Fate kaleid moon プリズマ☆サツキ 作:創作魔文書鷹剣
《さつきside》
(ま、間に合った〜)
本当にギリギリの状況だった。イリヤと美遊は既に戦闘不能であり、目の前にいるタタリは傷一つ負っていないのが見て取れる。もしも自分達が乱入していなければ今頃2人は・・・
(い、いや今はそんな事より・・・)
イリヤ達の身はルビー達に任せればいい。加えて凛とルヴィアがサポートしている以上身の安全は何とかなる。だから、今は目の前にいる存在をどうにかする事に集中せねばならない。
「ふぅん・・・ふぅんふぅんふぅん・・・」
タタリは狂気的な視線でさつき達を一瞥し、静かに笑う。
「これはこれは・・・あまりに無意味!!たかが三流役者が幾らか増えたところで大作など作ればしなぃいいいぃい!!」
「三流かどうかはやって見ればわかるんじゃない?」
「言うまでもなく!!三流役者の舞台など!!たかが知れているぅ!!」
タタリの攻撃はもはや災害に等しい。簡単に地面が抉れたりするし、一歩間違えれば即死は免れない状態の中で戦わなければならない。オルタを始めとした連中は戦い慣れしてる事もあり巧みに立ち回りギリギリで回避し続ける。
「どう?少なくとも2流ぐらいには昇格してもいいんじゃない?」
「何でそんなに余裕そうなんですかッ!!」
「シオンー!?そっち気にしてたらこっちが持たないんだけどー!?」
幾多にも及ぶ攻撃、両陣営が発するそれは常人の介入を許さない程の破壊を齎した。吸血鬼という存在がどれ程危険な存在であるか、そして如何に殲滅という選択が正しいものであるかをその破壊力が物語っている。
「死徒27祖第13位、言い換えればこれでまだ13位だという事ですか・・・全く嫌になりますね!!」
シエルの攻撃も最早意味を為しておらず、並の死徒ならば容易に殲滅できるだけの実力を持ってしても尚勝機は薄かった。各々が自分の意地と執念で食い下がり、絶望がヒシヒシと迫る中で希望を探して戦い続ける。嵐のように繰り出される猛攻を前に、綱渡りに等しい戦いを強いられるこの状況は地獄と呼ぶに相応しい。
「はぁ・・・はぁ・・・もう無理、死んじゃう・・・」
なんならこの激闘に参加している中で1番死にそうなのはさつきである。オルタが分裂してからというもの死徒の力が薄まり、やや人間に近づいている今の彼女ではこの激戦についていけなかった。
「アンタは大人しく下がってなさい。じゃなきゃホントに死んじゃうわよ!」
「なぁるほど・・・しかぁし!!この舞台!演者の降板は死によってのみ成される!!それ以外での降板など認めないぃ!!」
タタリが狂気的な執念を持つもの、それは自らが手掛ける破滅の舞台を完成させる事。かつて人の限界を超え、可能性を掴み取ろうとした彼はもう死んだ。故に、相応しくない振る舞いをする演者には死を以って償わせるのである。
「主演から端役に至るまで!我が舞台に上がる演者は命を賭して演じ!死によって役を完成させるのが常!!ならばその法に反する者など不要!!」
「やば・・・早く!早く逃げて!!こんな時まで鈍臭いとかナシだから!!」
オルタの必死の叫びが響く。さつきはすぐに動き出し、後の事など何も考えず逃げ出した。しかし、タタリの方が早かった。
「え・・・?あ・・・」
一瞬、たった一瞬の出来事だった。刹那の時間でさつきが認識できたのは、自分の腹をタタリが貫いた事。即ち、自分はやられたという事だ。
「人と死徒の中間・・・半端な演者は不要!この場にいる誰もが!!すぐにクビを絶たれて消えてゆく!!」
さつきは抗う事も出来ずその場に崩れ落ちて、僅かに残った意識で体を動かそうとしても指一本動きはしない。完全な詰みだ。
「弓塚さん・・・そんな、事が・・・ッ!!」
視界が揺れる、腕が震える。貫かれた体は痛みさえ感じる事なく崩れ落ちる。仲間が何か呼びかける声も聞こえない。だが体の崩壊と同時に、胸の奥が熱く滾るのを感じる。
(何・・・コレ・・・)
そしてさつきの体を激痛が襲う。四肢が僅かな肉片にまで引き裂かれ、体が跡形も無く弾けそうな激痛だ。瞬間、彼女は自分に残された死徒の本能により悟った。今、この感覚の先に勝機はあると。瀕死の体に鞭を打って立ち上がり、産まれたての子鹿のような脚で地面を踏みしめる。
「んんン・・・三流役者ほど往生際が悪い・・・」
真っ直ぐにタタリを見据えて立ち、自分の中に滾る熱さを感じ取る。
(体が・・・ッ!弾けて・・・ッ!!)
真紅の瞳で討ち取るべき獲物を見つめ、自らに眠る力を解き放つ。
「枯渇庭園」
ついに来ちゃったよ・・・