「それでマスター。これからどう動くのかね?」
アーチャーが時臣の問いかける。
偽りの第一戦が終わり、次の日の昼。
「何もしない。ここからは他の陣営をアサシンで監視しつつ、襲ってくるようなら撃退する。下手に動いてサーヴァントを失うようなことをしないためにも、一番安全といえるこの地に居座るつもりだよ」
さらに言うなら君のその低いステータスの所為である、という言葉を足したいところだったが、時臣はそんな愚かな選択はしない。
「安全…か…」
アーチャーはこの地のやってきた魔術師たちの名簿を見ながら呟く。その瞳には一人の男の写真が写っていた。
「どうしたのかねアーチャー。その男が気になるのかね?」
その男の名は『衛宮切嗣』。魔術師でありながら、魔術を殺しの道具にしか使わない魔術師の面汚しの男。
それを見てアーチャーは小さく「なんでもない」と答えるだけだ。
「すまないマスター。少し外に出たいのだが、よいだろうか?」
「ん?何か用かね?」
普通、マスターを置いてサーヴァントが勝手な行動をとるのは、マスターとしてはありえないと考えるだろう。しかし、時臣の陣営には『アサシン』がいた。故に、重要な時にさえこちらの指示を聞いてくれれば構わないのだが、何の用なのかは気になるもの。
しかし、アーチャーは大した事はないと答え、それ以上何かいう気配もなかった。
時臣は少し考える。
サーヴァントとの友好関係は重要になる。令呪という強力な命令権を持っているが最大3つ。無駄うちしないためにも、ここでアーチャーの単独行動を許可しようと思った。何よりまだ序盤。
「…まあいい。では夜に」
「感謝するマスター。場合によって令呪を使ってくれ」
アーチャーが去る。
謎が多いサーヴァントだ。ステータスは軒並み低く、執事の真似事ができる。さらにはアーチャーでありながら剣を使うという様々な点。
記憶を失っているといっていたが、そうゆう宝具があるのかもしれない。そういえばどこかの英雄は満月以外は理性を失うというものがあった。そんな伝説をなぞっているのかもしれない。
と、時臣は思いながら先ほどまでアーチャーが見ていた書類を見渡す。
――…
第二夜。
剣と槍とが火花散る二戦目が行われていた。
それをアーチャーの横やりを入れるまではよかった。しかし――
「アーチャーとのリンクが切れた…まさか…」
サーヴァントに魔力供給するためのラインが閉じてしまった。これはつまりアーチャーが敗れたのだろう。
「失敗…だ。綺礼に頼み、アサシンのマスター権を譲ってもらう以外の手は…ないか」
小さなため息をつく。最近こればかりだ。まあ、サーヴァントの召喚に失敗したときからこれはある程度予測してしかるべきだったのかもしれない。
「アサシン綺礼に連絡を」
何も無い壁。そこにはアサシンがいるはずだ。分体の一人が連絡用に残っているはずだと思って話しかける。
「アサシン?」
呼ばれればすぐに現れるはずのアサシンが出てこない。
…何故?
「いやはや、呼ばれているここにいるはずのアサシンは何処でしょうね?代わりと言っては何ですが、吾輩が貴殿の前にはせ参じましょう」
扉にもたれかかるように現れたのは赤茶色い髪の英国紳士。緑を基調とした派手な男だった。
サーヴァント。
ごくり、と喉がなる。
「しかし困りました。吾輩、所詮は物書き。倒してこいなんて言う抽象的且つ、非現実的なことを令呪を使ってまで命令されるとは…少々憎悪のこもった面白いマスターと思ってはいましたがこれは――」
そのサーヴァントは一人、踊りるように話し出す。
内容はさっぱり入って来なかった。どうここから脱出するかばかりを考えている。
アサシンがいなくなり、アーチャーはおそらく落ちた。となればここは撤退以外の手は残されたいない。
「――まあこれでもサーヴァントの端くれ、多少の努力はしてみましょう。
――…
「キャスター…本当に間桐は面倒なものを呼んでくれたものです。まあ、神代の魔女やらどっかのロリコンショタコンおじさんが呼ばれなかったマシかもしれないですが…」
少年の姿が教会にあった。
そこには負傷した和服のサーヴァントと何十体ものアサシンたちがいる。
「もう少し早く動ければ、アサシンが時臣をとっていたのに…」
端の方には先ほどまで言峰綺礼だったものが転がっている。
月明りでぼんやり照らされた聖杯堂にはほかにも何人かの人間が横たわっていた。
「綺礼で実験もできました。これで私の願いが叶うと確信できましたし、さっさとイレギュラーはつぶして勝たせてもらいましょうか――聖杯戦争」
アサシンのサーヴァントたちが散っていく。
踊れよ舞台役者の主役たち。我々裏方は舞台の裏にて先に宴会を始めよう。
ありがとうございました
次は来週の水曜(2018/5/2/17:00)に更新します。