あの時、彼女は何と言っていただろうか。
「うわお、ウサギじゃん! うわー実物始めて見た! 噂には聞いてたけど、本当に東側にウサギがいるなんて思わなかった!」
『何か』を言われたことだけは覚えている。
その『何か』は、この箱庭で何よりも大事で、何よりも、忘れてはいけない言葉だったはずで。
「つーかミニスカにガーターソックスって随分エロいな! ねー君、うちのコミュニティに来いよ。三食首輪付きで毎晩可愛がるぜ?」
頭痛が走り続ける。
鈍い痛みが『思い出せ』と急かす。
「これはまた分かりやすい外道ね。先に断っておくけど、この美脚は私たちのものよ!」
「黒ウサギの脚は<ノーネーム>の所有物」
「そうですよ! 黒ウサギの脚は、って違いますよ飛鳥さん! 耀さん! 」
間に合わなくなる。
このままでは手遅れになる。
その前に思い出さなければ。
「うさぎのしっぽは食べると運が上がるレアアイテムよぉ? あげるわけないじゃなぁい」
「そうですそうですこのキュートな尻尾は、ってもう黙らっしゃい!!!」
「よかろう、ならば黒ウサギの脚と尻尾を言い値で」
「売・り・ま・せ・ん! あーもう、真面目なお話をしに来たのですからいい加減にしてください! 黒ウサギも本気で怒りますよ! 十六夜さんも黙ってないで助けてください!」
与えられた、今ここにあるはずの無い恩恵の正体を。
力の使い方を。
*
座敷で<サウザンドアイズ>の傘下のコミュニティの一つ、<ペルセウス>のリーダーであるルイオスと向かい合って話し合いが始まった。
だが、この話し合いで最高の結果を得ることはかなり難しいだろうと黒ウサギは感じていた。
「<ペルセウス>の所有するヴァンパイアが我々<ノーネーム>の本拠に現れ、それを捕まえる為に現れた<ペルセウス>に所属する方々が、我々<ノーネーム>の同士であるヴェルニスさんに手を上げました。幸いにもヴェルニスさんは怪我を負うことはありませんでしたがそれでも攻撃されたことは確かです」
「ふむ、急に現れ。その上で被害に遭わされかけた、と。ヴェルニス、事実か?」
「えぇ。そうねぇ。女神様とのお話を遮られた上に、変な光線魔法を私に撃ったあげく謝罪の一つもなしにそのまま逃げられたから無性に腹が立ってるわぁ」
「なにそれ。その程度のことで文句言いに来たの? 傷一つないんでしょ。そのメガミサマとやらの話を邪魔された程度じゃん。むしろこっちの方が迷惑被ってるんだけど。せっかくの商品の吸血鬼に逃げられかけたんだよ? 君達のところに居たってことは君達が盗んだんじゃないの?」
「何を言い出すのですか! そんな証拠がいったい何処に!」
「事実、あの吸血鬼は君達の所に居たじゃん?」
「うぅん……その程度、ねぇ……」
レティシアを現在所有しているのは<ペルセウス>であり、<ノーネーム>の魔王に奪われた仲間の一人であるレティシアを取り返すには<ペルセウス>にレティシアを賭けてのギフトゲームにまで持ち込むしかない。だがこちらが受けた実害はほとんど無いのだ。
レティシアとは少し会話をしただけで、外にいたヴェルニスも石化しているわけでもない。
そのヴェルニスにはほとんど何も説明出来ていないのだ。手伝って貰うのも難しい。呼ばれた飛鳥と耀も簡単な説明しか出来ていない。
故に、この場でギフトゲームにまで持ち込めるほどの交渉が出来る可能性があるのは状況をほとんど理解している黒ウサギと十六夜しかいない。
その肝心の十六夜は屋敷からここまで来てもなお、今もまだ黙り込み何かを考え続けている。
今のままではお手上げだ。黒ウサギには何も言い返すことが出来ない。
「まぁどうだっていいや。さっさと帰ってあの吸血鬼を売り払うか。愛想無い女って嫌いなんだよね、僕。特にアイツは体もほとんどガキだし───だけど見た目はいいからさ、その手の愛好家には堪らないだろ? 気の強い女を鎖で繋いで組み伏せて啼かす、ってのが好きな奴もいるし? 太陽の光っていう天然の牢獄の下、永遠に玩具にされる美女っていのもエロくない?」
ルイオスは挑発半分で相手の人物像を口にする。
挑発に乗せられ案の定黒ウサギは耳を逆立て叫んだ。
「あ、貴方という人は……!」
「しかし可哀想な奴だよねアイツも。箱庭から売り払われるだけじゃなく、恥知らずな仲間の所為でギフトまでも魔王に譲り渡すことになっちゃったんだもの」
「……なんですって?」
声を上げたのは飛鳥だ。彼女はレティシアの状態を知らなかったから驚きも大きい。
黒ウサギは声を上げなかったものの、その表情にははっきりと動揺が浮かんでいる。
ルイオスはそれを見逃さなかった。
「報われない奴だよ。ギフトはこの世界で生きていくのに必要不可欠な生命線。魂の一部だ。それを馬鹿で無能な仲間の無茶を止めるために捨てて、ようやく手に入れた自由も仮初めのもの。他人の所有物っていう極めつけの屈辱に耐えてまで駆けつけたっていうのに、その仲間はあっさりと自分を見捨てやがる! あの女、目を覚ましたらどんな気分になるだろうね?」
「……え、な」
黒ウサギは絶句する。そして見る見るうちに顔が蒼白に変わっていく。
同時にいくつかの謎も解けた。
魔王に奪われていたはずの彼女がこの東側に居る理由も、彼女が言っていた『手痛い出費』とは何かも。
魂を砕いてまで───彼女は仲間の下へ駆けつけようとしてくれていたのだ。
ルイオスはにこやかに笑って動揺する黒ウサギに向けて手を差し出し、
「ねぇ、やっぱりおかしいとおもわないかしらぁ?」
その手を、ヴェルニスに踏みつけられた。
「よーく考えたんだけどぉ。やっぱり許せないわぁ」
いつの間に立ち上がったのか。
黒ウサギにも、白夜叉にも。その場の誰もその動きに気づくことは出来なかった。
ルイオスの手首が踏みつけられ畳に押し付けられるている。
吸血鬼を餌に黒ウサギを手に入れようと考えていたがそれどころではない。
現在進行形で手首の骨が軋み、パキパキと音をあげる。
「な、なんだよ! 何踏んでんだ! どけろよこの足ッッ!!」
「さっきのぉ、女神様とのお話を邪魔したのを『その程度』っていうの女神様のお言葉を些末な物とでも思っての発言みたいじゃなぁい? 本当にそれって酷いと思うのよぉ。えぇ、人が楽しく会話してるのを邪魔して信仰を深めるのを邪魔して『その程度』って認識で吐き捨てるって本当に酷いことだと私は思うしそれをヘラヘラ笑いながら私や女神様をどうでもいいって思考の片隅に追いやって他の人と話すって、ねぇ?」
「ヴェルニスさん、なにを!?」
「ヴェルニス。その足をどけよ、この場は話し合いの場だ」
ルイオスはヴェルニスの足を掴むが微動だにしない。
踏みつけられた足が少しずつ床に沈み込みルイオスの手首からミシリ、と嫌な音が響きルイオスが呻く。
「本当にそう思わないかしらぁ。誰にだって話し相手や友達や家族や信じる神様や、あるいは無神論者だとしても信頼を寄せる誰かは存在するはずで、その誰かと話せばきっと楽しくて心が暖かくなる瞬間があるし、その誰かとの会話はきっと邪魔されればそれはそれは腹の底から怒りが湧き出る感情に繋がるはずで。私はそれをあなたに腹が立ったとしっかり伝えてあなたはそれを聞いて理解して認識してわかった上で私の女神様とのお話を邪魔された事を『その程度』って判断して道端のクズみたいに扱ったのよねぇ?」
黒ウサギの声も、白夜叉の声も届いている様子ではない。
ヴェルニスが腰に下げた剣をゆっくりと引き抜く。
「ねぇ、それって凄く酷い事じゃないかしらぁ。敬愛する女神様との大事な時間を他人の感情で計られてその程度のものって扱われてゴミが吐いて捨てる様に糞みたいに扱ってその上女神様を女神様とも扱わずにあまつさえメガミサマとやら? とやらってなによとやらってもしかしてその他扱いかしら? 他の神なんかと一緒の扱いをしているつもりかしら? 女神様は女神様でキチンと大事なお名前もあって、けどそれを全く女神様を知らない変な人に話せば何度も何度も何度も何度も何度もその程度のものとか思って思い上がったお前のようなゲロゲロが人の形を取ったような汚物が敬称すら無視して呼び捨てにして些末なものとして扱われかねないから言わないだけでちゃんと名前もあるただ一人の変えようのない大事な大事な大事な私の信じる心のあり場所で祈りを捧げる相手で私の生きる全ての時間を信仰に捧げるべき神様なの。私は女神様の暇潰しのための些末な存在だから女神様が死ねと言えば死ぬし髪型が気にくわないというなら幾らでも髪型なんて変えるし退屈だから椅子になれっていうなら喜んで椅子になるしポンコツを殺せと言われれば殺すしその名前を口にするゴミクズどもは私が女神様のお教え通りに私が殺すから私自身はどう扱われてもいいけれど女神様をぞんざいに扱う奴がいるなら私は断固としてその存在をミンチにしてミンチに、ミンチに。あぁそうよそうじゃないもっともっともっともっともっと世界はやることは簡単でいいじゃないあなたを殺して女神様を馬鹿にするようなその態度を正さないといけない、正すのが私の役目であの糞みたいなポンコツの腐れた反吐の出る風を汚す道端の飲み捨てられた空っぽの瓶みたいな世界の端くれのゴミクズ的存在が、的って言うのは違うわねゴミクズ存在が女神様を踏みつけて神の末席を汚して女神様を裏切った時みたいに、人の叡知によるものだとか妄言を吐き散らかして魂を利用するとか非人道的な事を我が物顔で言って人々を、命を塵芥みたいにぞんざいに扱うカスが女神様を侮辱して痰を吐きかけたみたいに浅ましくヘラヘラ笑って女神様とやらとか呼んだあなたを殺してミンチにして徹頭徹尾ぶち殺すのが、私の様な敬虔な信者の仕事よね?」
笑顔で、誰に聞かせるわけでもなく自分に言い聞かせるように息をつく暇すら無く喋り倒す。
憎悪の混じった声は、色がもし付いているのならばその声は黒く、黒く。闇よりなお深く染まっているのだろうか。
得体の知れない青い風がゆっくりと部屋の中に薄く吹く。
誰もが、白夜叉すらも一歩も動くことを許されない。
誰一人、ヴェルニスの中に眠る憎悪に、憤怒に、殺意に気付いていなかった。
浮かべる笑顔の裏に隠した心の内を知らなかった。
───三千世界に憎悪あれ。
歯止め無き憤怒あれ。
抑え止まぬ殺意あれ。
ヴェルニスは掲げた剣を逆手に構え、ルイオスの首に向けてにこやかな笑顔と共に突き下ろす。その手はもはや止められる筈もない。
今から動いたとて首元に突きつけられた剣を止められるのは光より速く動ける者だけだ。
何千、何万年という時の果てにして至る、研ぎ澄まされた殺意。
ただ漏れだしただけのそれで、この場にいる者の呼吸すら封じる。
下ろされる切っ先を止める為に動ける者は居ない。死の恐怖を知らぬ者は意識を手放すことでしかこの殺意から逃れる術を持たない。
それでも、大気を震わせる殺意を受けても。
動けるものがあるのならばそれは、
───……『忘れないで。一秒を、打ち砕きなさい』
幾度となく間近でその殺意を味わい続け、向けられた者しか居ないだろう。
「……その手を、どけなさい?」
「口調変わってるぜヴェルニス」
白夜叉は体を震わせるも僅かに一歩を踏み出せた、黒ウサギは腰を抜かして動けず、飛鳥と耀の二人は意識を手放し倒れている。ルイオスはとうの昔に気絶していた。
時が止まったように制止する五人を前に、十六夜だけが振り下ろさんとするヴェルニスの腕を掴み止めていた。
十六夜は空いた片方の手の指で自身の口元を指さす。ヴェルニスの口角は普段よりも落ちて笑顔は薄くなっている。それも含めての指摘だ。
「自殺願望でも、あるのかしら?」
「それでいいのか。殺意を込めて殺すべきクズはポンコツとやらよりもこいつなのか?」
力ずくで抑えこんで止める事は出来ないと十六夜は確信している。
体勢と、力の掛け具合。絶妙な加減でなんとか手を押さえつけるので限界だ。
今はまだ十六夜ではヴェルニスには勝てない。
天と地よりなお差がある。刃も通さぬ巨人の足元で這う蟻が、どうして打ち勝てようか。
ならば、代わりに言葉を使おう。人類の手に入れた言語という力を使おう。
殺意の矛先を問う。殺すべき存在を問う。その切っ先を濡らす血の存在を問う。
力で押し通すことが叶わないなら、言葉に賭けるしかない。
「…………………………」
「どうなんだよ。お前の信じる女神様はそれを望んでんのか?」
ヴェルニスは怒りの混じった笑顔を固め口をつぐむ。
部屋のなかで渦巻く青い風はなおも溢れる殺意に呼応するように十六夜とヴェルニスを取り囲む。
互いに言葉を失う。それ以上の言葉も説明も何も要らない。
ただ、ヴェルニスがその言葉をどう受けとり、どう判断するのか。
異常に長い一秒の半分が終わると同時にヴェルニスの腕から力が抜けた。
「それも、そうねぇ」
十六夜の掴む腕を振り払ったヴェルニスは音もたてずに静かに剣を仕舞う。
十六夜は離れると同時に自身の胸を掴み抑え、苦しげに息をついた。
その様子に目をやる事もなく、触れられていないなら興味もないといわんばかりに背を向けた。
「興が覚めたし帰るわぁ」
「……帰還の魔法とやらで、帰ったらどうだ。手っ取り早いだろ」
「なんであなた如きに指図されないといけないのよぉ。歩いて帰るわぁ」
ヴェルニスが面倒くさそうに返事をして振り返ることもなく部屋を出る。
チン、という軽い金属音と同時に青い風は姿を消していた。
行き場を失った二歩目をそっと戻した白夜叉が十六夜に向けて警戒の意思を向ける。
十六夜は息を整えて去り行く背中を睨んでいた。
「……小僧。
「粗野で狂悪で快楽主義者と三拍子そろった駄目人間の逆廻十六夜様で間違いねぇ。俺は俺だ……ちょっと色々思い出したってだけでな」
「クソッ! クソッッ!! お前ら覚えておけよ!」
あらゆる意味を込めて白夜叉は問う。その言葉にまともに答える気の無い十六夜が適当に答えるのと同時に片手でなんとか起き上がったルイオスが折れた手首を庇いながら捨て台詞を吐いて部屋から飛び出していった。
白夜叉は一瞥だけしてそのまま十六夜に向き直る。
「思い出す? 何を」
「歯に挟まった物が取れたみたいな爽やかな気分……って感じでもないか。後味は最悪だな。帰るぞ黒ウサギ、立てるか?」
「え、あ、ハイ!」
飛鳥と耀の二人を両肩に担ぎ上げながら黒ウサギに声をかける。
部屋を出ようとする背中に向けて白夜叉は声をかける。
眉間に寄った皺は起きたすべてに対する面倒な気持ちなのかもしれない。
「まぁよい。一応とはいえ同じコミュニティの傘下の者に手を上げられたとあれば私は何も出来ん。勝手にせい」
「わかってるさ。手を借りるつもりも、必要もない。やるべき事は
先程までと人が変わったように悩んだ表情が消え失せ、軽薄な笑みを浮かべた十六夜はそう言うと襖を足で開けて部屋を去る。
黒ウサギも一度頭を下げてからその背を追った。
見送り、ため息を一つついた白夜叉は足の形にへこんだ畳を見つめながら先程の光景を思い出す。
(あの殺気、尋常の物ではない。幾星霜の時を晴れぬ憎悪で満たしてようやく辿り着く類いの物。魔王に堕ちた者に似ているが桁が違うの。まさか隠し通されておるとは。流石に、一瞬動けんかった)
ヴェルニスが立ち上がった瞬間は見えなかった。が、剣を振りかざした瞬間は見えた。白夜叉でも腕がぶれて見えるほどの速度で構えられ流石にと思い止めようと一歩を踏み出し……。
(にしてもあの小僧もヴェルニスも。いつ動いた?)
その次の瞬間には十六夜がその手を止めていた。動きの初動すら見えずに姿が掻き消えたかと思えば既に立ち上がっていた。
そしてまた一瞬二人の姿が掻き消え、
(その約一秒後。
その途中の動作は一切見えなかった。
確かに、その姿は存在しなかったように見えた。
『速い』。ただそれだけならば白夜叉でも目で追えるはずなのだ。
ならば間違いなくこれは常識の範疇で考えるべき類いの物ではない。十中八九間違いなく恩恵の力だ。
十六夜は『思い出した』と言っていた。それがあの動きの原因なのだろう。
「うぅむ、気になるの。あやつは一体何者だ?」
*
<サウザンドアイズ>の店を出て本拠へと向かう道。
急ぐ足で進む十六夜の背を追いながら黒ウサギが焦った様子で話しかける。
「これからどうするのですか十六夜さん?」
「どうもこうもねぇよ。先方はぶちギレててこっちは現状では交渉材料はなし。交渉の場すら設けられないとなれば<ペルセウス>が用意したまま、ボンボン坊ちゃんには忘れられてるであろうゲームを利用して、ルールに沿って戦いを挑むだけだ」
「……それは、<ペルセウス>が常に開催している二つの試練をクリアして挑戦権を得ると?」
「大正解。正解した黒ウサギへのプレゼントとして俺が明後日までにかき集めておく。黒ウサギは明日<ペルセウス>を訪ねて明後日に『謝罪の場』兼『挑戦の宣言の場』をセッティングしてくれ。謝罪の場ならまだなんとかなんだろ」
段取りは既に済んでいると言外に伝える。最初からこうなる事を予想して全てを仕組んでいたのだろうか。だとしても疑問が残る。
そもそも何故<ペルセウス>のギフトゲームの事を十六夜が知っているのか。
<ペルセウス>について十六夜に話したのは2時間も経たぬ前の事だ。
調べる、あるいは予測したにしても情報は全くといっていいほど十六夜には無いはずなのだ。
レティシアが現れる事。<ペルセウス>のコミュニティ所属の者が現れて捕まえに来ること。交渉の場が壊れる事。
全てを予測していなければここまで即答で案を立てられるとは思えない。
「……黒ウサギ。聞きたいことはあるだろうがまだ少し待っていてくれ。俺自身、今の俺に答えが出せていない」
十六夜は小さな声でそう伝える。
そうだ。聞きたいことは山ほどある。
先程の一件も、あのヴェルニスの撒き散らした殺意の中で平然と動けていた事も。何もかも。
「わかりました。十六夜さんが話せるようになるその時が来るまで待ちましょう。黒ウサギに何か手伝えるのなら手も貸します。挑戦権を得る為のゲームに関してはお任せしてしまっていいのですね?」
待って欲しいと望まれるのなら。いつか話してくれると約束してくれるなら待ってみよう。
少なくとも十六夜は<ペルセウス>に戦いを挑むつもりなのだ。だとすれば乗らない理由も無い。
レティシアを取り戻す方が重要だ。レティシアを取り戻して全てが終わってから聞けばいい、時はもう幾らもないだろう。
「あぁ。そっちは任せろ。お嬢様と春日部の二人を多少なりとも鍛えておいて欲しい所だが三日、いや実際は二日かそこらか。となればそれも難しい……そうだな。ヴェルニスが勝手に<ペルセウス>にお礼参りに行かないようにだけ気をつけてもらえればそれでいい」
「わかりました。それより、今は何を急いでいるので?」
そうなれば今日の時点ではそこまですることも無いだろう。急ぎ足で本拠に向かう理由もないはずだと黒ウサギは思いながら付いていく。
「ん? あーいや……ちょっと気になる事があってな。確認しないといけないんだ。もし失敗してたら……いや、アイツの思考回路的には多分成功してるはずなんだが……」
「何がです?」
「
「……HA?」
どうも赤坂です。
最新刊発売に合わせて更新したら前話が弾けてランキング47位くらいにまであがってて吐き気を催しました。緊張で肉体が弾けそうになるのがキツかったです。実際に伸びてるの見てから二日くらい胃腸壊しましたし。
まぁ作者の胃腸の調子なぞ些細な事です。
更新が早いのはこの後の展開が決まってて現在は書きやすいだけです。
白天使を早く書きたいから私は急いでいるんです。止めないでください。うおォン。
ただ<ペルセウス>戦は少し時間がかかると思います。まだ悩んでる感じです。
ではでは。