───北側で斑ロリをぶちのめしてから、おおよそ一ヵ月。
未だに出会えない家族の黒天使やプチの安否が不安になってきているが彼女等ならきっと上手く生きている事だろうと信じて日々を過ごすあなたがいた。
最近不思議と手が震える事が多くなってきたが『黒天使欠乏症』だろうか。
ここまで長く離れていた事が無いため不安になる。
当然、冒険者になるまでは出会っていなかったから、多少の誤差はあるがそれでも間違いなくあなたの生涯において最も長い付き合いなのは妻の黒天使なのだ。
緑の生ゴミを怒りに燃える心と共に『うおォン。まるであなたは生ごみ処理機だ』と叫びながら爆殺し、やったぜ。と呟いてからから始まったあなたの冒険の最初のペットは一人の少女なのだが、即座に旅に出したからノーカウントだ。
ペット時間は実に6秒。ペットでは無かったに等しい。
ちなみに会う度に手合わせした結果、件の少女はノースティリスでも上から片手で数えられる程の上位に食い込んでいる。
何度でも病院から帰って来てはぶちのめしていたからさもあらん。
埋まらなかったことやノースティリスを去らなかった事を称賛しておこう。
ちなみにあなたの冒険が始まっておよそ一年ほどで黒天使はペット入りし、二年目に妻となりあなたの中ではペットというよりはもはや半身に等しい程の扱いをし、家族と称している。
裏表も秘密も、黒天使とあなたの間にはありはしない。
あなたの生涯で最も遠慮なく接する事が出来るのは彼女だけなのだ。
そんな当然のことを思い出していたら手の震えが強くなってきた。
そろそろ会いたい。会いたくて会いたくて手が震える。
あの手入れを欠かしていないモフモフでさらさらの翼をモフってさすりながら顔を埋めて深呼吸したい。
犬や猫に対する扱いのようにも見えるがノースティリスでは犬も猫も少女も黒天使も広義ではペット扱いだからまぁ間違いではない。
あなたの中ではペットと家族の扱いは全く違うが。
……溜め息を付きながら食堂に向かう事にした。
四次元ポケットに突っ込んである『黒天使に着せたらめっちゃ興奮出来そうな服装』シリーズから白いワンピースを取り出して着こむ。
黒天使がいつか同じものを身にまとうと思うとそこはかとなく興奮してきて手の震えが収まってきた。
*
食堂の隅でティーカップに誰にもバレない様にこっそりとラムネを注いで優雅にシュワワッと飲んでいたら突然、収穫祭という祭りに参加するのだと黒ウサギが叫んだ。
最近あなたが何をしても自棄っぱちに流す事が出来るようになってきた黒ウサギは良い感じにあなたの扱いに慣れてきている気がする。
死亡フラグ少年は相も変わらずそのちんけな脳みそであなたを利用しようとしている節がある。諦めてのたうち回ってミンチになるがいい。
ちなみにラムネを飲んでいるのは最近飲んでいなくてたまたま飲みたくなったからだ。
隠して飲んでいるのは黒天使がたまにやるからだ。優雅に紅茶を飲む姿がカッコいいと思っているようで、紅茶を飲んでるようにみせて実は乳を飲んでいる時などもある。
黒天使の着る服を着ているから、行動も真似てみようというあなたの粋な考えだ。
思い出したら手が震えてきた。
やはり『黒天使欠乏症』か。
話を戻そう。
収穫祭だが、なんでも主催者から招待状が届いているという理由で参加するつもりだそうだ。
だが、コミュニティ運営の為にも主力の一部は本拠に残しておきたいとの事。
確かに、この箱庭という世界はノースティリスよりは平和だがそれでも何を考えてかトチ狂った下層の魔王が襲ってくる可能性はある。
あなたの所属しているコミュニティに襲い掛かる愚かでみじめなクソ雑魚なめくじが居るとはあまり思えないが。
黒ウサギも同じように思っており、あなたはしっかりとコミュニティの切り札兼特攻隊長として扱っている。当然だ。
もはやあなたは巷で『東側の悪夢……? なんだか聞き覚えがある』と言われる始末だ。
悪夢とはなんだ悪夢とは。何度でもいうがあなたは冒険者だ。
それにあなたの二つ名は超越の精霊だ。東側の悪夢などではない。
どちらも誰が名付けた二つ名なのかは知らないが。
本拠に残るという話だがあなたはそもそも収穫祭とやらには参加出来ないという件は伝えておくべきだろうか。
なにせ収穫祭の開催期間と白夜叉に個人的に出された依頼の期間がダダ被りしているのだ。
せめて一人残す、と黒ウサギが言い切る前に少年少女三人組にお前が残れと指さされた。
文句は無い。この程度で暴れる程あなたは狭量ではない。そもそも残る必要があるのだから。
その依頼について伝えていないせいか、やや拍子抜けな反応をされた。あなたのことをなんだと思っているのだろう。
少なくとも冒険者と思われているとは思えない。悲しい事だが。
ラムネをシュワワッと飲み終えてから改めて説明した。
白夜叉に個人的な依頼で東側の警備を頼まれた。故にあなたは参加できない。と。
白夜叉がどうしても外せない用事で上層に向かうことになり、その間の警備を頼まれたのだ。と。
報酬はそこそこの金額だ。
何か問題が起きたら特別手当も出すと言われた。
問題を起こしたら減給ともいわれた。
あなたとしては断る理由もないし引き受けたのだが、早計だったようだ。
祭りに参加したかった。
まぁ精々楽しんでくるといい。参加出来ない恨みは後で晴らさせてもらおう。
あなたはニヤリとした笑みを浮かべておいた。
東側の警備にも位置的に含まれるから本拠の守りもついでにやっておけばいいのだろう。
それとは別に、もう一人主力を一名残すと言いだした。あなた一人では不安との事だ。
あなたが対応出来ない敵など白夜叉やあなたの信仰し敬愛する女神様クラスを超える者達だけだろう。すくつウン万階層クラスだ。箱庭では見たことが無い。
何を不安がっているのだろうか。あなたの力を舐めているのならあなたの全力を教えてやるのだが。
死亡フラグ少年が途中参加のつもりはあるか、と聞いてきたが依頼を途中で放棄するのはあなたの性分ではない。今回は残念だが辞退する。
昔は収穫の依頼をわざと放棄してチマチマした名声下げなどしてきたが如何せん。依頼達成率に追いつくほど収穫の依頼の数が無く、時間と手間がかかるからやめた。
ノイエル近郊にシェルターを作って、本でも読みながら籠っていれば勝手に名声など下がる。
*
そして収穫祭への少年少女等の移動の日。
あなたは前日の深夜に隠密全開、速度全開で全員に悪戯を決行した。
久しぶりに本気で遊べてあなたもニッコリである。
死亡フラグ少年が全力で警戒して罠を大量に設置していた為何もしなかったが。
ここまで警戒している相手に悪戯を仕掛けても楽しくない。いや掻い潜って決行するのもいいのだが、死亡フラグ少年程度に時間も手間もかけたくない。
一人寂しく何もされないという哀しみを背負うがいい。
黒ウサギにはあなたの姿変えの技術をちょこっと利用して耳を引っこ抜いてベットの脇にウサ耳を置いておいた。
抜いた後もぴくぴくと蠢いていて普通に気持ち悪かった。
耀からはいつものホットパンツを奪っておいた。
フリッフリでリボン大量のゴスロリスカートを代わりに置いておいた。
飛鳥からはいつも頭に付けているリボンを奪っておいた。
今は耀のゴスロリスカートの一部と化している。
それとなんとなく気が向いたのでジンのローブをファンシーにしておいた。
あなたでもちょっと引くくらいいい感じに気持ち悪いファンシーピンクが出来たと思う。
それとは別件でどうも死亡フラグ少年のヘッドホンが消えた様だが知った事ではない。
あなたは関係が全く無いのだから知らないのは当然だ。
だというのにあなたの所為にされてしまった。腹が立つ。本当に消してやろうか。物理的に。
ヘッドホンを探すとかなんとか言ってあなたとは別に死亡フラグ少年が残ることになったようだ。
実にどうでもいい。
そんなこんなで皆を見送ってから数日。激しくあなたは暇を持て余していた。
することがない。というか何も起きない。
境界門の虎のオブジェが気持ち悪かったからこの間コミュニティの皆と女神様、黒天使の彫像を彫って飾っておいたのだが、黒天使のフィギアや等身大の絵、彫像などを量産してこの街を黒天使に染めてみようか。
白夜叉に怒られそうだ。
やっぱりすることが無く暇で、白夜叉の私室に乗り込み縁側でお茶を啜るくらいしかすることがない。
隠してあった茶葉で飲むお茶がとても美味しい。また奪いにこよう。
─────────……。
ゆったりとした気分で茶を啜る。仄かに鼻腔を擽る甘い匂いは白夜叉がいつも私室で焚いているお香の残り香だろうか。
──────……。
それにしても、久しぶりに穏やかな時間を過ごす気がする。ノースティリスではなんやかんや忙しく暮らしていた。箱庭に来てもいつも慌ただしかった感じがとてもする。
───……。
それこそ魔王だなんだ、ギフトゲームだなんだ。そんな風に忙しい日々が続いていたのは確かだ。
陽気な日差し。
麗らかな風。
弾け飛ぶ人体の音。
あぁ。どれも日常に欠かせない、とてもいい雰囲気だ。
縁側に出て受ける風に混ざる、鉄錆の様な匂いがとても心地いい。
ひらりひらりと舞いながら敵を斬り刻む黒天使の姿を思い出すようだ。
世は天下泰平。
平穏無事。
事も無し、だ。
誰かが貪り食われる音も、血煙の様に弾け飛ぶ音も、空を舞うミンチも情緒あふれている。
─────────……。
──────……。
───……。
お茶がおいしいとか言っている場合ではない。
いけない。ここはノースティリスじゃなくて箱庭だった。
そしてあなたの耳に入る様にミンチを作るとは何事だ。許せん。
ミンチ作成の下手人を殺してや……ゲフンゲフン。はっ倒してやろう。
何時まで経ってもやはり慣れないヌメヌメとした気持ちの悪い長棒でぺしぺしと肩を叩きながら欠伸を噛み殺しつつニヤニヤとこれから起こす惨劇に思いを馳せて外に出ると、景色はいつもの街並みとは変わっており其処では頭が二つある生物が五匹程暴れまわっていた。
血しぶきを上げながら貪り喰われる人々の姿や、ド突かれて消し飛ぶ人体は懐かしい気分になる。とはいえ、あなたが姿を現すと同時にそれらの行為は収まった。
キシャーとかグオーとかガオーとか、よくある感じの怖くもない叫び声を上げて双頭の化物が一斉にあなたを威嚇し始めたからだろう。
直後、数匹がもたもたと走ってきてべしべしと尻尾や頭でどついたり噛みついたりしてくるがダメージはそこそこ程度だろうか。頭から齧りつかれるが唾液が臭いだけだから止めて欲しい。
戦うとなるとほんの少しは強いだろうか。この長棒だと油断していたら一撃抹殺は難しいかもしれない。
深層とまではいかないが、それこそ100-200層のすくつ産の終末のドラゴンやタイタンの殴りやブレス程度といったところだろう。
ダメージは体感3000-4000程度。レシマスを攻略出来る程度の冒険者はまぁ間違いなく死ぬだろう。
とはいえそれは駆け出しやらなにやらだ。それに難しいだけで無理なわけではない。あらゆる対策や準備を行えばきっと勝てるだろう。
速度も足りなければ火力も足りないのだから。あなたとの実力差を図って逃げる程の頭も足りない。
実にどうでもいい敵だ。
全て長棒を振るって星に変えておいた。実際には箱庭の天蓋に突き刺さっているのだが。
ちょっとフルスイングして吹っ飛ばしたらすぐにこれだ。この世界の生物は弱いというか脆いというか。
ノースティリスではこうはいかないが、箱庭では殴れば吹き飛ばせるから処理もとても簡単だ。
とりあえず問題はほとんど起きていませんよアピールの為に死んだ者たちには復活の魔法をかけておいた。全員無事に蘇ったようでなによりだ。
この程度で * 言及 * されて、* 減給 * されたら少々もったいない。
上手い事言えた気がする。
全米があまりの面白さに捧腹絶倒で涙を流しながらあなたの言葉にひれ伏し呼吸が出来なくなり死に至る自信がある。
全く関係ないが、全米が泣いた、とか全米が笑った、などの米とはなんなのだろう。
たまに友人や神がこの言葉を使っているのを見る。極東の方でコメなる食べ物があるのは知っているのだが、食べ物である米が泣いたり笑ったりするのだろうか。
ちなみに女神様は使っているところを見たことがない。なので先程の表現は様を付けない神で合っている。
あなたにとっては女神様以外の神はただの神だ。それ以上でもそれ以下でもない。
ただしポンコツ。てめーはダメだ。許されない。
先日、ポンコツの関係で少し暴れてしまったので多少自粛しているとはいえ、だ。この確執は永遠に溶ける事はないだろう
やはり機械や銃といった類を見ると理性を失ってしまうのは直さなければならないだろうか。
……いや、無理だろう。これはもはや染みついた癖の様なものだ。千年単位で続いてきているこの憎悪を静める術などそれこそ女神様があの腐れポンコツを恋人や夫などという不敬な立場になんの因果か置いた時だけだろう。
まぁあり得ない筈だ。ははは。ゲロゲロ……。想像しただけで吐き気が凄まじい。
───……無い筈だ。絶句するほどにありえない発想だが、どこかの世界線ではもしかしたらあるのかもしれない。ゲロゲロ。
やはり許せん。女神様が許してもあなたが許さない。
女神様に代わってお仕置きしなければ。ゲロゲロ。
また話がそれた。箱庭に来てからというもの、ノースティリスを思い出して意識が飛ぶ癖も直したい。
なにやら向こうの方から全力全開状態の白夜叉がわたわたと飛んできた。
明らかに戦闘能力が高まっている。とはいえ速度はまだまだあなたに及んでいない。
片手間で自身のゲロゲロを回収しているあなたを狂人を見る目で見てきているが、何の用だろうか。
というかあなたの意外な趣味がばれてしまった。秘密を守る為に消そうか。
黒天使のゲロゲロはあなたの宝物の一つだ。誰にも渡さないし飲ませない。あなたの飲み物だ。
全力全開状態の白夜叉はいつもの姿からデカくなっている。白髪ロリから白髪おねぇさんという感じになっている。近所の美貌を湛えたおねぇさんといった雰囲気だ。アダルティである。
とりあえず先程のクソ雑魚なめくじ双頭達がまた来る気配はない。問題なし。何も起きていないと伝えておく。
地面が抉れてしまっているのを均して証拠隠滅すればもう白夜叉に言及される謂れは無くなるだろう。
白夜叉に、後の事は私に任せて南の<アンダーウッド>を助けに行って欲しいと頼まれた。
助けに行く。そうは言うものの、何か起きているというのだろうか。
収穫祭の為に皆が向かった場所だ。助けに行く必要はあるだろうか。
彼ら彼女らも多少は戦える。
少なくとも下層ならまだマシな方だ。
廃人と比べてしまえば総じてゴミみたいな強さではあるが。
あなたの手を煩わす魔王が現れたという話だ。よし。向かおう。
あなたの奥義・手のひらドリルだ。この技能はノースティリスで冒険者の頃から得意としている技だ。
特にステータスに表記されているわけでは無いが。
クルックルである。クルックル。
お嬢様の金髪ドリルくらいクルックルだ。
さて、期せずして訪れた再びの魔王戦。あなたをたのしませてくれるだろうか。
どうも。赤坂です。
本編に戻ります。
ところどころこの間みたいな番外がちょこちょこ挟まります。
時系列はめんどくさいのでわかりやすいのは挟んでいく程度なので、たまにおかしくなると思いますが気にしないでください。
この作品、どこまでも適当なのでね。
手を抜いている訳ではないんですが。
そこまで深く考えずに書いているものでして。
ではでは。(大雑把)