~働かなくても食っていけるけどそういう人を乞食という~
です。
───決闘の替えのレースから時は少し遡り。アンダーウッド、収穫祭。
あるコミュニティの、とある二人によって怪我人病人全員が例外なく、報告に上がった全ての人が元の生活を何の支障も無く過ごせるようになるまで回復してまわってからの事。
様々な資材や食料も壊滅的な被害を受けたが、近隣のコミュニティからの復興支援物資と素性不明の謎の人物が格安で仕入れたと言って持ちかけてきた大量の屋台の道具類が集まり。
他にも、様々な人達が助力に駆けつけたおかげもあって、少しづつとは言えない速度で進んでいるアンダーウッドの復興。
それにより、少し早めに再開が出来る見通しとなった収穫祭の始まる、三日前の出来事である。
今回は、少し視点を変えてお送りしよう。
『あなた』の視点ではなく……愛らしくも強かなある幼女に焦点を当てた物語だ。
*
(これって、どういう状況なんだろう……)
ノーネームの年少組、リリはある少女に手を引かれながら祭りの設営会場を一緒に歩いていた。
「よーそろー! けがにんはいないかー?」
大きな声を上げながら周りから微笑ましい顔で見られているその少女の名前は『白天使』。
東の最終兵器と呼ばれていたりする『あの人』……年少組は怖くて名前で呼んでいない……の家族らしい。
主催進行の手伝いをしている途中、十六夜と会話をしていた所を後ろから現れた白天使によって突然連れ去られたのだ。
そもそも何故リリなのか。十六夜や、あるいはご主人と呼ぶ『あの人』では駄目だったのか。
本人に聞いても
「なんとなくー! そこにいたからー!」
と言われてしまう始末。
「あの、手伝いが……」
「へーき! ごしゅじんにまかせたー!」
任された。
アンダーウッドのどこからか、そう声が響いた。
近くから聞こえず、木霊して響いているという事は一体どれ程遠くにいて、それでいて地獄耳なのだろうか。
ほぼ同時に爆発音が響き渡ると共に、あらゆる所から悲鳴が立ち上り始めた。
もしかせずとも厄介な人に絡まれてしまったのではないだろうか。
というかこのままでは問題が起き続ける。
少なくともこの少女相手に主導権を握らなくては振り回される。
リリは覚悟した。
この真っ白な少女を自由にさせてはならない、と。
「あ、あの!」
「んー? どうしたの?」
幸いにも、この少女はおそらく話が通じる。……はずだ。まず会話が成り立っているのだからそうなのだろう。
だとしたら、なんとか手綱を握って『あの人』を巻き込まないような状況にしなくては。
ノーネーム年長組としての責任感を持って、子供同士なんとかしてみせる。
ムンッと意気込んでから口を開いた。
「怪我してる人とかは見当たらないし別の事をしない?」
「たとえばー?」
「た、たとえば? ……うーん、その。あ、ほら贈り物を選ぶとか!」
キョロキョロと辺りを見渡せば近くに小物売りの店があった。
丁度、黒ウサギや皆への贈り物を選びたかったのもあるからつい口から贈り物を選ぶなんて言葉が飛び出してしまった。
いきなり贈り物などと言っても困るだけだろうか。誰に? と聞かれてしまうのだろうか。それとも、お目に叶うものがないと叫ばれて『あの人』が突然現れて暴れないだろうか。
瞬時に脳裏を過る様々な嫌な考え。
変な汗がリリの背中にじっとりと気持ちの悪い感触を残していた。
「おくりもの……ごしゅじんとかおねえちゃんに……えらぶー!」
乗り気になってもらえて一安心してほっと胸をなでおろす。
だが、それがいけなかったのだろうか。
それとも、白天使に絡まれた時点で色々な出来事に巻き込まれることが確定していたのだろうか。
「うわああああああああああああああああああああ暴れ、暴r……? なんだこれ!? なんか暴れてるぞおおおおおおおおおおおおおおおおお」
市場に繋がる街道から土煙と奇声を上げて走ってくる、緑と赤色の謎の軍勢の進行方向に立ち止まってしまっていた。
誰かの声が上がるが、それが何かはその場の誰にもわからないようだった。
───僅か一名を除いて、だが。
「うわああああああああ! いもうとのむれだああああああ!?」
「ひゃ、ひゃあああああああああああああああああああああ!?」
白天使、リリ。二人そろって謎の軍勢に吹き飛ばされてしまった。
微かに耳朶を打つ「キャラ被り」という言葉はなんなのだろうか。
そんなことを考える事も出来ないまま視界が二転三転して変わり続ける。
世界がぐるぐると回っている。
跳ね飛ばされ転がり、辛うじて立ち上がったリリと何事もなかったかのように立ち上がる白天使。
違いは単に吹き飛ばされることへの慣れだろう。
「だいじょーぶ?」
「う、うん……。ちょっと頭打っただけ、かな?」
こぶになる程ではないが、星が見える程度には打っていた。
さもありなん 。
辺りを見渡せば薄暗く、おそらく地下都市の断崖の隙間に落ちたのだろう。
多少の高さはあったが、大きな怪我になっていなくてなによりだ。
「いちおー、ほい」
「……? え、えぇと」
そう思っていたら、白天使がリリの頭にペスッと手を乗せてきた。
まさか、痛いの痛いの飛んでいけかな? と困惑していたらリリの頭に少し響いていた痛みが引いた。
嘘のように痛みが引いたのだ。
何が起きたのかと一瞬、リリは我が目を疑ったがすぐに答えは出た。
至極当然の事だ。
ここは箱庭である。
「えっ? ……て、あ。ギフト……」
「ぎふと? まほーだよ! あ、あっちにへんなおみせがあるー! 」
が、本人曰く違うようだ。
ギフトも魔法も違いがよくわからないが本人がそういうにはそうなのだろう。
それよりもまた勝手に突っ走っていった白天使を追わなくては。
(こんなに人通りの少ない……というか裏道にお店?)
「なんだこのみせー!? ごうかだー!」
「って、あっ……待ってよー! 白天使ちゃーん!」
*
しばらくしたら、白天使が……確か、リリとかいう子供……と一緒に帰って来た。
とりあえず、怪我などはしてないだろうか。
「してない! けど……」
けど?
どうしたのだろうか。
誰かにだるい絡みをされたなら言ってほしい。
そいつに生まれてきた事と白天使に絡んだ事を末代まで後悔させてやる。
その場合絡んだクズが末代になるが。
「うむー……けど、ごしゅじんにたよりたくないー!」
ウガー! っと叫んでいる。
あなたに頼らずに戦うべき戦いのようだ。
ペットアリーナのようなものだろうか。
だとしたらあなたはひっそりと鼓舞するだけだ。
どうしようもなくなったら助けを呼ぶと良い。
一万里を越えてでも助けにいく事を約束しよう。
それも大事だが、飛鳥や耀、あなたが作った料理があるのだ。
冷める前に食べると良い。
死亡フラグ少年の料理は既に残った分は作った本人が食べてしまった。
これはあなたが手伝いを白天使に頼まれて色々してたら、
手伝いは……その、もう十分だぞ?
というかお前に任せてたら今にも祭りが始まりそうなレベルで復興が秒で進むんだが。
少しは休んだr……。顔が真っ青だぞ休め休め! 何で限界まで働いてんだ!
過労で死にそうな顔してんぞ!?
と、白天使に頼まれたのだからと過労のまま働いていたら現場の皆に怒鳴られたので仕方がなくラムネをラッパ飲みしながら歩いていたところ、料理をしている耀たちに出くわして死亡フラグ少年をからかう為に精を出して作ったパンプキンキッシュだ。
始めて見る料理だったので死亡フラグ少年の手順を軽く見てから、あなたが手ずから素材を選んで呪ってから祝福してあなたの料理技能全開で作り上げた物だ。
もちろん祝福はあなたの女神様の物だ。
他の何かの祝福などあり得ない。
一度呪ってあなたの女神様の祝福に書き換えなければ。
完成して実食してみれば死亡フラグ少年は見事にいじけたし、とてもよくからかえたのであなたも満足だ。
当の本人は、リベンジだとかなんとか妄言を吐いて走っていったのだが。
勝てるとでも思っているのだろうか。
あなたですら認めた耀にも勝てないレベルの料理技能で。
手慰みで上げた料理技能など、敵になるはずもない。
耀は間違いなく、美味しい物を食べるための本気の鍛錬の結果だ。
あなたが料理人として費やした膨大な時間には届かずとも。
ただひたすらな。それも執念ともいえる努力によって磨き上げられた手腕と技量で作り上げられたポトフには、舌の肥えきったあなたですら唸ったのだ。
旨い物を食いたい、それが耀の技術なら、あなたは家族に旨い物を食わせたいという執念で鍛え上げたのだ。
どちらにせよ旨い物を作ろうという執念の賜物である。
あれなら、黒天使や白天使に勧めて食べさせるのも吝かではない。そう思える一品だった。
まぁ、あなたのパンプキンキッシュを食べた耀は目をギラギラさせてあなたに様々な質問を投げかけ続けているのだが。
思えば耀にほぼ本気の手作りの料理を振舞ったのは初めてだっただろうか。
これからも色々聞かれてしまいそうだ。
もしくは耀の為の体の良い料理人にされるか。
それは流石にお断りだ。
あなたは誰にも縛られることなど無い。
そもそもあなたの料理はあなたの家族の為にある。
煽る為にちょろっと本気を出したが一品程度ならあなたにとってはただの暇潰しの様なものだ。
フルコースを作ってこそなんぼ。
あなたはそう思っている。
「おいしいー!」
早速白天使がパンプキンキッシュを食べていた。
初めて作る料理だったが、失敗する程あなたは下手くそではない。
そもそも失敗していたら白天使の口になど入れさせない。
あなたも初めて食べるパンプキンキッシュに舌鼓を打っていた。
美味しいキッシュを食べても、白天使の顔から悩みの影は消えていなかったが。
本当に、どうしたというのだろうか。
*
「ねー、りりー」
「ん、なに?」
リリがキッシュを頬張って舌鼓を打っていたところで白天使がこっそりと声をかけてきた。
「あのおみせー、またいこうよー」
「う、うぅん……相談した方が良いと思うけど……」
というのも、白天使が『店だ』と叫んで走った先にあったのは店長不在の豪奢なお店。
様々な豪華絢爛な小物や宝物。
そして、一枚の貼り紙。
そこにあったのはギフトゲームだった。
祭りの場の中であれば問題などはない。
ただの祭りの余興としてのゲームだと割りきれる。
だが、今は祭りの準備期間。それも人混み外れた断崖の間にある人の気配の漂わぬ店だ。
確かに、贈り物としてとても良い物があった。
だが、謎を解かねば、ギフトゲームをクリアしなければ買うことはできない。
そもそも、祭りがこれから行われるというのに客を選ぶようなギフトゲームがあるのは如何なものか。
文面を詳しくは覚えていないが、ゲームとしてもそこそこ難易度が高そうだった。
明らかに怪しげなギフトゲームだ。素人のリリが挑むようなものではない。
危険に飛び込むのは如何なものか。
リリの考えは実際はそこまでは至ってはいないが、それでも危ない事であることは理解していた。
が、目の前の少女はそこまでも考えていないようだ。
「そうだんしたら、まけだよ!」
「何に対しての負けかわからないけど。その、怪我したら危ないし……」
「だいじょーぶ! わたしはつよいのだ!」
こういう考え方はとても失礼な気がするのだが、良くも悪くも甘やかされて生きてきたのだろうなとリリは思った。
というか、『あの人』の家族というのだからわかりきったことだった。
「そうときまれば、れっつごー!」
「えっ!? 何も決まってないと思うんだけど! ってひゃあああああああああ!!」
手を取られたかと思えば景色が後ろへと吹っ飛んでいく様に勢いよく引っ張られた。
そうしてそのまま、リリは誰にも相談することも出来ずにまた連れ去られたのだった。
赤坂です
お 久 し ぶ り で す
GWから、Rimworldの沼にどっぷり浸かっていたのと久しぶりの会話で苦戦していました。
とりあえずこの話が終わるまではこんな感じの書き方になると思います。
それと、イルヴァ資料館読んでたら設定がなんとなく今更固まりました。
それでも碌に考えていないんですがね!
前・中・後編の三部構成になる予定です。
ではでは。次は少し早くお会いできるといいですね(希望的観測)
乞食にお金を恵みましょう。
その後は床を彩るミンチになってもらって恩を返してもらいましょう。