Fate/zero minus   作:yumeno

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4話 決断

――…

 

手は残されていない。

父の説得は不可能ではないが、難しい。

父に間桐家の魔術を教えても、生粋の魔術師である父では、だからなんだと、言われるだけ

だろう。魔術師とはそうゆう物だ。世間一般の倫理観で語ることはできない。

父の事を悪く言うつもりはない。

しかし、私は『加護』が無いにしても、肉親を見捨てるような選択が出来ない。正義感から出は無い。罪悪感で心が壊れないようにするために…。

 

ゾォルケンを殺す手が残る。

しかし、この選択は父の説得以上に難しい。

幾ら体の維持に魔力の大半を割いているとしても、五〇〇年を見苦しくも生き続けてきた執念をたった二年の努力で捻じ伏せなければならない。

そして、私にはゾォルケンの本体を見分ける方法が無い。

 

「綺礼。息子の我儘を聞いてほしい」

 

他人の手を借りる手しか残っていない。

 

――…

 

「ほう、つまり、臓硯を殺すために手を貸せと?」

 

一通り説明をした。

間桐の生活を桜に背負わせないようにするために。

他人に寄生し、罪もない者が犠牲になっていることが看過できないから。

 

「それは出来ない」

「っ!」

 

冷徹な表情のまま綺礼は一通りの説明を始めた。

 

「間桐臓硯は人間世界では法で裁かれるべき人物だろう。しかし、魔術師としては罰するところは無い。明確なルール違反を行わないかぎり、聖堂教会は動かない。それは私も例外ではない」

「きょ、教会は罪なき者が殺される状況を放っておいていいのか!?」

 

息が止まるような閉塞感が喉に引っかかるようにつっかえ、声が荒げる。

 

「教会は罪人であるという理由で断罪する場所ではない。それは警察がする仕事だ」

「っ!?――!」

 

正論だ。しかし、警察に頼ったところで意味は無い。言葉が出ない。

ギリ、と口の中を切ってしまう。うまくいかない事にイライラしてしまってる。これでは駄目だ。一度落ち着け。深呼吸。

スー、ハ―、スー、ハー。

 

落ち着け。ここで啖呵を切ったような口調で話せば、間違いなく私一人でゾォルケンに挑まなくてはならなくなる。

何度も言うが、私一人では不可能だ。

せめて本体の位置をサーチできれば勝率が出るのだが…。

 

「落ち着いたか?まあ、そうそうに諦め――」

 

この手は使いたくない。説明が出来ない。だが――

 

「綺礼。貴方は体質の事で悩んでいる」

 

綺礼の口が止まる。こちらを睨み窺がうような目になった。

 

「それがなんだ?悪いが子どもの戯れにこれ以上付き合う気はない」

 

私を睨み、不機嫌そうに部屋から出て行く。

 

「待て!言峰綺礼!まだ――」

「話しは終わりだ。言うべきことはすでに伝えた。父の元で修練の時間だ」

 

「綺礼!」

「くどい!」

 

綺礼は何処かに去ってしまった。

手が無い。どうする…。

 

――…

 

衛宮切嗣。

魔術師殺しとまで言われたフリーランスの魔術師。

彼の持つ『起源弾』は魔術師にとって天敵と言える。魔術で干渉してきたとき、魔術回路は切断され、不完全に結合される。その結果、魔術回路は暴走し、術者を傷つける。

 

蟲でできたゾォルケンには何処に当たろうと魔術で干渉したことになるだろう。

しかし、衛宮切嗣に手を借りることは出来ない。聖杯戦争で全て救えると思っている彼は、小さな犠牲に目を向けないだろう。

まず何より連絡手段が無い。

アインツベルンへの連絡方法は私には無い。父に手を借りれば連絡ぐらいはつくだろうが、それでは駄目だ。冬木の屋敷には巨大な結界が張られ、森には導の一つも無い。この身では屋敷に着く前に息絶えるだろう。

 

ケイネス・エルメロイ・アーチボルト、ウェイバー・ベルベット、アインツベルン、雨竜龍之介、どれも手を貸すことは無いだろう。

 

どうする…。人脈は無い。聖杯戦争まで二年。

しまった…聖杯が汚れているかどうかを確認し忘れていた。いや、第四次が冬木で行われている以上、ほぼ間違いなくアインツベルンは『アンリマユ』を召喚しているだろう。

なら、汚れた聖杯の処理も考えなくてはならないではないか…。

 

頭がパンクする。

情報過多だ。しかし、ここで諦めるわけにはいかない。

 

私が桜を救ってやらなければならない。

私が聖杯を破壊しなければならない。

私が――

 

――世界を救ってやらなければならない。

 

いつの間にか右手の甲に、赤い紋章が浮かび上かんでいた。

 

――…

 

私の魔術は『天体魔術』。星座にまつわる生物を使役し、使い魔として操る魔術。使い魔には意思を与え、自由を与える代償として本来ありえないほどの生物を召喚できる。

星座とは人々の願いの塊だ。人がこうあって欲しいという思いでできた空想だ。

 

本質は願い。それを形どり、伴った願いを引き受ける。

 

この魔術はいわば転生した特典とも言うべきチート性能の魔術。しかし、神霊の召喚は出来ない。抑止力に見つかることもあるが、何より私の魔力が持たない。

そして、何より問題なのは『伴った願いを引き受ける』こと。あらゆる願いを引き受け、果てに“死ぬ”。

当然だ。

星に願う者には死を望む者もいる。引き受けた願いは私に襲いかかり、死の呪いを私に押し付ける。

 

つまり、一度使えば私は死ぬ。

 

つまり、自由に使える私の武器は、黒鍵、聖言のみ。

 

問題はこれだけではない。

抑止力。

これはカウンターガーディアンとも呼ばれているが、これは言わば『星の願い』。

これを衛宮士郎が担っているのだが、私に降り掛からない保証はない。

願われれば最後、断ることはできない。

 

確かにカウンターガーディアンになればほぼ確実にゾォルケンを殺せるだろう。しかし、それにも結局『天体魔術』が必要になってくる。

 

英霊の召喚を行い、ゾォルケンを殺す手もある。

しかし、聖杯戦争は二年後。今召喚することはできないわけでないだろう。しかし、聖杯のバックアップを受けずに召喚することになるだろう。それは拙い。

 

来年には桜が間桐に行く。

 

頭をフルに回転する。何度も繰り返してきたが、正解など見つからない。しかし、諦める選択肢は思い浮かばない。それは思ってはいけない感情だ。光すら追い越して自分が超過する。止めることはできない。そして、

 

――ああ、まだ方法があった。

 

不適に微笑む少年の顔が教会の一部屋にあった。

 

 

Interlude―――

 

その光は本来あってはならない。

しかし、見る者を魅了するようなその希望の塊は赤い光とともに消え失せた。

 

「おお?なんじゃ?」

 

間桐臓硯は夜、体を入れ替えるために外に出ていた。既に体は入れ替わり、帰路についていた。そんなときに見えた光である。おそらくは魔術。一般人には見えぬようにされたそれに目を奪われたその瞬間だった。大きな影が臓硯を覆った。

 

「私が殺す。私が生かす――」

 

ブシャッ。と、いう音が響く。

 

臓硯の体が二つに割れ、肉が飛び散った。多くの蟲が死んでいく。細心の注意は払っていたのに一切気づかず、ゾォルケンの蟲が死ぬ。

聖言はゆっくりと確実に紡がれる。

本体の蟲は外にはいない。しかし、臓硯の体が割かれると同時に家にいるはずの本体が殺された。

 

何が…

 

「――許しをここに。受肉した私が誓う」

 

聖言が終わる。体を満足に動かすこともできず、黒鍵の刺さった身を燃やす。

 

「“この魂に憐れみを(キリエ・エレイソン)”」

 

―――Interlude out

 

 





来週の水曜(2018/2/14/17:00)に投稿します。
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