IS インフィニット・ストラトス 月を見る少女 作:フレイムバースト
ゼルフィカールの格好良さはフレームアームズの中でも随一だと思う
〔バーゼラルド、起動。主人の搭乗を歓迎します。〕
目の前のディスプレイに表示されるのはおそらくこのIS、バーゼラルドに組み込まれたAIによる会話なのだろう。
IS学園へ入学することが決まった次の日、私は千冬に「自分の専用機に慣れておけ」という指示を受けて、誰もいない夜中のうちにひっそりと慣らし運転をしていた。
まず実感したのは私の記憶にあったバーゼラルドとはかなり勝手が違う。そう感じる一つの理由が肩にマウントされたライフル。
私の記憶にあったものは、二連バースト式の実体弾を放つライフルであった。
このISになったバーゼラルドにもそれは受け継がれているが、レーザーライフルとしての機能も果たせるようになっていた。
実体弾とレーザーを撃ち分けられるといえば聞こえはいいが、実際はエネルギーをドカ食いするレーザーを使おうものならバーゼラルドの機動力に回していたエネルギーを兵装に回す必要がある。紙装甲という言葉も優しく感じるほどペラッペラのハリボテ装甲しかないバーゼラルドでは、機動力の低下は敵の被弾を受ける可能性を増やすだけであり、それを招くレーザーライフルとしての機能は余計なお世話、としか言いようがない。
「ナイトエッジなら話は変わるんだろうけどな…なんでこんなもんつけたんだ」
ふと、独り言を漏らして、私はハッとする。なんだ今の口調は。まるで男のような語り口だったではないか。
「…気をつけないと…いつ誰が見てるかわからないもの…」
周りを警戒しながら武装リストを展開する。その数の多さに軽く圧倒されながらも、自分に合ったものを探していく。
マシンガン、ミサイルランチャー、薙刀、鎌と様々な得物を振るっては捨て、撃っては捨て。
最終的に私が選んだ武装は、先端の付け替えが可能なパイルバンカー。
先端部分が巨大なゲンコツのようになっているそれをバーゼラルドの機動力で相手にぶつけるだけでもそれなりのダメージが期待できる。また、クロー状に換装すれば、ある程度の近接戦闘にも対応ができる。杭打ち機のような先端に換装すればピンポイントで狙った箇所に直撃させることができるだろう。
そしてもう一つ、射撃用に選んだ装備。牽制用に使うであろうマシンガンを装備。
これである程度は戦えるはずだ。いざとなれば収納されている武装もあるし、元はラファールだからそれの装備も内蔵している。グレネードランチャーなども使いこなせればそれ相応に戦えるはず、そのためにも『高速切替』の練習が不可欠である。
その練習のために私は無数の武装を展開しては収納して、即座に再展開を繰り返す。常に何かしらの武器を握っている状態を維持するのはなかなかに骨が折れる
「……」
黙々とただ一人で練習を続けていくが、だんだんと心が参って来た。
練習するのは苦ではない、むしろ楽しい。しかしその気持ちを伝えられる人がいない。千冬はさまざまな業務に忙しい上、弟がなにかやらかしたらしく頭を抱えていた。
この前の黛という先輩になる人は一般生徒の為、今現在私とはあまり接触できない。
たった独り。たった独りで私はこの機体を熟知しなくてはいけない。
記憶さえ戻ればこんな悩みとはおさらばなのだろう。だが私は誰だ、私を知る人はどこにいると聞いても誰にもそんなことはわからない。
「…ここまでにしよう」
精神が参った状態では練習もままならない。私はさっさと展開していたISを収納して寮に戻ることにした