決まれば早速やるけど……ちなみに聞くけどイチ坊と同室になりたい子は手ぇ挙げ」

 

「…………」

 

「……………」

 

「…………」

 

「はーい」

 

「はい!」

 

 

 一夏との同室を希望する者が次々と手を挙げる。

 

 

「思ってた通りに多いね。いやぁ、モテモテやのぉ?」

 

 

 箒、セシリア、鈴音、簪、シャルロット……という美少女だらけの面子に何故か一誠がニタニタし、一夏の背中をパシパシと叩く。

 そしてやはり本音とそういえば何故か居た虚は挙手をせず敵意丸出しに静観しているし、一夏も鼻を鳴らしている。

 

 

「じゃあジャンケン――いや、アミダくじだな。公平さを考慮してここは山田先生につくって貰おうと思うんだけど……先生、お願いしてもよろしいですかね?」

 

「わ、私がですか!? は、はい……や、やらさせて頂きます……ごめんなさい……」

 

 

 オロオロしていた所にまさかの指名を食らって完全にテンパる山田先生だが、取り敢えず言われた通りアミダくじを皆に見えない所で作成し始める。

 

 

「さて、そんな訳だから山田先生が作り終わり次第――」

「待てよおっちゃん」

 

 

 勝手に決めてしまっても良いのか? という疑問は横に投げ捨てるスタイルにするつもりな一誠が作り終えるまでの間の繋ぎをしようとしたその時、一夏が口を挟む。

 

 

「なんだよイチ坊?」

 

「俺はどうでも良いとして、おっちゃんはよ?」

 

「は?」

 

「だからおっちゃんとの同室権を獲るアミダは?」

 

 

 無いだなんて言わせねぇぞといった雰囲気MAXで一誠に詰め寄る一夏だが、当の本人はケタケタ笑っている。

 

 

「おいおい、普通に考えて俺と同室になりたがる子なんて居ないだろ? なぁ、布仏ちゃんとか篠ノ之ちゃ――」

「虫酸が走る」

「死んだ方がマシ」

「舌噛んで自殺」

「―――――な………な? こんな感じだし余計混乱させるだけだから俺は無い」

 

 

 わかっていた上で同意を求めたつもりだが、拒否られ方が半端なさすぎて思いの外ハートをまっぷたつにされた一誠が何とも言えない顔で無理に笑う。

 その瞬間一夏と……そしてそれまで一誠に言われて我慢していた簪までもが頭に来るが、一誠の提案を無駄にする訳にはいかないので我慢する。

 

 

「じゃあ織斑とは別にしたらどうだ?」

 

「へ?」

 

 

 だがそんな一誠に対して意見する者が一人いつの間にかやって来ていた。

 

 

「え、し、師匠?」

 

「教官と同室であるのは知ってるけど、もし他に望む者が居れば抽選するんだろう? それなら私が立候補しようじゃないか」

 

 

 先日よりドライグの力の一部をその身に宿す事になってしまった銀髪少女のラウラの出現と言葉に一夏が狂犬の如く吠える。

 

 

「ふざけんなよお前っ! じゃあ俺だって立候補するわ!!」

 

「いやだから、こうなるから俺は無いって――」

 

「じゃあ私も立候補しちゃおっと!」

 

「た、たっちゃん!?」

 

「駄目に決まってるだろ! 許さん!!」

 

「ち、ちーちゃんまで……」

 

 

 次々と一誠の事になった途端に何処からともなく現れたせいで若干収集がつかなくなりかけてきた。

 

 

「だから俺はちーちゃんと同室で構わないよ! 変に混乱するからやめろ!」

 

「むぅ……あ、それなら教官とお前の部屋に加わるってのはアリか?」

 

「あらラウラちゃんは天才ね、それなら角も立たずに済むわ♪」

 

「ざけんなコラ!! チビとビッチは余計なんだよぉ!!! 俺が加われば丸く収まるんじゃ!!」

 

「ふざけないでください! そんなもの私が許しません!!」

 

「そうだよ、それじゃあ何のためにやってるのかわからなくなるし」

 

 

 いや、最早予定調和の如く収集がつかなくなってしまう。

 結局揉めに揉めた結果一誠は――

 

 

「部屋割りなんか何でも良いじゃんかよ、あの年の子達ってそういうものなの?」

 

「アイツ等の気持ちがわかるのでノーコメントです」

 

「つーか俺が居なきゃ全部丸く収まってたろ絶対……」

 

「そうかもしれませんが、私と一夏が死んでますね」

 

 

 引き続き千冬との同室になり、一夏は――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「更識の眼鏡は一万歩譲って納得してやっても良い。だけど――」

 

「なんですか? 私だって納得してる訳じゃないんですよ」

 

「かんちゃんに乱暴させない為だから」

 

「……………。コイツ等は何なんだよぉぉっ!!!」

 

「ごめんね、二人はどうしても私とお姉ちゃんが二人にとっての理想の状態じゃないと嫌なんだってさ。

弱くてお姉ちゃんを避けてる私と、それに悩むお姉ちゃんじゃないと……って」

 

「けっ! テメーの妄想を押し付けるだけ押し付けてるだけってか? よくそれでおっちゃんの事が言えたもんだぜ!」

 

 

 当初よりも泥沼に嵌まってしまった感満載な光景であったという。

 

 

閑話休題・・お引っ越し騒動

 

 

 

 

 

 

 

 

 一夏だけが多く同室相手の変更がある中、何気に楯無と同室になったラウラ。

 同室相手が楯無という、自分とは逆の位置で一誠を知る存在というのもあって当初は微妙に警戒していたが、話してみれば一夏より物分かりが良いせいか、中々普通にやり取りが出来ていた。

 

 

「未だに私にはわからないが、お前やお前の妹、それから織斑一夏と教官にはそういったものを持っていた訳か。

なるほど、理解しようにも無理だったのがこれでわかったよ」

 

「アナタがイッセーさんから貰った力――つまりドライグ君の力を私達が扱えないのと一緒ね」

 

 

 仕組まれたVTシステムの件以降、憑き物でも落ちたのか相変わらず一夏に対して一定のライバル心を持つものの人間性が軟化したラウラ。

 楯無からイッセーの別の側面である『スキル』について学びながら、何故一夏と千冬が一誠に拘る理由を知り、己の中に偶発的に宿った側面の力――赤龍帝の力を研ぎ澄ませていく。

 

 

「ドライグの基本的な力は、宿主の力を倍加させる事にある。

勿論極めればその倍加させられる上限は増えるけど、上限へと達した時、使用者の身体にある程度の負担とそれまで倍加させた力はリセットされるんだ」

 

 

 ラウラに力が残留してしまったという事実を知ってから初めての授業。

 一誠自身は後悔していた様子ながらも力の使い方を教えていた。

 

 

「スキルとの違いのひとつとしては、概念的な要素の強いスキルとは逆に、物理的な力が直接表現されるといった所かな。

例えば――」

 

 

 ラウラに己の力を譲渡した際、その力を永続的に宿してしまったのは想定外も想定外だったらしく。

 今までのやらかしの事もあってかなり後悔している様子を見せつつも、それでも力の使い方を間違えさせる訳にはいかないと一誠はラウラに対して神をも滅ぼす二天龍の力を教える為にほんの少しだけ演舞する。

 

 

「ドラゴン波!!」

 

 

 まだ両親の下で平和に生きていた頃見たアニメの主人公の十八番技の模倣。

 体内のエネルギーを倍加させ、両手から放出させる赤き波動はISという存在とシールドエネルギーの概念を知るラウラをも驚かせるものだった。

 

 

「と、この様に倍加した力は身体能力に上乗せするのも、今みたいにエネルギーの塊として対象物にぶつけるもの可能って訳」

 

 

 ほんの一部ではあるものの、その力を扱える様になる。

 使いどころを間違えれば取り返しがつかなくなる。

 その二つをまず第一に教えられたラウラはその日によりスキル側で一誠を理解した者達の逆側に立ち、赤いオーラを纏う事を許された。

 

 

「私が現状可能なのは4段階の倍加までだ。

それ以上倍加させると身体がガタガタになる」

 

「最初からそこまで使える時点で上等通り越してるよ師匠。

ドライグも割りと褒めてるしね」

 

 

 故にラウラの目標は決まっている。

 偶発的にとはいえ宿らせてしまったと後悔している一誠を安心させる為にこの力を極める。

 それが贈り物を貰った自分自身の意思での行動。

 

 

「2倍だ!!」

 

「適正がありすぎて結構凹むな……」

 

『事故みたいなものだからな』

 

 

 誰に命じられた訳でもないラウラ自身の望みとして、龍帝の力を受け入れた少女はその身から赤き力を放出する。

 

 

 閑話休題2・龍神達を超越せし深紅の龍帝の力を宿す少女

 

 

 

 

 なんて事がありつつ数日が経過したこの日の朝。

 ストレスでそろそろ一夏が暴れだすのでは無かろうか……というか、布仏姉妹的には寧ろそうなって問題を起こさせるつもりといった思惑が横行していたりなかったりな中、これまた皮肉な事にそんなストレスでもまだまともな簪が居るせいか、比較的あの騒動が起こる前よりも遥かにマシな対応になっていた。

 

 

「思っていた以上にクソうぜぇぞあのクソ姉妹。

殺して良いのか? いや殺すよ? ぶち殺すぞ?」

 

「ごめんね……いくら言ってもダメみたいだから、そろそろお姉ちゃんと相談して『相応』の対応をするから」

 

「……ちっ、マジで頼むぜ。その内禿げるぞ俺は」

 

「……………………」

 

 

 

 びっくりするくらい簪と普通に話をしている。

 その理由はやはり部屋割り変え騒動による逆確変事件によるものなのだが、思っていた以上に我慢強いと知った本音は特に焦っていた。

 

 

「…………」

 

「おい、更識と普通に会話してるが大丈夫なんだよな?」

 

「……………………。大丈夫、そうないようにはしてるから」

 

 

 席まで隣同士に加えて、ここ最近は普通に会話までし始めてるという姿に箒も不安になって本音に確認するも、本音は爪を噛みながら笑って一夏を見詰めてる簪の姿を凝視しているのが却って不安を煽る。

 

 

「おはよう諸君、来週から始まる校外特別実習期間だが、全員忘れ物などするなよ。

三日間は学園を離れることになるし自由時間では羽目を外しすぎないように」

 

「あぁ、だから山田先生が居ないのか? こういう行事って事前視察とかするもんだろうし」

 

「その通りだ兵藤、なので今日は山田先生が担当する授業も私が兼任する」

 

 

 それもこれもあのヘラヘラした男のせいだ。

 一夏と簪の仲が微妙に近くなった理由を一誠のせいとする本音にとって校外学習などどうでもよかった。

 

 

「海なんだっけ? ……泳ぐの?」

 

「じゃないのか? 楯無は去年そうだったと言ってたぞ?」

 

「ほほぉ……てことは皆水着になるの? わーぉ、パラダイス確定じゃんか―――――あ、そういえば山田先生もだよな!? イヤッホォォォ!!!」

 

「静かにしろこの(ホルスタイン)フェチ男が。言っとくが粗相を働く様なら連れていかんぞ」

 

「いやぁ、そんな勇気俺には無いっすよ先生~ 第一俺は泳がんし、精々砂浜で見学してるって所かなぁ」

 

「まあ、実際お前が手を出さんのは知ってる。ヘタレだもんな?」

 

「ひでぇや織斑先生」

 

 

 千冬との漫才じみたやり取りで注目を集めるのも気に食わない。

 とにかく見てるだけで腹が立つ。

 

 

「え、兵藤君は海に入らないの?」

 

「へ? うん……まぁ、水着っつーか肌を露出するのはNGというか」

 

「多分気にしないと思うぞ? 私は全く気にしないし」

 

「いやぁ、それは師匠が海よりも深いお慈悲をくださるからであって、普通あんな汚ならしい身体みたら気分悪くなるぜきっと」

 

「何かほざこうなら俺がぶちのめすから、今回くらい良いんじゃねーの? 織斑先生も良いと思いますよね?」

 

「まぁな、少なくとも他人の傷跡を見て嫌悪するような生徒は居ないと私は信じてるつもりだ」

 

「ほら、教官も言ってるし、少しは良いんじゃないか? もし何か言われても私が守ってやる」

 

「うーん……じゃあ考えとく」

 

「おいクソチビ、守るのは俺と千冬姉だ。お前はしゃしゃり出んな」

 

「ハッ、まだそんな事を言ってるのか貴様は? 相変わらずつまらん男だな」

 

 

 本音と箒の恨みは更に強まる。

 

 

終わり

 

 

 

 臨海学習の自由時間は海で遊べる。

 ということで女の子達は水着の新調をしようとキャッキャしている。

 

 

「良いか勘違いするなよ? これはあくまで千冬姉の為であってものの次いでなんだよ。わかったな?」

 

「うんうん、それで十二分だよ私は」

 

「勿論私もですわ! まさかこうしてご主人様とお買い物に行けるだなんて、幸福の極みです!」

 

「でも織斑先生は大丈夫なのかな? 兵藤のおじさんの事になると……こう、何時もの調子じゃなくなるから」

 

「完全に兵藤のおじちゃんに甘えるもんね……びっくりなんてもんじゃなかったわよ初めて見た時は」

 

「一夏にこんなに女が……クソ」

 

「かんちゃんも何であんな乱暴者なんか……」

 

 

 普段ならおっちゃんと行くと突き放す一夏だけど、今回はどうやら千冬の為に敢えて退いたらしく、コソコソ陰に隠れながら覗く視線の先には……。

 

 

「一誠さん、手を繋いで欲しいです」

 

「ん? おう良いぞ、はぐれちゃうもんな?」

 

「そういう意味じゃないし、子供扱いしないでくださいよ」

 

「ははは、流石に今のは冗談だよちーちゃん」

 

 

 千冬が信じられないくらい女の子になって一誠と楽しく――所謂おデートをしてる光景だった。

 

 

「良いなぁ、私もイッセーさんと遊びたかったなぁ」

 

「もし茶々入れたりたら八つ裂きにするかんな」

 

「流石に私でもそんな空気の読まない真似はしないから安心して頂戴。ね、ラウラちゃん?」

 

「まぁな、私としては寧ろイッセーが心配だぞ。変な女にいちゃもんつけられやしないかとか……」

 

 

 ラウラの呟きに、同行者の殆どは確かにと思うし、その予感は大体当たってしまうものだ。

 

 

「そこのアンタ」

 

「………………? え、俺?」

 

「そうよ、そこのバカそうな顔したアンタよアンタ。

これ片付けといて」

 

 

 見知らぬ女に急に呼び止められたかと思いきや、試着でもしていらしい服の山を片付けろと命令される。

 あまりにも突然すぎて逆にポカンとしてしまう一誠だが……。

 

 

「あのド不細工が、殺してやる……!!」

 

「落ち着いて。けど流石に私もイラッとした」

 

「……………。以前までの自分が恥ずかしいですわ」

 

「反省してる分アレより遥かにマシよアナタは」

 

 

 一夏の狂犬化が始まりそうになるのは当たり前でそれを止めるのが大変だったり。

 

 

「えーっと、やってあげたいのは山々なんだけど連れを待たせる訳にはいかないからさ……ごめんね?」

 

「はぁ? 連れ? アンタ男の分際で私の言うことが――」

 

「少なくとも、見知らぬ女のいうことを聞く義務など無いな」

 

「聞け………な……!?」

 

 

 でも千冬があっさり追い払ったり。

 

 

「ある程度はご存じでしょうが、ISが世界に広まってからはああいう女性が増えました。

同じ女として恥ずかしい限りです」

 

「世の中歴史ってそんなもんだ。

悪魔だの、猫妖怪だの堕天使だのの雌にもしさっきみたいな台詞吐かれたら刹那で八つ裂きにしてやってたけど、人間の女の子だしある程度は許しちゃうな俺は?」

 

「例えどれだけ一誠さんの好みの外見でも?」

 

「ちーちゃんは俺が言わなくてもわかるだろ?」

 

「ええ……ふふっ、アナタの口から直接教えられましたから」

 

 

 でもそれが却って距離感を縮めたり。

 

 

「どれが似合うと思う? 一誠さんに選んでほしいな?」

 

「段々口調が素になってんぜちーちゃん? うーん、美人ちゃんになったちーちゃんに派手さは必要ないし、白……いや黒だな!」

 

「じゃあ目の前で試着するから一緒に……」

 

「三面記事に載るぜそんな事したら……」

 

 

 完全に素に戻った千冬がそれはそれは楽しげだったそうな。

 

 

 似非予告・ちーちゃんとおっちゃん

 

 

「一誠さんのYシャツ大きくて袖もよれよれです。ほら」

 

「ほら……じゃなくて何で下履いてないんだよ……!」

 

「そういうのが好きだと知ってるから……あ、胸のボタンが……」

 

「うぉ!?」

 

 

 

始まらない。

 

 

 

 

 

 

EX episode...

 

 

 

 只の気のせいだと思っていた。

 考えすぎた結果の妄想にとり憑かれただけだと思いたかった。

 

 しかしそれでも相棒(パートナー)ですら自分と同じくそれを察知していると言うからこそ、遅すぎた進化を果たした青年は高揚と不安を同時に感じていた。

 

 

「篠ノ之束が妹の誕生日に出現する可能性が出てきたわ」

 

「……。それは既に調査済みだし、出現パターンもある程度は予測している。

後は何時此方が接触するかだけだけど」

 

「織斑一夏とその同学年達が校外学習として三日程◯◯県の××海岸に来るわ。

恐らくはこの時に博士が現れる筈なので、アナタとそこでボサっとしてる彼と行ってきなさい」

 

「おいコラ! テメー聞いてんのかよ!?」

 

「…………………」

 

 

 何時もの男嫌いの小娘がギャーギャーと喚いてる気がするけど無視し、リーダー格にしてる年齢不詳の女が訝しげに見てるけど、どうでも良い。

 青年……匙元士郎の現在の心中の大半は、懐かしくもあり得ない筈の力が一体どこにあるのかだ。

 

 

「OとM、少し席をはずして貰える?」

 

「ちょっと待ってよ、こんな奴とスコールを二人きりにしたら――」

 

「大丈夫よ、ちょっとした確認をしたいだけだから」

 

「…………。後でな元士郎?」

 

 

 組織の使命などどうでも良い。

 第一所属した理由だって金目的なだけだ。

 

 

「いい加減正体のひとつでも教えて貰いたいわね」

 

「……………………………。話はそれだけか? 帰るぞ俺は」

 

 

 強烈なトラウマのせいで女に対して警戒心がある。

 このスコールに至っては胡散臭さがそのまま生きてるので、元士郎にしてみれば必要以上に関わりたくない相手だ。

 例え向こうがそろそろ自分の正体を怪しもうとも、教えてやる気は更々無い。

 

 

「M……つまりマドカの身体にナノサイズの爆弾が監視用のナノマシンに紛れさせてあるといえば少しは素直になれる?」

 

 

 ましてや知りたいあまり『くだらない脅し』をしてくるのであれば――

 

 

「やってみろよ、死にたかったらなァ……!」

 

「……!」

 

 

 自分は恐らく組織ごと抹消してやっている。

 転生者に殺された後に備えた殺意がスコールを硬直させる。

 

 

「あの子に何かしたら、皆殺しにしてやる」

 

「………。へぇ、少しはマシな顔つきになれるのねアナタって」

 

「言ってろクソレズが」

 

 

 世界をも喰らい尽くす暗黒騎士は暗躍する組織とて制御はできない。

 

 

「帰るぞマドカ」

 

「何を言われたんだ? 虐められたのか? 大丈夫?」

 

「大丈夫だよ、只の金蔓共にやられる程落ちぶれたつもりはないさ……」

 

 

 この世界に生きて唯一心を許せた少女一人の命に比べるまでもなく、世界は小さい。

 

 

「おい、レズその2」

 

「あ!? テメー今――うっ!?」

 

「次マドカを人形なんてほざきやがったらその舌切り落とす」

 

「お、おい元士郎……! やっぱり変だぞ……」

 

 

 だがら、トモダチになりたかった同い年の男の力がちらつく今、少しだけ正直になっても良いのかもしれないと、元士郎は黒鞘から抜いた直刃の剣をオータムの首筋に当てながら更なる進化を求め始めた。

 

 

「やっぱり最近頻繁に感じる龍の力のせいなのか?」

 

「正直に言えばな。流石にもう気のせいで済ませられなくなってるのはお前もわかるだろ?」

 

「うん、私も感じたあの力は微量ながも世界を壊せる何かを感じた。

考えた通り、もしかすれば兵藤一誠が何処かに……」

 

 

 トモダチになりたかった相手の懐かしい力のほんの一部を感じては場所を特定できないもどかしさから来るストレスでついスコールとオータムに当たってしまった元士郎を心配するマドカは、根城にしているホテルに戻るや否や、いそいそとお茶を用意して元士郎に振る舞う。

 

 

「アイツかもしれないけど、俺はもしかしたらと思ってる事がひとつある」

 

「?」

 

「アイツの力を持ったどこぞの誰かって可能性だよ」

 

 

 お茶に口を付けながら難しそうな顔をする元士郎の考え。

 それはここ最近頻繁に察知できる様になった懐かしい力の本体が別人であるという事だ。

 既に『似たような』存在に殺された経験があるからこその考えだし、疑いに走るのも致し方ないのかもしれない。

 

 

「アイツと同じ力を持ったその誰かがテメーの欲だけに使ってるのなら俺は許せない。

……どこに居るのかイマイチわからないけど、その内探し当てて――」

 

「考えすぎだよ元士郎、まだそうと決まったわけじゃないし、もしかしたら本当に兵藤一誠なのかもしれないだろう?」

 

「それはそうかもしれないけど、それだったらそれでアイツは俺みたいに『ナルガミ』のクソ野郎に殺された事に………」

 

 

 話している内にどんどんネガティブになっていく元士郎が遂に丸くなって体育座りをし始める。

 

 

「うあぁぁ……! どうしよう、もしそうだったら俺は何てアイツに言えば良いんだ……!」

 

 

 進化はしたけど、トラウマが強すぎてメンタル面がかなり脆い元士郎。

 直接復讐を遂げられた一誠とは違って現在でもかつて惚れた元主が笑いながら自分が転生者にズタズタにされる様を元仲間達と眺めていた時の事が夢に出るくらいだ。

 そんな精神状態にも拘わらず未だに壊れないのは、やはりマドカが傍に居てくれるに他ならない訳で、親犬とはぐれてしまった子犬の様に震える元士郎の背中を優しく撫でる。

 

 

「大丈夫だよ、仮にもし兵藤一誠で無くて力を悪用する様な輩なら一緒に倒せば良いし、もしも本人なら後ろめたい気持ちを抱く必要なんてない。

第一もしかしたら倒した上でこちらに来たのかもしれないじゃないか?」

 

「………」

 

 

 一回り以上も年が離れてる女の子に慰められる男というのも中々シュールだが、少なくともマドカ本人はこの上なく本気だし、元士郎がこういう面を持つからこそ年齢にそぐわない母性愛を持つに至ったのだ。

 ………………ただし、発揮されるのは元士郎にだけだが。

 

 

「今日はもう寝よう。嫌な夢を見ても私が傍にいる……だから安心してくれ。

それとも私じゃやっぱりダメか?」

 

 

 その理由はやはり暗闇から自分を拾ってくれた元士郎への恩義とそれを越えた愛情がそうさせるのだろう。

 もしも世界が元士郎を否定しても、自分だけは味方で在り続けるという覚悟は勿論ある。

 

 

「ソーナ・シトリー共と比べたら色々と貧相かもしれないけど、そこは何時もの様に我慢して欲しい」

 

「こんな事された事もないから知らねーよ……」

 

「そうかそうか、ふふん、ちょっと安心したよ」

 

 

 弱い自分を覆い隠す様に纏われる黒狼の鎧姿は、例え全ての者が禍々しいと思ってもマドカだけは思い続ける。

 自分を助けてくれるヒーローなんだと。

 

 

「きっと大丈夫、元士郎が考える様な悪いことにはならないさ。よしよし……ふふふ」

 

「………」

 

「さっき私の為に奴等に剣を向けてくれた時は凄く嬉しかったし、カッコ良かったぞ?」

 

「……単なる八つ当たりだ」

 

「だとしてもだ。私は何時も元士郎に貰ってばかりで、こんな事しかできないから……ごめんな?」

 

「…………」

 

 

 これまでも、そしてこれからも元士郎の傍に。

 それがマドカの生きる意味。

 

 

「なぁ元士郎? 元士郎との子供が欲しいと思ってるんだけど、何時かそうなるかな?」

 

「……………」

 

「あ、返事はまだ良い。今は元士郎が大好きだと思うだけで幸せだからな……」

 

 

 

終わり。




補足

泥沼というかなんというか、逆に仲が微妙に深まってしまったという皮肉。


その2
ちーちゃんとおっちゃんが外に出た場合……基本的に健全に楽しく過ごすんじゃね? ……うん。



その3
マドカさんが居なかったら今頃精神崩壊してたかもしれない。

そしてマドカさんも押し付けはせず、匙くんを待ち続ける健気っぷり。
多分きっと一番彼女がヒロインヒロインしてるかな。
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