ケイネス・エルメロイ・アーチボルト死亡。
ビルに拠を構えれていた彼は衛宮切嗣によってビルごと爆破され、瓦礫に埋もれた。
衛宮切嗣は虚ろな目をして、その光景を見ていた。聖杯によって救済された世界のために。
恒久的な世界平和を聖杯に望み、叶うと信じている。叶わないことはない。しかし、具体性のない願いを聖杯は叶えることができない。衛宮切嗣が世界平和を願ったなら、全人類が滅びる以外の道が残されていない。彼の価値観では天秤の傾きがすべてを決し、最後の一人、衛宮切嗣が生き残った最後のその瞬間に自らを殺して世界の救済が終了する。
ただの兵器に変わったと知れば必ず衛宮切嗣は聖杯を破壊する。それでは困る。私たちの願い、具体性のある全人類の救済を叶えるにはどうやっても聖杯が必要になってくるのだから。
全人類を何故、私が救済するのか?と思うかもしれない。答えは単純にして明快。私をこんな奴隷のように扱っている自称女神を倒すためだ。全ての願いを星に祈り、聖杯を通して私が叶える。
私の魔術は天体魔術。願いの強さ、量に比例して力を増す魔術。聖杯を用いて魔法の領域に近づけ、奴の力を根こそぎ奪って地に落とす。
私の状況を教えてやろう。オートモードで約2年、桜の願いを叶えるためだけに使われた。記憶は曖昧だし、いつの間にか英霊兼不死人になっていた。
私という自我は、かけられた願いの難しさに比例して深く沈み込み溺れ苦しむ。
桜の願い、単純なはずの願いを難しく受け取った私が、間桐を滅ぼすまで自身が浮き上がらなかった。
「どうされた?何もしないようであるならば吾輩、戻って達筆の続きを――」
隣にはキャスター、目の前には衛宮切嗣。全く、最悪のタイミングで目が覚めたものだ。
「――むぅ?本当にどうされた?まるで狐につままれたような表情をしておりますぞぉ。首根っこつかむかのように無理やりこの場に駆り出したというのに、おやおや、マスターが敵を前にして固まってしまうとは…もしや生き別れの兄弟などというべたで使い古した手でありますまいなぁ?王道は確かによろしいでしょうが、読者が飽きてしまいます故、そんな鉄板ネタを吾輩に見せるためだけに連れてこられたのだとしたら…がっかりです」
ちっともがっかりそうには見えないキャスター。
恐らくはあおりという人間の感情がむき出しになりやすい言葉を使うことで、状況を楽しみ、ネタをとっているのだろう。
「ささ、マスター。吾輩の思いのために吾輩の舞台で踊ってくだされ」
ああ、次に目が醒めるのはいつになるだろう。
――…
「すみません。少しボー、としてました。帰ってもらっては困ります。貴方はセイバー陣営に対して最大の効力を発揮できます故に、何としても切嗣を」
切嗣はこちらを睨みつけている。
恐れくはそれらしい罠や、対策をとっていたのだろうが、セイバーのマスターがアイリスフィールと思っていると、思っているから効果のあると感じるだけで、切嗣がマスターと知る私には半分以下しか効力はない。
「っ!舞矢、撤収――
「切嗣、こちらにアサシンのサーヴァントが出現しました」
――何!?」
ギリッ、という音が切嗣から聞こえる。おそらくはキャスター、バーサーカー?、アサシン、という陣営が組んでいると確信した。
ここで逃がせば他の陣営に遅かれ早かれ同盟が組まれるだろう。
ならば、若い目をつむがごとく、魔王プレイをしていこうと思う。
――…
これは偽物だ。
宝具によって作り出された結界の中で、舞台役者たちが踊っているに過ぎない。ただ、自身によく似た誰かがそこで何をなそうとも、自身には関係のないことだ。
バババ、という鈍い銃声音がそこら中から響きわたっている。
「た、助けてくれ!!」
バン、と引き金を引くとともに先ほどまで命乞いをしていた男が倒れこむ。
この戦いの首謀者であり、金のために被害を拡大させたクズだ。生かす理由もない。
一を切り捨て一〇〇〇を救う。小学生でもわかる計算だ。
「おやおや本当に?」
「彼はもしかしたら将来、人を救ったかもしれなせんよ」
「それを貴方は、貴方の裁量で殺した」
「自身に正義があると思っての行動か?」
彼を生かせば一〇〇〇の命が失われる。人の命は平等でなくてはならない。たとえどんな状況でも…。
自分自信が正義の味方だなんて夢は、うたかたの空に消えていった。世界の悪であり、その結果、人類が救えるなら良いと考えたからだ。
場面が切り替わる。
次に見えた光景は義勇軍が劣勢の状況に加わり、戦争を増強させようとしていた。
「正義は我らにあり!」
顔も名前もない誰かは、腕を掲げ、指揮を高めている。
しかし、そんな状況をあざ笑うように、腕を上げた瞬間に彼は銃弾で貫かれた。
それを皮切りに、そこに集合していた仲間の兵たちが倒れていく。
「これもまた、あなたの記憶」
「これもまた、正義にあらず」
「彼らは自身の正義を以て行動していたでしょう。しかし、あなたは自身の価値観を相手に押し付けた」
「最終的には義勇軍は到着せず、劣勢だった勢力は一気に鎮圧され、少ない被害で戦争が終わった」
何でもないように言う切嗣。
場面が変わる。
第三幕
出てきたのは聖杯を手にする自身の姿だった。
「さあ、願い給え。汝の願いをかなえよう」
キャスターは周りに転がるサーヴァントたちの外装で切り替わるように名はしけてきている。
「世界平和を」
夢の世界の切嗣は迷うことなく選んだ。その結果あの、船内放送が始まった。
ありがとうございました
来週はお休みとさせていただきます。すみませんm(__)m
次の更新はその次の水曜(2018/5/16/17:00)に更新します。