[先天]あなたは問題児だ。   作:赤坂 通

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第九話『北の祭りはいつだって大波乱』

 あの時から───この世の終わりの夢を見るようになった。

 其れは、決して比喩ではない。

 

 世界を灼き尽くす炎熱が天を焦がし、世界は蒼い風に閉ざされた。

 居合わせた者達はあらゆる手を尽くして世界を救おうと立ち向かった。

 

 その全てがただの余波に潰され、消えていった。

 

 たった一体でも世界を壊しうる化物の影が二つ。絢爛な都はその姿を失い粉々になって消えた。

 揺れる視界の裏に凄惨な景色が広がる。ただ無為に命が潰れていく。その影で、血溜まりの上で無力を嘆く"彼"がただ一人。死ぬ事すら許されぬ体で悲嘆に暮れる。

 

 『正義』を叫ぶ醜悪な化物が彼方で暴れ狂い。

 『絶対悪』を掲げた白亜の龍の姿をした魔王が抗う。

 

 世界を灼き付くす閃熱を魔王が放ち、都を飲み干す。

 化物が腕を一つ振れば世界は半分に削り落ちた。

 地獄の底からあらゆる命が嘆く声が響き続ける。

 

 誰かの声が薄く響く。

『……謎を解きなさい』

 

 

 

 

 

 "彼"は無駄だと知っていても手を伸ばし、助けを乞う手を取ろうとした。

 届かない手を伸ばし、誰の手も握れないで、”彼”の手は空を切った。

 瓦礫の山の上から彼方に燃える空を見た。遥か彼方に輝く星空を見た。

 怨嗟の声に、咽ぶ人々の声が乾いた空に響いている。癒しの雨を求める人々が泣き叫ぶ。

 雨は、当の昔に止んでしまった。

 誰一人として助けられない"彼"はあらゆる命を見捨てる事しか許されなかった。

 

 "彼"を嘲笑う、誰かの声が響く。

 繰り返し、何度も、何度でも声が響く。

 

『……"エーテル"の謎を解きなさい』

 

 

 

 

 

 紅く濡れた短剣を手の中で転がして遊ぶ誰かが"彼"に語りかけてきていた。

 その誰かは、助けようと伸ばされる"彼"の手を踏み嘲笑っている。

 立ち上がろうとする意思を踏みにじり、立ち上がれない"彼"にため息をつく。

 勇者になれない、愚者を踏み潰す。

 終わりへと近づく世界に、歴史に、物語に、否を叫ぶただ一人、生き残らされた愚者を。

 

 目の前に立つ、誰かの声が響く。

 繰り返し、繰り返し、何度でも。何度でも。

 燃える世界に壊れ逝く命達の怨嗟の声の中でなおその声は響く。

 何度でも声が響く。

 

『"メシェーラ"と、"エーテル"の謎を解きなさい』

 

 

 

 

 

 蒼い風が吹き星の表面を押し流した。三つの太陽と蒼い巨大な月が空を巡り嗤い始める。

 星が巡る、星を廻る。

 時の果てに世界の全てが崩れ落ちて砂に変わった。

 共に歩んだ仲間の骨も、大地も、世界の果てすらも。

 永遠に続く白い砂漠に、黄金に輝く羊皮紙が舞う。

 その羊皮紙を誰かが手に取った。

 黄金の波に全てが覆われ、拐われ、消えていく。

 

 空に、落ちていく。

 

 掠れて消える、誰かの声が響く。

 

『忘れないで。一秒を、打ち砕きなさい 。既存の術では私達には勝てない。この世界が一丸となって初めて、スタートライン。後は”あなた”が何処まで、速くなれるか』

 

 再び、旅の始まりから全てを取り戻すために。廻された時の旅路を歩み始めるために、空に落ちていく”彼”の中に木霊の様に声が響き続ける。

 

『蝶が羽ばたき、嵐が吹く。……”メシェーラ”と”エーテル”の謎を解きなさい』

 

 さもなくば、"あなた"は幾度でも旅を繰り返す事になるのだと。

 

 

 

 

 

      *

 

 

 

 

 

<ノーネーム>地下書庫、積み重なった本の山の中。

 不安定な本の山が崩れ落ち十六夜を覆う。数冊の本が顔面に命中して十六夜は目を覚ました。

 

「…………っう…………」

 

 悪夢にうなされた、という恐怖や焦燥は特に無い。最近は連日あの夢ばかり見ている。うたた寝にすら現れたのは予想外だが、それだけだ。

 身を捩って覆い被さる本を払い除ける、すぐ側でジンもまた微睡みの中に居た。

 十六夜のペースに合わせて同じく本を読み漁っていたのだから仕方がないだろう。

 光の射し込まない地下書庫では今が何時かよくわからないが、まぁそれはどうでもいいだろう。この穏やかな微睡みを当然の権利の下にまた十六夜も享受しようと再び目を閉じた。古びた本が放つ独特の落ち着く香りに、本の為にと調整された涼やかで薄暗い書庫、外で子供達が遊んでいようと音は地下にまでは響かず、さらには前日の夕方から明け方までの長時間の読書というのも相まって疲れた瞳はその疲れを癒そうと瞼を重くし処理に苦しむ脳も情報を整理するた為に云々。

 以下劇的に省略。

 

 御託などどうでもいい。惰眠を貪るのに理由などいらないのだ。

 

「起きなさい!」

「させるか!」

 

 そんな惰眠に対して、膝と否を同時に脳天に叩きつけるべく必殺のシャイニングウィザード・(かい)を構えて飛鳥が強襲してきた。

 ドタバタと足音だけは耳にしていたがどうせヴェルニスが暴れてるだけだと無視し、ウトウトと閉じようとした目を見開くと即座に近くにあった都合のいい(ジン)を構えた。

 

「ンゲフッ───!?」

 

 気持ちのいいくらい綺麗にジンが吹き飛んで転がっていった。そのまま本棚にぶつかり落ちてきた本に埋もれる。

 

「ジ、ジン君がグルグル回って吹き飛びました!?」

「ナイスよぉ飛鳥。磨きがかかってきたわねぇ。もう少し速度を高めて威力向上を図りたいわねぇ」

「……南無」

 

 少し遅れて狐耳に割烹着の少女、<ノーネーム>の子供達の年長組の一人であるリリが吹き飛んだジンに驚く。

 その後ろでウンウンと威力に頷くヴェルニスと、顔色一つ変えずに静かに合掌する耀の姿があった。

 

「オイオイお嬢様。俺やヴェルニスはともかくジンにはシャイニングウィザード・悔はキツイ。使うならせめてシャイニングウィザードにしとけ」

「どちらにせよ致命傷です……ッ!」

「死んでないなら平気よぉ。致命傷程度なら唾つけておけば治るわぁ」

「ヴェルニスさんの言う通り生きてるなら平気よ! それよりこれを見なさい!」

 

 吹き飛んだジンをチラと見つつ、十六夜はため息交じりに飛鳥に文句を言う。

 頭を抑えながら起き上がったジンはデッドオアアライブ!? と驚いているが、今はそれより差し出された手紙について考えるのが先だろう。五月蝿いので手ごろな辞書をジンめがけて投げつけて物理的に黙らせる。

 これを見ろ、というが読まずとも封蝋とこの場というだけで十六夜には見覚えがある。

 

「双女神の封蝋……。火龍誕生祭のか。展覧会もあればギフトゲームも開かれて、さらにさらに階層支配者主催の大祭まで行われるって話だったしなにより古き日に祭りあるところに逆廻十六夜ありとまで恐れられ『縁日荒らし』の二つ名を勝ち取った俺が祭りの招待状を前に行かないわけ無いだろってか火龍誕生祭はいつだったかもあんまり楽しめてない気がするから行くぞコラ♪」

「ノリノリね。知ってるならいいわ! それで、十六夜君なら知ってるでしょう。どうやって北側に行くのかしら?」

「現状、一人当たり金貨一枚とかいう価格設定の外門を繋げる金もなければ、クソ遠い北側には物理的に向かえない。ってのはいいとして、双女神の封蝋って所でわかる通り白夜叉の所にいけば送ってもらえるはずだ」

「ままま、待ってください! 北側に行くとしてもせめて黒ウサギのお姉ちゃんに相談してから……ほ、ほら! ジン君も起きて! 皆さんが北側に行っちゃうよ!?」

「……北……北側!?」

 

 物理的に黙らせられ失神していたジンは「北側に行く」の言葉で跳び起きる。

 

「ちょ、ちょっと待ってください皆さん! 北側に行くって、本気ですか!?」

「ああ、そうだが?」

「何処にそんな蓄えがあるというのですか!? 此処から境界壁までどれだけの距離があると思ってるんです!? リリも、大祭のことは秘密にと──―」

「「「秘密?」」」

 

 重なる三人の疑問符。ギクリと硬直するジン。失言に気づいた時にはもう既に手遅れだった。振り返ると、邪悪な笑みと怒りのオーラを放つ耀・飛鳥・ヴェルニスの問題児女性陣。

 唯一驚きもしない問題児男性陣の十六夜は一人肩を竦める。

 この一ヶ月の間ジンと共に書庫に籠る事が多かった為、話す機会は多かった。その上で隠し事はしない方が身の為だと十六夜はそれとなく伝えてきていた。

 つまりは自業自得。隠して伝えなかったジンが悪い。

 

「……そっか。こんな面白そうなお祭りを秘密にされてたんだ、私達。ぐすん」

「コミュニティを盛り上げようと毎日毎日頑張っているのに、とっても残念だわ。ぐすん」

「楽しそうな事を秘密にして隠すなんて人のする事かしらぁ。ぐすん」

 

 泣き真似をするその裏側で、物騒に笑う問題児達。

 哀れな少年、ジン=ラッセルは問答無用で拉致され、一同は東と北の境界壁を目指すのだった。

 

 

 

 

 

      *

 

 

 

 

 

 リリに黒ウサギ達宛の手紙を渡し、一同は白夜叉が待っているであろう<サウザンドアイズ>の支店へ向かう。

 支店へと向かう途中、なんとか足止めをしようとするジンはヴェルニスに紐で縛られズルズルと引っ張られている。

 

「黒ウサギに追われる以上そこまで長く祭りは楽しめないと考えた方がいい。直行してるから多少は普通に遊べるとしてもよくて二時間かそこらと俺は踏んでる」

「パンフレットはある?」

「白夜叉に頼めばあるんじゃねぇか? 適当にぶらぶら歩いてても面白かった記憶があるから無くても平気だとは思うが。主催者公認のギフトゲームも開催されてるし、まぁ雑に回っても多少は楽しめると思うぞ。雑に回ると楽しめなさそうなヴェルニスには俺達の代わりに黒ウサギと鬼ごっこをしてもらう」

「相変わらずヴェルニスさんの扱いが雑ね。気持ちはわかるけれど」

「よくわからんが、何故か同性へのセクハラ魔人になりつつあるからな」

「別に雑に扱っていいわよぉ飛鳥。前は普段も結構雑に扱われてたしぃ。雑だけれど実はツンデレだったり、雑だけれど自由奔放なだけの二人についてのお話しするぅ?」

「……いいえ、いらないわ。十分よ」

「……聞き飽きた。耳にタコが出来る」

 

 げんなりと飛鳥と耀の顔が歪む。箱庭にきて一ヶ月と少し、飛鳥と耀の二人はひたすらにヴェルニスに付きまとわれていた。

 なぜ、どうして、というのは聞いても無駄だろう。なんにせよスキンシップ過多だった。

 

「そう。ならまた今度にするわぁ。白夜叉と会うなら女神様について語り合いたいわねぇ。白夜叉のパンティーも欲しいしぃ」

「本当に何が原因でこうなってるんだコイツは」

「「十六夜(君)が原因だと思う」」

 

 ほぼ同時に原因認定された十六夜はヤハハ! と笑っているが正直あまり笑えない。

 十六夜に一応心当たりはある。<ペルセウス>のギフトゲームに連れていかなかったせいか、飛鳥と耀、二人のギフトについてヴェルニスが前向きに研究を行っているのだ。

 やれこんな使い方はないか、やれこういう応用法はないか。

 ヴェルニスが適当に思い付いた事は徹底的に試されていた。

 お陰で、明らかに二人のギフトの扱いが上達しているというのと、その過程で新たに判明したことも多々ある。

 

(お嬢様に関しては問題ない。扱えるギフトが揃わない内はそこまで大幅な狂いは生じないはず。問題は……)

 

 問題は、もう一人の耀なのだ。

 

「変な生物をひたすら合成させようとしてくるし本当に何とかして欲しい」

「いいじゃなぁい。腐れポンコツの糞がやってた魂の合成なんていう吐き気のする所業が、父親から貰ったキカイなんて糞ゴミとかけ離れた自然の恵みを一心に受けた手作りの木彫りのブローチで出来るなんてどれだけ素晴らしい事かまた語るぅ?」

「いい。いらない。聞き飽きた」

 

 耳に手を当てて十六夜の後ろに逃げる耀の持つギフト、<生命の目録(ゲノム・ツリー)>の使い方を既にヴェルニスが見つけている。()()()()()()()()()()

 戦力が増強された、だとか早い分には問題ない、という楽観的な見立てでいられるとは思えない。

 考え込んでいる内に<サウザンドアイズ>の店が見え、いつもの店員が店先を掃除していた。

 

「……お帰り下さい」

「流石に顔見てそれはねぇだろ。実は通りかかっただけだったらどうするんだ」

「これはこれは大変失礼致しました。あなた達の足先が明らかにこの店に向き、目線がこちらに向いていたので。では」

「まぁ白夜叉に用事があるから来ているのだけれど。白夜叉はいるかしら?」

「……………………オーナーは不在です。お帰り下さ

「やっふぉおおおおおおお! ようやく来おったか小僧どもおおおぉぉおおおお!?」

「丁度いい所に来たわねぇパンティーを寄越しなさぁい」

 

 額に青い筋を浮かべた店員が凄まじく長い間の後に不在だと答えた矢先、どこから叫んだのか、和装で白髪の少女が空の彼方から降ってきた。

 嬉しそうな声を上げ、空中でスーパーアクセルを見せつけつつ着地しようとして落下地点で変態(ヴェルニス)に狩られていた。

 

「ええい何故おんしがここにおる!? 1ヶ月の間出禁と言ったであろう!」

「ここはお店の外よぉ。チガイなんとかの外側ねぇ」

「治外法権! なにより使い方が違かろう! よほどあの女神に言いつけられたいようじゃな!」

「女神様から直々にお叱り頂けるなんてそれなんてご褒美ぃ?」

「やはりというか話が通じんの! おんしらも見てないで助けい!」

 

 ヴェルニスによる明らかに白夜叉が黒ウサギなどにするよりも遥かにタチの悪いセクハラに苦しむ白夜叉の助けを無視して耀が声をかける。

 

「白夜叉、招待ありが」

「白夜叉様! 皆さんを止めてくださ」

「てい」

「ゲフッッ!!!??」

「……白夜叉、招待ありがとう」

「そもそもおんしは───む?」

 

 紐で全身を縛られたままのジンが暴走する問題児達を止めるために白夜叉に助けを求めようとした矢先に十六夜の手で脳天にキツイ一撃を受けて昏倒した。

 出鼻を挫かれたものの耀が白夜叉に改めて声をかけると白夜叉はモゾモゾとヴェルニスの腕の中で動いて肩車の形に収まる。

 

「北側に行きたいけど、お金がなくて」

「よいよい。全部わかっておる。まぁまずは店の中に入るとよい。条件次第では、負担は私が持って北側に送ってやろう。……秘密裏に話しておきたいこともあるしな」

 

 太ももを堪能出来て心なしかいつもより輝いた笑顔のヴェルニスの頭を白夜叉が叩き店の中に移動し始めたその背中に十六夜が声をかける。

 

「白夜叉、秘密も糞もなく事情をほぼ知ってる俺がここにいる訳だが、このまますぐに送って貰う事は出来るか」

「そういえばそうじゃったな。他の者もこの件については把握しておるのかの?」

「いいや。だが……いや、やっぱり中の方が良さそうか。止めて悪かった。入ろうぜ」

 

 そのまま話そうと思ったがオーナーに対する過剰なセクハラを前に立ち尽くす店員を見て促す。

 

 店内ではなく中庭を通り直接白夜叉の私室に向かい、ヴェルニスの肩から降りた白夜叉は厳しい表情を浮かべ、カン! と煙管で紅塗りの灰吹きを叩いて問う。

 

「さて、本題の前にまず、一つ問いたい。<フォレス・ガロ>の一件以降、おんしら魔王に関するトラブルを引き受けるとの噂があるそうだが…………真か?」

「ああ、その話? それなら本当よ」

 

 飛鳥が正座したまま首肯する。白夜叉が小さく頷くと、視線をジンに移す。

 

「コミュニティのトップの方針か? ジンは了承しておるのだろうな」

「うん。名前も旗もないコミュニティの存在を広めるならこれが一番早いからってジンが」 

 

 "名"と"旗印"の代わりに"打倒魔王"という特色を持ち、広めることでコミュニティの存在を認知してもらおうというのだ。

 昏倒したままのジンの代わりに答えた耀の言葉に、白夜叉は鋭い視線を返す。

 

「リスクは承知の上なのだな? そのような噂は、同時に魔王を引きつける事にもなるぞ」

「覚悟の上だ。それに敵の魔王からシンボルを取り戻そうにも、今の組織力では上層に行けねぇ。決闘に出向くことが出来ないなら、誘き出して迎え撃つしかねぇだろ?」

「無関係な魔王と敵対するやもしれんぞ?」

「───敵対するゴミは全部ミンチよぉ。二人の主能力上げにも強敵はちょうどいいし沢山来て欲しいところねぇ。まぁ、最悪私がいればどうとでもなるわぁ」

「……おんしは、信じる女神に誓って皆を守れるか?」

「えぇ。流石に家族程にとまでは言えないけれどぉ、二人は手放すには惜しいわぁ。どこまで強くなるかこの目で見てみたいものぉ。ほどほどに守るわぁ」

「あら、守られる事前提かしら」

「これでも少しは強くなってるはず」

「ミノタウロスの戦士に、一人で被害無く勝てるようになったら認めるわぁ」

「……ふむ」

 

 ヴェルニスはいつもの調子で言ってはいるが的外れというわけでもない。なにより二人の為、という所に関して嘘は間違いなく言っていない。

 白夜叉はしばし瞑想した後、呆れた笑みを唇に浮かべた。

 

「こやつがそこまで言うのならばよい。小僧もおるし、これ以上の世話は老婆心というものだろう」

「ま、そういうことだな。時間がない。一つだけ確認したら北側に送ってくれ。依頼に関しては引き受ける。内容に関しては後で構わねぇ。その方が面白い」

「構わぬが、何をそこまで急いでおるのだ?」

「黒ウサギと鬼ごっこしてるのよ」

 

 飛鳥の端的な説明に少し困った顔を浮かべた白夜叉は少しだけ戸惑う。

 

「……いや、まぁよいがの? 娯楽こそ我々神仏の生きる糧なのだからよいがの? 先日、悲痛な顔でおんしらの行動について相談されておる。黒ウサギの胃の事情も少しは考えてやれ?」

「知ったことじゃないわぁ」

「あれは弄られて煽られてなんぼだろ。で、だ。白夜叉───()()()()()()()()()()

「なんの……あぁ、あの件か。しっかりと記載しておいたぞ。確かに、あれは間違いない。"ルールの穴"であった」

 

 白夜叉がピッと指を振ると光り輝く羊皮紙が現れる。

 

 

 ────────────────────────────────────────────

 

                 § 火龍誕生祭 §

 

 

 ・参加に際する諸事項欄

 

 一、一般参加は祭典区画内でコミュニティ間のギフトゲーム開催を禁ず。

 

 二、"主催者権限"を所持する全ての存在は、祭典のホストの許可無く祭典へ参加する事を禁ず。

 

 三、祭典区画内で祭典のホストの許可の無い"主催者権限"の使用を禁ず。

 

 四、祭典区域にある舞台区画・自由区画・展示区画内に参加者以外の侵入を禁ず。

 

 宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗とホストマスターの名の下、ギフトゲームを開催します。

 

                               〝サウザンドアイズ〟印

                                 〝サラマンドラ〟印

 

────────────────────────────────────────────

 

 

 それは火龍誕生祭の契約書類(ギアスロール)だった。

 十六夜は、展示物に主催者権限が付与されている場合に気を付けろ、という事を伝えた。

 それに対して白夜叉が取った対処は区画内の全ての『者』でなく、全ての『存在』を対象とした"主催者権限"の監視と、全ての"主催者権限"の行使の管理であった。

 これで<サラマンドラ>と<サウザンドアイズ>に気付かれずに"主催者権限"持ち込む事も、行使することも、全て不可能に近いはずだ。

 

「よし。まぁ内で小細工する奴がいたら意味はないが……それに関しては白夜叉が防ぐだろ?」

「うむ。私の目が黒い内は魔王なぞの手引きなどさせん」

「これって十六夜は何をしたの?」

「ルールの穴を少しでも埋めてくれた、といったところだ。これでも防げぬならそういうものとして諦めて立ち向かうしかなかろう」

「あら、魔王でも現れるというの?」

「うむ。正解じゃ」

「「え?」」

「あらぁ、いいわねぇ」

 

 冗談で聞いた飛鳥の言葉に白夜叉が即答する。

 言葉を無くした飛鳥と耀を置いて十六夜が話を進める。

 

「とりあえず詳しいことは後だ。これで防げるとは思うが、それでも黒ウサギ含めそこまで時間はねぇ。送ってくれ白夜叉」

「よかろう。ジンと黒ウサギの二人には後でしっかり謝るのだぞ?」

 

 そう言うと白夜叉は両手を前に出し、パンパンと柏手を打つ。

 

「───ふむ。よし、北側に着いたぞ」

「「HA?」」

 

 素っ頓狂な声を上げる二人の手を掴んだヴェルニスが待ってましたと言わんばかりに部屋を飛び出した。

 その背中を見送った十六夜も膝を叩いて立ち上がり外へ出る。熱い風が十六夜の頬を撫でる。

 赤壁と炎、ガラスの溢れた街並みを眼下に十六夜は思考を巡らせる。

 

(さて、鬼が出るか蛇が出るか。春日部のギフトも含め、ここまで大きく動かせば必ず()()()()()()()───"歴史の修正力"がどれ程の物か見るにはちょうどいい)

 

 いつかの記憶を取り戻したあの時から考え込むことが多くなったように感じる。

 頭を振り、遊びへと意識を変えた十六夜は展望台から飛び降り、街へと繰り出した。

 

 

 

 

 

 




どうも赤坂です。
おおよそ一ヵ月ぶりです。
色々と練ってたのと用事が立て込んで書く時間がまったくなかったという苦しみの中ようやく取れた時間で書き上げておきました。
たまに来る感想通知が私の執筆意欲の背中を押してくれる……
サブタイトルいつも一日悩むんですけど毎回「これ!」ってならないんですよね
思いついたらサブタイトルはちょこちょこ変えます


さて、話が変わりますがアンケートを〆切りました。
結果としてですが、Elona要素マシマシとか気にせずに自由にやりはします。
が、そこまで差が開いてるわけでもなしに。Elona要素も増やす様に少しだけ展開や設定を練り直しておきました。

というかそんな展開に付いてなんてこれからの私に任せればいいんです。
それよりも遥かに大事なこととして

な ぜ ル ル ウ ィ 様 が 負 け る ! ! ! (14票差)

啓蒙活動マシマシ案件(方向性決定)
まぁ……Elonaといえばうみみゃぁ! な所あるし多少はね? って思わなくもないです
けど黒天使とルルウィ様の罵倒で朦朧としたいじゃないですか。
朦朧としながら黒天使の手に頬ずりして、心を落ち着かせるんだ……
こんな時どうするか……
2…… 3 5…… 7……
落ち着くんだ…『素数』を数えて落ち着くんだ……

ではでは。

2019/7/26 12:45
サブタイトルにかまけてたらアンケ締め切り忘れてました。(痴呆)
今度こそ締め切りました。
締め切り忘れでアンケ結果と後書きに誤差が……
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