Fate kaleid moon プリズマ☆サツキ 作:創作魔文書鷹剣
《イリヤside》
「え〜というわけで言峰士郎さんに会いましてですね・・・」
イリヤの報告に部屋は静まりかえった。あまりにも信じがたい発言に誰もが衝撃を受ける。
「そ、それで!?彼は何と申したんですの!?」
静寂を破ったのはルヴィアだった。
「一緒に戦ってくれるって、夜の方が都合いいみたいだけど。」
「よ、よかった〜」
嬉しい報告にさつきの口から安堵の息が漏れる。最悪死徒であるさつきとオルタを討伐しに来るのではと思っていただけに、この吉報は大変ありがたい事なのだ。
「で?私とコイツが死徒だって事は隠せてるの?」
「・・・・・・・・・・」
オルタの質問に対する沈黙の意味を把握した彼女はやっぱりか〜みたいな顔で項垂れた。イリヤが隠し事に向いてない事はなんとなく分かっていたが、まさかこれ程向いてないとは誰も思っていなかった。
「まぁ・・・それは何とかできるし。本題は、勝ち目があるのかでしょ?」
「・・・・・・困難を極めますわ。そもそも死徒一体討伐するのに聖堂教会の代行者が必要ですのに、しかも死徒27祖の一体となると・・・ここにいる全員と、サツキ達が協力を取り付けた代行者と胡散臭い2人とシェロの偽物を加えたところで無駄な足掻きかもしれませんわ。」
「さりげなく凛さんのこと忘れないで・・・」
「イリヤ、諦めよ。」
もうこれは運命だ。凛とルヴィアが犬猿の仲であることは周知の事実であり、これまで凛との協力を取り付けていないのも無駄な接触を避けるためだ。目があったら喧嘩になるし。
『どう考えても厳しいです。なにしろ倒せる存在なのかどうかさえ分かりかねます。』
『それでもこの人達は行くんですけどねー。』
「実際タタリと遭遇すればわたくしは戦力になりませんわ。大人しく事前準備に徹しておきますわ。」
「多分その方がいい、敵は未知数なんだから。」
「だから凛さんを忘れないでー・・・」
イリヤの訴えも虚空に消えていき、白熱した会議は更に踊る踊る。あれよこれよという内に話は纏まり、最終的な結論が出された。
「サツキとオルタは例の代行者と一緒に新たな人員の確保、イリヤスフィールとミユはシェロの偽者と協力して現状の調査。この2チームに分ける事にしますわ。」
「それはちょっとキツイ。私とコイツが死徒だって事は例の2人には知られてないし、聖堂教会の一員ならバレた時点で抹殺確定。だから最終的には私達2人は別行動のチームになる。」
「協力者3人だけでチームを組むと?それこそ困難ですわ。」
「やらない訳にはいかないでしょ。」
例え無駄な足掻きでも戦う他に道はない。待っている未来が絶望だろうと希望だろうと、座して待つぐらいならこの手で掴みに行く。
《さつきside》
「イリヤちゃん、ちょっといい?」
さつきの声がイリヤを呼び止める。
「さつきさん、どうしたの?」
「言峰士郎に会ったって言ってたけど、大丈夫だった?」
「う、うん・・・大丈夫だったよ?」
「よかった。イリヤちゃん無茶しそうだから、また知らない所で無茶してるんじゃないかって心配だったの。」
「え!?わたしってそんな無茶しそう!?」
『確かに無茶しそうですけどねー、流石に死ぬような事は・・・いや、いつかやりますね。』
「ルビーまで!?」
完全に味方無し、放っておけば見えてる落とし穴に向かって行きそうな彼女を擁護する者はいない。特に魔法少女になってからはそれがより顕著に現れており、多少の無茶は承知で突撃していくようになりつつある。迷わなくなったと言えば聞こえはいいが、見ている側からすれば危なっかしいだけだ。
「頑張ってね、イリヤちゃん。」
「うん!」
『ナチュラルに頭ナデナデですか・・・相手が相手だから良かったですけど。』
「ちょっとそれどういう事ーッ!?わたしがお子さまって言いたいわけーッ!?」
『小5ロリは充分お子さまでしょう・・・』
「あはは・・・」
さつきの口から小さな笑い声が漏れ出た。こんな時でも変わらない光景が彼女の心を支え、今も立ち向かう勇気を与えてくれる。後はこの僅かな勇気を振り絞って告白・・・じゃない、タタリに立ち向かえれば・・・
(皆のために、頑張らなくちゃ。)
さっちん大好きなのにいつも難産になる不思議。