寝苦しい夜が過ぎても、昼から燦々と陽光が照りつけ、茹だるような真夏日の様相を呈している。
○○は荷車をひきながら、とある山の山道を登っていた。山中でも、じっとりと汗ばむような熱気が肌に纏わりつく。
彼が今歩いている場所は、比較的勾配は緩やかだが、人の手が入っていない獣道であり、時折足を取られて転びそうになる。それでも何とか姿勢を保ちつつ、一歩ずつ足を進めていく。
この名も無き山には、人里で管理している氷室がある。冷凍庫などない幻想郷において、氷室はとても重要な施設だ。
氷室の氷は、特殊な冷気が纏っており、酷暑の中でも溶けることがない。それどころか、外気温に影響を受けず、常に一定の温度を保てる性質を持っている。
そのため、氷を使った食物の保存や、氷菓子の製造などに重宝されていた。幻想郷の夏において、氷の需要は高い。
○○の目的は、そこにある氷を、人里まで運搬することだった。
しかし、その道中は非常に危険である。妖怪もそうだが、山の中には熊や猪などの、人に危害を加える動物がいるからだ。
そのため、荷車には退魔の御札が大量に貼られている。これがあれば、人間以外の生物なら近寄れない。
それでも、この仕事が過酷なことに変わりはなかった。そんな人里の誰しもが嫌がる仕事を、○○は自ら進んで引き受けたのだ。だが、それは純粋な善意からではなかった。
「あっついなぁ……」
○○は額に汗を浮かべながら、そう呟いた。
気温の高さに加え、道の悪さもあってか、疲労も増して身体中から水分が失われていくような感覚に陥る。そんな状況でも、彼は決して足を止めなかった。
それは仕事を優先した訳ではない。恋人との約束を守るためである。彼女は自分が来るのを、今か今かと待っているはずだ。早く逢いに行かなければならない。
○○はそう思いながら、荷車を必死に走らせた。
やがて、目的地の洞窟が見えてきた。その中に氷室があるのだ。
○○は荷車を外に置いて、洞窟の中へと入っていく。そして、ひんやりとした空気に包まれた瞬間、思わず安堵のため息が出た。
氷室の内部は広く、とても綺麗であった。天井付近には、光源として充分な光を放つ謎の苔があり、それが室内全体を明るく照らしていた。また、床にも苔が敷かれており、歩きやすくなっている。
「……んっ?」
○○は氷室を見回した後、首を傾げた。ここには彼女が住んでいるはずなのだ。なのに姿が見えない。
不思議に思った○○が周囲を探してみると、突然背後から衝撃が伝わってきた。
「うわっ!」
驚いた○○が振り返ると、そこには自分を抱きしめる白髪の少女がいた。
「うふふっ、驚いたかしら?」
「……当たり前だ。急に後ろから、抱きつかれたんだから」
○○は呆れたように言って、彼女を引き剥がした。すると、彼女は舌を出して、悪戯っぽく笑う。
彼女の名前はレティ・ホワイトロック。冬になると現れる雪女であり、○○の恋人でもある女性だ。
「まったく、心臓が飛び出るかと思った……」
「ごめんなさいね。でも、これは私なりの愛情表現だから」
悪びれもなく謝った後、レティは嬉しそうな表情になる。それを見た○○は苦笑するしかなかった。
「ああ、○○……。しばらく逢えないだけで、胸が張り裂けてしまいそうだったのよ……」
レティは甘えるような声で言いながら、再び○○に抱きついた。そして、愛おしそうに彼の胸板に頬擦りする。
○○は困った顔になりながらも、彼女を優しく抱擁してやった。
レティは色白の見目麗しい女性で、性格はおっとりとしていて、同時に寂しがり屋でもあった。一年中寒い場所に一人で住んでいるため、人肌恋しくなってしまうらしい。
特に○○と過ごす時間は至福の時らしく、彼が傍にいる時は、常に密着しようとする。まるで猫のようにすり寄ってくる姿は、とても可愛く見えるのだが、何しろ彼女の体は冷たい上に、豊満な肉体のせいで柔らかい。そのため、レティに抱き締められる度に、○○は自分の理性と戦っていた。
「外は暑かったでしょう? ○○の体、とっても熱いもの……」
レティはそう言うと、○○の顔を見上げて、冷たい吐息を吹きかけた。
「まあな。でも、レティのおかげで、今は涼しい気分になったよ」
「そう? 私も役に立てて嬉しいわ」
○○の言葉を聞いたレティは微笑みながら、彼から離れた。そして、今度は○○の横に回り込み、腕を絡めてくる。
そのせいで、彼の腕に大きな膨らみが押しつけられた。心臓の鼓動が激しくなるのを感じながら、○○は顔を赤くさせる。
そんな○○を見て楽しげに笑いながら、レティは口を開いた。
「ねえ、○○。今日は泊まっていかない? 久々の逢瀬なんだから、一晩くらい一緒に過ごしたいわ」
レティの提案に、○○は少し考えた後、ゆっくりと首を振って断った。
「……悪いな。氷を運ばないといけないし、日が暮れるまでには戻るって言伝してきたから、勝手なことは出来ないんだ」
○○はそう答えて、レティの方に視線を向けた。その言葉にレティは残念そうに眉を下げる。
しかし、すぐに笑顔に戻ると、○○の腕を離して、彼の正面に立った。そして、彼の両手を握って、上目遣いで見つめる。
「○○。私は貴方の何? 恋人よね?」
「……ああ」
唐突な質問に○○は目を丸くさせたが、数秒ほど考えてから、小さく首を縦に振る。面と向かって肯定するのは、少し気恥ずかしかったからだ。
それを確認してから、レティは○○の手を握る力を強めた。
「じゃあ、私と仕事。○○にとって、どちらが大事なのかしら?」
どこか圧を感じさせる口調で言うと、レティは○○の目を見据えた。○○の瞳に映るのは自分だけ。そう思わせるような強い眼差しである。
その迫力に気圧されそうになった○○だったが、どうにか踏み止まった。そして、真剣な表情を浮かべると、はっきりとした声音で答える。
「レティに決まっているだろ」
「……ふふっ」
○○の返事を聞いて、レティは満足げに笑った。予期していた答えだから、当然といった感じで。そして、彼の手を離すことなく歩き始めた。
○○は引っ張られながらも、不思議そうな顔で尋ねた。
「お、おい、どこに行くんだ?」
○○が尋ねると、レティは振り返らずに答えた。
「愛の巣よ」
「……えっ」
○○が何も言えなくなっている間に、二人は洞窟の奥へと進んでいく。
すると、そこには氷で作られた小さな家があった。氷の家の中には、ベッドやテーブルなどの、生活に最低限必要な家具が置かれている。
レティは○○を連れて家の中に入ると、彼をベッドに座らせてから、自分も隣に座って、寄り添うように体を密着させてきた。
「……今日は、いつも以上に甘えん坊だな」
「ええ。久しぶりだから、仕方ないわ」
○○が苦笑しながら言うと、レティは頬を緩ませながら、彼の肩に頭を預けてきた。○○は彼女の頭に手を伸ばし、優しく髪を撫でる。
しばらくそうしていると、レティは○○の手に自分の手を重ね、指を絡ませた。そして、じっと見上げてくる。
○○が、どうしたんだという目線を向けると、レティは悪戯っぽい笑みを見せた。
「……○○。そろそろ、しよっか?」
そう言って、レティは○○の唇を奪った。そして、舌を入れながら濃厚に口づけをする。
突然のことに驚いた○○だったが、抵抗することはなく、受け入れる。
「ちゅっ……んふぅ……」
互いの舌が絡み合い、唾液を交換し合う。冷たいレティの体とは対照的に、○○の体は内側から燃えるように熱くなっていた。
短い口づけを交わした後、○○は解放された。レティは蕩けた表情になり、熱っぽい吐息を漏らすと、今度は○○の首筋を舐め始める。
「んっ……。ふふっ、しょっぱいわ。たくさん汗をかいたのね……」
「それは、そうだろう。嫌なら舐めなくても……」
「嫌なわけないじゃない。○○の味なんだもの。もっと、欲しいくらいよ?」
○○の言葉を聞いたレティは、首元から顔を離すことなく、そのまま喋り始めた。そのせいで、彼女の吐息が吹きかかって、○○はくすぐったさを感じる。
レティはそのまま、○○の耳まで辿り着くと、艶かしく囁いた。
「久々に、これも……味わいたいの。いいかしら……?」
「あっ……」
レティがそう言うと、○○の体がビクッと跳ねた。彼女は、その絹のように滑らかな手で、○○の股座を服越しに触ってきたのだ。
レティは○○の耳に軽く口をつけると、舌を出してちろちろと舐めた。その瞬間、○○は背筋をピンっと伸ばしてしまう。
「ちょっ、レティ……!」
彼は反射的にレティから離れようとしたが、しっかりと抱き締められているため、離れられない。
レティは○○の反応を楽しむかのように、股座をゆっくりとさする。その度に、○○の思考は快楽によって溶かされていく。
しかし、どうにか理性を取り戻し、レティの手を掴んだ。
「……どうしたの? もしかして、出ちゃいそうだった?」
レティが、からかうような口調で尋ねてくる。○○は乱れた息を吐き出しながら、首を横に振った。
「……ち、違う。ただ、今日のレティは、あまりにも大胆過ぎる。あれほど控えると言っていたのに、どうしてだ?」
○○が疑問を投げかけると、レティは自嘲気味に小さく笑って答えた。
「そう、ね……。きっと、○○への愛が、日々積もり積もって、抑えきれなくなったんじゃないかしら」
そう言いながら、レティは自らの下腹部を撫でた。○○はその仕草を見て、ゴクリと唾を飲み込む。
「最近ね、ここの奥が熱くなるの。疼いて疼いて仕方がないの。○○のことを頭に思い浮かべると、特に……ね? 私、熱いのは苦手だけど、○○の熱は心地良くて好きなの。雪女なのに、不思議よね」
レティは○○の顔を見つめながら言った。
○○は何か言おうとしたが、言葉が出てこなかった。
「……くふっ」
その様子を見たレティは、妖しい笑みを浮かべると、○○の体にしな垂れ掛かって、ベッドに押し倒した。そして、彼に覆い被さるように四つん這いになり、顔を近づけた。
「そう、私は雪女。○○は人間。本来なら相容れない存在。だから、これはいけないこと。決して許されない、禁断の関係……」
レティは○○の頬に手を添え、目を細めて語りかけた。
「それでも私達は出逢ってしまった。お互いに惹かれあってしまった。愛し合ってしまった。私は貴方の温もりを知ってしまった。貴方は私の愛を受け入れてしまった」
○○は何も言わず、黙って聞いている。
レティは○○の頬を優しく撫でながら、続けた。
「……私達は、ずっと一緒にはいられない。熱と冷気は、互いに相反するもの。混ざれば、必ずどちらかが消える。生ぬるい愛なんて存在しない。それが、自然の摂理というもの。それは、分かってるわ。でも……」
レティは○○の胸に手を当て、心臓の鼓動を確かめるように動かす。その手は僅かに震えていた。○○はレティの手に自分の手を重ねて、優しく握った。
レティと恋仲になって早三年。その間、二人は様々な事を経験してきた。互いに愛を深め合おうとして、一緒の家に住んだこともあった。
だが、うまくはいかなかった。種族という壁が、二人を引き裂こうとしたからだ。
季節が夏場に近づくと、レティが暑さに耐えられずに、体調を崩してしまうようになった。そうすると、レティは暑さを凌げる場所に籠るしかないのだ。必然的に、二人の触れ合いは減っていく。
冬場は真逆だ。レティの力が強まり、○○の方が寒さに耐えられなくなる。
あちらが立てばこちらが立たず。そして、レティの愛が深まるほど、○○の熱は彼女に奪われていく。共にいる時間が長ければ長いほど、その愛の差は大きくなっていく。
この繰り返しを何度もしている内に、二人が共に過ごせる時間は、どんどん短くなっていった。レティも○○の命を奪うの良しとしないからだ。
結局、レティは○○の体調を気遣って、人里から近い場所にある山の氷室に、避暑地として居を構えるようになった。人里の重鎮も、管理者が現地に居てくれる方が都合が良いので、これを承諾した。
こうして二人は離れて暮らすことになったのだが、これがいけなかった。
レティの愛情表現が益々激しくなったのである。○○が氷室にいる時は、常に彼の傍に寄り添い、今のように体の繋がりを持とうとするのだ。
○○の方は、レティと肌を重ねることは嫌いではなかったが、どうしても体に負担がかかってしまう。
なので、彼はレティに情事を控えて欲しいと頼んだことがあった。行為の後、体が冷え切って体調を崩した自分に、泣きながら縋り付いて謝る彼女の姿を見たくはなかったからだ。
しかし、熱に浮かされたレティは○○の言葉を聞かず、彼の制止を振り切り、無理矢理に行為を強行するのであった。
情事の最中、レティの様子は二重人格を疑うほどに変貌してしまう。普段とは打って変わって、荒々しく乱暴な一面を見せるようになるのだ。
彼女は上位の体位を好み、○○の体に噛み跡や引っ掻き傷を大量に付ける。まるで、○○が誰の所有物なのかを主張するかのように。他の雌に対する牽制の意味を込めて。
そんなことをしなくても、自分はレティ以外の女性に手を出すつもりはないのだと、○○がいくら言って聞かせても、レティは聞く耳を持たなかった。
言葉でも、体の繋がりでも足りない。明確な愛情の証がないと不安なのだと彼女は言う。それが愛する人を傷付ける行為であると理解していても、止められないらしい。
最初は○○も、レティの独占欲を嬉しく思っていた。自分だけがこんなにも愛されていると思うと、優越感に浸ることができるから。
しかし、情事を重ねるにつれて、重圧を感じるようになっていった。彼女の愛は、人の身である自分には、重過ぎるかも知れないと。
「時々、考えるの。○○を失うくらいなら、いっそ冷凍して眠らせてしまおうかって。そうしたら貴方を傷付けることもないし、永遠に二人でいられるから。でもね……」
レティは言葉を詰まらせると、○○の首筋に顔を埋めて、ぎゅっと抱き締めた。
「温もりを感じない○○と一緒にいても、きっと何の意味もない。○○は生きて、笑って、私を抱きしめて、愛を囁いてくれないと嫌なの……。そうでないと、きっと私は狂ってしまうわ……」
レティは○○の耳元で囁いた後、ゆっくりと顔を離した。彼女は○○の目を見つめると、悲しげに微笑む。
「そうなるのなら、私が○○の熱で溶かされて、○○と混じり合って、一つになって……。それで、消えてしまう方が……いいの……」
レティは○○の手を取り、自分の下腹部に当てた。そして、○○の顔を見ながら言う。
「ねえ……○○はどうしたい? このまま私を抱いて、どろどろに溶け合って、一つになる? それとも私に時を止められて、世界が終わるその時まで、一緒に眠り続ける?」
レティは○○に選択を委ねた。彼女なりの優しさだったのだろう。○○の答え次第で、どちらを選んでも、後悔しないように。レティは○○の返事を待つ間、何も言わずにじっと見つめていた。
○○は彼女の瞳を見つめ返す。その目には、ひたすらに真摯な想いが込められていた。
やがて、○○は口を開く。
「馬鹿を言うな。レティを失うのも、レティの悲しむ顔を見るのも、どちらも願い下げだ」
レティは目を大きく見開いた。まさか、○○がそんなことを口にするとは思わなかったからだろう。
「人間同士だって、死別や離別があるじゃないか。人間だからって、必ずしも一緒にいられるとは限らないだろう? でも、それまでに思い出とか、子孫を残しておくとかさ。そういうのが大事なんだよ」
○○はレティを、強く抱き寄せた。自分の想いが真実であることを、肌で感じ取ってもらうために。
「俺は、レティよりも先に死ぬ。それは避けられないことだ。でも、だからこそ、その時までレティと一緒にいたい。それに、レティが俺を想ってくれているように、俺にもレティを想っている気持ちはあるんだ。一人で勝手に話を悲劇的にするのは止めよう……な?」
○○がそう告げた後、レティは何も言わず、ただ静かに涙を流していた。しばらくして、レティが呟く。
「○○……ありがとう……。やっぱり、貴方は優しいわ。こんな私を受け入れられるのは、世界中で貴方だけね。もう二度と、こんな我欲は抱かないわ。約束する……」
レティは大粒の涙を流しながら、笑顔を見せた。無理矢理作ったような表情は不恰好だったが、今まで見てきた彼女のどんな表情より魅力的だと、○○には思えた。
それからしばらくの間、二人はお互いの存在を確かめ合うかのように寄り添っていた。
○○はレティが落ち着くまで、彼女の背中を撫で続けた。レティも○○の顔を見据えたまま、離れようとしなかった。
言葉は交わさなかったが、二人の心は決して解けないほどに強く結ばれていることだけは確かだった。それが存外に心地よくて仕方がなかった。
「……なあ、そろそろ体を離そうか。このままだと、その、あれだろ?」
しばらくして、○○がそう切り出した。冷静になってみれば、二人の男女が重なるようにして横になっているというのは、非常に気恥ずかしい状況だからだ。
レティは目を丸くした後、くすりと笑った。
「あれって言われても、分からないわ。ちゃんと言って欲しいのだけど?」
悪戯っぽく笑うレティを見て、○○は思わず赤面してしまう。先程までのしおらしさは何だったのかと思うくらいに、彼女は余裕を取り戻していた。
「いや、だから……。ほら、この流れだとさ、いつものようにするんじゃないかなと思って……」
○○が答えると、レティは嬉しそうな表情を浮かべた。そして、自らの胸を押し付けて、甘えるような声で話しかける。
「当たり前じゃない。○○の、愛の告白を聞いて、私の体は殊更に火照ってしまったのよ? 責任を、取ってもらわないと……ねっ?」
「せ、責任!?」
レティの言葉に、○○は思わず声を上げた。彼女は○○の頬に手を当てて、妖艶に微笑む。
「作るんでしょ? こっ、どっ、もっ。大丈夫、前戯はいらないわ。もうさっきからびしょ濡れだし、今なら○○との赤ちゃんを孕める気がするのっ。だって、卵が子宮の奥で疼いているから……。○○の愛が欲しい、○○の子供になりたいって。あとは、○○の熱を受け入れるだけなの。お願い、焦らさないで……? 早く、来て……?」
レティは○○に熱い眼差しを向けると、彼の股座に手を伸ばし、服越しにそこに触れた。
「ほらぁ……○○のも凄いことになってる。期待してくれているのね。私を蕩けさせようとして、どんどん熱く、大きくなっていく……。ふふっ……」
「そ、それはレティが、変なことばかりしてくるからだろ! 大体、いつもはそんなにしないじゃないか!」
○○は顔を真っ赤にして反論した。しかし、当のレティは口元を緩めて、楽しげに話を続ける。
「変なことって、どんなこと……? 私にはぁ……分からないからぁ……教えて欲しいなぁ……?」
「あひぃ……」
レティは○○の耳元に唇を寄せて、吐息交じりに囁いた後、ゆっくりと舌を這わせた。○○は背筋を震わせて、小さく喘ぐ。
レティは、そのまま耳たぶを甘噛みすると、○○の耳に口を近づけた。そして、甘く蕩けるような声で話す。
「くふっ……。○○が、いけないのよ? あんなにも、熱い言葉を、ぶつけてくるから……。私ね、これでも、我慢していた方なのよ? でも、もう駄目。全部、ぜーんぶ受け止めてもらうの。○○への愛もぉ、情欲もぉ、何もかも……。だから、覚悟して……ねっ?」
レティは○○の頭を撫でながら、再び耳たぶに吸い付いた。○○はぞくりとした感覚を覚え、身悶えしながら、レティに言う。
「……もう、好きにしてくれ」
「……ふふっ、言質は取ったわ。それじゃあ、早速、始めようかしら。○○、好きよ。大好き。愛してるわ……」
理性と言う名の氷を溶かし、情欲という名の炎を燃やし、彼女はその身を、愛する男に捧げた。
そして雪女は、愛欲にまみれた獣と化し、目の前の雄に襲い掛かる。ただの人間である男は、抗う術を持たず、彼女の全てを受け入れるしかなかった。
髪を振り乱し、口からだらしなく唾液を垂らし、白く豊満な尻肉を波打たせる。発情期を迎えた一匹の雌は、貪る様に愛する男の精を搾り取る。
夜が明けても、夜が更けても、嬌声は止まない。男が精根尽き果てようとも、一つに繋がれた輪が解かれることはなかった。愛は二人の体を循環し続け、互いを求め合う気持ちは、際限無く膨れ上がっていった。
やがて、限界を迎え、弾け飛ぶ。頭の中に、脳を揺らす重厚な鐘の音が鳴り響く。
これで終わりではない。これは、始まりを告げる合図に過ぎないのだ。
側から見れば、それは狂気の沙汰だろう。しかし、確かに二人は幸せだった。互いを愛し合っているのだから。二人にとって、互いの存在だけが、世界の全てなのだから。
やがて、幻想郷に、一つの命が芽吹いた。
それは、幸福に包まれた愛の結晶。
あるいは、狂おしき愛の成れの果て。