Fate kaleid moon プリズマ☆サツキ 作:創作魔文書鷹剣
《イリヤside》
「はふぅ〜・・・生き返るぅ。」
『相変わらずジジくさい入浴ですねー、もっとリアル女子○学生らしく入浴シーンが無料の二次創作小説サイトに掲載されることに恥じらいをですね・・・』
「そういうメタ発言はやめようよルビー・・・」
さつき達がシエルの協力を得る少し前、イリヤは自宅で風呂に入っていた。結局夜中に外出できない可能性が高い彼女は夜は完全にOFFになり、昼間に何かしら頑張る形で貢献しようと考えたみたいだ。
「お兄ちゃんそっくりな人も見つからないみたいだし・・・いっそ向こうから来てくれないかなーなんて・・・」
「流石にそれはないでしょう・・・いくら何でも・・・」
「うぅ・・・ルビーにそういう事言われると心にくる・・・」
他愛もない話をしている内に体も随分と休まり、女の命とされる髪をはじめ体の隅々まで丁寧に洗う。乙女にとって入浴は生命線なのだ。手を抜くのは乙女のプライドが許さないのだろう。
「はぁ〜、サッパリした。」
入浴後はいつもすぐに2階の自分の部屋に籠り、ルビーのちょっかいに振り回されながら眠気を待つのが日課になっている。だがこの日は少し違った。
コンコン
「あれ?ルビー何か音たてた?」
『いや、わたしは特に何も・・・」
コンコンッ
「また何か音したよ!?」
『もしや盗撮の類では?イリヤさんそういう人達に人気ありそうですし・・・』
コンコンコンッ
「や、やっぱり音したよ!?」
『この音は・・・窓の外からです!』
もしや本当に盗撮されているのでは・・・そんな不安がよぎり念のためにと窓に近付き注意深く開けてみると、見慣れない格好の、見慣れすぎた男がそこにいた。
「こんばんは、イリヤ。」
「ウェ!?お、おおおおおお兄ちゃん!?何で外に!?何でそんな格好!?」
『まさか・・・あなた、言峰士郎って者では?』
「ああ、そのとおりだ。」
窓の外、小さな木の上に立っていたのは何とまさかの言峰士郎。不意打ちすぎる邂逅とあまりにも義兄に似すぎている外見にイリヤは動揺を隠せない。しかしその服装だけは似ても似つかない。まるでキリスト教徒のような見慣れない格好はイリヤの義兄とは大違いだ。普段ラグラン袖だし。
「え、えっと・・・ホントにお兄ちゃんなの?」
「・・・それはちょっと違うな。俺はこの通りIFの存在、『衛宮士郎』のあり得たかもしれない姿なんだ。だからお前との繋がりはない。」
『なら何をしにここに来たんです?』
「こっちの俺に義妹がいると知ってな・・・どんな子かと気になったんだ。」
彼が現実に実在していられる時間には限りがある。その間に自分の存在意義を成したいついでに、この世界における自分の家族を見ておきたかったのだ。
「あ、そうだった!あの、わたし達と一緒に戦って下さい!」
「戦うってのは・・・タタリか?」
「はい!タタリを倒すためにみんな頑張ってて・・・わたし、まだ殆ど何もできてなくて・・・お願い!一緒に戦ってお兄ちゃん!」
これは一世一代の大チャンスだ。外せば間違いなく彼の協力を得られないままタタリと戦う羽目になり、最悪全滅さえあり得る話なのだ。勝率を少しでも現実的な数字にするために、是が非でも彼の協力を得なければならない。
「・・・わかってるさ。幻想とはいえ俺は聖堂教会の代行者、死徒が現れると分かっているなら戦わなくっちゃいけないんだ。それに・・・『こっちの俺』の妹に頼まれちゃ断れないしな。」
イリヤの顔がパアッと一気に明るくなる。正直「お兄ちゃん大好き!」とか口から出てきそうだが、彼は兄とは同じだが違う人なんだと自分に言い聞かせて全力で自制する。
『それで・・・あなたって昼間にも動けるんですか?』
「動けないこともないが・・・やっぱり夜中の方が都合が良いな。死徒も夜中に湧き出すわけだし。」
(ほほう・・・お兄ちゃんよりもクール系に寄ってるのか・・・)
もはやイリヤの思考がオタク女子みたいな方向に向かっているが誰も気づいていないせいで止めてくれないし、そもそもこの場にいるのがこの手の思考を増長させて楽しむルビーと(こっちの自分の)妹の意思を尊重・・・という理由で止めさせようとしない言峰士郎では気づいたところで止まりはしないが。
「低位の死徒ぐらいなら簡単に倒せるが・・・タタリ本体の戦闘力は未知数だ。俺がどれだけ抵抗できるかは全くわからないし、いざという時のために保険をかけておいた方がいいだろう。他に戦力のアテは?」
「あっ、えっと。美遊とさつきさんとオルタさんと・・・あっ。」
急に話しかけられて慌てて答えてしまい、つい口が滑ってしまった。以前の話し合いで「言峰士郎は代行者だろうから、死徒であるさつきとオルタの話はしないように」と決めていたのだが、完全にやらかしてしまった。今も言峰士郎が訝しむような目でイリヤを見ているあたり、もう誤魔化しようはないだろう。
『イリヤさん・・・』
「うぅ、ごめんルビー・・・その、さつきさんとオルタさんは死徒なんです・・・あぁでも悪い人じゃなくて、ちゃんとした良い死徒なんです!だから、2人を倒そうとしないで下さい!」
涙ながらの懇願に言峰士郎は頭を抱えた。自分の存在意義は死徒を討伐することであり、そのために全てを犠牲にしてでも戦うのが彼の正義なのだ。しかしその正義に異を唱えるのがまさか(違う世界の)義妹になろうとは思いもしなかった。良い人だから討伐するのは止めてくれという願いを尊重すれば自分の正義を失い、自分の正義を尊重すれば義妹の願いを踏みにじることになる。どちらを選ぶか・・・そんな事は考えるまでもなかった。
「わかったよ。その2人が誰か知らないけど、そこまで言うなら手は出さないでおくよ。」
「あ、ありがとう〜ッ!!!」
『こんな調子では先が思いやられますねー。』
必死の懇願は実を結び、無事大切な友達を助ける事ができた。ルビーには呆れられてしまったが守り抜けたものの大切さに比べれば大したことはないし、何より言峰士郎が話しの通じる相手だとわかれば色々とやりやすいものだ。その後、2人と1本は夜明け近くまで話し合ってたそうな・・・
言峰士郎は本家士郎よりもクール寄り。