赤龍帝ストラトス(仮)   作:超人類DX

35 / 44
約一万文字程加筆したぜ。

束ちゃま無双……からのちーちゃん無双か?


狂気と嫉妬

 今の一誠の精神は全盛期(むかし)と比べるとヘタレる事が多くなった。

 数匹の小娘共が一誠を恨む立場はかつて俺達の立場と重なる為、小娘共に引け目を感じてるのは分からなくもない。

 だが恐らく俺達が本来居た世界での出来事なら―――貪欲なまでに進化を求めた全盛期の一誠なら気にも止めなかっただろうし、あれだけしつこい様なら恐らくバラバラにしてやっていた。

 

 実にあの小娘共は運が良い。

 

 

「それではこれより実装試験を行う。

候補生は自国の装備を、それ以外の者は――」

 

『………』

 

 

 ガキ共に混じる一誠。

 小娘共に混じる一誠。

 

 ガキの頃からのコイツを見てきたからこそ、当時は思いもしなかった『静寂な日々』を中から俺は見守る。

 俺という力の他に目覚めさせた進化の異常は、俺自身をも進化させる。

 

 つまり、今は間抜け顔になっている一誠は他人をも引き上げる事が可能。

 もっとも、それは一誠自身が認めた者のみに限り、その素養がひと欠片も無ければどうしようもなく、何より進化する意思が無ければ無意味なのだがな。

 

 

「………」

 

 

 つまりあの小娘共はその意思が無い故に進化できない。

 恨む事に固執し過ぎて自分の成長を止めている。

 それもまた俺達の存在故だというのなら仕方ないのかもしれないが、そんな仮定の話まで気にするつもりは、一誠はともかく俺には無い。

 餓鬼の戯言に耳を貸してやれるほど俺は暇だが暇じゃないのだ。

 

 その点、一誠も言っていたが、確かに憎んでいるものの、進化の意思を手放していないという意味ではチフユの同年代のあの小娘は確かに見込みはある。

 ……………。いっそ俺も理解し難い狂気を感じたりするぐらいには……な。

 

 

「お、織斑先生! 上から何かが接近しています!!」

 

「! …………へ、やっぱり来たか」

 

「チッ……余計な所に」

 

 

 狂気の沙汰でなければ一誠には並べない。

 かつて一誠自身が復讐の為に狂気に身を委ねたのだから。

 そしてその狂気に一番近いのは恐らくあの小娘だろう。

 

 

『おい一誠、上から降ってきたあの妙な乗り物の中に居るのは間違いなく昨日の小娘だろう。

姿を現したらよくその小娘を観察しろ』

 

「は? ………おう、よくわからないけど分かったぜドライグ」

 

 

 まだ一誠は気付いてないか。

 まあ、昨日のアレは小娘があまりにもイカれた言動しかしなかったからな……。だがこれで気付くだろう。

 

 

「ちーちゃーん!!!」

 

 

 お前と同じく、俺が恐怖すら抱いた進化への『狂気』にな……。

 

 

 

 

 突然謎の乗り物が上から降って来たからと思いきや、中から現れたのは『あの』篠ノ之束だった。

 訓練も試験の準備も忘れて思わず教科書で何度も見たその姿に生徒達が釘付けになる中、篠ノ之束は冷めた目をしていた千冬に、二番目のIS操縦者がよく放課後になった途端呼ぶ愛称を叫びながら突撃するのだが。

 

 

「ありゃ?」

 

『……え?』

 

 

 目と鼻の先まで接近した千冬の姿が一瞬にして消え、代わりに篠ノ之束が飛び付いたのは固くてぶつかったら痛そうな機材だった。

 

 

「入れ替えたな千冬姉。クールな対応だぜ」

 

「ちょ、待ってよ……さっきまで先生が居た位置と今織斑先生の居る位置が……? それに向こうに見えた機材が……? あれ?」

 

 

 何かと何かを瞬時に入れ替える。

 それが一誠により進化し、覚醒させた千冬の異常。

 本当なら適当にアイアンクローで返り討ちにでもしてやれたのだが、じゃれつくと付け上がるので敢えてスキルで対応したらしく、飛び付いた束は見事に入れ換えられた機材に頭から突っ込んでいた。

 

 

「いててて、触れさせてもくれないなんて冷たくなったなぁちーちゃんは♪」

 

「今は授業中だ、何をしに来た?」

 

 

 機材の山からニコニコしながら立ち上がった束に千冬は更に冷たく言い放つ。

 そんな対応をされても束は気にせずに笑っていた。

 

 

「勿論決まってるじゃない、かわゆい妹に会いに来たんだよ」

 

「ほぅ?」

 

「あれあれ? もしかして疑ってるのちーちゃん?」

 

「まぁな、篠ノ之に会いに来たのは事実だろうが、それだけでは無いだろう?」

 

 

 妹――つまり箒に会いに来たと笑う束の言動に多少の偽りアリと言った千冬が横目にざわつきながら集まってきた生徒達を捉える。

 

 

「篠ノ之束本人とは驚いたが、何やら教官がこっちを見てるぞ?」

 

「………イチ坊じゃないの?」

 

「昨日の流れじゃ確実に俺じゃないだろ」

 

「やっぱり昨日接触してたんだ? 妙に遅いと思ってたけどそういう事?」

 

 最後尾の目立たない場所でコソコソとラウラと一夏と簪の背中に隠れる一誠。

 妹を大事にするという意思とは真逆の憎悪の意思を向ける相手だが、皮肉にもその意思が人嫌いで排他的な束を拘らせている。

 つまり千冬はお見通しだったのだ……あの無人機を差し向けた辺りから何時かはこうなると。

 

 

「箒ちゃん、約束の品はすぐに来るけど、その前にちょっと待っててくれない?」

 

「……あの男ですか?」

 

「正解。さて、そこの子達、ちょいと退()いてくんない?」

 

『………』

 

 

 生徒達に笑いながら威圧し、まっぷたつに割らせて道を作らせると、束は箒の質問に頷きながらその中を悠々と歩き、どう見ても敵意丸出しの一夏と警戒する一夏に近しいかもしれない女子達―――の、背中に隠れてる一誠に近づいていく。

 

 

「…………」

 

「ねぇねぇしののん、博士はどっち側?」

 

「前にも言ったが、姉さんは誰よりもあの男を恨んでる」

 

「ふーん? それは良いことを聞いちゃったかなぁ?」

 

 

 実を云うと箒は少し期待していた。

 誰よりも憎んでる筈で、一誠も束には自分以上に引け目を感じてて下手に動けない。

 だから今からどこまで罵倒されるのか、姉になじられるのか。

 

 良ければそのままこの世界から消えて無くなれば良い……なんて期待してしまっていた。

 

 

「やぁやぁ、昨日振りだねいっくん? で、そこでコソコソしてるド変態も?」

 

「どうも……」

 

 

 コソコソしても無駄だと悟ったのか、何か言いたげな顔をする一夏とラウラの間に立った一誠は、昨日振りに見た束と向かい合う。

 その時点で生徒達は『え、篠ノ之束と顔見知り……?』と驚きで少しざわつくが、本人達にとっては――特に束からすればどうだって良かった。

 

 

「き、昨日言いそびれたけど、中々可愛らしい服装だね?」

 

「は? ……ああ、これ一応不思議の国のアリスをイメージしたんだけど――――――って、何でお前にそんな事説明しないといけないの?」

 

「そりゃごもっともで。

えっとさ、キミの妹ちゃんに用があるんだろ? だったら俺なんか相手にせんでも―――――――――――っ!?」

 

 

 昨日の事があるせいか、余計下手に出ている一誠の態度に事情を知らない生徒達は『一体二人の間に何が……』とちょっとした好奇心を抱くが、その下手に出ていた一誠が目を見開いて束を凝視し始める。

 

 

「………………」

 

「っ………!?」

 

 

 その直後、それまでどこか遠慮していた一誠がラウラや簪や一夏も驚かせる程に素早く束の左の手首を掴み……肩を覆っていた袖を捲る。

 

 

『うっ!?』

 

「な、なに……!?」

 

「ね、姉さん!? そ、その傷跡は……!!」

 

 

 ちょうど二の腕の部分がうまく隠れていて誰も気付かなかったが、少し顔が怖くなっていた一誠が捲る事で露になった『それ』に誰しもが息を飲み、耐性の薄い多くの生徒達が顔色を真っ青にしながら口を覆った。

 

 

「あはは、流石に気付くよねぇ? バカじゃあるまいし?」

 

 

 手首を掴まれたままの束はそんな状況を作り出したにも関わらずに一誠に向かって嗤う。

 

 

「それはどうやったんだ……?」

 

「んん? それってどれ?」

 

「惚けるなっっ!!! あの時か!?」

 

 

 その傷跡にある少し色が違う箇所を差しながら一誠は惚ける束に対して声を荒げた。

 さしもの束も一誠に怒鳴られた経験が皆無だったせいか一瞬唖然とするが、それも一瞬の事であり、掴まれた手を無理矢理振り払うと、二の腕に刻んで埋め込んだその傷跡を撫でながら嘲笑うかの様に口を開く。

 

 

「この程度で大袈裟に騒がないでよ? 高々アンタの腕の肉を食いちぎった後、それを吐き戻してここに移植しただけなんだからさ?」

 

『………え』

 

 

 それまでの笑顔が一変し、ギラギラと狂気の孕んだ目をしながら嗤って何て事無いぜとばかりに言い切った束に、そこまでは見抜けなかった箒は――いや、千冬や一夏を含めた全てが驚愕する中、一誠は錯乱したかの様に顔を歪める。

 

 

「ド、ドライグに言われるまで気付けなかった俺を殺してやりてぇ……! 何でこんな事……!」

 

 

 自分の身体が最早普通ではないことぐらい分かっている。

 赤龍帝の血を他人に飲ませただけでその者の持つ神器をコントロール出来るらしいのに、進化する異常性を持つ一誠の細胞を埋め込めば束自身に何が起こるか……。

 

 

「いっくんとちーちゃんにはアナタの精神性を、そこの眼帯の子に龍の力を埋め込んだみたいだけど、この束さんはある意味その両方を持った。

あぁ、鈍そうなお前はまだ気付いてないかもしれないから改めて自己紹介するぜ?」

 

 

 舞台の上にいるかの様に大袈裟に両手を広げ、困惑する一誠の目の前でラウラが見せた赤いオーラと、千冬や一夏や簪や楯無が示した異常性を剥き出しに、進化を掴んだ女は少女の様に笑う。

 

 

「はろはろ~♪ 私が天才の篠ノ之束だよ~! 名付けるとするなら―――――そう、婚厄者(インフィニット・ラヴ)なんてどう?」

 

 

 ゼロから狂気により這い上がった――どこまでもかつての一誠の生き方を知らずに体現した天才ならぬ天災の自己紹介に殆どの人間は意味がわからない。

 だが知っているものは知っている……。

 

 

『異常に加えて俺の力か。皮肉だな、あの小娘はもっともお前に近い』

 

「ちくしょう……責めるに責められない……ていうか喰いちぎった俺の肉片を移植するっておかしいだろ……」

 

「おや、宿したドラゴン君と談笑かな?」

 

『!? コイツ、一誠にしか届かない筈の俺の声まで……』

 

 

 一誠の持つ全ての力をこの女が無理矢理手にしたのだという事を……。

 

 

「ね、姉……さん……」

 

「ん、なぁに箒ちゃん? あ、そうだ……目処が立ったら箒ちゃんにも教えるよ。この方法……そうすれば箒ちゃんもいっくんを理解できるぜ?」

 

「!? か、可能なんですか私にも!?」

 

「うんまあ、そこの子みたいに卑屈になって能書きばかり垂れる様なら無理だけどね」

 

「………! わ、私はそんな……」

 

 

 見下した視線を受けて本音がビクリと震える。

 

 

「箒ちゃんに妙な事ばかり吹き込んでるみたいだねキミ? まあ、あのド変態が嫌いなのも、手足吹っ飛ばして達磨にしてやりたい気持ちはわからないでも無いけど、その為にキミ達は何かした? してないよね? 文句だけだよね?」

 

「………」

 

「そ、れは……」

 

「教えてやるよ、キミのご主人様を取られたと恨むのは賛成だけど、恨むだけで口と頭を使って逃げ回ってるだけなんてのは箒ちゃんの足手まといなんだよ」

 

 

 要するに余計な真似して箒のやる気を削ぐなと言いたいらしい束。

 最後辺りがかなり声が低くなっており、思わず箒もビクリとする訳だが、次の瞬間には花が咲くような笑顔に戻り、獲物である一誠と再び向かい合う。

 

 

「宣言してあげる、お前が進化すればする程私も進化する。

お前は永久に私から逃げられないし―――いっくんが成人したらまた消えるつもりらしいけど、ここまでさせといて勝手に消える事は許さないから」

 

「っ!?」

 

「なに!? おっちゃんどういう事だそれは!」

 

「私も初耳です、どういう事ですか?」

 

「おじさん?」

 

「お、俺は……」

 

「簡単さ、キミ……えっと確か更識現当主の妹ちゃんだったかな? キミの所の従者――つまりそこの子のお姉ちゃんになじられたから、この変態はいっくんが成人したと同時に逃げようとするつもりなんだよ」

 

「……………。何でキミがそれを」

 

「気持ち悪い弊害だよ。お前の細胞の一部のせいでお前の考えが少しだけ私にもわかるらしい。

……………アンタが相当ちーちゃんといっくんを大事にしてるという胸くそ悪い気持ちもね」

 

 

 色々とバラされ、一夏と千冬に詰め寄られる一誠は、束がここに至るまでの狂気を感じて再び顔を歪める。

 

 

「まあ心配しなくても逃げるならその手足ぶった切って束さんにしかわからないどこかに監禁するさ。

勿論誰にも会わせないし、ちーちゃんにも接触させない」

 

「なんだと、おい束――」

 

「大体そこの銀髪の子に欲情する変態だぜ? これ以上放置してたら種まきマシーンになるって絶対」

 

「え、そうなのかイッセー? なんだ、そうならそうと私は何でも受け止めるぞ?」

 

「ちゃうわい!! 昨日もそうだったし多少否定できないけど俺にだってモラルはある――」

 

「はい大嘘~ さっきからチラッチラッ束さんの胸の谷間見といてよく言うよねー?」

 

「…………一誠さん?」

 

「見てないっつーの!!!! おい束ちゃま、いい加減にしないと流石の俺も―――」

 

「いい加減にしないと? へぇ、どうするの? ぶっ飛ばすの? それとも今すぐここで私の服を引き裂いて無理矢理するの? 良いよ、ヤりたくばヤれば? その代わり絶対にちーちゃんに手を出さないのが条件だけど………はいどーぞ」

 

 

 しかも束も束でどこかおかしく、早口に捲し立てたかと思いきや目の前で服を脱ごうとする。

 

 

「ばっ!? やめろ!!」

 

 

 箒もギョッし、一誠が反射的に止めようと束の肩を掴む。だがそれが悪手だと誰が思うのか。

 

 

「ひゃん♡ あ、あぁっ~!!♡」

 

「な……!?」

 

 

 ほぼ……というか完全に嬌声をあげ、身体を痙攣させながら力が抜けた様に一誠にもたれ掛かる束。

 勿論全員がギョッとするのだが、呼吸を乱しながら一誠に身体を預けた体勢の束はそれ見た事かと言う。

 

 

「ほ、ほらぁ……ま、また汚された……♪

あは、あははは、ここまでやって逃げるの? ヤり捨てする訳? 良い度胸通り越してゲスだねお前は?」

 

「兵藤くんって……」

 

「ち、違う!!! 俺は何もしてない!! だ、だって見てたろ!? この子いきなり脱ごうとしたんだぞ!? 普通止めるだろ!?」

 

「いや、間違いは無いんだけどさ……うん」

 

「織斑先生がそろそろ大変なんじゃないかな……と」

 

「うっ!? そ、それは確かに……」

 

 

 クラスメートに言われて恐る恐る千冬を見ると……。

 

 

「束ぇぇぇぇっ!!!!!!」

 

 

 泣く……じゃなくてガチギレしていた。

 そして一誠にもたれ掛かる束に襲い掛かった。

 

 

「殺すぞテメェェッ!!!」

 

 

 そして一夏もキレていた。

 

 

「お、落ち着け二人とも!!」

 

「あは、びしょびしょになっちゃった、この変態♪」

 

「どいてください一誠さん! そいつぶっ飛ばせない!」

 

「粉々にしてやる!」

 

「よくはわからないが、イッセーを困らせてるみたいだから加勢する」

 

「取り敢えずお姉ちゃんの為に……」

 

「し、師匠とかんちゃんまで……!?」

 

 

 凄まじい殺気が支配する中、どうにかして落ち着かせようと頭を働かせる一誠だが上手い案が浮かばない。

 そんな中を束は……。

 

 

「はぁ……ふぅ……心配しなくてもこの性欲大魔人の毒牙に掛からない様に私が全部身代わりになるから安心して良いよ皆?

ねぇ、次はどうすればいいの? 胸で挟むの? それとも物凄くちゅーちゅーするの? まあ、されても出ないけど」

 

「目を覚ませっての!! っひ!? お、おいどこ触って……!?」

 

「あー、これでめちゃくちゃにされるのかな私……嫌だなぁ……ホント嫌だなぁ……あは、あははっ、あっはははははは♪」

 

 

 火にロケット液体燃料を投下しながら……ISスーツ状態の一誠の腹部を撫で、徐々に下へと手が移動し――

 

 

「天誅!!!」

 

「ぎゃん!?」

 

 

 千冬のマジ拳によって地面とキスした。

 

 

「はぁ、はぁ……」

 

「ち、ちーちゃん……す、すまねぇ」

 

「色々とコイツには話を聞く必要があるみたいです。

それにしても束め……一周回って一誠さんを……くっ!」

 

「いや、多分俺の力をダイレクトに埋め込んだせいで精神が不安定なだけだと思うけど……」

 

 

 箒へのプレゼントはどうなったのやら……という突っ込みも吹き飛ぶ訳のわからなさ。

 拷問でもしそうな形相で千冬のマジパンチを受けても目を回すだけに留めてる束は確かに進化をしている。

 

 

「俺が進化するとこの子も連動して進化するか。

表裏一体というかなんというか」

 

 

 どちらにせよ、内心は束のこの執念を好ましく感じてしまう一誠もやはり頭のネジが何本か無くなってる様な気もしないでもない。

 

 

「いたたた……ちーちゃんの愛情は中々ヘヴィだぜ」

 

「……! 気絶させるつもりだったのに……」

 

 

 千冬の拳を脳天に直撃させたのにも拘わらず、ものの数十秒で意識を回復させ、ヘラヘラ笑って頭を擦りながら立ち上がった束に千冬は驚くのと同時に、一誠の一部を取り込んだのがハッタリでは無いと唇を噛む。

 

 

「ねぇ、話に付いていけないんだけど、兵藤くんって本当に何者?」

 

「そ、そこら辺の若作りしたおっさんって思って欲しい……。た、偶々顔見知りってだけだしあの子達とは」

 

「どいつもこいつも……!!」

 

「お、織斑君がまた怖いんだけど……」

 

「俺も想定外だったんだよ!

まさかあんな真似までして……ちくしょう、世が世なら割りと好きになるぞ」

 

「やめろよおっちゃん! 絶対許さねぇぞ俺は!!」

 

「わ、わーってるわーってる!! 半泣きになるなよ!!」

 

「確実にお姉ちゃんもショック受けると思うよ。

だって博士がやった事って、自転車レースをやってた私達の横をF1カーで爆走してるようなものだもん」

 

「そ、そんなもんなの?」

 

「そんなものだよ、まあ、あの博士の執念が凄まじいってのもあるけどさ」

 

「う、うーむ……」

 

 

 どこまでも己の選択が間違いだらけな事に、いよいよノイローゼを患いそうな気分で頭を抱えてしまう一誠。

 しかも束は自分の細胞を取り込んだせいか、近づけば近づく程自分とドライグの声が聞こえてしまうせいで、打ち立てた目標までもが一夏達にばらされてしまった。

 

 

『どうする? あの小娘の腕を切り落とすか?』

 

(そんな事できるかよ!! ……かと言ってそのままにするのも……)

 

 

 キレた千冬と笑いながらやりあってる束に対して割りとエグい事を言い出すドライグを諌めながらも一誠は悩む。

 というか今の精神間でのドライグとの会話もこの距離なら束に聞かれた可能性も高い。

 

 

「さぁてと、そろそろちーちゃんとのじゃれ合いもここら辺にして、箒ちゃんへのプレゼントを御披露目しようかなっ!」

 

「チッ……」

 

「ちーちゃん、取り敢えず落ち着こう……」

 

「………わかってますよ」

 

 

 不満そうに拳を収めた千冬を見て束はにっこりしながら空を指差す。

 それに釣られて全員が上空を見上げると、何やら大きな箱の様なものが文字通り地面に落下する。

 そしてその箱の表面が板の様に外れて倒れ露になったのは……。

 

 

「この束さんの最新作、この世界に現存する全ISのスペックを越えた自信作にて箒ちゃんの専用機……紅椿だよ!」

 

「これが……」

 

 

 紅い装甲に包まれた篠ノ之箒の専用機だった。

 

 

「…………。紅椿、ね」

 

『この前あの小娘が乗っていた俺達の模造品とは違うのか?』

 

「多分違うし、考えたくは無いがその時のノウハウを詰め込んでる可能性もある。

……………ドライグの力を再現してる可能性が」

 

『フン、くだらん』

 

 

 一部以下の力の模倣と聞かされて鼻を鳴らす様な声を出すドライグと箒専用のISのフィッテング作業が開始させる様を眺めながら一誠は束の天才振りについて苦い顔をする。

 

 

「んふふ~♪ どうやら剣の腕が上がったようだね箒ちゃん? 身体つきを見ればわかるぜ?」

 

「どうも……。それはそうと姉さん、さっきの話は本当に……」

 

「ん? あぁ、アレの細胞の事? 本気じゃないとはいえ生身のちーちゃんと遊んでこうして生きてるお姉ちゃんを見ればわかるでしょ?」

 

「は、はい……それはわかりますが、何故あの男の……」

 

「ひとつだけ分かったんだよ。アレは――アイツが引き上げた人達は皆、それが当たり前と思ってるけど常人からすれば『狂気』に近い貪欲さが必要なんだって。

それに習ってみただけ……ふふん、気色悪いけどメリットだらけなんだよ? 肌荒れなんかしないし、頭は常時冴え渡るし、何より重力なんてゴミ屑と思えるくらいに身体が軽い。

アレをナノ分割して調べてみたいくらいさ」

 

 

 

「またこっち見てるぞおっちゃん……一々見てんじゃねーよ」

 

「冷静になれよイチ坊……何かゾッとする事言われた気がするけど」

 

「お前の一部を取り込んだと言っていたが、あの博士は確かに私がお前から貰った龍の力も使えてたぞ」

 

「それだけじゃないよ、おじさんの血肉はどうやら私や一夏の様な側面もあの博士に与えたみたい」

 

「…………。じゃあおじさんの一部を取り込んだら私達も……?」

 

「ダメだ、普通なら拒絶反応でおかしな事になる。

あの子が異常なだけだ」

 

 

 他人の細胞を――しかも前準備も無しに取り込んだ束の方が異常なのであって、人の枠を外れている一誠の血肉は毒にしかならない代物だ。

 普通ならまず拒絶反応で死ぬのに、束はそれを完全に乗り越えている。

 

 元の世界より微妙に科学技術が発展しているこの世界で自分の細胞について調べてみたい気持ちが今回の事で沸いてきた一誠だが、素人目に見ても自分の細胞が普通の人間には毒にしかならない事は予想できる。

 

 

「そもそも可愛らしいお嬢さん方の身体を傷つけてまでおっさんの肉片を埋め込むなんて俺が嫌だわ」

 

 

 血を流す訳にはいかなくなったな。と束の現状を見て一夏の領域に踏み込みたがる少女達を諌めながら一誠は自分の傷だらけの身体を見下ろす。

 

 

「あの専用機って篠ノ之さんがもらえるの……?身内ってだけで」

 

「だよねぇ。なんかずるいよねぇ」

 

「そもそも篠ノ之さんって適正B止まりだったんでしょう? しかもこの前のタッグ戦だって兵藤くんに負けてたし、贔屓だよね」

 

「…………」

 

 

 そんな中、ふと生徒達の中から不満げな声が出る。

 それに素早く反応をしたのは作業中の束だった。

 

 

「おやおや、おかしな事を言うねキミたちは――」

 

「ちょい待ってくれ、あの時の俺は自爆しただけだしね。勝ったってのとは微妙に違うと思うぜ?」

 

「―――む」

 

 

 だがそれよりも早く更に口を挟んだのが一誠であり、ほんの一瞬手を止めた束と箒に軽く睨まれた。

 

 

「う……ま、まぁ、俺だって専用機なんざ持ってないし、運って要素もこの世の中にはあると思うんだ。

贔屓と思うのもわからないでも無いけどよ、この学園に入学出来ただけでも幸運じゃねーのとか思ったり………あ、男で起動できた程度で碌な乗りこなし方も出来てない俺が言う台詞じゃないか?」

 

「あはは、変な人!」

 

「別にそうは思いませんって!」

 

 

 たははは、と笑う一誠に充てられて毒気が抜かれた生徒達もおかしくなって笑う。

 

 

「……」

 

「っ!? ま、またあの男は……!!」

 

 

 箒に対する負の感情を逸らした一誠が一瞬だけ振り替えってウィンクをする。

 それが……昔からそういう真似をされる事が気に入らなかった箒はフィッテング作業をしてるのも忘れて動きそうになるが、止めたのは束だった。

 

 

「ね、姉さん……」

 

「落ち着きなよ箒ちゃん。相変わらずだね、いっくんとちーちゃんの事について負い目があるかどうか知らないけど、何時までも私と箒ちゃんを子供扱いする。

昔からそうだったね、私と箒ちゃんを引き上げられないと言ってからはガラス細工みたいな扱い方をする………ホントムカつく」

 

「ええ、あの男が学園に現れてからずっとこんな感じです。

一夏が私を突き離そうとすれば、頼んでもないのにあの男が間に入って繋ごうとする……」

 

「そっか……」

 

 

 千冬の一声で散っていく生徒に混じり、先程箒に贔屓と不満を口にした生徒達と共にヘラヘラ笑いながら離れていくその背中を睨み付ける箒に束は複雑な表情を浮かべる。

 この腕に移植した一誠の細胞により、一誠と物理的な距離が近くなればなるほど、一誠の事が理解(ワカ)ってしまう。

 

 

「まあ何にせよこのままじゃ済まさないよ。

箒ちゃんに託すこの紅椿はいっくんの白式と連携が取れるように設計されてるし――――アイツの力の一部を再現してある」

 

「あの男の? それは――」

 

「あの眼帯の子がアイツから何の弊害も無く貰えた力さ。

見た事はあるでしょう? アイツの中に宿る二天龍の力さ」

 

「それを姉さんが再現したのですか?」

 

「まぁね……といっても一部だけだけど……さて、後は紅椿自身が自動で処理をするからもう少し待とうね?」

 

「………は、はい」

 

 

 束は知っている。一誠が何者で、どうやって生きたのかを。

 何故力を持ったのか、何故そこまでの領域になったのか。

 そしてそこに至るまでの復讐の人生を。

 

 世界に拒絶され、それでも世界の概念を味方につけた男を殺した哀れな末路を……。

 

 

 

「さてと、準備完了までの間にいっくんの白式を見せて貰いたいんだけどな?」

 

「………………………どうぞご勝手に」

 

 

 誰よりも直接的な方法で強引に開けられる事の無い領域への扉を開け放った束のやり方はドライグの言う通り、誰よりも全盛期(ムカシ)の一誠そっくりだった。

 

 

「おっと……あはは、束さんの事嫌いになっちゃったかな?」

 

「元々アンタなんかどうでも良い。だがさっきの事でアンタは嫌いだ、俺と千冬姉とおっちゃんの事で他人の分際で一々干渉しやがって。うんざりなんだよ」

 

「……………言うねぇ」

 

 

 待機状態の白式を投げつける様に渡した一夏から、まるで他人に対する束の様な態度を取られて少し傷ついた表情をするが、言った本人は敵意を丸出しだ。

 

 

「叶うならアンタのその肩から先を切り落としてやりてぇぐらいだ。

勝手におっちゃんの血肉を―――クソ、俺がやりたかったのに……!」

 

「……………。いっくんってホモなの?」

 

「い、いやその……ど、どうなのでしょう?」

 

「おじさんの事になると目の色を変えるのは事実かな」

 

「私がイッセーに近づくと番犬みたいに怒るしな」

 

 

 他の生徒と共にケタケタと何やら談笑しながら作業してる一誠をじーっと見据えながら爪を噛む一夏に束が思わず近くに居たセシリアや簪やラウラにホモ疑惑を持ち掛けるが、普段一誠の事で色々と必要ない牽制をされ続けてる者達は強く否定できない。

 

 

「私と一夏にとってあの人は保護者であり、兄であり、父でもある。

親を失った私達をあの人は寝覚めが悪いから面倒を見てたに過ぎないと言っていたが、学校行事で保護者が必要なら駆けつけてくれたし、あの人には生きる術を叩き込まれた。

最早血の繋がりなんて関係ない……私と一夏の半分はあの人のモノだ……あの人は否定するだろうがな。

一誠さん無しに生きる人生なんて考えられない」

 

 

 そんな者達に千冬が話す。

 一誠なりに与えてくれた愛情についてを……どこまで優しげに。

 

 

「今更私も一夏も親の愛情なんて求めやしない。

だけど、あの人を失うのだけは嫌だ……世界が否定しようが、あの人の傍に居られる為なら私はこの世界に喧嘩を売ったって良い」

 

『…………』

 

 

 だから一誠が他の者に取られそうになれば泣くのか……。

 それほどまでに一誠への絶対的な信頼と親愛を向ける千冬に束と少女達はしばし見惚れてしまう。

 その精神を受け継いだ次世代の能力保持者(スキルホルダー)として。

 

 

「だから束、お前が一誠さんの血肉を取り込んでこっち側に来ようがあの人は渡さない。

お前達があの人を恨もうが憎もうが構わないし、否定もせん。例えあの人の全盛期(むかし)が狂人だろうが、私と一夏にとってはヒーローなんだ」

 

「……………ちーちゃんには敵わないなホント」

 

 

 この絶対的な信頼を向けるからこそ、束は一誠が大嫌いだった。

 親友だろうと、幼馴染みだろうと到底掴めない究極の繋がり。

 

 

「お前には感謝するよ束。一夏が成人した時にまたしても私の前から居なくなろうとしていたんだもんな? ふふ……二度も逃がす訳ないだろう私が……アナタは決して逃がさない」

 

 

 一夏よりも更に長く一誠に(スベ)を叩き込まれた次世代型能力保持者の始祖。

 反天攻勢(リバースカウンター)――それが千冬の掴んだ進化。

 

 

「あのー……フィッテング作業が終わったみたいなのですが」

 

「ん、あぁごめんごめん、それなら少し慣らし運転してみよっか箒ちゃん!」

 

 

 妙な空気になりかけたその時、フィッテングが終わったと箒が束に報告する。

 そのお陰で妙な空気は忘れられ、今度はお待ちかねの新型専用機に乗る箒へと視線が向けられる。

 

 

「行くぞ紅椿……!」

 

 

 その視線に晒されながら箒は紅椿と共に空を駆ける。

 

 

「は、速い!」

 

 

 そのスピードに誰かがそう叫んだ。

 

 

「流石に博士直々の機体だけありますわね」

 

「うん、現行スペックを越えてるというのも納得する」

 

「武装は篠ノ之の性格に合わせて近接系統か……」

 

 

 専用機持ち達が紅椿のスピードに感嘆の声を出しているが、一夏は相変わらずつまらなそうだ。

 

 

「そんな顔しないで見るのも修行じゃないの?」

 

「俺はこんな玩具で戦うつもりはないんでね」

 

「言うと思った」

 

 

 簪を隣に見るだけ見てる程度の関心しか示さない一夏に、イライラしてるなぁと簪は苦笑いだ。

 

 

「どう? 思う通りに動くでしょう? さて、武装の説明に入るよ?」

 

『はい……!』

 

 

 疎外感をこれで埋められる、と箒は張り切りながら束の説明に耳を傾けながら空を飛び回る。

 

 

「右の刀が雨月、左の武装が空裂。特性データを送りつつ説明を続けるけど、雨月は対単一仕様武装で、空裂は対集団仕様の武装だよ」

 

 

 そう言いながらいつの間にか用意していたミサイルポッドを空に居る箒に撃ち込む。

 

 

「行ける……!」

 

 

 向かってきた弾頭を切り落とす箒。

 訓練機とはまるで違う、自分のスペックに合わせた専用機は箒に自信を与える。

 

 だがそれだけでは無い、束は己が作り上げた対一誠機体である『赤帝』のノウハウを紅椿に反映させている。

 それが――それこそが紅椿の本領。

 

 

「さてと本番は、左側の武装に取り入れた新技術の『倍加』だ。

箒ちゃん、試しに自身に倍加を掛けてみなさい?」

 

「……倍加!」

 

『Boost!!』

 

 

 赤龍帝の籠手の持つ基礎能力である倍加。

 流石にオリジナルやその力を直接持つラウラ等には精度は劣るが、掛け声と共に紅椿の周囲にオーラを思わせる紅いエネルギーが迸る様はまさに同じだった。

 

 

「さ、更に速い!?」

 

「…………。あの野郎……」

 

「落ち着きなよ、オリジナルのおじさんの力には及ばないよ」

 

「たりめーだ、あんだけ嫌っておきながら力だけはパクりやがって……クソが!」

 

 

 ラウラといい、自分の持たない一誠の側面を他人が持つことを嫌う一夏にとっては忌々しき現実だったらしく、更にイラつきながら簪に止められていた。

 

 

「ISで再現するか篠ノ之束は。

やるじゃないか……なぁイッセー?」

 

「複雑だわ……」

 

 

 いつの間にか此方に来て見ていた一誠が複雑そうな顔をしている。

 ドライグ自身は『ふん、模倣にすらなってないな』と吐き捨ててるが、それでも技術で此処まで再現出来る辺りは束は本当に天才だ。

 

 

「シールドエネルギーを倍加させるには限界があるけど、コアの成長があれば限度も上がる。

もっとも、再現できたのは基礎能力だけだし、禁手化も覇龍化も無理だけどね」

 

「……。キミはどこまで俺達の事を知ったんだ?」

 

「どこまでもさ、文句ある? アンタに近いだけでアンタの事が頭の中に入り込んでくるんだからしょうがないでしょう?」

 

 

 禁手化、覇龍化。

 覇龍化に関しては最早使わなくなったものだが、この口調だとそれすらも再現させるつもりなのかもしれない。

 現に見た目だけなら禁手化である赤龍帝の鎧を再現したのだから……。

 

 

(どうだ一夏! これなら私を無視できないだろう!?)

 

 

 そんな会話がある事を知らず、箒はと言えば倍加による力のみなぎりに高揚しながら一夏の様子を伺うが……。

 

 

「くだらない時間だ、所詮は猿真似だよあんなガラクタ」

 

「辛辣だねぇいっくんは……」

 

「そもそも矛盾してんだよアンタ等は? おっちゃんが嫌いな癖におっちゃんの力をパクろうとする。

それで千冬姉や俺達に並んだつもりか? 笑わせるなよ」

 

 

 一夏の篠ノ之姉妹に対する認識は変わらない。

 束は一誠の血肉を取り込んだ事で敵意を、箒に関しては――

 

 

「ボーデヴィッヒのほうがまだマシだったな」

 

 

 やはり眼中にすら無かった。

 

 

「っ――!」

 

 

 思わず止まる箒。

 

 

「な、何でだ! 何故お前は!」

 

 

 どこまでも自分を見ない。その視線の先は下では無く上。

 自分の事は気にも止めない……こんなに想っていても。

 

 

「どうしてだ!!」

 

「ギャーギャー喚くなよ篠ノ之さんよ。キミ自身が強くなった訳じゃない癖に並ばれた気分になるのは嫌なんだよ俺は」

 

「わ、私にはこの方法しかないんだよ!! なのにお前は……お前の周りは私を何時も!! ボーデヴィッヒだってそうだ! 知り合って間もないのに何で一夏に意識されるんだ!!!」

 

「…………え、私か?」

 

 

 武装の刀の切っ先を向けられ、思わず驚くラウラ。

 

 

「意識というか、普通に敵意だろ……?」

 

「敵意だろうが一夏に意識されてる時点で同じだ! 私は……私にはそれすら無いんだ!!!」

 

「………。あ、私箒の気持ち凄いわかるかも」

 

「未だにご主人様に誰だよ呼ばわりですものねぇ……」

 

「いや、私の場合はしょうがないし……これから仲良くなれたらそれで良いかな~と…」

 

「その時点である意味アナタは大丈夫ですわ」

 

 

 段々雲行きが怪しくなってきた様な……と一誠は一夏を小突く。

 

 

「おいイチ坊、頼むから刺激するな。

お前の言い方は一々辛辣すぎんだよ、あの子だって必死なんだ――俺のせいで」

 

「ちぇ、わかったよ。あー篠ノ之さん? ヒステリックになるのやめようぜ? 専用機貰えたんだからそれで良くね?」

 

「良いわけあるか!!」

 

「……………………。あーめんどくせぇな、あー言えば喚く、こう言えば喚き散らす。

だから嫌なんだよ俺は」

 

「っ!? な、何で――」

 

「待て待てぃ!!

普通に考えたら倍加は俺じゃなくてドライグの力だろ? 考えたら別にあの子はドライグを嫌ってる訳じゃないんだからセーフだろ?」

 

「そ、そうだ、これはこの男の力じゃない……!」

 

 

 とにかく穏便に済ませたい一誠の一言で、取り敢えず何とか場は収まるが、それ以上に色々と拗れた気がすると一誠は久々に胃がキリキリとする思いだが。

 

 

「織斑先生大変です!!」

 

 

 大天使山田先生の慌てた様子での登場に、ある意味で助けられたのだとか。

 

 

 

続く。

 

 

 

 

 最早疑いようもない。

 赤い龍の力を持つ誰かは学生の誰かだ。

 

 組織からの仕事と平行してその力の持ち主の特定、必要なら完全排除を決めた匙元士郎は、パートナーを連れて学園側よりも素早くターゲットのISを叩き潰して回収する。

 

 

『パイロットの女は適当な場所に置いておけ、どうせ地元の誰かに助けられるさ』

 

『わかった』

 

 

 仕事は終わった。だが元士郎はマドカに意識の無いパイロットを安全な場所へと置いてくる様に頼んだ後もその場に留まり、目的の存在が姿を見せるのを待った。

 

 

「っ!? 銀の福音の反応がロストした場所は此所ですが……」

 

「どうやら別の何かが居るようだな」

 

「全身装甲のIS……かな?」

 

「……………」

 

「……………」

 

 

 そして待った甲斐あって暗黒の鎧を纏った元士郎の前に来たのは少年一人と少女達。

 

 

『………』

 

「どちらにせよ排除しなければならんのだろう! ハァァッ!!」

 

「ま、待て篠ノ之! 奴は少し様子が――」

 

「聞いてないよ! 援護しないとっ!」

 

「チッ……」

 

 

 功を焦る箒が突撃する。

 

 

「倍加!」

 

『!』

 

 

 与えられた力を早速使う。

 だがそれはある意味で正解であり、不正解だった。

 

 

『おい小娘、その力を作ったのは誰だ? 姉の篠ノ之束か?』

 

「お、男の声!?」

 

 

 箒の剣戟を避けながら質問するその声が男性のものである事を知り、驚愕する一同。

 そして放たれるその力は余りにも――強すぎた。

 

 

「ぐあっ!?」

 

「きゃあ!?」

 

「あぐ!?」

 

『…………』

 

 

 全ての攻撃は弾かれ、その堅牢そうな見た目とは裏腹にスピードは全員を凌駕する。

 

 

『遅くなったな……っと、お取り込み中だったか?』

 

『いや、お前も手伝え』

 

 

 更には同じ見た目ながらもどこか女性的な丸みを帯びた装甲を纏う援軍。

 

 

「何者だアンタ等……!」

 

「その力……ISではないな?」

 

 

 一夏ですら子供扱いする正体不明の存在。その力を前にISでは枷になると判断した一夏とラウラは………。

 

 

「四倍だ!!!」

 

『何!?』

 

『コイツ、篠ノ之箒とは違って生身で……!?』

 

 

 己の本質を解放し、本気となる。

 

 

『小娘、お前その力はどこで手に入れた!!』

 

「そう簡単に言うと思うのか? どうやら貴様はこの力に覚えがあるらしいし、寧ろ私は何故知ってるかをお前に聞きたいくらいだ」

 

『っ……! 噂の能力保持者という奴か……!』

 

「それも知ってるとは、ますますアンタ等を逃がす訳にはいかねぇな!」

 

 

 それまで遊んでいた元士郎とマドカは、一誠の力を継承する二人を前に遊ぶのを止めた。

 

 

『闇血邪剣!!』

 

『業火炎破!!』

 

「っ!? 何だあの炎は……? まずい、 絶対に触れるなよ織斑!」

 

「オメーに言われなくてもわかってらぁ!!」

 

 

 拮抗する両者。だが徐々に押し始めたのは、元士郎ペアだった。

 

 

『最近の子供は強いな……しょうがねぇ、行くぜ――真月・呀!!』

 

『闇呀・真月形態!』

 

「っ!? 奴等の背に翼の様なものが……!」

 

「チッ、おっちゃんの影が重なる……んな訳がないのに!」

 

 

 背から巨大な翼が生え、それまでを遥かに凌駕する速度で飛翔する二人の謎の存在に一夏とラウラは遂に敗北を予感する。

 だが……。

 

 

「キミ達は私に用があるんじゃないの?」

 

「よぉ、大丈夫か? ちょっと遊びに来たぜ?」

 

「一夏、ラウラ! お前達は篠ノ之達と共に下がれ!」

 

『!?』

 

『あ、あの男は……!』

 

 

 現れたのは天災と狂人と後継者。

 それにより戦いは激化――

 

 

「…………さ、さじ……?」

 

「…………………お前だったのかよ……」

 

「…………」

 

「お、お前は……一体」

 

「…………何だか妙な事になっちゃってるね」

 

 

 するかどうかは不明。

 

 

「兵藤、今の俺と戦ってくれ。

俺がお前に認められるかどうか……」

 

「………良いぜ、ふ、ふふふっ! 久方ぶりの全力だぜバカ野郎!!!」

 

 

 だが恐らく衝突はするだろう。

 

 

「匙ィィィィッ!!!」

 

「兵藤ぉぉぉぉッ!!!!」

 

 

 

 

「あの人、旅館で見た……」

 

「……。おい、見たのかよ」

 

「あ、い、一夏……え、ええっと、うん……私達が止まってる旅館の別館で……」

 

「………なるほど、クソ……おっちゃんと完全に互角――アレが友達になりそびれた男かよ……!」

 

「聞いていた以上に依存してるな、お前も姉さんも……まあ、わからなくもないがな」

 

「なに、つまりお前も……」

 

 

 世界を壊す程の力のぶつかりあい。

 その力を前に見るものは恐怖を抱いたり、憧れを抱く。

 

 

「まだだ……まだだァ!!!」

 

「頑張れ元士郎っ! 私は勝とうが負けようがお前の傍に居る! だからっ!!」

 

「ぬ!? 黒い鎧が剥がれて……!」

 

「あ、あれは」

 

「暖かい……あの光のお陰?」

 

「…………。進化したんだよ、彼自身がアイツと再会することで燻っていた全ての枷が取れたから。そして恐らくあの子のおかげで……」

 

 

 

「匙ィ~……お前って奴は最高だぜ」

 

「今更過ぎるが、これでやっとお前の助けになれる……行くぞ!! 我が名は呀!!」

 

 

 黄金騎士・呀!

 

 

  うっそでーす!

 




補足

婚厄者(インフィニット・ラヴ)

 一誠の肉片をその身に取り込み、進化への狂気を抱く事で後天的に覚醒させた束の何か。

一誠の無神臓と表裏一体であり、一誠が進化すればするほどそれに並ぶ進化を果たせる。

更に細胞を取り込む事で身体能力が一誠達側に入り込み、更にはラウラたんの様な倍加まで使えるらしい。

つまり……皮肉にももっとも一誠に近く、もっとも理解してしまっているし、何だか誘い受けの様な何かをしてしまう。


その2
反天攻勢

 千冬が覚醒させたこの世界における最初のスキル。

 簡単に言えば全てを反転させるスキルであり、主な使い方は某輪廻写輪眼の天手力的なそれ。

だが進化してる影響で視界あるモノだけではなく眼で見て記憶したものすら入れ替える事が可能。

その気になればそこら辺に落ちた石ころを対象の臓器と入れ替えるというドイヒーな使い方も可能。


その2
紅椿。

一誠の力を再現した赤帝のノウハウを詰め込んだ魔改造機体。

現行ISスペックを軽く越えてるに留まらず、エネルギーを倍加させて機体スペックをオーバーフロー化させる事も可能。

極めつけはその弊害で直ぐに底を尽きてしまうエネルギーを武装を介して補給すら可能なので、倍加の上限はあれど条件が揃えば何度でも倍加をかけ直せる。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。