Fate kaleid moon プリズマ☆サツキ 作:創作魔文書鷹剣
《イリヤside》
「イリヤ、待たせたか?」
「ううん・・・」
イリヤの部屋、窓の外から中を覗き込む影。窓をノックする仕草を確認して、訪問者を招き入れる。それからは積もる話のオンパレードだ。少なくとも言峰士郎が知り得る範囲内ではタタリが出現していない事、冬木市内に発生している死徒の数は減少している事。そして、タタリ出現が近づいている可能性が高い事も・・・
「じゃあ・・・私も行く。」
「イリヤ・・・それは危険すぎる。いくらその魔術礼装があるとはいえ、お前は生身の人間なんだ。死徒がどれだけ強いか、知ってるだろう。」
『正直、シロウさんの意見に賛成です。死徒の強さはピンからキリまで多種多様です。さつきさんとオルタさんを見てもわかるとおり、イリヤさんはおろかシロウさんさえ超える死徒が現れる可能性は十二分にあります。・・・』
「ルビー・・・」
「・・・ですが、ルビーちゃんは所詮魔術礼装の一種ですので。マスターたるイリヤさんが行くと言うなら、私に口を挟む謂れはありません。行きましょう。」
「ルビー・・・ありがとう。」
「なら、俺も止める権利は無い。この世界の俺ならまだしも、幻想の類でしかない俺には止められない。」
この夜がイリヤの知っている夜でない事はわかっている。足を踏み込めば2度と帰ってこれないかもしれない闇の中、探し物を見つける事など不可能に近い。でもやるしかない。
「それでは!コンパクトフルオープン!境界回廊最大展開!魔法少女プリズマ♡イリヤ、推☆参!!」
久しぶりのフル口上で変身したイリヤ。セラとの約束を再度反故にしてしまう事には若干の抵抗があるが、いつまでもこの部屋にいては何も始まらない。自分が闇に消えてしまう事よりも、友達が消えてしまう事の方が嫌だ。イリヤはそういう奴だ。
(セラ・・・ごめんね、約束破っちゃって。でも行かなきゃ、ダメなんだ。)
「行くか、吸血鬼狩りに。」
夜の闇、それを超えてゆく2人。幽かな星空を仰げば、綺麗な月が見える。月夜を横切る少女が逞しく見えるのは少しだけ大人になったからか?それを見守る少年が笑顔に見えるのは少女の成長故か?全ては儚い夢であれど、そこにある感情は本物だ。
「冬木は夜中でも無人ってわけじゃない。まばらでも人がいるにはいる。見つかったら処理が面倒だ、物陰に隠れていくぞ。」
『そんなところで空中戦始めるんですから、ルビーちゃんの元マスターは頭足りてないですねー。』
「うーん、そんなにかな・・・あっ、アレ!」
イリヤが指差した先、小さなアパートの裏に見知った人がいた。あの赤いブラウスは見間違えようがない。
「凛さん!!」
「あら、イリヤじゃない。こんな時間にどうしたわけ?」
「・・・俺の
「へぇ!?は、あぁ!?義妹!?今義妹って言った!?」
『相変わらず騒々しいですねー。』
「し、シロウさん・・・義妹はちょっと・・・」
『とか言いつつ嫌がりはしないんですね。』
随分と久しぶりな気がする喧騒、イリヤの周りはいつだってお祭り騒ぎだ。こんな夜更けにもかかわらず騒ぎ立てて近所迷惑な気がしないでもないが、これくらいは許されてしかるべきだろう。
「・・・自己紹介が遅れたな、俺は言峰 士郎。タタリが作り出した幻想、と言うべきか。」
「タタリが作り出した幻想・・・・・・敵じゃん!!」
「ま、まままままって凛さん!!シロウさんは敵じゃなくてダイコウシャっていうかそのあのえっととにかく待ってー!!」
余計な詮索は不要と言ったばかりだが、詮索不足による酷い勘違いのせいで取り乱しまくっている。前言撤回、詮索ウェルカムで誤解を解くしかない。
「タタリが作り出した幻想の存在と言っても、必ずタタリに付き従うわけじゃない。むしろ俺はタタリを倒すために動いている。間違いなく奴はこの街にいるはずだが・・・見つけるのを手伝ってもらってるんだ。」
「は、はぁ・・・で、なんでアンタがコイツと協力してるのよ。」
「お前は『衛宮 士郎』を知っているか?」
「え、えぇ・・・」
「俺は言うなれば彼のIF・・・『もしも』が具現化した存在だ。それで彼はイリヤの義兄だ。だから俺の義妹も同然であり、俺が手助けする理由になる。簡単な話だろ?」
「は、はぁ・・・なるほど・・・」
若干危険な香りがしないでもないが、本人がこれで終わらそうとしているんだから要らない掘り下げは不要だろう。あんまり掘り下げすぎると面倒くさい事が浮き彫りになるかもしれないし。
「・・・それで?なんでアンタはアイツの協力を得られたの?」
「えっと・・・話すと長くなるんですけど・・・」
イリヤは語りだした。最初に凛から町の異変について聞き、それが由来でオルタの隠し事を知り、昼と夜とでそれぞれが情報収集のために奔走し、イリヤは言峰士郎と出会い、さつき達は聖堂教会の代行者を仲間にし、新たに2人の仲間を探している最中だと。隅から隅まで語り尽くした。
「つまり・・・私が原因じゃん!?」
『そうですよー、貴女がイリヤさんに夜の異変を話しちゃったのが悪いんですよ?おかげでイリヤさんはこんな死地に足を踏み入れる事に・・・』
「それはルビーも同意の上だよね・・・」
「今度はこっちが詮索する番だ。お前の口ぶりから察するに、お前はタタリを知っているな?」
「・・・そうよ、私はタタリの痕跡を調査している。あの化け物を見つけるためにね。」
《一方その頃・・・》
町外れの森の中、無人となった城の中、そこにいた。アトラス院の錬金術師が探していた、1人と1体が。
「あれは・・・」
「リーズ!」
「シオン!よかった・・・でも、今はヤバい!!」
「フッフッフッ・・・フ・・・フ・・・ああああああああああッ!!」
聖盾の代行者は愛用の武器を手に構える。親友との再会を喜ぶ暇さえ無い程の怪物がいるのだ。
「あああああ足りない足りない足りない絶望と狂気が足りなぁい!!」
眼前に立つソレは、人の形こそしているが、人間ではない。
「リラーイト!せめて初めからやり直したまえ・・・それが!それだけが愚かな役者に与えられた唯一の特権んんん!」
ソレは人でないのだ。
タタリってどんな口調やっけ、とか思いながら書きました。