赤龍帝ストラトス(仮)   作:超人類DX

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ちーちゃんェ……


おっちゃんとちーちゃん

 おっちゃんに専用機は無い。

 従ってISに乗る機会が専用機を一応持たされている俺よりも圧倒的に少ない。

 

 俺自身ISに対して全然興味も無く、一般知識すら覚えることを無駄として放棄してた為にこの学園に入らされて初めて知ったのだけど、何でも世界で正式に確認されているIS――正確にはISの心臓部となるISコアは467? くらいしか無いらしく、それが世界に散らばってるとなると、IS学園に配備されてる訓練用の機体も決して多くは無い。

 

 故に年齢はともかく所属としては一学年となるおっちゃんがその訓練機を借りるにしても、まず窓口で色々と申請手続きやってとめんどくさく、しかも優先的に訓練機を借りれるのは最終学年だったりするので、おっちゃんが申請しても弾かれてしまうのだ。

 

 ったく、要らん物だろうけどもう一機くらい都合付けろよな国も。

 お陰で折角おっちゃんと遊べると思ったのにそれも儘ならねぇんじゃ世話ないぞ。

 

 何でか知らねーけど篠ノ之はほぼ毎日借りるのも一苦労な筈の訓練機借りて来るし、頼んでも無いのにオルコットも毎度毎度付きまとってくるしでやってらんねーよちきしょう。

 

 

 

 

 その日、一年一組ではクラス代表となった一夏をお祝いしようと、歓迎会的要素を兼ねて食堂にて小さなパーティーみたいな催し物を開いた。

 

 

「クラス代表就任おめでとー!」

 

「………」

 

 

 一年一組しか居ない食堂内にて派手に鳴り響くクラッカーの音の真ん中にて、一夏は無表情でクラッカーから出てくるテープを浴びていた。

 

 

「イチ坊おめでとー!」

 

 

 その中に混じる三十路の男も、寧ろ一番精神年齢が低いですと言わんばかりのテンションでクラッカーをパンパンと鳴らしまくり、一夏の背中を軽くぱしぱしと叩く。

 

 

「いやーこれで代表戦も色々と盛り上がりそうだよね」

 

「ホントホント、同じクラスでラッキーだわ」

 

「イチ坊がクラス委員的な事をするなんて、俺ちょっと目頭が熱くなりそうだぜまったく……!」

 

「………」

 

 

 一回り以上も年下の女子とはしゃぐ姿はシュールに見えなくもない。しかしながら実年齢はともかく何度も言うが見た目だけは二十歳そこそこかそれ以下にしか見えない若さ故に、犯罪的臭いは感じない。

 

 

「ったく、はしゃいじゃってまぁ……」

 

 

 その姿を晒す一誠を一夏は決して嫌いじゃなく、寧ろ好きだった。

 故にへらへら笑いながら用意されていた飲み物をチビチビ飲んでる一誠に頬を思わず緩め、自分も一誠に加わろうかと思ったその時だった。

 

 

「人気者だな」

 

「あ?」

 

 

 何故か頼んでもないのに横に居た箒に皮肉をぶつけられ、一夏はめんどくさそうに声を返す。

 これで不機嫌なら返事すら返さないので、今の対応はまだ大分マシだったりする。

 

 

「篠ノ之さんはどうしてそう攻撃的なのでしょうねぇ? あ、ご主人様おつぎ致しましょうか?」

 

「自分で出来るわそれくらい」

 

 

 そして反対隣にはすっかり下僕化したセシリアが、せっせと一夏の身の回りのお世話をしようと働こうとする。

 ほぼ生身同然の一夏に弄ばれるが如くぶちのめされたせいか、すっかり一夏に心酔してしまったらしく、いくら一夏に『鬱陶しいから消えろ』と言われても、雛鳥が如く引っ付いている。

 それがまた箒にしてみれば気に食わないのだ。

 

 

「随分オルコットには甘いんだな。あの更識とかいう奴にも」

 

「さっきからキミは何が言いたいんだか……くだらねぇ」

 

「………」

 

 

 更識が一夏と千冬同様、一誠に近い領域に居るから多少関わりが多くなるのは何と無く認めたくはないのがわかるが、自分と同じ持たない筈のセシリアをなんやかんやで引っ付かせたままにしておく。

 自分の時は散々言ったのに、何故コイツばかり……等々、簡単に言えば嫉妬していたりするのだが、この一誠バカである一夏かがそれに気付く訳もない。

 

 

「のほほんさん? それはいったい誰のこ――」

 

「えへへー……」

 

「と……お……!?」

 

 

 その元凶もマイペースにクラスの女子とくっちゃべってて、何時もの様な要らんフォローもしない。のほほんさんというあだ名の少女を見てかなり驚いて顔色が真っ青になってて気付きもしない。

 箒は内に黒いモヤモヤを更に更に蓄積させながら、やけ酒っぽく烏龍茶を飲み干す。

 

 

「……私ばっかり」

 

 

 何時もそうだ。欲しいと思ったものは全部手に入らない。

 手が届きそうな所まで行っても横から入られてアッサリ奪われる。

 あの一誠が良い例だ……最初に出会った頃の一夏は今みたいな性格じゃなかったのに、一誠がおかしな事を教え込んだせいで性格まで……。

 

 やっと居なくなったと思って喜んだのに、またしても現れてあっさり一夏を……。

 

 

「二年の黛薫子でーす、新聞部副部長やってまーす」

 

「へー、そんな部活があるんだなー……おらイチ坊、お前に取材来たぞ?」

 

「は、俺?」

 

「だって今日はご主人様が主役じゃありませんか」

 

 

 自分を残して一夏は新聞部と名乗る二年から取材されてるし、全然見向きすらしない。

 それが箒にはたまらなく辛いのだ。

 

 

「クラス代表になったとの事ですので、一言どうぞ」

 

「一言だぁ? んなもんねー――いて!?」

 

「お前はバカか、相手は先輩だろうが。ったくもう……すいません、コイツ今日どうも機嫌が悪いみたいで……。普段は良い子なんですよ?」

 

「お、おお、まるで保護者みたいですね……」

 

「育児を途中で五年程放棄した最低野郎ですけどね」

 

 

 そんな箒の気持ちを他所に、一夏が不機嫌に返して印象が悪くなりそうになるのを阻止しつつフォローをする一誠は、二学年の新聞部にめっちゃ下手に出ていた。

 それも敬語まで使って。

 

 

「えーっと、確か貴方は成人男性で唯一の起動者である兵藤一誠さんでしたね?」

 

「はーい、もうすぐ二十九歳になっちゃいまーす!」

 

「二十九!? わ、若っ……」

 

 

 ピシッと手を上げながら三十路前だと話す一誠に黛薫子は年齢にそぐわない若さである見た目にちょっと驚くのと同時に、そういえば……と思い出した様に口を開く。

 

 

「生徒会長と実は同じクラスだったりするんですけど、そういえば最近イッセーさんとどうのこうのって色々とかなり嬉しそうに話してましたね……。

最近兵藤さんと生徒会長がご一緒にご飯食べてる所を何度か目撃されてると耳に入れてますが、ズバリどんなご関係でしょうか?」

 

「へ? あぁ、たっちゃんの事だよな? あの子はアレだよアレ……お弟子さん?」

 

 

 薫子の質問に内心『あれ、一夏が主役なのに……』と思いつつもご丁寧に返す一誠。

 その瞬間、弟子と言ったのを聞いた一夏の顔つきが冷たいものへと変わったりしたが、一誠は全然気付いてない。

 

 

「お弟子さんって……あの、生徒会長は学園最強だったりするのですけど、まさかISの実力が彼女より上――」

 

「いやそれは無い。無理無理無理カタツムリ。多分ISでやり合ったら俺なんか瞬殺されちゃうし。

弟子ってのはアレだよアレ……ええっと、うーん……詳しくは本人から聞いた方が早いと思うからノーコメント」

 

「ええっ!? そこまで引っ張っておいてひどーい!」

 

 

 とはいえ、時間が経つにつれて気付いたのか、途中で質問を切った一誠はぶーたれる年下の先輩を適当にやり過ごしつつ、チラッと独り寂しく隅っこでお茶を飲んでた箒と視線が合う。

 

 

「まあ、まあ、しがないオッサンなんて取材してもつまらないですし、此処は本日の主役たるイチ坊に色々と聞いてやってくださいよー? ほら、あそこに居る篠ノ之ちゃんもイチ坊の事割りと詳しいんだぜ? おーい篠ノ之ちゃーん、イチ坊答える気無いみたいだから篠ノ之ちゃんが代わりに答えてあげて欲しいぜー」

 

「っ!?」

 

 

 へらへら笑いながら隅っこで寂しくしていた箒を一夏の側に気がねなく近付けるようにそれとなくフォローする一誠に箒は驚くのと同時につい睨み付けてしまった。

 

 忘れてたのかと思ってて油断してたらまさかのオチだったので、本人も半ば戸惑っているのだ。

 

 

「ほほー、彼女と織斑君のご関係は?」

 

「所謂幼馴染みっちゅー奴っすね。

な、篠ノ之ちゃん?」

 

「な、なにを……! それとその篠ノ之ちゃんって呼ぶのは――」

 

「…………………………」

 

「やめ…………い、いや……何でもない」

 

 

 最初は勿論加わるつもりは無かった。

 しかし意地を張って断るつもりだったのを、一誠がへらへらしながら箒を半ば強引に引っ張って来たので抗えず、ならばと篠ノ之ちゃん呼びを止めろと怒鳴ろうとしたのだが、一誠には見えない箇所から一夏が静かに指をバキバキと鳴らし始めたので、結局今だけ箒はされるがままになってしまった。

 

 

「篠ノ之さんというとかの篠ノ之博士の妹さんという噂がありますが……」

 

「あ、あの人は関係ないです。今も何処でなにをしてるのかわかりませんから……」

 

「え、それマジ? 俺てっきり篠ノ之ちゃんとは連絡取り合ってるのかと思ってたんだけど……」

 

 

 結局一誠がほぼ強引に動いたので、何とか箒も加わる事が出来たのだが、束の事で若干解せないって顔をするのを横目に箒は思った事を思わず口走る。

 

 

「姉の事を随分気にするんですね……昔っから」

 

「ん?」

 

 

 自分の事もそうだが、この男は昔自分と姉を一夏や千冬と同じ場所に導けなかった事に勝手に罪悪感を感じてるのか、引っ越して一夏と別れる最後の時まで自分と姉の束に気を遣っていた。

 それは今でもそうであり、先程の要らぬフォローといい姉とは連絡すら取ってないという話に気にするような態度をしたりと、一々干渉して来ようとする。

 

 

「え、兵藤さんって篠ノ之博士とも知り合いなんですか!?」

 

「あー……か、顔見知りかな? あの……なんつーかさ、俺嫌われてるんですよね、あはは」

 

「嫌われてるって……なんで?」

 

「えーっと……えーっと………」

 

 

 そして嫌われる理由も本当はそうじゃないのに一々自分と姉が悪くならないようと要らん気を回す。

 この時も新聞部の質問を境にクラスメート達が興味津々に聞き耳を立ててるのに気付いたのか、箒を見つつ……。

 

 

「まあ、色々とあったんだけど、原因は俺にあるのは間違いないとだけは言うよ。

詳しくはちょっと言えませんがね……ははは」

 

 

 自分が嫌われる真似をしたからと……二人に非がないと強調しながら答えると、それを敢えて黙って聞いていた一夏が、思わずといった様子で口を開く。

 

 

「おっちゃん。何で一々コレとアレに気なんて遣うんだよ? 勝手に嫌ってるだけじゃねーか……それも逆恨みで」

 

「逆恨みじゃなくて正当な理由だ。

当時の俺はお前とちーちゃんに、俺が居なくても生きていける様にと、何にも考えずにやっちまったんだ……そらちーちゃんの友達だったあの子にしてみれば気に入らねぇだろ?」

 

「そんなの……千冬姉も俺も自分で望んだぞ。

それをくだらねぇ逆恨みで未だに根に持ってるコレとアレが――あだっ!?」

 

「コレじゃない、箒ちゃんだろ? それとアレじゃねぇ、束さんだろ? ったくオメーはどうしてこう女の子の気持ちがわからんかねー?」

 

 

 この分じゃ今まで何回女の子を泣かしたのやら……と、一々淡白な子に嘆かわしいとばかりにため息を吐く一誠と、またしても一誠に要らんフォローをされたと複雑な眼差しを向ける箒。

 

 やはり篠ノ之姉妹との溝は大きいと思う一誠だが、…………姉の方が実は変な方向に向かってると知ったら多分更に申し訳なさでいっぱいになるのかもしれない。

 

 何せ飼うとか言い出してるのだから。

 

 

 

 

 変な空気にはなりつつも、取り敢えずお開きとなったパーティーの後、一誠はパーティーの前にある人物としていた約束の為、寮部屋……では無く寮の裏にある簡潔な広場へと訪れていた。

 

 

「待ってましたよ一誠さん」

 

「おう……悪いなちーちゃん」

 

 

 その約束とは所謂『触れ合い』であり、相手は千冬だった。

 ジャージ姿で軽い柔軟体操をしていた千冬は、一誠が来るや否や、普段の姿とは考えられない程――言うなれば親と遊んで貰えるのを楽しみにする子供みたいな笑顔を浮かべていた。

 

 

「一夏には悪いけど、私とてたまには一誠さんを独り占めしたいので……」

 

 

 そう言って軽く拳を握り締めながら構える千冬は、本当に少女みたいに嬉しそうだ。

 

 

「それでちーちゃんとイチ坊を中途半端にほったらかしにした償いになるなら何度でも付き合うぜ」

 

 

 それを受けて一誠は自然体に構える事もなくその場に立ち、フッと笑みを魅せる。

 そう、触れ合いとは即ち……互いの異常性をより高めるという意味での手合わせであった。

 

 

「前までは視界に入るものしか出来ませんでしたが、今は『一度でも見て記憶したものなら全て可能』になりました」

 

「みたいだな……。まったく、大したもんだよちーちゃんは?」

 

「ふふ、もっと誉めてください」

 

 

 タンッと軽く地面を蹴った動作とは裏腹に、周囲の空気が破裂するような轟音と共に一誠へと肉薄した千冬の拳が顔面目掛けて放たれる。

 既に五年前には鋼鉄すら粉砕できてきた剛の拳は更に努力を重ねる事で音速をも越えたスピードとパワーにまで昇華しており、並みの人間ならまずお陀仏だ。

 

 だがそんな人智を越えた千冬の速度と力に対して、一誠は軽々と自分の顔に向かって放たれた拳をパシンという乾いた音と共に軽い調子で受け止めると……。

 

 

「強くなったな、ちーちゃん」

 

 

 自分と同じ領域へと成り、そして尚も進化する姿に只ひたすらに嬉しむのだった。

 

 

 

 

 強くなったなと誉められると、それだけで私は報われた気持ちで幸せになれる。

 一誠さんと同じに、これまでもこれからも一緒なんだという安心感で満たされる。

 

 

「うぅ……参りました」

 

「ん、今日はここまでだな」

 

 

 まだまだ一誠さんに膝を付けさせるまでにはいかず、ひよっこも良いところだけど、いつの日か私は絶対に与えられるだけじゃなく、一誠さんから必要としてもらう領域に進化してみせる。

 まあ……今日もまた負けたけど。

 

 

「ホント強くなったな、まさか二、三発貰っちゃうとはさ……油断したつもり無いんだぜ?」

 

「それでも一誠さんは全然堪えてないじゃないので、まだまだですよ……」

 

 

 何千……何万と打ち合って当てられたのが二、三発だけ、それもダメージにすらなってないのでまだまだ先は長く、疲労でその場に倒れて動けない今の私と、笑いながら身体を伸ばしてる一誠さんを他人が見ればどっちが勝ったかなんて考える必要もないだろう。

 

 

「よし、そろそろ戻ろう。明日も早いんだろ?」

 

「動けないです」

 

 

 既に消灯時間は過ぎていて、少し冷たい風と月明かりが照らしている中、動けないと主張した私に一誠さんはははと軽く笑うと、成長した私の肉体以外は昔と変わらないやり方で私を背負うと、ゆっくりとした足取りで寮へと歩き始める。

 

 

「ガキの頃何時もこんな感じだったな。まあ、大概おんぶしてやったのはイチ坊だけどさ」

 

「当時一夏が羨ましくて仕方なかったですよ。私はたまにでしたから」

 

「だったな……まあ、大人になったちーちゃんをおんぶってのも失礼かもしれないな」

 

 

 昔より少しだけ小さく感じる背中。

 けれど感じる鼓動は昔と変わらず、昔話をしながら私は一誠さんに強くしがみつく。

 

 ずっとこうなれば良いのに……なんて思いたいけど、あっという間に部屋へと戻ってきた私は、残念に思いながらも一誠さんの背中から降りる。

 

 

「お風呂入りなよ。先どーぞ」

 

「ん、ではお先に……」

 

 

 私を下ろし、ソファに座ってTVを付ける一誠に言われて先にシャワーを浴びようと浴室へと向かおうとした私だけど、何と無くその前にこれだけ言っておく。

 

 

「時間も時間なんで折角だから一緒に入りませんか?」

 

「はは、割りと魅力的だけどやめとくぜ」

 

 

 ダメか……。まあ、おんぶをしてもらった時にわざとらしく胸とか押し付けてみたけど無反応だったからな。

 つくづく一誠さんにとって一夏も私と子供らしい……それがちょっと悔しいけど、これはごねても変わらなそうなので、大人しく先にシャワーを頂く。

 

 

「上がりました、次一誠さんどうぞ」

 

「おう」

 

 

 一応、全身を隈無く洗い、わざとらしくタオル一枚の姿を見せても……やっぱりダメか。全然反応も無しでさっさとシャワーを浴びに行っちゃった……。

 

 湯冷めしない様に服を着て、待ってる内に一誠さんは上がって来た訳だけど、一緒の部屋なのに間違いの一つも起きないなんてどうかしてるのでは無いだろうか?

 

 

「んじゃ寝るかぁ……おやしゅみー」

 

 

 このままでは何時まで経ってもガキ扱いで終わり、横からあの小娘がしゃしゃりでてくる……なんて事になったら私は多分生きてられなくなるだろう。

 そう思った私は、隣のベッドであくびをしながら眠ろうとする一誠さんに、わざとらしく言った。

 

 

「一緒に寝てほしいなー……」

 

「んぁ?」

 

 

 せめて、ここはひとまずひとつのベッドで寝てみてから、今後の対策を考えよう……と私は一誠さんにわざと子供っぽくねだってみた。

 同室二日目に下着姿を晒したら寧ろ怒られたので、今の私の格好はただ寝るだけのラフな格好なのだが、この姿ならもしかしたら……と思って聞いたのだけど、何だろう……自分で言っておきながら心臓が激しく鼓動するし全身が熱くなってきた…。

 

 

「んー……いいぞ別に」

 

 

 どうしよ……と思ってた矢先に一誠さんは軽い調子で許可し、軽くズレて一人分の空きを作ってくれたのだけど……むむ、は、恥ずかしくなってきちゃったぞ……。

 

 

「…………」

 

 

 でもこんなチャンス滅多に無い……と自分に言い聞かせつつ、多分一誠さんからしたら子供を寝かしつける的な意味なんだろうと残念にも思いながら、久しぶりに一誠さんの間近で寝る事に……。

 

 

「あ、あの……くっついても良い……?」

 

「え? あー……うん、良いけど……ちーちゃん大人だからちょっと気恥ずかしいな」

 

 

 あ……ちょっとは意識してくれてはいるんだ。

 一誠さんが少し曖昧な態度で話すのを聞いた私は、ちょっと嬉しく思いながらも甘えるように一誠さんの身体に抱きついた。

 

 

「おーやっぱり大きくなったなちーちゃん……」

 

「もう大人ですから……。子供だって産めますよ」

 

「じゃあ早く結婚したらよ? ちーちゃんなら引く手多数じゃないの?」

 

「嫌ですよ……私、一誠さん以外は……」

 

「うーん……俺はヤバイから止めた方が……」

 

「嫌です。最近あの小娘が一誠さんに向ける目も、一誠さんが知らない女の所に行くのも嫌だ。

ずっと一緒に……ずっと一誠さんと一緒が良い」

 

 

 そう言いながら私は強く一誠さんに抱き着く。

 私にとっての全てが一誠さん……。だから他の誰かなんて欠片も考えたことなんか無い。

 

 

「もう何処にも行かないで……」

 

「…………」

 

 

 私の頭を撫でてくれるこの手も、我が儘を言っても笑って受け止めてくれるこの胸も……。

 全部、全部……誰にも渡さない。

 

 

 




補足

千冬さんは一誠の前だとほぼ少女化します。
てか、メンタルが脆くなって他の女と何かしようものなら大変な事になります。

前のたっちゃんとのやり取りで大泣きした感じみたいに。

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