Fate/zero minus   作:yumeno

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原作前
1話 目覚め


「目覚めなさい」

 

女性の声が聞こえ、目を覚ました。

ここはどこだ?なんて考えることもない。

私は死んだ。

 

車でガードレールに突っ込んで死んだ。

救急車で運ばれるところまでしっかりと覚えている。

 

「あなたは死にました」

「はい」

 

女神なのだろう女性が目の前に立っている。

細い目をして慈悲深いまなざしを向けているという印象を受ける。

 

「驚かないのですか?まあ、どうでもいいでしょう」

「はあ」

 

正直ショック過ぎて考えが及んでいないだけだ。

まだまだやりたいこともあったのだが、まあ、天国があるならいいか。

死んで、考えることもできないんじゃないかと思っていたが、思考は案外、魂のような何かが考えているんだろうな~、なんてね。

 

「天国に行きたいのですか?」

「声に出てました?」

「あなたに口はありません」

「…」

 

そういえば体はない。

視界もない。

 

「あなたは運が悪い。私の存在に運悪く近づいてしまったために、思考を得てしまった」

 

どういうことだ?思考を得る?元はなかった?

 

「あなたのような者は、何千年に一人でしょう」

「あの、どうゆう―」

 

「私は慈悲の女神。あなたはこれからこの暗闇で消えることなく永久の時を過ごすでしょう」

 

「あなたにもう一度、死を与えましょう」

「はい?」

 

ドン、とありもしない体が揺れ、ありもしない思考が閉じた。

 

 

 

「やあ」

 

男の声が聞こえた。

風の冷たさを感じた。

人のぬくもりを感じた。

ぼやけた視界で微笑む人の、愛を感じた。

 

「私は遠坂時臣、君の父だ。黄泉」

 

そして目を閉じた。

目がはっきりは見えない。

思考はまとまらない。

だが、安心して眠れることは確かである。

 

 

 

思考をまとめるのに3年を要した。

 

先に結論を言う。

私は転生した。

思考回路は20代後半である3歳児である。これは所謂、神様転生とか言うタイプの事なのだろう。

 

しかも、世界さえ違うので異世界転生である。

そして、私はこの世界を良く知っている。

『Fate/』シリーズの一つであり、私が生前?好きだった物語だ。

 

そして、私の出生は『遠坂』。凛の弟と言えばわかるだろうか?

そう、原作にはいない。除け者である。

 

何故、除け者である私がいるのかは、あの『慈悲の女神』とかいう存在が原因だろう。

あの女神の言葉を私なりにまとめると、

 

人は死ぬと思考を失い、虚空?または天国をさまよう。

それが何の因果か、女神の近くまで来てしまった私の魂?が近づいて思考を得てしまった。

それを女神の慈悲で、もう一度死ぬために、生まれ変わった。

 

と、いうところだろう。

 

まあ、生まれ変わったことはいい。しかし、『Fate/』…。

あの死亡フラグがそこらに転がってるあの『Fate/』…。

 

見る分にはいい。傍観者は被害を受けない。

しかし、出演者にされてしまった。

これはまずい。

 

一度死んでるんだからいいじゃん、とか軽く言ってるなら、ここに引きずってやりたいぐらいだ。

 

しかも、『遠坂』という、魔術から最も近いであろう家である。

物語の中心と言ってもいい『冬木』の土地。

どれくらいかは分からないが、魔術適正が高いらしいことは雰囲気で察した。

 

これは魔術から遠ざかるという選択肢もなさそうだ。

どこかの養子になるのは、桜が間桐に行ったので確実。

 

「にい、にい」

 

隣にいるのは桜。家の隅で私と積み木中だ。

 

「こっ、こっ、こっ」

 

桜が無邪気な笑顔を浮かべて積み木を渡してくる。

くっ!まずい!この笑顔は脅威的だ!目から血の涙が出そうなほど感動的だ!!

 

腕で顔を隠しながら受け取る。ニヤケ顔など見せられん。

 

「ありがとう」

「ふっふっふ」

 

桜は満足したのか違う積み木を探しに行く。

 

思考が逸れた。養子についてだったか。

現状、桜、私が養子に行くのは確実だろう。

凛はおそらく魔術の手ほどきを受けている。今いないのが証拠である。

 

私が間桐に行かなかった場合、ほぼ一〇〇%、桜が間桐に養子に出ることになるだろう。

この無邪気で純粋無垢な少女が間桐で受けた仕打ちを、文字列では知っている。

 

こんな憐れみの感情を身勝手に向けるのは、私としては、とても不快なのだが、まだこの世界では起きてもいないことだ。なら、私が身勝手に助けることも良いだろうと思うが、どうだろう。

 

しかし、正直、間桐に行きたいない。間桐は子に虐待と言っていい魔術の修練を行う。もういっそ殺せと思うような醜悪な拷問の数々。それが私は受け入れがたい。

 

しかし、桜に押し付けたくもない。

ならば間桐臓硯、いや、マキリ。ゾォルケンを殺―――

いや、無理だ。できない。そんな覚悟はかけらも持ち合わせていない。

 

人を殺す。

この世界では魔術師とは『根源』にたどり着くためには身内すら捨て置き、お家の悲願を遂げるもの。

だから、殺すという覚悟を持つべきかもしれない。

これから先、殺さなければ、こちらが殺されるなんていうことが来るだろう。

 

ゾォルケンは最早、人ではない。蟲の塊であり、人を食らって生きながらえる畜生だ。

 

だから殺してもいい、と言うのか?…否だ。

私は例え、身内が殺されてもそいつを殺すなんていう覚悟を持てないだろうほどのヘタレ。

 

何よりゾォルケンを殺そうとした瞬間、私の屍ができているのが容易に想像できる。

 

喉が渇く。

死を経験した私は、何より死が恐ろしい。

 

「にい?」

 

桜の顔が近くまで来ていた。

 

私がやらなければ桜は間桐に行く。あれに桜が入っていく。

それを想像した。その瞬間にさっきまでの悩みはなくなった。

簡単だ。

桜が間桐に行くよりはいい。

 

矮小な我が身が桜を見捨てたら、必ず自殺する。

ガラスのようにもろい私の心ではその罪悪感を抱えて生きてはいけない。

 

選択肢はたった一つしかない。

ゾォルケンを殺す。

 

 

決まってからは行動が早かった。

まず、魔術だ。

遠坂では、凛にしか教えないだろう。しかし、あのガサツな凛は、部屋に本を積んでおいていたりしている。

私はこっそり忍び込んで本を読みあさる。

 

マキリ・ゾォルケン。

奴を殺す方法は少ない。

一つは『光』。

魂を蟲から蟲に移し替え続けた身体は、『光』に弱い。

教会の人間が持つような『聖』系統の攻撃ならば、ゾォルケンの体を穿つだろう。

 

だが、根本である魂そのものを何処かに隠している場合、その限りではない。

 

ゾォルケンは本元の、心臓とも呼ぶべき魂を宿した蟲を最も安全な場所に保管しているほどに注意深い者だ。

唯の、体の形をしているだけのモノを崩しても意味がない。

 

もう一つの方法は『完全隔離』。

ゾォルケンの体は常に腐り続ける。それを回避するために、他人に移し替えて生きながらえている。それをさせないようにする。

 

しかし、これは現実的じゃない。

 

五〇〇年も生きながらえる畜生を捕まえるのは、不可能だ。

五〇〇年の差をたった二年の独学魔術修練で追いつき、出し抜き、蟲一匹逃すことのない檻に入れる。

無理だ。

 

 

そして、今、本を読んでいて分かったことだが…と言うより、何故気づかなかったんだ?と、思うほどのことなのだが、

 

私が魔術を行えば父にバレるではなか!!

 

魔術というのは痕跡が残る。素人の知りもしない知識では隠すのは難しい。

私はこっそりと魔術を学ぼうとしているのだ。バレるのはまずい。

いくらガサツな凛だろうと、私が魔術を行えば本を綺麗に片付けるだろうし、父には暗示の魔術でもかけれられ、思い出せなくされるかもしれない。

 

それはまずい。

 

どうするか?父に直接言ってみるか?

養子にするだろうから今からある程度魔術かじっときたいとか?

まあ、それも考えておくという方向で。

 

ギイ、という音がした。

あれ?おかしい。今、ギイという音がした、ということは後ろに人がいるのでは?

あれ?その前に廊下に、音を鳴らす仕掛けを施して、人が来たことを教えるように仕掛けておいたのだけど…。

 

「黄泉」

「は、はい父様」

 

時臣さんがすごい笑顔で私の後ろで立っている。

私は本をさっと隠し、目を合わせないようにする。

 

「何をしてるんだい?」

「はは、いやその」

 

超怒っとる。笑顔が怖い。これの表情は未来の凛の顔に似ている。

 

「はあ、黄泉も遠坂の人間に生まれたのだ。優雅たれ」

 

すいません。無理です。怒られてる状況で悠雅にはいられませんよ。

 

「何も魔術を教えないことは無い」

 

へ?

顔を上げるとそこには真剣な目に変わった父がいた。

 

「お前は頭がいい。この家に何かあることは気づいていただろう」

 

ドキッ、と驚愕の顔を浮かべてしまった。

ちっ、子ども扱いされた方が動きやすかったのに…。

 

「そして、その書物を読んだ、と言うことは、魔術が一子相伝であることも分かっているだろう」

 

「凛、黄泉、桜、お前たちは、私では届かない高みに辿りつけるだろうほどの素質をそれぞれが持ってしまった。そこも気づいていたのだろう」

 

何もかも御見通しで目を泳がせてしまう。

まあ、気づいたのではなく、知っているが正解なのだが…。

 

「さらに、黄泉と桜、お前たちが他の家に養子に出ることを知った。違うかい?」

 

小さく頷く。

あれ?この人、こんなすごい人でしたっけ?遠坂家って『うっかり』の系統じゃなかった?

 

「そして、他の家に行く前に多少は知っておきたい。だから、こっそりバレないように隠れて魔術を習おうとした」

 

また小さく頷く。

 

「好奇心旺盛なことは良い事でもあるが、もっと注意深くしなくてはならない。魔術の書に何のプロテクトもされてないなんて、甘い考えだよ」

 

た、確かに…。

と言うか、こんな簡単な問題に気づかないなんて、やはり遠坂の血か?

 

「すみません」

「来なさい。これから簡単に魔術の基礎を叩きこむ」

 

父が小さな笑みを浮かべた。

なんだろうか?まあ、いいか、教えてくれるなら。

 

 




ありがとうございました。

誤字脱字、この人はこんなセリフじゃない、等ございましたら書いていただければある程度修正しようと思っています。


『どうゆう』→『どういう』に修正しました(2018/4/11)
教えていただいた『通りすがり』様ありがとうございます。



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