赤龍帝ストラトス(仮)   作:超人類DX

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持つものと持たざるもの。

持たざる者の複雑な思いはやがて――


大っ嫌い

 基本的に一誠はかなり容赦しないのが本来の素である。

 

 

『クズ野郎共、テメー等を殺す為に地獄から這い戻って来たぜ』

 

『同じくだ。やっとムカつく貴様等を一誠と共に殺れる……』

 

 

 

 故に清算を終わらせた元の世界に於いての一誠は天災とすら呼ばれ、嫌悪されている。

 それもこれも『自分自身の仇の為』に、周囲から無条件で好かれる男を生きるのすら嫌になる程の地獄を味あわせてから殺した。

 

 

『おっと、愛しきクズが殺されてお怒り心頭ってか? はっはっはっ、肉親ごと殺しに来たから仕返しをしてやったなんて正当化はしないが、仇討ちしたけりゃ来いよ? 折角だしそこの白龍皇との因縁とやらも今終わらせてやるぜ』

 

『残念だよ白いの。

お前との因縁もここで終わるとはな』

 

 

 追撃から逃れる事に嫌気が刺し、覚悟と共に全てを破壊する決意を固めた男は悪なのだろう。

 しかしそれでも自分自身と幸せで優しかった両親の仇の為に年頃の少年がすべき全てを捨てて力を付けた男は自分自身を追う全てを破壊した。

 

 

『やっちまったかー……。これで俺は世紀の大悪党だぜ』

 

『お前だけじゃなく俺もだ。ある意味怖いものなぞ無くなったな』

 

 

 最早世界ごと粉々にした今、相棒と共々残った自分には、痩せこけた満足感というか為だけに当初拾って面倒を見た姉弟との繋がりだけであった。

 

 

『どうする一誠? 手順を踏めば向こうに戻れるが……』

 

『いや、戻ることは戻るけどアイツ等とは会わない。

ひっそりと余生でも過ごすさ』

 

 

 その繋がりすら、当初は断ち切ろうとしていた。

 しかしそれも捕まってしまった今では無意味だろう。

 なにせ、一誠が何度『所詮気紛れで拾ってみただけ』と言おうが、姉と弟にとっての全てなのだから。

 

 

『お前なんか嫌いだ。

只の他人の癖にちーちゃんの近くに居て、そればかりか連れ去ったお前なんか……』

 

 

 姉弟の馴染みである女の子に蛇蝎の如く嫌われるのも、多分それは仕方ないと思ってしまうレベルに慕われてるのだから、逃げた所で無駄なのだ。

 

 

 

 

 

 

 千冬は一誠の事情を全て知る希少な存在の一人だ。

 幼き頃、乳飲み子同然の弟を抱え、両親を失って先の見えない未来に途方に暮れていた時にとある公園のブランコに座る一人の青年との出会いが、後にそれを知る切っ掛けとなった。

 

 

『おいおい、キミも小さいしこの子に至っちゃまだ赤子同然じゃないか。

……チッ、しょうがない。見ちゃった以上知らん振りは少し後味が悪いし、飯くらいなら暫く食わせてやらぁ』

 

 

 それが例え『気紛れで、再起の為の暇潰しで、痩せこけた気分をそれなりに満足するだけの行為』と本人に常日頃から言われようが、千冬と一夏にしてみればヒーローそのものだった。

 

 

『結婚以前に女のおの字も無い俺がまさか子守りをするとは、世の中ってわからないよなドライグ?』

 

『それが人生ってものだろ? 俺にはわからんがな』

 

『そんなものかねー? おーよしよしイチ坊~ デカくなって蒸発した両親を後悔させるんだぞー?』

 

『一誠さん、実はその、三者面談が……』

 

『んぉ? そんなもんがあるのか? ったく面倒な―――――よし、スーツ屋行かなきゃ』

 

 

 冷たく言う割りにはかなり熱心に子育て本で勉強したりとアレだったりする辺りもまた、千冬が懐いた理由だった。

 

 故にだ……。

 

 

「次、兵藤。P20を朗読しろ」

 

「ま、また俺……? そろそろ他の子――」

 

「良いからしろ」

 

「は、はーい……」

 

 

 勝手に過去の清算を理由に自分達の前から居なくなったばかりか、実は2年前には此方に戻り、あろうことか何処の馬の骨とも解らん小娘に自分達と同じ手解きをしていたなんて許せないのだ。

 

 

「ぐぅ……半端なく狙い撃ちされて早くも精神的疲労が……」

 

「当たり前だ。反省しろ反省を」

 

 

 そんな散々な一時間目の授業を何とか終え、早くも疲れた一誠は机にグデーと突っ伏しながら、隣に座る一夏からも責められていた。

 この学園の生徒会長……一誠曰くたっちゃんに自分達と同じ教えを与えていた等、許すとか許さない以前に嫉妬でどうにかなりそうだと一夏は千冬共々大真面目に思っており、昨晩の発覚から姉弟揃って反抗期が如く一誠に冷たかった。

 

 

「あ、あの兵藤さん?」

 

「んぁ? なーに夜竹さん?」

 

 

 それでも会話に応じる辺りは嫌ったという訳じゃないのは見え隠れする中、一時間目から千冬の集中砲火を浴び姿を見て引いていた反対側に座る年の差一回り以上のクラスメートの女子から遠慮がちに話し掛けられたので、一誠は首の向きを変えて夜竹という女子へと顔を向ける。

 

 

「今朝噂で聞いたのですが、織斑先生と同室って本当かなーって……」

 

 

 こんなオジサンに話し掛けてくれるなんて、女の立場が強くなった昨今珍しいなぁ……と、若干嬉しく思って聞く一誠に夜竹女子が例の同室について本当かどうかを聞いてきた。

 何人かもそれを知りたかったのか、然り気無く彼女の言葉に便乗して聞き耳をたてている。

 

 

「あぁ、ちーちゃんとは確かに同室だけど………アレだよ? オジサンは変な真似とかしないからね?」

 

「ほ、本当にそうなんですね……。

というか昨日も然り気無く呼んでましたけど、ちーちゃんって……」

 

「あぁ、これでもイチ坊共々小さい頃から見てたからさー? 此処では織斑先生と呼ばなきゃなんねーってのは分かってんだけど、癖ってのは厄介だよなー?」

 

「良いんじゃね? 少なくとも授業外なら寧ろ織斑先生呼びしたら不機嫌になると思うぞ」

 

 

 然り気無く聞かされる、真実にクラス中どころか昨日に続いて他クラスから覗いていた女子達に衝撃が走る。

 

 

「えっ!? じゃあ兵藤さんって昔から織斑先生や織斑君を?」

 

「ん? うん、ちょっとした事情があってなー……」

 

『…………』

 

 

 千冬を平然とちーちゃんと呼び、それに対してほぼ注意されない時点でただ者ではない気配はしてたが、まさか保護者に近い立場だったとは知らなかった生徒達は物凄く驚いて言葉を失ってしまう。

 その中で唯一、箒が忌々しげに一誠を睨み、またあるのほほんとした生徒が密かに目を光らせたりとしていたが、誰も気付いてない。

 

 

 

 

 基本的にISは素人である一夏。

 けど、男性操縦者という希少さ故に専用機を受理されると聞かされた時は正直要らないと思った。

 

 

「俺は解りましたけど、おっちゃんには無いんですか?」

 

「聞いてみたのだが、どうやら予定外の起動者という事もあって話にも上がってないらしい」

 

 

 そもそもこれ使うくらいなら生身の方が楽という領域に存在する一夏にとって枷にしかならない予感しかしないし、一誠が受理されない時点で突っ返したくもなっていた。

 が、千冬の言葉とセシリアの待ってましたとばかりな挑発……なにより一誠が貰えるもんは貰っとけば? という意見により取り敢えず持つだけ持つ事にした。

 

 

「試合はするにしても、俺そういえばまともに動かしたの入学試験以来無いぞ」

 

「おいおい、時間無いのにそんなレベルかよイチ坊? 大人しくセッシーに代表を譲った方が……」

 

「せ、セッシー!? な、何ですのその呼び方は!?」

 

「セシリアさんだからセッシー……みたいな? だめ?」

 

「う……!? な、馴れ馴れしいですわそんな呼び方!」

 

「駄目かー……まぁでもオッサンに呼ばれてもキモいだけだし、昔篠ノ之さんの事を『束ちゃま』って呼んだら包丁持った彼女に刺されそうになったっけ。やっぱ馴れ馴れしいのは駄目だよな、ごめんよ?」

 

「た、束ちゃまって……篠ノ之博士の事もご存じなのですか?」

 

「めっちゃ毛嫌いされてるけど一応は顔見知りだな」

 

 

 セシリアに対してフォローつもりでわざと気安く接して空気を和ませる事に成功させた一誠の発したまさかの名前にまたしてもセシリア込みで教室内はどよめく。

 

 

「勝手に嫌ってるだけじゃん、おっちゃんが一々気にすることじゃないだろ」

 

「嫌われる真似したのは俺だしね?

けど俺は寧ろ好きなんだよ、ああいう我が道を行こうとする子」

 

「は!? ほ、ほう? 束がか? なぜだ?」

 

「自分って個を流されずに維持出来るってだけでも才能なんだよ。あの子はそれが一番強いし、それだけに惜しい。

にしても、あの子とは随分会ってないけどどうしてるのかね? やっぱりびっくりするくらい可愛くなってんだろーなぁ……」

 

 

 余計な事まで言うもんだから、またしても千冬の不機嫌さが増したりもしたが、何やかんやで専用機を受理する事にした一夏は、ISの練習をすべきかと考える事になる。

 

 

「お、おい一夏……」

 

「あ?」

 

 

 その際、動いたのが箒だった。

 放課後になり、早速ド素人な一誠に頼んで見て貰うという形にしようと思っていた一夏に、箒が強がる態度で話し掛けてくる。

 

 

「わ、私が見てやっても良いぞ? そ、その……ISの鍛練を」

 

 

 箒にしてみればかなり勇気を振り絞った一言だった。

 憎き一誠のせいで全然自分を見ようともしない一夏との距離を少しでも縮めるにはこういう事もしないといけないと、箒なりかなり考えた上での行動だ。

 

 

「折角だけど俺はおっちゃんに見て貰うから要らない」

 

「っ!?」

 

 

 が、その勇気はまたしても一誠という存在によって打ち砕かれた。

 

 

「な、何故!? あの男は素人なんだぞ!? ISの事など教えられる訳がっ……!!」

 

「その地球上に存在する全てのISと対峙しておっちゃんは5秒でぶちのめせるんだが?」

「そ、それとこれとは話が別だ!!」

 

 

 またあの男のせいで……と、箒は益々一誠に憎しみを募らせる。

 これでまだ一誠が嫌味な性格だったら良かった。

 

 

「バッキャロー! お前は昨日言われた事をもう忘れたのか!?」

 

「ばわっ!?」

 

「!?」

 

 

 昔からそうだ。毛嫌いしてるのを知ってる上で自分や姉に気を回そうとする。

 それが余計に箒は気に入らなかった。

 

 

「可愛い幼馴染みの誘いを蹴るなアホ! つーかこの子の言ってることは全部正論だろうがすっとこどっこい!」

 

「で、でもおっちゃんの教えの方がISなんかより――」

 

「お前はアホの子か!? 此所は何処だよ!? IS学園だろうが! ISの試合控えてる癖に生身の特訓してどうするんだアホ! アホの子! 誰に似たんだお前は!」

 

「いでででで!? せ、性癖含めておっちゃんだよ!」

 

「……」

 

 

 グリグリと一夏の米神辺りを攻撃しながらまたしても余計なフォローをしてくれた一誠に箒は言い様の無いモヤモヤが貯まる。

 勝手に二人を理解出来ない気持ちの悪い領域に引っ張り込んだ癖に、それに対して嫉妬する自分と姉に詫びつもりかフォローばかり。

 

 

「わかったらとっとと訓練に行けぃ!!」

 

「わ、わかったよぉ……」

 

 

 気に入らない。一夏と千冬にとっての全てであるこの男が。

 

 

「と、いう訳で篠ノ之さん。こいつにISの何たるかを教えてやってください」

 

「…………。礼なんて言いませんから」

 

 

 嫌ってると示してるのに、余裕のつもりか何時だって笑ってるこの男が……大嫌いだ。

 

 

 

 

 

 嬉しそうなちーちゃんの声を聞いた時、私は久々に憎悪をしてしまった。

 あの男を呪ってしまう程に。そして事もあろうことか私のISを動かしやがったというふざけた現実を。

 

 

「へー? 学園にねぇ?」

 

『あぁ、勝手にフラフラと出ていく事を学んだ今、今度は嫌でも縛り付けるつもりだ』

 

「そっかー……」

 

 

 嬉しそうなちーちゃんの声を聞くのは好きだけど、今回ばかりは全然嬉しくない。

 だってその声の先に居るのが、あの『理解したくない』男なんだから。

 

 

「良かったねーちーちゃん……」

 

『あぁ。しかしベラベラとお前に喋ってしまってて何だが、やはりあの人は嫌いなのか?』

 

「当たり前じゃーん、さぞ箒ちゃんもムカついただろうね。あんなのが今更出てきて」

 

『あぁ、確かに一誠さんの事は相変わらずダメだったな……』

 

 

 あぁ、ムカつくよ、今更出てきやがって。折角消えたと思ったのに……。

 

 

「それでさっきの話なんだけどさー、束さんは知らないなぁ。寧ろ動かせたという現実を呪いたいくらいだよ」

 

『そうか……となるとやはり一誠さん自身の持つ領域がISの特性という常識を越えたと考えるべきだな』

 

「そーなんじゃーん? クソ腹立つけど、あの異常者はとことん異常者だからねー」

 

『わかった。時間を取らせて悪かったな……それじゃあまた』

 

「じゃーねー……」

 

 

 ちーちゃんからのラブコールがこれまでに無いくらい心に響かないまま通信を切った私は、腰かけていた椅子に背を深々と預けながら無機質な天井を見上げる。

 

 

「今更また出て来ないでよ」

 

 

 勿論頭の中には、突然横からしゃしゃり出て、ちーちゃんといっくんの心を全部かっさらって行った異常者のムカつく顔が浮かぶ。

 

 出てきて、しゃしゃり出て、二人を私の手の届かない場所に連れ去って……。

 そしてその場所に私が行けない現実を叩きつけた癖に、その詫びつもりなのか何時もちーちゃんやいっくんとの仲を取り持って……。

 

 

「ホント気に入らない。全然私の思い通りにならない事も……」

 

 

 

『あいえす? へー? 凄そうじゃんそれ』

 

 

 

『それが完成したら、もしかして俺なんかぶちのめされるかもなー? そうしたらお役ごめんだな俺は! あははは!』

 

 

 

『言い辛いんだけど、これ以上先の領域にキミは進めない……。 ごめんよ……本当にごめん』

 

 

 私と箒ちゃんを引っ張りあげられない事を一々謝るのも――

 

 

『けど俺は寧ろ好きなんだよ、ああいう我が道を行こうとする子』

 

 

 

『自分って個を流されずに維持出来るってだけでも才能なんだよ。あの子はそれが一番強いし、それだけに惜しい。

にしても、あの子とは随分会ってないけどどうしてるのかね? やっぱりびっくりするくらい可愛くなってんだろーなぁ……』

 

 

 

 

「……」

 

 

 こいう事を口に出す所も、全部大嫌い。

 クソみたいな性格だったらどれ程楽に憎めたか。

 モニターに映る半日前に撮ってしまった、変わってないムカつく顔の男がベラベラ喋る映像を見ながら、私はただただ嫌いの念を募らせた。

 

 

「暗部の子が良くて何で私と箒ちゃんは無理なの? 何でよ……!」

 

 

 持っていないという自分を含めて……。

 

 

「絶対に許さない。だからあの時アンタが言った通り、ISでぶちのめしてやる。

その手足をちぎって、私を見下す笑みすら浮かべられない恐怖に染めて――」

 

 

 私はやっぱり……。

 

 

「動けないアンタを私しか知らない場所に閉じ込めてやる……あは、あははは」

 

 

 大嫌いだ。




補足

……。久々にやっちまったかな。

 という訳で、変に気を回そうとするとこうなっちゃうよ。

 天才故に屈折しちゃうよと。

ちょっとだけ拗れちゃうんだよと。


構図的には、織斑姉弟、更識グループ、篠ノ之姉妹のど真ん中にポツンと彼が突っ立ってる感じ。

良かったね、普通ならまず逃げられません。
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