Fate kaleid moon プリズマ☆サツキ   作:創作魔文書鷹剣

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ep42終焉の鐘

 

「ああああああああああッ!!」

 

 狂気を身に宿した厄災、恐るべき絶望の化身。ワラキアの夜、あるいはタタリとも呼ばれる怪物は咆哮した。狂気の象徴たる満月、かつて自身を拾い上げて「現象」とした月の姫(アルトルージュ)に。

 

「リーズ!」

 

「シオン下がってろ!!」

 

 リサイクルバイフェ・ストリンドヴァリの聖盾・・・ガマリエルの強撃がタタリを打ち砕かんと振り下ろされる。しかし、盾は空を切った。

 

「フフフ・・・フフフ・・・フフフフフフフフフッ・・・カットカットカァット!!あまりに、あまりにも駄作が過ぎる!!監督の意向を無視する役者が2、3人いたところで脚本は変わらない!!ああ月よ、月の姫よ、やはり貴女こそが!あれなる「真祖」よりも、貴女こそが!真に地球の王たるに相応しい!!月がヒトの起源なれば、霊長の支配者たるに相応しき方は貴女のみ!霊長の殺戮者を従える貴女に星は従うであろう・・・とんだ三文芝居に満ちた!この世は!!」

 

 刹那、闇の中より飛来した黒鍵をタタリは回避した。その思考が狂気で埋め尽くされていようとも、以前変わりなく残っている本能で回避したのだ。

 

「まったく騒がしいですね・・・劇団員にしても、少々声を張りすぎでは?」

 

 シエルの問いかけは無意味、この場にいる誰もがわかっていた。元より死徒はヒトとは相入れない存在であり、加えて27祖第13位であれば対話さえ叶わない程の怪物である。それでも問いかけたのは、恐怖故に。彼女に死を視る事はできない。「彼」のように自分の命を捨てる覚悟で立ち向かう事はできない。それでも、立ち向かうのは、「彼」のようななりたいから。

 

(遠野くん・・・わたしに力を下さい!)

 

「フフフッ・・・劇の終幕にはまだ早い。しかぁし!前座ぐらいならばここで演じれるだろう!!絶望と狂気に満ちた、破滅の演劇を!!」

 

「破滅など、まだ早い!」

 

 シオンの言葉が有する重み、それはアトラス院の錬金術師が挑み続けた「破滅の回避」への研究故に。規模(スケール)こそ違えど、そう易々と破滅を齎す怪物に屈する事はできない。例え自分とは関係の無い地であれど、本来は聖堂教会の管轄であれど、そこには譲れない理由がある。

 

(リーズ・・・貴女が行くのなら私だって!!)

 

「では・・・いざ!演劇の幕を上げよう!前座の始まりである!!」

 

「前座だって?聖堂教会、舐めるなァ!!」

 

 リーズの咆哮が響く、それは聖堂教会の使いであるが故に。目の前にいるのは彼女が打ち倒すべき敵である死徒、それも27祖13位に位置する大物。ここで退いては自分の人生を否定する事と同義。例え一寸先が闇であろうとも、その先こそが自分の進むべき道であるならば、迷わず突き進むのみ。

 

(シオン・・・私は今回こそ、この怪物を討ち取る!)

 

「ああああああああああッ!!絶望の兆しが天を覆う!月は後3度その姿を現し、破滅の刻が訪れる!!リテイクは後1度!その時は必ずや、真なる大災害となりし我が身によってこの地は焼かれるであろう!眠り姫(・・・)諸共!!」

 

「何わけわからない事言ってんだ!!破滅の刻とか、そう簡単に訪れてたまるか!!」

 

 タタリの凶爪を避け、ガマリエルによる渾身の打撃を叩き込む。この程度の攻撃で勝てるとは思っちゃいないが、それでも多少の傷にはなる。吸血鬼が傷を負った時、それを癒すには吸血による回復が最も早い解決方である。しかしここにいる3人はそれを許す程甘い相手ではない。ならば残る手段は、逃走して一般人から吸血する事。この戦いは、敵が撤退した時点で勝ちなのだ。だが、それができるなら苦労はしない。

 

「絶望と狂気が足りないぃぃぃぃぃ!!」

 

「狂気なら、あなた1体で充分ですよ!!」

 

 シエルの黒鍵も最早傷をつけるには役者不足。そもそもこれ程の相手と戦うならば本来はそれなりの備え(・・・・・・・)を用意しなくてはならないのだが、急な遭遇故に今の手元にはそれが無い。この化け物を討ち倒すのに必要なのは、それこそ「死徒を殺すための聖遺物」とか「無償の奇跡を起こす器」級の装備だ。どう考えても一個人が携行できるものじゃない。

 

「そもそも私は戦闘要員じゃないんですけどね!こういう役回りはリーズの仕事でしょう!!」

 

「ああもうそんなヘソ曲げてないで頑張ってくれってば!!」

 

 こんな時でも夫婦喧嘩してるあたり、相当気の合う2人なんだろう。今喧嘩しないでほしいけど。

 

《15分経過・・・》

 

 戦い始めてから15分が経過したが、戦果らしい戦果は未だ無い。それどころか戦えば戦うほど力の差を感じ、タタリの方には傷らしい傷は一つもない。いかにこの戦いが無謀な戦いであるかを感じる。

 

「結局前座では役者もこの程度・・・真打ちの登場によって忘れ去られる黒子の如し・・・」

 

「真打ち・・・だと・・・?」

 

「リラーイト!!せめてそれまでに脚本を書き直そう・・・」

 

 厄災とは古来より絶望の化身であり、ヒトの発展と革命には常に大きな厄災が隣合わせだった。そして今、絶望と化身たるタタリは周囲一帯を地獄に作り替える程の大厄災をもたらそうとしている。なのに、人の力は、あまりにも弱い。目の前に行く怪物さえ、討ち倒す事も叶わない程に。

 

「それではこの辺りで幕引きといこう・・・」

 

 やっと見つけた獲物が、夜の闇に溶けようとしている。もう誰にも、引き留める事はできない・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

斬撃(シュナイデン)!!」

 

 それでも、いつの時代も、終焉に立ち向かう勇者がいるものだ。

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