Fate kaleid moon プリズマ☆サツキ 作:創作魔文書鷹剣
《さつきside》
決戦の時は少しずつ近づいている。次に月が昇った夜、ついにタタリとの決戦を迎える。しかし現実は決戦に向かうには心許ない状況だ。タタリに一撃を加えられるような強力な手札は無く、唯一使い物になりそうなカレイドステッキの「第二形態」とやらもぶっつけ本番に近い。こんな状況で希望を抱けという方が無理な話だが、痩せ我慢でも希望を抱くしかないのが現状だ。
「月・・・明日は満月だっけ。」
「以外ね、アンタはそんなメルヘンじゃないと思ってたけど。」
「メ、メルヘンって・・・満月かどうかってそんなにメルヘンなの?」
「いや知らないけど。」
この2人は緊張感があるのか無いのか、さつきはあるだろうがオルタにそれがあるかはよく分からない。多分、きっと・・・あるはずだが。
「あの頃は月が綺麗だって呑気な事考えてたわよねー・・・今じゃそれどころじゃじゃないけど。」
「そ、そうだね・・・」
「後は『彼』に対して月が綺麗だねって言えれば完璧だけど。」
「え?遠野くんに対して月が綺麗だって・・・どういう事?」
「・・・。」
まさか知らないとは・・・最早畏怖さえ感じると同時に、自分は情操教育までするかもしれないと思いオルタは頭を抱えた。実際この手のワードに関してさつきは詳しくはないが、オルタも詳しくは知らないあたりどんぐりの背比べである。
「とにかく、明日の夜は命をかけて戦うかもしれないんだから。覚悟は決めておきなさい。じゃなきゃきっと後悔するわよ。」
「覚悟、か・・・」
さつきは自分の胸に手を当てて考える。正直覚悟が出来ているかと聞かれれば、出来ていない方だ。だがそれでもやらねばならない。自分が戦わなければ、その埋め合わせはきっとイリヤがするだろう。無茶しそうな彼女の事だから、また無茶な戦い方をして自分を追い詰めるんだろう。そうならないために、自分自身が頑張らなくちゃいけない・・・どう頑張ればいいかはわからないけど。
「覚悟出来てるならいいけどね、別にアンタにはそれほど期待してないけど。」
「うぅ・・・何で期待してくれないの・・・?」
「自己認識ぐらいちゃんとしてると思ったのに・・・」
漫才じみたやり取りをしながらオルタは月を見上げる。自分がまだ「弓塚さつき」であり三咲町にいた頃は綺麗だと思っていた月も、今では不吉な感じがしてならない。この不安が杞憂に終わればいいが・・・
(杞憂になんてなるわけが無いか・・・相手はアレだし。)
悲観的な推測をしながら立ち去ろうとした時、廊下の向こうから美遊がやって来た。
「さつきさん、オルタさん・・・」
「あれ美遊ちゃん、子供はこんな時間まで起きてちゃダメだよ?」
「さつきさんだって十代、十分子供。」
『むしろさつき様の方が子供っぽいかもしれません。』
「え、えぇ・・・そんなに・・・?」
そんなにかは不明だが、確かにさつきは子供っぽいところがある。人間ですらないサファイアに言われるのはなんとなく不服だが。そんな話をしていると、何処からともなくルヴィアもやって来た。
「呑気なものですわね。」
「アンタは違うっての?ルヴィア。」
「そうとも言いますわ。この事態は未だかつてない大惨事を生むかもしれないのですのに・・・エーデルフェルト家の魔術師たる
(そうとも言うんだ・・・)
若干空気を読まないのはエーデルフェルト家のしきたりか何かか、その辺りは気になるが今はそれどころじゃない。
「アレが相手じゃ気を緩めないのはわかるけどさ、あんまり力んでちゃ何も出来ないよ?」
「そんな事は百も承知ですわ。」
(承知なのかなぁ・・・)
「・・・さつきさんが失礼な事を考えた気がする。」
『あのような発言は作者の意向によって許されるのが常です。』
「作者って誰!?」
決戦前夜だと言うのに彼女達の間に広がるのは不安ではなく、いつもと同じ空気だった。極大の恐怖に打ち勝ち希望を掴み取るため、彼女達は戦わねばならない。ならば、その前日ぐらい呑気にしていたって咎められる筋合いは無いだろう。
すぐそばまで迫る終焉の時、恐怖と狂気が支配する死の演劇。眠り姫が目覚める前の僅かな茶番・・・思い出すべきは、自分が何であるかだ。
もうすぐメルブラ編も終わり。