Fate kaleid moon プリズマ☆サツキ   作:創作魔文書鷹剣

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まだ少し時間がある。今のうちに考えよ。厄災に立ち向かう者と、怯えて逃げ回る者。自分はどちらか。


ep31猶予期間

〜さつきside〜

 

「そういえばさ、昨日の夜どこに行ってたの?」

 

「ちょっとした情報収集よ。鈍臭いアンタに代わってね。」

 

「そ、そんなに私って鈍臭いのかな・・・?」

 

今日の朝もルヴィア邸ではいつもと何ら変わりない会話が聞こえる。オルタ的にはこれくらいの毒は悪口に含まれないし、さつきのためを思って考えればちょっとぐらい厳しくしなきゃいけないのだ。

 

「ぐっすり寝てる暇があったら、せめてあの子達に何て伝えるかを考えなさい。そっくりそのまま伝えたら、間違いなく無茶なことして怪我するわ・・・特にあのホワイトロリータはね。」

 

「わかってるよ、わかってる・・・って、何を!?」

 

突然すぎる話に思わず聞き返した。結局、さつきは今この町で何が起きているのか知らないのだ。しかし、時間は無い。今や冬木に降り注ぐ《災厄》は想像を絶する程になりつつある。そんな事態にイリヤと美遊を巻き込めば、最悪の結果が訪れることは目に見えている。

 

(・・・で、結局何をどうすればいいの・・・?)

 

頭は考えごとでいっぱいだが、今のさつきは雇われメイド。やらねばならない業務は山ほどある上に、昼間に外出できないかわりにルヴィアが色々押し付けられたのだ。(現在はオルタが分離した影響である程度克服)考えごとに没頭する余裕は無い。

 

〜イリヤside〜

 

「やっと学校終わったね〜」

 

『相変わらずカバンの中は退屈ですねー。』

 

下校中、イリヤはルビーとおしゃべりしながら家に向かって歩いていた。美遊は用事があるからと一緒に帰れなかったが、今日に限っては一緒じゃない方がよかったかもしれない。

 

「待ちなさいイリヤスフィール」

 

「あ、リンさん・・・なんか、すごく久しぶりな気がする・・・」

 

『最近出番に恵まれてませんからねーw』

 

「笑うなーッ!!」

 

割とメタい指摘をされて、凛は特に反論もせずにルビーを怒鳴りつける。こういう反応が彼女のネタキャラ化を加速させているのだろうが、本人は気づいていない。

 

「それより、今日は伝えなきゃいけない事があるの。」

 

「伝えなきゃいけない事・・・?」

 

「そ、なんでも・・・ここ最近、町中で「異変」が相次いでいるらしいわ。変な化け物とかね。そっちでも噂ぐらいは聞いてると思うけど、あの噂は全部ホント。いつかはアンタも動かなきゃだから、せめてそのトチ狂ったステッキと練習しておきなさい。それじゃ。」

 

哀れ。このうっか凛は、オルタがイリヤ達にどう伝えるかを悩んでいる情報をものすごくあっさり伝えやがった。因みに、彼女は後にこのうっかりをものすごく後悔することになる模様。

 

「リンさん、嵐のように去っていったね・・・」

 

『あんなんだからネタキャラ扱いされてるんでしようねー・・・』

 

2人の静かな言葉がより一層謎の空気感を強調する。はっきり言ってこの2人からしてみれば「いきなり騒々しい相手に絡まれた」状態から完全放置されたのだが、文句を言うべき相手は既にはるか彼方だ。

 

「なんか・・・虚しいねルビー。」

 

『その歳で虚無主義はいただけませんね・・・』

 

「帰ろうか。」

 

いらない騒動のせいで足取りが重くなった。美遊が巻き込まれなかっただけ、マシかもしれないが。

 

〜さつきside〜

 

「あっ、さつきさん。」

 

「あっ、美遊ちゃん・・・そういえば、美遊ちゃんも聞いたの?例の噂。」

 

「そっちこそどうなんですか?さつきさん、色々怪しいから・・・」

 

「うぐっ・・・そういう話はオルタに聞いてね、私ほとんど何も知らないから・・・」

 

あまりにも下手すぎる言い逃れに、美遊(と、ポケットの中にいるサファイア)の視線は疑惑がはっきりと感じられる。だんだん強くなる視線に思わずさつきは目を逸らした。

 

「・・・で、結局どうなんですか?」

 

「いや、だから・・・その・・・えーとね、一応私は見てただけというか・・・オルタが暴れたりしてたのが見られてたのかなーって・・・」

 

『白状するのが遅すぎですよ。』

 

小学生とステッキに問い詰められる奇妙な圧力に、思わずさつきは自己保身をしてしまった。実際ホントの事を言っているだけだが、美遊にとって重要なのはそこじゃない。

 

「じゃあ、オルタさんは何か知ってるんですか?」

 

「う、うん・・・多分だけどね。聞いても教えてくれないと思うけど・・・」

 

『かまいません、何なら力技で聞くまでです。』

 

「行ってきます。』

 

急にサファイアが物騒な事を言い放ったと思ったら、美遊はオルタの部屋に向かって歩き出した。何でこの1人と1本はここまでしてオルタを問い詰めたいのか、いくらオルタが真実を知ってるからといって力技で聞き出せるとは思えないが。

 

「なんか美遊ちゃん、ちょっと変わったよね・・・」

 

誰に向かって話すでもなく、さつきの独り言は消えていった。

 

《オルタの部屋》

 

「オルタさん。私です、美遊です。」

 

「あーっと・・・何の用?」

 

美遊は帰宅して早々にさつきを問い詰めた後、オルタの部屋に突撃していた。理由は単純、最近囁かれている噂の真実をオルタが知っているからだ。

 

『単刀直入に聞きます。オルタ様、最近囁かれている噂について何か知ってますか?』

 

「・・・知らない。」

 

「何ですかその間は。」

 

嘘をつくのが致命的に下手なのはオルタも同じなようだ。ここらへんは元々さつきと同一人物だった名残なのだろう。

 

『貴女が夜中に出掛けている時に、目撃者がいないとは限りません。誰かが貴女を目撃した後に、それが誇張や推測と混ざり合って「噂」になった・・・このように考えましたが、いかがですか?』

 

「そんなこと言われても・・・知らないことは知らないとしか答えられないわ。」

 

「あくまでシラを切るんですね。」

 

「シラを切るっていうか、普通に知らないんだけど。」

 

こんな事言ってるが、この発言に説得力は全く無い。美遊とサファイアはオルタが真実を知っていると考えているが故に、余計オルタの発言が無視されたいる。

 

「本当に何も知らないんですか?」

 

「しつこい・・・知らない事は知らないとしか言えないってば。特に『私が誰かに目撃されて、それが拡大して噂になった』ってのも、サファイアの推測でしょ?それがどうして私を問い詰める理由になるの?」

 

「・・・ッ!」

 

言われてみれば、美遊とサファイアの発言は少し飛躍している。2人は証拠らしい証拠を持っていないし、サファイアの推測は証拠足り得ないだろう。事を焦りすぎたと言わざるをえない。

 

「ごめんなさい・・・じゃあ、これで帰ります。」

 

「この話、もう持ち出さなくていいからね。」

 

オルタにとっても、それが一番だ。勿論彼女意外でもだ。




さっちんは影が薄い方がさっちんらしいという現実と鷹剣でした。毎話書くたびに、前回の話が思い出せずに目茶苦茶な話を書くキチガイがいるらしい。

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