[先天]あなたは問題児だ。   作:赤坂 通

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白天使とリリの大冒険 中編

 ───場所は変わり、再び断崖の店。

 

 やはりそこには変わらずに豪奢な店があった。

 白天使に手を引かれるがままスルスルと走られて辿り着くことができた。

 途中、幾度か見覚えのない道を走った気がするが最後に着いたのは例の店だった。

 何度も「まよったー! こっちだー! たぶん!」という声が聞こえたのは気のせいだろうか。

 

 ギフトゲームの紙と、椅子に座る人形。

 そして目を引く様々な品物。

 何も変わらず店は其処にあった。

 

 

 白天使はギフトゲームの用紙を手に取って、食いつくように睨み唸っていた。

 

「うぅむ……どうすればー……」

 

 リリの目からみても白天使はそこまでギフトゲーム、特に知識を問うゲームは苦手な様に見える。

 リリもギフトゲームの内容を見てみるが、やはり<ノーネーム>の主力陣に手伝いを頼むべきだろう。

 ギフトゲームに慣れていない二人にはあまりにも荷が重い。

 いや、白天使がギフトゲームに慣れているかどうかはわからないのだが。

 

「ねーねー、にんぎょうさん。こたえあわせってできるー?」

「白天使ちゃん、人形は答えな」

 

 

 

「……ミス・エンジェル。残念ですが私には答える事は出来ません」

 

 突然、椅子に座っていた人形に声をかける白天使。

 流石に人形が言葉を返す筈も無いと白天使に伝えようとしたリリの言葉を遮るように、目を閉じていた人形がヒョッコリと立ち上がった。

 

「えっ? えぇっ!?」

「どうしました? フォックス」

「そうだぞー? 生きてるのかわかんなかったのー?」

 

 わかるはずがない。

 というか、ゲームとしてはこの人形を直す……? といった感じの内容だったはず。生きているものを直せというのだろうか。いや、ありえるかもしれないが。

 とにかく、この人形がゲームマスターなのだろうか。

 

「え、えぇと。あなたがこのゲームの主催者……?」

「違います。私はこのゲームの進行役であり」

 

 

 

 

「えいえんにうごきつづけるゆめをたくされた、さんばんめのみかんせいのにんぎょうさん!」

 

 

 

「……ゲームの内容は理解できているようですね。エンジェル」

「し、白天使ちゃん理解できたの!?」

「ふふーん! わたしはてんさいなのだー!」

 

 ここに、『あの人』がいたら『失敬な。白天使は天才といったはずだ』とでも言ったのだろうか。

 少なくとも人形とリリには到底、そういう風には見えない。

 そんな風に白天使が指をさして答えた直後、白天使の背後の豪奢な扉が開かれた。

 

 そこから来たのは、耀や飛鳥、十六夜などだった。

 

「……へぇ。面白いなオマエ」

「何処に行くのかと思って付いてきたら、まさかギフトゲームに挑んでるとは思わなかったわ」

「これ、本当にクリア出来るの?」

 

 後を付けてきていたのか、ワラワラと入ってくる三人組に対して白天使は露骨に嫌そうな顔を向けていた。

 本人はこっそりと出てきたはずが当然の様にバレていたのだ。嫌がるのも仕方がない。

 

「……わたしひとりでとけたもん! くりあもよゆー!」

「白天使ちゃん、別に負けた勝ったとかはないと思うよ?」

 

 しかし、納得がいかないのかプイッとそっぽを向いた白天使は、

 

 

「「「ムキッ!」」」

「……? うわあああああああああああああああ!!??」

 

 

 

 いつの間にか忍び寄っていた謎のマッチョ人形とばっちり目が合ってしまった。

 白天使の叫びに反応した皆も一斉にそちらを向き、

 

「な、なんですこれ!?」

「えっきもい」

「き、気持ち悪いわ! 何よコレ!」

「……流石にコレはねぇだろ。なんで物音一つしねぇんだ」

「にげろ─────!!!!!!」

 

 

 三者三様の反応を見せた。

 ドドドドドドドドド!! と音を立てながら店の奥から無尽蔵に湧き出るマッチョ人形。

 人形さん、と白天使が呼んでいた彼女はリリの腕の中に納まり、皆一斉に駆け出した。

 

「ふ、フォックス! 私は置いていって下さい! 奴が来てしまいま」

「ふびゅっ!? うわああああああああああああああああああああああああああああんびええええええええええええええええええええええええええええええ!!」

 

 人形が何やら焦った声を上げたが、走っていた白天使がすっこけてマッチョ人形の群れに巻き込まれてあげた悲鳴と泣き声に掻き消された。

 

「ちょっ! 十六夜君! マズイわ! このままでは『例のアレ』が暴れるわよ!?」

「それは流石にマズい……! やっと再開できる祭りが南側が滅びる事で終わっちまう……!」

「……美味しい食べ物が。とりあえずリリはそのまま走って黒ウサギの所まで行って『例のアレ』を止める様に伝えて!」

 

 マッチョ人形の勢いが止まる。

 同時にノーネーム主力三人が振り返り、決死の救出劇に挑むことになる。

 

 家族と言って『例のアレ』が溺愛している娘(?)の白天使。その存在はかなり重要な意味を持つ。

『例のアレ』を止める最強の盾であり、『例のアレ』が理性を失って問答無用に破壊を撒き散らし暴れる地雷でもある。

 ただでさえ、以前一度発狂したおかげで『例のアレ』が一個人としてではなく、箱庭にとっての超特級の危険人物だと白夜叉すら認定しているのだ。

 家族をみすみす見捨てた、等と言う事になどなって『例のアレ』がそれを知ったら。

 

 

 

 

 地獄を見る、で済めばいいだろうか。

 

 本人の口癖通りにされるなら『後悔する事になる』。

 

 

 

 

「気持ち悪いとか言ってる場合じゃねぇ。この世を救う為にも

「うわああああああああああ【まりょくのあらし】───────!!!!!!!」

 

 そんな十六夜の意気込みも何処へやら。

 木端微塵という言葉すら相応しくない程に綺麗さっぱりマッチョ人形は消失した。

 悪寒すら漂う無色の風が吹き荒れ三人の頬を撫でた。

 

 

 

 叫び声と共に全て消し飛んだ。

 

 

 

「うわあああああああああああああああああん!」

 

 その風の発生源となった白天使は泣きながらそのまま何処かへと駆けて行ってしまった。

 そういえばそうだ。白天使は『例のアレ』の家族だ。戦闘能力は自衛程度しかないと言っているが、『例のアレ』が全力を出して戦う相手に対しての自衛手段だ。

 誰かが手を貸す必要もない。いざ戦うとなれば白天使もまた十六夜とトントンで戦える程度には強いのだろう。

 やるせない気持ちになりながらも、『例のアレ』の家族だし救うとか考える必要も無かったなと考えた三人は踵を返してその場から走り去る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんな彼らを遠くから眺める、鈍色の風の姿があった。

 

 

 

 

 

     *

 

 

 

 

 

「さて、何でコイツを連れてきちまったんだろうな」

「問題の種よ。説明が本当なら、かなりヤバいわ」

 

 黒ウサギを餌になんとか『例のアレ』に状況は知られていないが、このままでは南側が危ない。

 連れ帰った、というより連れ帰ってしまった人形の名前はコッペリア。

 軽く見た文面から解き明かされた本当の意味や軽い答え合わせを行って導き出されたのは『南側の危機』だった。

 

「本当にシャレにならねぇぞオイ……! 箱庭の天災と、異世界の化物がかカチ合わせたらどうなるかわかるだろうが……ッ!」

 

 箱庭に置いて最強にして最凶と名高い≪退廃の風≫。

 箱庭に置いて最強にして最恐と(一部で)名高い『例のアレ』。

 

 カチ合わせれば間違いなく殺し合いを始める。

 そうなればもう終わりだ。止められる者は下層にいるはずもない。

 白夜叉ならあるいは……そう思うがあいにく今ここに白夜叉はいない。

 

「答えはわかった。だが、達成する方法がないパラドックスゲーム。アレにバレないようにこのゲームを終わらせるしかないんだが……」

「不可能です。それはつまり、私を完成させると言う事。それが不可能なことはわかりきっているでしょう?」

 

 

 このゲームの最終目標は、このコッペリアという人形を完成させること。

 白天使の行っていた通りに、『永遠に動きつづけるようにする』必要がある。

 答えは簡単なのだ。知識のある者であればすぐにでも解き明かせる。

 このゲームへの答えとして、第三永久機関の完成を求められている。

 だが、答えがわかってもクリアは出来ない。それは人類の最終到達地点。数多の人々が望み、探し、そして諦めた夢なのだ。

 ただの妄想の産物と吐き捨てられた架空の技術。それを僅かな時間で完成させられるはずもない。

 

「だが、気になるのはコイツの言った言葉だ」

 

 バシンバシンと白天使の頭を叩く十六夜。

 叩かれてぶすっと膨れながらブツブツと呟く白天使。

 

「えいえんにうごくだけならよゆー……」

 

 不貞腐れたように呟くが、その言葉が本当だと信じることなど出来る筈も無い。

 食べ物があれば動き続けられる、なんていうことでもないのだ。

 

「第三永久機関はただの幻想だ。辿り着けない人類の到達地点。答えはわかっても完成させることはお前には出来ない」

 

 ただの子供の癇癪の様なものだろう。子供は元気というが永遠に元気でいられるというわけでもない。

『例のアレ』に鍛え上げられているのなら普通よりも長く動く事は出来るだろう。それこそ、次に休める瞬間まで全力で動き続ける事も出来るのだろう。

 

 だが永久機関はそんなものではないのだ。

 

 答えが分かったから後は簡単と考えるのは仕方がない。

 だが本人はそうは思っていない。

 

 

「できるもん! うが────!!!!」

 

 

 ぐるるると白天使が十六夜を威嚇し始めた。

 両手を構え

 そんな白天使にコッペリアは優しく声をかけた。

 

「一応、その。やり方を聞いてもよろしいでしょうか。エンジェル」

「むー……えいえんをいきる、かくごはあるのー?」

 

 少し怒ったような顔で白天使が尋ね返した。

 コッペリアの質問に対して返されたのは求めた答えではなかったが、少し悩んでから応えた。

 

「……完成することが私の夢。完成した後は、どうなるのかはわかりません。それでも私は完成を望んでいる」

 

 永久駆動と言う事は、いつかは独りになってしまう。

 永遠を生きれば、永遠を生きられない全てはいつか必ず滅び去る。

 自分だけが完成してしまえば、もはや孤独になる事は決まりきったことなのだ。

 白天使は永遠を生きる覚悟を聞いた。永遠を生きる苦しみを知った上で尋ねている。それでもコッペリアは完成しなくてはいけないのだ。完成する事は、叶わぬはずの悲願なのだから。

 

「じゃあ、やくそくー。あきらめないでね」

 

 

 諦めるな。

 そう言った白天使はコッペリアの手を取って小さく呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「≪えたーなるりーぐおぶねふぃあ≫  きどー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




赤坂です。

三時間で次話が書き終わりました。
結果なんかすごい短いです。
そろそろ文章戻したいんで急ぎ足で行きましょう。

そういえば、死亡フラグ少年が遂に本来の名前を取り戻しましたね(白目)

ではでは。
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