Fate kaleid moon プリズマ☆サツキ 作:創作魔文書鷹剣
《イリヤside》
それは凶々しい紅い月、聖杯の器と吸血鬼の力が混ざり合い誕生した破滅の凶星。地獄の具現化に等しい怪物を葬り去るために、その力は振われた。
「
紅い閃光が夜の闇を切り裂く。破壊の限りを尽くすタタリを打ち砕くために放たれたその一撃は、宝具の域に届き得るほどの火力であった。
「はぁ・・・はぁ・・・」
たったの一撃でイリヤは満身創痍、魔力のみならず力という力を吸い尽くされた彼女の体は吹けば飛ぶような脆さだった。
「イリヤッ!!」
「全く無茶な事して・・・」
咄嗟に前に出た美遊、苦言を呈しながらも臨戦体制に移行するオルタ。そしてこの場にいる全員が徹底抗戦の意思を見せた。何故ならば、目の前にいるのだから。あの一撃を受けてなお、死とは程遠く佇むタタリがいたのだから。
「んんっ・・・いい、とても・・・素晴らしいッ!!」
タタリの発する声は称賛であった。
「なんという奇跡!これは誠に素晴らしい!!大舞台には魔物が棲んでいると言う物だが!これ程の奇跡は他に無し!!いやはや此れは痛快!なるほど此れは我が手ではなく『眠り姫』に任せるべきであろう!それでは、異なる形での滅びが訪れるまで暫しお別れと致しましょう・・・」
タタリは、フッと消えた。後に残されたのは静寂と、僅かな安堵。
「や、やった・・・んだよね・・・?」
その声に誰かが答える前に、イリヤの意識は途絶えた。
《さつきside》
月明かりが窓から差し込む夜、柔らかなベッドの上でさつきは目覚めた。
「う〜ん・・・遠野くんそれはだめだって・・・」
訂正、目覚めはしたが寝ぼけたままである。
「いつまで夢見心地なままなんですの?」
「むにゃ・・・いだっ、いだいよ遠野く・・・あっ、ルヴィアさん。」
突然頬を摘まれてさつきは飛び起きた。目の前にいたのは先程の激痛を与えた張本人。
「動くと怪我が体の具合が悪化しますわ、大人しくしていなさい。」
(一番悪化してるのはほっぺなんだけど・・・)
「黙ってそのまま聞いておきなさい、アナタが気絶してる間にタタリは撃退されましたわ。アナタの働き、称賛に値するものですわ。」
「は、はい・・・」
「アナタの使った力、知りたい事は山程ありますわ・・・それでも、今回はその働きに免じて不問としますわ。感謝なさい。」
一応感謝はしているのだろうが、態度がデカ過ぎるせいでイマイチ伝わってこない。さつきも放心状態で話入ってきてないし、どんだけ強い力で頬を引っ張ったんだ。ちょっと羨ましいぞ。
「イリヤスフィールの見せた新たな形態・・・シェロと同じ顔の彼、色々と謎は尽きぬままですが・・・ひとまず、今は休みなさい。」
「はい・・・」
再びさつきは横になり、目を閉じて眠りについた。そして、その夜・・・
コツコツコツ。
窓を叩く音でさつきは目覚めた。窓の外には「協力者」———、もといシオンとリーズが立っていた。
「弓塚さつき。私達は今夜、それぞれの居場所へ帰ります。」
「その前に別れの挨拶ぐらいしたいってシオンが言うから・・・」
「・・・ッ!?リーズ!!余計な事は言わないようにとあれほど・・・」
「・・・ふふっ。」
微笑ましい(?)光景にさつきはちょっとだけ吹き出した。何故かはわからないが、この3人が揃うとしっくりくる。欠けていたパズルのピースが埋まったような気持ちよさに近い、何か不思議な感情が胸の奥から湧き上がるのを感じるのだ。
「・・・コホン、タタリは確かに去りました。今この町にタタリの気配は感じられません。ですが、まだ全てが終わったとは言えません。」
「・・・え?」
「タタリが『眠り姫』なる存在について言及した以上、これから先にも何かが起きるような・・・そんな気がするのです。こればかりは計算のしようが無いので何とも言えませんが。」
「だから気をつけろって言いたいのに、シオンって素直じゃないから・・・」
「・・・だから余計な事を言わないでください。」
「え、えっと・・・つまり?」
「今後も今回に匹敵する事件が起こり得るという事です。だから用心してください。」
タタリの出現に匹敵する事件が起こり得るという発言はさつきにとって衝撃の内容だった。今回だってそれぞれが力の限り抗った結果の勝利だったのに、それに匹敵する事件など他にあるのかと思ってしまう。そしてそれが真実になった時、自分達は再び同じような戦いに身を投じる事になる。
「それが起きた時、私達は駆けつける事さえできないと思われます。その時は貴女が再び、あの力を使う事になるでしょう。それまでに『あれ』を制御できるようになっておく事をおすすめします。」
「じゃあ、そういう事で。じゃあね〜♪」
2人の影が遠ざかって行く。後に残されたさつきは寂しさを感じつつも、これから起こり得る事について考えていた。
(事件、事件かぁ・・・今もある種の事件だよね。忘れてたけど。)
色々ありすぎて忘れていたが、元々さつきの目的は三咲町に帰る事である。そんな事言ってられないような事件が頻発したせいで後回しになっていたが、そもそもの目的を達成するために動くべきではないかと再確認する。
「戻らなきゃ、絶対に。」
「なーにブツブツ喋ってんの?」
「ぴゃいッ!?」
「はぁ・・・妙に鈍臭いのは知ってたけど、まさかすぐ後ろにいる私に気付かないなんてね。」
「オ、オルタ・・・」
こっちはこっちで相変わらずだが、さつきはこの際聞いてみたい事があった。
「・・・ねぇ、オルタ。」
「ん?」
「私は三咲町に帰りたいけどさ・・・オルタはどうなの?」
「・・・・・・・・・・勝手にすれば?」
オルタはこれしか返さなかった。そしてこれ以降同じ質問を聞いた事も無かった。だが、さつきは感じとっていた。オルタが悲しい表情を隠していた事を。
《イリヤside》
此方も別れは突然だった。イリヤが寝ている部屋をノックした言峰士郎が姿を見せていたのだ。
「イリヤ、俺は・・・多分すぐに消滅するだろう。」
「・・・え?」
『・・・そうだとは思ってましたが、急な話ですねぇ。』
あまりにも唐突な別れの言葉。確かに彼はタタリによって具現化された存在だし冷静に考えたら消滅するのは当たり前なのだが、こんなにも唐突だとは誰も思っていなかった。
「俺はタタリに召喚された偽物・・・アイツがいなくなれば俺も消えるんだ。」
「・・・・・・・・・・。」
『イリヤさん・・・』
「でも忘れるなよ。俺は『あっち』じゃ独りぼっちだったけど、イリヤは違うんだ。家族がいて、友達がいて、みんな繋がっているんだ。だから、みんなと仲良く・・・家族も友達も、大切にしろよ。」
「・・・うん。」
「・・・じゃあな。それと、会えて良かった。」
そう言うと言峰士郎は夜の町に消えていった。そしてイリヤは少しだけ涙を零しながら、静かに眠りについた。
やっと、メルブラ編完結です。