Interlude―――
双子が生まれた。
子に恵まれることは良いことだ。魔術師の才は生まれた時に決まる。才無き者に遠坂は継げない。
双子の子に『凛』『黄泉』と名付けた。
願わくば、我が子が『根源』に辿り着くことを祈る。
――…
さらに一人生まれた。名を『桜』。
しかし、これはどうするか?『凛』、『黄泉』、『桜』、皆が、希代の魔術師として育つほどの才を持ってしまった。
これをただの凡俗に落とすなど世界の罪だ。
『五大元素使い』、『エーテル・アイテール』、『架空元素・虚数』。
どれも捨てがたい。
しかし、私は魔術師だ。二人を切り捨てなくてはならない。
もしくは養子。
いや、貰ってくれる家があるだろうか?
あったとしても、二人の才を持て余すことの無い名家となるとさらに少ない…。
この中となるとやはり、『凛』。
『五大元素使い』という万能な力は遠坂の力となるだろう。
と、なると『黄泉』と『桜』。
どうするか?
桜はまだ分からない。あの子はまだ幼すぎる。判断はまだ先に送る。
しかし、黄泉の方は…
あの子は大人び過ぎている。
我儘を一つ言わず、私や葵の言うことをしっかりと聞く子だ。
知識欲も豊富で、いつも本ばかり読む。あまり人と喋る方ではないが、困っていると助けてくれるような優しい子だ。
しかし、優しすぎる。
虫の一匹にすら情をかけ、生に対して信じられないほどの感情を向ける。
魔術師向きでは無い。時には切り捨てる選択をしなければならないだろう場面でも、黄泉は出来ないだろう。
この前、凛の部屋に忍び込んで魔術の書物を読み漁っていた時のことだ。
あの子は養子についてを話してた時、小さく頷いて受け入れていた。あれほどの覚悟をあの歳で身に付けている。
さらに博識で好奇心旺盛、素直になんでも吸い込む。この才を眠らせるなんて選択肢は無い。しかし、どうする…黄泉、桜を引き取ってくれる家を探し、聖遺物を見つけ、魔術を繋ぎ、聖杯戦争の準備を行わなくてはならない。どうする…。
「あなた!!黄泉が!黄泉が!」
扉を倒すような勢いで葵が書斎に来た。
「どうし――」
「幼稚園で…病院…意識不明で…私…!!」
詳しくは分からないが、黄泉が病院に緊急発送されたのだろうことを察した。
「すぐに準備する。葵は先に病院に行きなさい」
杖を掴み、すぐに魔術を行使する。使い魔を用いて教会に連絡を入れる。
綺礼に連絡をいれ、遠坂の家の留守を頼んだ。
「「父様!私たちも行きます!」」
凛、桜が玄関で待っていた。
「二人は家で待っていなさい。直に綺礼がやってくる」
「「父様!」」
二人の真剣な表情。しかし、これで二人に何かあれば…
「…待っていなさい」
病院に着く。
すると、黄泉が何人もの医師や看護師に手足を押さえつけられていた。
「早くもってこい!」
何人もの看護師が黄泉のいる部屋を行ききする。注射をするとゆっくり眠るように落ち着いた。
「時臣さん!」
葵が寄ってくる。これはなんだ!?
「幼稚園にいる時に、急に自分で自分の首を絞めてしまったそうなの!!それに気づいた先生が止めて、救急車を呼んでくれたそうなのだけど、今も目が覚めると手で首を絞めてしまうそうなの!!」
訳が分からない。
医師の一人が寄ってくる。
「親族の方ですね。――――」
そこからの会話はあまり覚えていない。優雅たれという家訓を捨ててしまうほど動揺が走っていた。
「―――聞いていますか?」
バッ、と走り出す。これは専門家が必要だ。
――…
そこからは葵に黄泉を任せ、伝手を使って黄泉を調べさせた。
そして分かった。
黄泉は何かの加護を受けている。
しかし、加護と呼ぶには悍ましい。他人からの『願い』に対して絶対服従するような『呪い』だ。
これが原因で黄泉は願われ、死にかけた。
さらに『助け』を求める者に対して意思を殺して助けるという、魔術師になるための切り捨てる要素が決定的に欠けてしまった。
このままでは、下手に良い家に入れようものなら、解剖され、標本のように額縁に飾られる人生になってまうだろう。
何が原因かは分からないが、神秘の薄くなったこの時代で『加護』を受けた、という神代に近い存在だ。いくらでも利用価値がある。
しかし、だからと言って、凡俗に落としようものなら、俗物にいいように扱われるような人生になるだろう。
とり合えず、俗世には送れない。少なくともあの『加護』を制御できるまでは。
制御も兼ねて教会の方で当分預かることにした
「遠坂さん。黄泉君のことなんですが」
悩んでいる私に天啓を授けてくれたのは言峰神父であった。
「あの歳であれほどの博識。神父としての戒めもしっかりと守れるほどの心の強さ。あの才を眠らせるのは勿体無い。もし、良ければ言峰家で引き取らせてほしいのです」
私は二つ返事で引き受けた。
その後、間桐から桜を養子に欲しいという話しを聞いた。
――…
「父様。私が間桐に行くわけには行きませんか?」
黄泉が久しぶりに綺礼とともに訪れてきたと思ったが、どうやら魔術師になれないという道に納得できないらしい。
黄泉は私に突っ張ってくるが、決まったことだと追い出した。
私は選択を間違ったのだろうか?
―――Interlude out
ありがとうございました。
感想等お待ちしております。
次は来週の水曜(2018/2/7/17:00)に投稿します。