Fate kaleid moon プリズマ☆サツキ 作:創作魔文書鷹剣
《さつきside》
本当に望んでいた結末に辿り着いたのかは、誰にもわからない。漸く取り戻した平穏も簡単に瓦解し、その先には長い戦いが待っている。それは、きっと望まれない未来なんだろう。
コツコツコツ。
「・・・?」
ここはルヴィア邸、その戸を叩く音がさつきの耳に入った。来客の予定があるとは聞いていない、ならイリヤだろうと思って戸を開けた彼女の目に入ったのは見知らぬ女性だった。
「あの・・・どちら様ですか?」
「ルヴィアゼリッタ・エーデルフェルトに会いたいのですが。」
「あ、はい・・・」
普通はこんな圧倒的に不審者全開な人が訪ねてきたら怪しむものだが、さつきは言われるがままルヴィアを呼びに行っちゃうのである。やっぱり彼女はメイドに向いてないんだろう。
「ルヴィアさーん。」
「何の用ですの?」
「なんかルヴィアさんに会いたいって人が・・・」
「客人なら客間に上げて差し上げるのが常識ですわよ・・・さつき、紅茶の用意を。」
「はーい。」
さつきに紅茶の用意ができるのかどうかは置いておくとして、取り敢えず言われたとおりに紅茶の用意をするのである。だが客間から離れておいたのは賢い判断だったと言える。
「あ、オルタ。」
「・・・危ないから、もうちょっとこっち来なさい。」
「・・・?」
何か危険な気配を察知したのか、オルタはさつきを手招く。招く手に誘われてみると・・・
ボガ————ンッ!!
謎の爆発音と衝撃波によって2人は吹き飛び、廊下がひび割れるわ窓が砕けるわの大事件。正直並の地震より酷い惨劇である。
「な、何事——ッ!?」
「はぁ・・・やっぱりこうなるのね。」
「何か知ってるのオルタ!?」
「下手人が誰かって事はね・・・私達は暫く隠れてた方が良さそうだけど。」
死徒であるオルタが「隠れてた方が良い」と評するという事は、聖堂教会か魔術協会からの刺客が来ている可能性が高いという事である。如何に彼女らが対タタリ戦線に貢献した功績を持っているとしても、それはその場に居た者達にしか伝わっていない。むしろ客観的に見れば眉唾物な情報なのである。したがって、彼女らを討伐しようとする動きは消えないのである。
「相手は間違いなく強い。今は隠れてる方が好都合だし、何より・・・」
オルタは窓の外を見た。そこには、ピンク色の光が飛んで来る姿が見えた。
《イリヤside》
最初は空耳的な何かだと思った。微かに聞こえたそれは次第にハッキリと聞こえ、その瞬間にはルヴィア邸の一角が崩壊した。
「ルビー!これってなんなの!?」
『うーむ・・・真昼間ですから死徒じゃありませんし、これは魔術協会あたりからヤバいタイプの人が来ましたかねー。』
「や、ヤバいタイプの人!?」
『ええーそれはもう、ルビーちゃん達を作った宝石翁を始め、魔術協会・・・特に封印指定執行者とかは魔術師ってなんだっけと言わんばかりのバリバリ武闘派ですから、出くわしてしまったらお終いですねー。』
「な、なんでそんなに軽いかんじなの!?」
一応緊急事態のはずなのだが、慣れてしまったのかイリヤもリアクションがズレてきた。最初はあんなにフレッシュで一般人的だったのに。
「き、危険な人が来てるんなら美遊かさつきさんかオルタさんを呼ばなきゃ・・・多分無事、だよね?」
『まあ頑丈な人も多いですし、その点は問題ないでしょうねー。』
ルヴィア邸の崩れた部分に到着し、他の誰かと合流しようとした矢先・・・
「止まりなさい。」
「・・・え?」
僅か一呼吸の間も無く、イリヤの背後に一人の女性が立っていた。
『あちゃ〜、これは逃げた方が良さそうですね〜。この人、封印指定執行者の中でも相当危険な人ですから。』
イリヤの背後に立つ女は魔術協会が誇る戦力、封印指定執行者・・・の中でもかなりヤバい部類の存在。バゼット・フラガ・マクレミッツである。
「あなたに自身に用はありません。大人しくクラスカードを渡しなさい。」
クラスカード。タタリとの戦いでは通用するかもわからないので使わなかったそれをバゼットは求めていた。イリヤが持っているカードは「アーチャー」「キャスター」「バーサーカー」の3枚、残りは美遊が持っている。
(ま、まさか美遊が持ってるカードも手に入れる気!?)
もしも美遊が持っている残り4枚のカードも手に入れようとしているなら、彼女も同じように脅迫してカードを手に入れようとするだろう。もし美遊が渡してしまったら?そもそもカードを自分が持っている事はいい事なのか?加えてもしバゼットがカードを使う事ができたら?
あらゆる考えがイリヤの頭を突き抜けていき、1つの答えに行き着いた。
「わ、渡さないもん!!」
『イリヤさん正気ですかー?まあ何言っても変わらないんでしょうけど。』
「交渉決裂、ですか。なら力尽くで奪うまでです。」
バゼットはゆっくりと構え、臨戦態勢に突入した。
「・・・いきますよ。」
危うく7月中も1話も書かずに終わるところだった。