赤龍帝ストラトス(仮)   作:超人類DX

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やる気になってしまった一夏くんによりキンクリされてしまったセシリアさん……


強くあれ

 ご主人様って……。

 イチ坊もまったく罪作りな男というか、こうしてみると俺のガキの頃って相当寂しいよなぁ。

 

 

「とうとう俺も良い歳になっちまったよドライグ。

なのに未だに女っ気無しだぜ? 笑えねーや」

 

 

 何の因果か、嫌われる真似をしてしまった女の子が開発した女の子しか動かせないパワードスーツを動かしてしまい、オッサン年齢爆進み中だっつーのに高校生に混じってお勉強のし直しなんてしているこの現状。

 しかも異世界ってんだから俺の人生は自慢できるもんじゃねぇことは自覚してるけど、それにしても俺って奴はどうしてこうもしょっぱいのか。

 

 

『今女に囲まれてるだろ』

 

 

 IS学園っつー学校にこの歳で在学する事になって早二週間。

 国が総力上げて建設しただけあって、めっちゃ広いので隠れてこそこそと軽い鍛練を積む分には中々良かったりする。

 本当はまだ明け方にもなってないので寮の部屋で皆お眠だったりする訳だけど、ガキの頃からの習慣は完全な復讐を果たした今でも中々変わるもんじゃなく、校舎から程よく離れた軽い森林っぽい地帯にて、俺はガキの頃からの相棒である赤い龍ことドライグとくっちゃべりながら軽く倒立腕立てをしていた……勿論親指ひとつで。

 

 

『それにあの小娘……千冬やら刀奈って言ったか? 結構女っ気多いだろ。俺達が存在していたあのクソみたいな世界と比べたら劇的ですらあるんじゃないか?』

 

「そりゃそうだけど、ちーちゃんも刀奈……っつーかたっちゃんは違うだろ。

どっちも……なんつーの? 弟子的な?」

 

『なるほど、それがお前の考えか。一夏の小僧が似る訳だ』

 

 

 程よい負荷をかけつつ、軽く汗を流す。

 本当なら実力が拮抗した相手の一人や二人いたら色々と捗るんもんだが、生憎そんな輩は皆殺してしまった為に居ない。

 ちーちゃんかイチ坊、それからたっちゃんか簪ーーいや『かんちゃん』辺りが成長してくれたら……なんて思うが、そんな目的で教えた訳じゃないから頼むのはちょっと違う気がする。

 

 

『というか、もう鍛える必要は無いんじゃないのか? 奴等も完全に越えて皆殺しにしたんだぞ?』

 

「それは思ったが、此処まで来たら俺達でどこまで行けるか試したくなるだろ? いっそあのクソ野郎が口走ってた『転生の神』とやらを越えてぶちのめしたいじゃん? 会えるか知らんけど」

 

『俺達って……俺もふくまれてるのか?』

 

「当たり前だろ、これからも頼むぜ相棒?」

 

『ふっ、世話の掛かる奴』

 

 

 異常。進化をする俺の異常性。

 限界を越え続け、無限に成長し続けるこの異常があるせいか、強くなり続ける事に否定する気持ちが一切起きない。

 だからこそ俺と共に強くなってくれるドライグとはこれからも……いや、ドライグが飽きるまで一緒。

 

 それは例え異世界だろうとも変わりはしない……俺達のアイデンティティ。

 

 

「でもさ、最近どうも鍛えても昔みたいな進化を感じないんだけど、俺も年なのかな?」

 

 

 ほんの少しだけその異常性に綻びがあっても。

 

 

 

 

 クラス代表なんてものに興味なんて無かったし、そもそもがおっちゃんに無駄なフォローをしてもらってるのを見て物凄くイラッてしたからだったに過ぎない。

 しかも何だこのセシリア・オルコットって女は? 負けた俺に何でご主人様などと呼び散らす? お陰でおっちゃんに生ぬるい目で見られて貯まったもんじゃないだけど。

 

 

「ご主人様、荷物があれば私がお持ちいたします!」

 

「無い」

 

「すっげーなイチ坊? 俺でもそんな事出来んぞ。ましてやこんな可愛い女の子に……」

 

「俺だって嫌だわこんなの!」

 

「あ、イッセーのおじさま……」

 

「お……でもこの子におじさま呼ばわりされるのは悪くねーかも」

 

「……この女、おっちゃんにすりよりやがって……」

 

 

 しかもよりにもよってこの女、おっちゃんに然り気無く気に入られやがった。

 この際俺をどう呼ぼうかなんでどうだって良いが、おっちゃんに気に入られるなんてのは俺が気に食わねぇ。

 千冬姉だってあの更識だか何だかの女の件で色々と大変だっつーのに……ちきしょう。

 

 

「へー? ご主人様って呼ばせてるんだ? 一夏の趣味?」

 

「喧嘩売ってるんだな? 良いぜ買ってやるよ地味眼鏡」

 

「冗談だって。一夏は本気にし過ぎ」

 

 

 俺も俺でこの眼鏡女に弄られるし……あームカつくぜったく!

 

 

 

 更識楯無という小娘に一誠さんが教えを与えていて、その才を開花させたということは、少なくとも小娘には私や一夏の持つスキルを持っている事になる。

 それはつまりこの小娘は『油断ならぬ敵』である事であり、隙あらば一誠さんを奪う盗人である事は間違いない。

 

 

「え、ちーちゃんとたっちゃんのどっちが強いかだって?」

 

「おう、ついでにこの眼鏡と俺はどっちが強い?」

 

 

 一夏がクラス代表となり、クラス代表戦を控えるこの日の昼休み。

 オルコットが一夏を主人と呼び、それに篠ノ之が怒りの目で睨んでいるのも気にせず、自然と一誠さんの周りに集結した更識の姉妹の前で、私と小娘、一夏と小娘妹のどちらが一誠さんに近いのかを問い詰めるので、然り気無く一誠さんの隣をキープしていた私は、プリンを食べていた手を止めて腕を組む一誠さんをジーッと見る。

 

 

「単純な戦闘力ならたっちゃんとちーちゃんならちーちゃん。かんちゃんとお前ならお前だな。

つーか一応年期が違うし」

 

「っし! へ、やっぱりな」

 

「………」

 

 

 喜ぶ一夏に便乗し、私も密かに拳をグッとする。

 まあ当たり前だな……所詮二年ぽっち程度の小娘に私が遅れを取る訳が無い。

 

 

「なーんかそこまで言われるとショックなんですけど?」

 

「………」

 

「こればっかりわなぁ……。いやたっちゃんもかんちゃんも頑張ってると思うけどさ」

 

 

 私に視線を寄越しつつ小娘が呟くが、一誠さん直々の評価だけは変わらないんだ。

 そしてこれからも貴様なんぞに遅れは取らせない……。

 

 

「ご主人様の仰有っていた無幻大という力のことでしょうか? えっと、このお二人にも似たお力が?」

 

「そうそう。セッシーちゃんは飲み込みが速くて良いねぇ。案外キミも調べたらあったりして――――」

 

「「「「………」」」」

 

「……。ってのは冗談だ。あはは、あんまり良いもんじゃないぜこれ」

 

「はぁ……」

 

 

 オルコットにあるだと? ふざけるな、これ以上増えても私が困るし、多分冗談で言ってるのだろうが、その冗談は笑えない。

 

 

「………ちっ」

 

「あ……ごめん篠ノ之ちゃ――」

 

「別に謝られたくありませんから」

 

「お……おっす」

 

 

 この領域は――スキルは一誠さんとの絶対的な繋がり。

 理解して貰うつもりも無い。

 

 

「良かったですね、うちの姉さんが居なくて。

多分メッタ刺しにしてますよ」

 

「あー……うん、やっぱりそうかな――」

 

「ハッ、おっちゃんをメッタ刺し? 天地がひっくり返っても無理だっつーの、くだらねぇ」

 

 

 篠ノ之にも、そして束にも理解して貰おうとだなんて思ってない。

 手を差しのべてくれたこの繋がりは私と一夏の大切な宝物なのだから……。

 

 それは恐らく、認めたくは無いがこの姉妹もそうなのだろう……。

 

 

 

 

 

 顔を見るだけで刺したくなるって気分にさせられるという意味では、アイツ以上の存在は居ない。

 あのムカつく異常者の男以上はね……。

 

 

「駄目だ、今の私の技術でもこれが限界……」

 

 

 だからこそ私は私の作り上げた技術であの異常者を越えてやろうとISに全てを注いでいる。

 この日も無人で起動可能なゴーレムという機体に持ちうる全ての技術を注いで調整するけど、勝てるビジョンが全く浮かばない。

 

 テスト起動を重ね、とあるうざったい組織のアジトを襲撃させ、無傷で敗走させたとしてもあの男一人ぶちのめすには足りなさすぎる。

 

 

「駄目だ……駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ!! こんなんじゃあの男を這いつくばらせるなんて……!!」

 

 

 世間じゃ勝手に私を天才だの天災だのと宣ってるらしいけど、私にしてみればコンプレックスになるだけでしかない。

 

 私は今でも覚えてる……最後に会ったあの男との事を――

 

 

『そっか、それがキミの作った奴か。で、キミがそれを使って、刃物向けてるって事は、つまり俺と戦えってことか?』

 

 

 ISなんて使ってないのにさも当たり前だとばかりに当時自分が持ち得た技術を投入して完成させたISに乗る私と同じ目線に立つムカつく男。

 場所は嵐が荒れ狂う海の上……。

 

 

『俺がキミに負けたらちーちゃんとイチ坊の前から永遠に消える……それがキミの望みか。

分かった、確かに俺はキミと妹ちゃんの望み通りには出来なかったし、キミに責められても仕方ない事をした。

だからこそ言いたいことは何と無くわかる―――――』

 

 

 白騎士よりもより攻撃的なISを纏って睨む私に、男は笑う。

 

 

『が、勝負を挑まれたらガキな性分故に加減はしないタイプでな? 良いよ、清算前の餞別と解釈してキミとヤってやるぜ』

 

 

 左腕を覆う真っ赤な籠手が眩く輝く。

 

 

『行くぜドライグ……禁手化(バランスブレイク)だ!!!』

 

 

 見ただけで分かる力の差。全身を覆う真っ赤な鎧。

 あぁ、異常者はどこまでも異常者で、私のこれは所詮玩具にすぎない……。

 

 

『こいよ、篠ノ之束……。これを見せるのはキミが初めてなんだぜ?』

 

 

 私の視界は次の瞬間、赤に染まる………。

 

 

「あの力を再現出来なければ勝てない。

私にあるのはこの技術だけ……」

 

 

 思えば私はあの日に完璧な挫折を投げつけられた。

 技術云々ではどうにもならない、化け物としか思えない領域。

 

 ちーちゃんやいっくんにも無いあの男の領域のひとつ。

 

 

「異常がちーちゃん達の領域であるなら、あの赤い鎧の力を再現できたら私は――」

 

 

 無傷で戻ってきたゴーレムを撫でながら、私は一人呟く。

 私にはちーちゃんといっくんの才は無い……。

 なら別の視点……あのムカつく男曰く神器の領域を再現出来たら……。

 

 

「ふ、くく……まだ足りない」

 

 

 私は越える事が出来る。あの男を。

 這いつくばらせたいくらいに大嫌いな男を……。

 

 

「嫌いだ、大嫌い。いっそ突き放してくれたら良かったのに、余計な真似ばかりして……お前だけは絶対に越えてやる」

 

 

 そうすれば私は本当の意味で前に進める。

 前に進んで……進んで……。

 

 

「二度とちーちゃん達に会わせない為に、お前は私が閉じ込めてやる。

陽の光も当たらない、私しか知らない場所で……あは、あははは、飼ってやる……!」

 

 

 私に済まそうに笑うその顔を歪ませてやる……絶対に。

 その為にはあの男に今はまだ挑み、その力の解析をしてやるんだ。

 

 

「時間と共にエネルギーをブーストさせる……これが今の私に再現できる全て」

 

 

 越えて、私に悔し顔を晒させる為に。

 

 

 

 少女は挫折を貰い、大人へと成長しリベンジを誓う。

 親友を自分の手の届かない領域に連れ去った男を越える為に。

 

 

「やっぱり無人機じゃなくて束さんが乗るっきゃないか……あー、あんな男に近づくなんて嫌だけど、しょうがないよね。一発殴れるかもしれないし……」

 

 

 黒く濁った瞳で己の作品を撫で、笑う姿はある種幻想的に見えるが、その執念は凄まじい。

 

 

「あぁ、大っ嫌い……ふふ……ふふふふふ♪」

 

 

 一誠という異常者一人にのみ向ける感情は更に増幅し、篠ノ之束は独りひたすらに笑うのだった。

 

 

「閉じ込めても一応は生かしてやるよ。

手足ぶった切って動けなくなっても、一応世話だけはしてやるよ……。

あー……いっその事嫌で嫌でしょうがないけど、お前の子とか孕んだらちーちゃんも嫌うかな? あははははは!」

 

 

 皮肉にもそれが己の技術をあり得ないレベルに進化させてるとは本人も知らずに……。

 

 

 

「へっきし! ずず……」

 

「どうしたんだよおっちゃん? 風邪か?」

 

「いや違うと思うけど……んー……」

 

「そういえば束に連絡した際、一誠さんの事を話したら物凄く拒否されました」

 

「拒否られたって……つーかあの子今どうしてんの? これこの前も言ったと思うけど」

 

「さー? 俺は知らねーけど」

 

「あっちフラフラこっちフラフラですね」

 

 

 

終わり




補足

微妙に拗らせてる感が凄いのと同時に、技術力が然り気無く化けてる束さん。

しかしそれでも一誠達の領域には……というジレンマでちょっと危険。

具体的には一誠を飼いたいらしい……。


その2

箒さんも箒さんでそんな姉の変化を知ってたりしてて、実は引いてたり……つまりこの子は普通に良い子ちゃんなのだ。
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