[先天]あなたは問題児だ。   作:赤坂 通

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第二話『麻痺ハメ、罵倒ハメ、餅ハメ etc...』

 ヴェルニスが改めて名乗りなおしてすぐの事。

 いい加減特に何も起こらない空気に痺れを切らしたように堰を切って皆が喋り出した。

 

「私の名前についてはもういいとしてぇ、そろそろ説明が欲しいわよねぇ」

「確かに。呼び出されたはいいけどなんで誰もいねえんだよ。この状況だと、招待状に書かれていた箱庭とかいうものの説明をする人間が現れるもんじゃねぇのか?」

「そうね。何の説明もないままでは動きようがないもの」

「……。この状況に対して落ち着きすぎているのもどうかと思うけど」

(全くです)

 

 黒ウサギはこっそりツッコミを入れた。

 もっとパニックになってくれていれば飛び出しやすいのだが、場が落ち着きすぎているので出るタイミングを計れないのだ。

 タイミングを計りつつ、観察していると……。

 

「仕方ねぇ、そこに隠れてる奴でも捕まえて話でも聞くか……ってまた考え込んでるコイツはなんなんだ」

「さぁ? とりあえず、皆気づいていたなら捕まえておきましょう」

「レッツ・ハンティング」

 

 黒ウサギが狩られることになったようだ。

 

 突然の事ではあるが気付かれていたのなら仕方なし。格好も付けられないが黒ウサギは恐る恐る草むらから姿を現した。

 

「や、やだなぁ皆様。そんな狼みたいに怖い顔で見られると黒ウサギは死んじゃいますよ? ええ、ええ、古来より孤独と狼は黒ウサギの天敵でございます。そんな黒ウサギの脆弱な心臓に免じてここは一つ穏便に御話を聞いて頂けたら嬉しいでございますヨ?」

 

「断る」

「却下」

「お断りします」

 

 そして数十秒後、ウサ耳をむんずと左右から掴まれて叫び声をあげる黒ウサギの姿があった。

 

 

 

 

 

     *

 

 

 

 

 

 あなた……ヴェルニスが現実に戻ってきて場を取り直さなければ小一時間は説明開始までかかっていたかもしれない。

 せっかく説明するために出てきたのだからふざけている場合ではないだろうとヴェルニスが声をかけた時、黒ウサギの目は救世主を見るようにキラキラと輝いていた。

 そうしてようやく行われた黒ウサギによる定例文らしい挨拶や説明が行われ……。

 

「要するにぃ、箱庭って場所でゲームとか依頼をこなして過ごせとぉ?」

「ざっくりと言ってしまえばまさにそうです!」

「ざっくりしすぎじゃねぇか。もうちょい色々あんだろ」

「でも間違ってはいないわよね?」

「聞いた限りでは間違ってないと思う」

「まぁ……面白そうには面白そうねぇ。暇潰しにはなりそうだわぁ」

 

 ひとまず説明を終えて納得を得られて黒ウサギはほっと胸を撫で下ろした。

 

 ヴェルニスとしてはとりあえずこの世界でちょっと遊んでみようという程度の認識ではあるがそれでもいきなり全部破壊して帰るなどという発想は今の所はしていない。

 黒ウサギからの大まかな説明は終わり、質問を行うにも外で濡れたまま行うのもなんだと黒ウサギの家に向かう事になった。

 

 が、その行動を止める様に十六夜が文句を垂れてこの世界はうんたらかんたらと言ったのを、ヴェルニスは面白くもなさそうに聞き流しておいた。

 これから移動するというのに足を止めないで欲しいという程度の軽い認識だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ───そうこうしてしばらく後。十六夜が移動する列から抜け出したり、黒ウサギが探しに行ったりジンと名乗る少年と会ったりなど諸々が終わった後。

 

 喫茶店での出来事である。

 

 

「───そ、その……私があなたに何か無礼を働きましたでしょうか……?」

 

「そのピッチピチのスーツで私の前に姿を現したことかしらぁ。一回体を小さくしてから出直してきた方が良いかもしれないわねぇ。あと魅力が致命的に足りないから顔も見てて不愉快だしぃ、なによりピッチピチのスーツが本当に似合ってないわぁ」

 

 

 喫茶店で軽くお茶していた所、急に現れたピチピチのタキシード姿のガルドと名乗るエセ紳士っぽい姿と立ち振る舞いの変人がジンの事やらコミュニティの事やらを貶しつつ自己アピールをしてきていた。

 ジンのコミュニティは名無しの旗無しの弱小コミュニティだから私の所に入ったらどうだやら、そんな状況のコミュニティでは何も出来ないやら。

 

 本来はもっとガルドが飛鳥や耀、ヴェルニスを利用してジンを陥れる形で話の主導権を握ろうという魂胆だったのだろう。

 

 それをガルドが現れると同時に「変人が近寄ってきた気持ち悪いわぁ」だの「急に来て説明してくれる演出なんて依頼したのぉジン?」だとか「ピチピチのその服買い替えるお金もないのぉ」だのとヴェルニスが盛大に煽り散らかし続けているのが現状である。

 突然の煽り行為にガルドも怒るというよりは何か非があったのではと軽く考えてしまうほどには延々と煽られていた。

 より良い箱庭ライフの環境の提案をガルドはしているつもりだが如何せん、相手が悪いとしか言いようがない。

 ノースティリスではそれこそ今は自宅を構えてはいるものの、かつては風来坊の根無し草。いかに住みやすい環境を用意されても自活できるヴェルニスにとっては些細な違いにしか感じられないので提案を受ける必要すら感じていない。

 

 というよりは反応が面白いから後先考えずに煽り散らかしているだけかもしれない。

 

「とりあえず、如何でしょうかレディ達。この名無し旗無しの弱小コミュニティよりも私達<フォレス・ガロ>のコミュニティを視察し……」

「薄汚い口を閉じなさぁいエセ紳士。他人を罵倒しながらする提案じゃないでしょぉ? 三回回ってワンって言ってから死んで出直しなさぁい」

「……えぇまぁそこまでは言わないけれど彼女に賛成ね。それに私はジン君のコミュニティで間に合っているし」

「私も。友達を作りに来ただけだし別に所属はどこでもいい」

 

 飛鳥がやや引きながらもヴェルニスの発言に乗っていく。ガルドは顔を引きつらせて薄目になりながら青筋を立てて怒りながらヴェルニスを睨んだ。

 終始、ケラケラとした意地の悪い笑みを浮かべながら紅茶を啜りながら煽るヴェルニスに流石に限界のようだ。

 ヴェルニスとしては特に何も考えずに煽るだけ煽って反応を見て楽しんでいるだけなので、飛鳥がガルドとやらに何かしているのも、問いただしている内容にも興味はない。

 言いなりに出来る状態であるものの、自分の意思で罵倒を我慢している姿が楽しいといった考えなのだろうか。

 やれコミュニティを潰して吸収するために女子供を攫っただ。その子供は既に殺しただ。そんな物騒な内容の話を聞きながらも笑顔を一つも崩していない。

 ただニコニコとした優しい笑顔で足を組んで紅茶を優雅に飲みながら暇をしているだけだ。

 ニコニコしながら、敵意を向けてくる雑魚をどうミンチにしたものかと小声でぶつくさと呟いているだけだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ミンチにしてから岩とぐちゃぐちゃに混ぜて復活させる……首を斬り飛ばして延命措置しつつ目の前で首から下をミンチにしながらダンス……輪切りにして部位別にホルマリン漬けにして家に送り付ける……ミンチにして瓶に押し込んでプレゼント……呪縛加速ポーションで老人にして老衰……何をされたのかわからないまま臓物をぶち抜いてミンチに……いっそ純粋に爆殺っていうのも良いわねぇ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 蚊も殺さないような優しい笑顔の裏でどんな事を考えているのだろうか。

 小声で静かに呟かれる凄惨な内容を耳にした耀は少し焦りながらガルドを抑え込んで飛鳥に声をかけた。

 

「飛鳥。このままだとこのガルドって人が凄惨な目に合うからなんとかしよう」

「どうかしたのかしら? それより、皆に提案なのだけれど、ギフトゲームで決着をつけてはどうかしら? こんな外道はズタボロになって己の罪を後悔しながら罰せられるべきよ」

 

 飛鳥のその言葉にピクリと体をヴェルニスは動かしていたが、少し首を傾げた後に同意する様に頷いてから口を開いた。

 

「……そうねぇ。後悔させてやらないといけないわねぇ」

 

 

 

 

 

     *

 

 

 

 

 

 それからまた暫らくして日が傾き始めた頃の事。

 

 噴水広場十六夜と黒ウサギの二人と合流し、絶賛怒られているヴェルニスたちの姿があった。

 

「な、なんで<フォレス・ガロ>のリーダーと接触して、喧嘩を売る状況になるのですか!?」

「向こうがいきなり喧嘩を吹っかけてきたのよぉ。処理した方がよかったかしらぁ?」

 

「しかもゲームの日取りは明日!?」

「今日でもよかったんだけどぉ、向こうも準備があるからってそんなこと言ってきたのよぉ」

 

「それも敵のテリトリー内で戦うなんて!」

「勝負は不利な程燃えるじゃなぁい?」

 

「準備している時間もお金もありません!」

「準備なんてあの雑魚にいるかしらぁ」

 

「一体どういう心算つもりがあってのことです!」

「勝算しかないから喧嘩を売ったのよぉ?」

 

 ぜぇぜぇと黒ウサギが息を切らしているが、ヴェルニスはニコニコしながら全ての怒声に反論していた。

 

 とはいえその目……目は薄く閉じられているからどうなのかわからないが、意識はここにあらずといった雰囲気を感じなくもない。

 

「……見事に全部『私が強いから問題ない』的な雰囲気で返事するわね彼女」

「……あそこまで自信満々に言い切れるのは凄いと思う」

「その、ごめん黒ウサギ」

「はぁ~……。仕方がない人達です。まあいいデス。腹立たしいのは黒ウサギも同じですし。<フォレス・ガロ>程度なら十六夜さん一人いれば楽勝でしょう」

「何言ってんだよ。俺は参加しねえよ?」

「当り前よ。貴方なんて参加させないわ」

「だ、駄目ですよ! 御二人はコミュニティの仲間なんですからちゃんと協力しないと……」

「喧嘩を売ったのは向こうでぇ、買ったのは私達よぉ。そこの死亡フラグをばら撒く少年は参加する権利なんてないわぁ」

「……まぁ、俺が手を出すのが無粋ってもんだから別にいいんだが、死亡フラグとやらはどういうことだコラ」

 

 ヴェルニスは上の空状態で火に油を注ぐような発言を行い、耀は猫と戯れて無関心だ。

 これは面倒なことになってきたと黒ウサギは振り回された疲労もあり諫める気力も残っていない。

 

 

 どうせ失うものはないゲーム、もうどうにでもなればいいと呟いて肩を落とすのだった。

 

 

 




どうも赤坂です。
これが投稿された時にはこの作品を投稿し始めて一年と二日がおおよそ経っていますね……。
投稿までかなりの期間が空きましたが、それもこれもElonaのヴァリアントを変えてプレイしなおしてたからだったりなんだりしますハイ。

とりあえず、お伝えしておくこととして


作者のElonaプレイ環境が変わり、
「Elona.omake.overhaul.modifyEX_SukutuEdition_Southtyris」
となりました。
つまりは「Elona.oomSEST」になっています

それに伴って、★≪冒険者の物語≫を全編に渡って手直しを加えました。

大まかな筋に変更はありません。細かな表現だったり読み直してみて伝わりにくい部分などを簡単に直したなど変更です。
話の流れはほぼ、というより全く変わっていないので特に変更を気にする必要はございません。

あとは、単純に第一話とかよりもそれぞれタイトルがあった方が読み返しやすいと作者自身が理解したので付けておきましたハイ。

長々と失礼しました。

ではでは。
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