[先天]あなたは問題児だ。   作:赤坂 通

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第六話『初めての固定ネフィアでのボス戦は血の味がした』

 隣の部屋からドンドンと壁を叩かれる音であなたは目覚め、叩かれた壁を殴りでぶち抜いて五月蠅いと伝えてからベッドをしまうなど準備してから展示場に向かった。

 ひたすらに寝言が五月蠅いとの文句だったが、あなたに自覚はないのだ。つまりあなたは悪くない。

 あなたの知りえないところで起きたあなたに纏わる不祥事で何故あなたが責められねばならない。

 主にペットが勝手に暴れて勝手にカルマが下がる事とか。

 そもそも人の眠りにケチをつけないで欲しい。そっちがその気なら相手を永眠させてからあなたもケチをつけていいはずなのだ。

 

 とりあえず今日は展示場とやらに行ってみよう。

 展示場には様々な創作物、美術品や技術の粋を凝らしたギフトの展示等があるようだ。

 剥製ではなく、ギフトを展示する博物館……とでもいえばいいだろうか。

 もしかしたらアーティファクトもあるかもしれない。

 盗む事は出来ないから制作したコミュニティに譲ってもらえるか『お願い』をしてみるつもりだ。

 そもそもはたしてあなたを満足させられる品物があるのか。

 他人の博物館に訪れる気分だ。

 どんな配置なのだろう。どんな剥製があるのだろう。

 

 ワクワクドキドキソワソワしながらウキウキと歩いていたあなただが……展示場に向かう道は本当にこっちであっているのだろうか。あまりにも人の気配が少ない。

 何度も道があっているか気になって辺りを見回したりしたが、張り紙はこちらだと告げている。

 お祭りで、さらに目を見張る展示物があると銘を打たれているのだ。人が少ないのは……いざ念願の店を開いたはいいものの閑古鳥が鳴いた時のあなたの様な気分に、主催者がなってしまうのではないだろうか。少し悲しくなってきた。

 そうこうしつついざ展示場に着いてみたら衛兵が数人見張っており、立て看板に張り紙が貼ってあった。

 

 ───なんでも、昨日ちょっとした事故・事件があったようで点検やら整備の為に一時的に封鎖しているとの事だった。

 

 今日の午後には再開予定との事。残念だが後で出直そう。

 なんとか見れないかと衛兵に詰め寄ってみたが展示物も一時撤去されているとの事で何処にあるかもわからなかった。

 ならば仕方なしと、道を引き返し途中で綿あめとやらを買ってモソモソと食べながら造物主の決闘を見に行くことにした。

 確かまだ開場の時間の前だがまぁ速い分にはいいだろう。遅いよりはマシだ。

 あなたは街中の、魔王が現れる等という妄言を吐いて暴れまわっている変人へ石を投げながら会場に向かった。

 妄言を言ってはいけない。魔王などこの世界に来て1度しか見たことがない。それも白夜叉だけだ。しかも元・魔王だ。

 最近ではあなたが魔王などではなどと言われている始末だ。

 

 

 誰が魔王だ。誰が。

 あなたは冒険者だと何度言えば理解してもらえるのだろう。

 

 

 綿あめが予想以上に腹に溜まらない事に舌打ちしながらクレープやパフェ等の甘いものをひたすら買い込んでおいた。

 果実の木を大量に畑に植えてあるお陰で、リンゴや苺を乱獲し、料理してつまみつつ旅をしている。簡単に言ってしまえばあなたは甘味が好きなのだ。

 妻やペットに甘味を渡すと涙を流しながら喜んで食べてくれるし、あなたのパーティーは甘味で生きているとも言える。

 あなたが作る料理はいつもほとんど変わらぬ味で変わらぬ食材の為やや飽きもするが気にするほどではない。こちらで色々買い込んで保管しておいてノースティリスの自宅に帰ったら皆と食べようと思う。

 

 

 ぶらぶらと屋台を荒らしつつ会場に着いて適当な座席にあなたは座った。

 ペットアリーナを見るような気分だな、と思いながらあなたはパフェを口に含みながら適当に見回していたら司会席にいる黒ウサギを見つけてしまった。目があった気がしないでもない。

 まぁイングニコートの魔法は解いていないし、この距離ならまだバレないだろう。

 それに人が溢れかえるほどいるのだ。この中から変装している一人を的確に見つけるのは至難の業だろう。

 

 あなたがぶらついていた昨日の時点で予選が行われていた様子で、対戦表には耀の名前があった。

 対戦相手のコミュニティの名前はウィル・オ・ウィスプ。周りから聞こえてくる声では六桁の最上位に位置するコミュニティとかなんとか。

 色白な少女が火の玉をだして耀を驚かせて笑っているが、まぁただの戯れだ。気にする程でもない。周りの観客はその様子を見てザワザワしているが。

 小声でひそひそと七桁所属の名無しでは勝ち目はないとかなんとか言われているが、同じ七桁のコミュニティに所属しているあなたの目で見る限り六桁の変な奴らも等しく雑魚だからそんな小声は気にする程ではないだろう。

 耀が本気も本気で命を懸けて戦えばまぁ99%勝てる試合だろう。そう思う。

 どうせ勝てるしパフェに集中しよう。溶けそうだ。

 味方が戦うのを安全圏から眺める。まさにペットアリーナだな、と思いながらあなたはパフェから目を外して改めて耀の対戦相手の姿を見て、

 

 ……訂正しよう。あれは駄目だ。許されない。勝てるのかわからないマッチアップになってきた。

 言ってしまえば南瓜の化物が居る。

 南瓜が透明になって一方的に耀が攻撃される未来が見える。それよりも死んでほしい。早急に。

 対戦表には※印でサポートが一人まで許されていると書いてあるし、耀にサポートが居ないならあなたが名乗りを上げたい。南瓜は殺さなければ。ノースティリスの冒険者の暗黙の了解だ。南瓜は殺し、緑のクズゴミは爆破する。

 殺せない方の緑は現れるより先に断りを入れて出させない。当然だ。自然の摂理ともいえるだろう。

 染みついた癖で南瓜を殺さんとほんの少し殺気を零しながら腰を浮かせて剣に手を掛けた所、司会席から諫めるような視線が飛んできた。

 十中八九白夜叉の物だろう。東側でギフトゲームをしていてもたまに視線を感じる時があるし、最近慣れてきた感覚の視線だ。まず間違いなくあなただと気づかれている。面倒なことになりそうだからあなたは舌打ちしながら席に着いた。

 

 ……周りの観客が一斉に押し黙った上に脂汗を掻いて硬直している。どうしたのだろう。

 

 白夜叉が前に出てきて挨拶をする前に耀に話しかけていた。

 さて、何を言っているのか。とりあえずあなたは膝を揺らしてカツカツと地面を叩いて鳴らしながら南瓜を睨んでおいた。

 ビクリビクリと、傍目にはわかりづらいが南瓜頭が動揺しているのがわかる。無様に死ね。疾く死ね。あなたの良性変異をひたすら消し去ったり酔っぱらわせてくるゴミ南瓜はこの世界から消え失せるがいい。

 耀との話を終えた様子の白夜叉が黒ウサギに何かを耳打ちすると突然、黒ウサギがあなたの名前を呼んだ。

 何事だろう。もしやサポーターとして選ばれたのだろうか。

 だとしたら僥倖だ。糞南瓜を殺せる。あなたは喜び勇んで飛び出そうと。

 

 

 などとするわけもなく。

 どう考えようと明らかに罠だ。確実に特定されて捕まる。

 あなたを釣るための罠だろう。白夜叉まで敵に回っていたようだ。

 流石にこれで喜び勇んで飛び出すほど馬鹿ではない。

 見つかりたくないのだ。黒ウサギの魅惑の肢体で *  きもちいいこと  * をさせろ。

 

 とはいえ無視するのもアレだなと考えたあなたがどうしようかと考えている内に、諦めたのかそのまま試合が進行され対戦者両者は場所を変えた。

 出てこないと判断するやいなや即座に進行する辺りあなたを探すのも本気と見た。祭りの司会に勝手に私情を挟まないで欲しい。

 あなた達観客に向けてモニタリングによる中継が行われている。

 

 試合のルールを簡単に纏めると、迷路を抜けるか、相手のギフトを破壊するか、降参も含め勝利条件を満たせなくなった場合。どちらかの敗北が決まって終わる。

 

 あなたならば迷わず相手のギフトを破壊しに行きそうだ。

 相手の武器を破壊するという目的なら火や氷属性でひたすら攻めるだけで済む。

 ノースティリスなら通じなくても、この世界は耐性を気にしてる人などいないから余裕で武器や装備を破壊できるだろう。もちろん持ち手も含めての破壊だが。

 

 さて、相手のサポーターの姿が見えないが、あの南瓜が創作物兼サポーターという事だろうか。

 それよりも、どうにもあの南瓜。正体を隠しているように見えるのだ。

 シェイドとはまた違うし、インコグニートでもないだろう。どちらかといえば……自宅に現れる乞食に扮した妹だろうか。

 これに関しては見抜くというよりは積んできた経験による勘だろう。

 見た目に騙されてはいけない。それは数多のムーンゲートの先の世界でも学んでいる。

 ムーンゲートの先に、農村の銀髪の少女を見かけてつまらない世界だと舌打ちして殺そうとして一歩を踏み出した瞬間消し飛ばされた嫌な記憶が過る。

 それにあなたのペットのプチはすくつのティラノサウルすらやろうと思えば殴り殺せるし、あなたの妻の黒天使にも引けを取らない戦いが出来る程なのだ。

 

 とりあえず、正体を隠したクソ南瓜という時点でまぁ勝ち目はほぼなくなっただろうか。即殺出来ればいいのだろうが。

 

 これ以上は言うまでも無いが、あなたの目から見ればこの対戦はクソ程面白くないマッチアップに成り下がった。

 まず間違いなく耀の勝ち目は無くなった。というより熱い展開の一つも起きないだろう。

 あなたや死亡フラグ少年がサポーターとしていれば勝てるだろうが……いや、死亡フラグ少年は駄目だ。あなたではなく彼がサポーターに選ばれたら不服を申し立ててあなたが殺す。

 

 ゴリゴリのマッチョvs触手スライムのくんずほぐれつの汗まみれの殴り合いの方が見どころがありそうだ。

 ハードゲイ(プレミアム)vs弱酸性スライム……自爆で双方消し飛んで酸が撒き散らされるいい試合だ。

 

 隣に座っている観客に同意を求めた所、マジかコイツ……というような顔をされた。解せぬ。

 結局この祭りで楽しめそうなのは未だ見ぬ展示場の展示物位しかないかもしれない。

 試合が始まるとほぼ同時に早々に席を立ち、会場を後にすることにした。

 午後まで時間がある。さてどこに向かおうか。

 そう歩き出そうとしたその時。

 

 

 ───ふと、空から落ちてくる黒い契約書類が目に入った。

 

 

 

 しばらくヒラヒラと舞いながら落ちてくるのを待ち、手に取るやいなやあなたが目を通すより早く会場から悲鳴が上がった。

 

 魔王が現れた。と。

 

 魔王。その言葉を聞いて即座に意識が遊びの思考から戦闘用の思考に切り替わる。

 変装はそのままに即座に武装を本気の物に替え、街全域に向けて喜びと共に本気の殺気を飛ばしておいた。

 ようやくだ。初めての魔王だ。あなたが本気でぶちのめしても誰も何も文句を言わない存在だ。

 白夜叉は論外だし魔王なんて言う座には似合わないだろう。女神様の御友人だそうだし。

 付近の建物の窓に罅が走り、地鳴りが町中から響いた。道行く人々が泡を吹きながら気絶していくが構う事では無い。

 

 あなたのちょっとした戯れの殺気程度で倒れる奴が悪い。

 

 バタバタ人が倒れていく音と共に悲鳴が鳴りやんでゆく会場内に、体を震わせるだけの反応が2……いや、3つ。

 少し遠くの外壁の上の方で3つ。一瞬遅れて反応が返ってきた。

 会場内の物は白夜叉と誰か2人。おそらく死亡フラグ少年と南瓜の怪物だろうか。

 だとするなら魔王は遠くの三人と断定。あなたは即座に情報の気配の方を睨み剣を強く握りしめた。

 生きている魔法威力向上の武器が嬉しそうに震える。

 

 ……そうだった。ポンコツをまだ殺していないから殺せないんだった。

 ふと思い直して武器を生きている生ものの長棒に変えておいた。

 握っているとじっとりと変にぬめぬめしだすから長くは使いたくないが、まぁ仕方ない。刃がついていない武器がこれ位しかないのだ。最も弱い武器という意味もあるが。

 あぁ、こんなことなら不殺の準備をしてから箱庭を訪れたかった。

 

 とりあえず絶対にポンコツは許さない。絶対にだ。

 早く見つけ出して血祭りに上げてミンチにして引き裂いて磨り潰してぐちゃぐちゃにしてあぁ──―殺したい。

 この世にあのような存在がいる事が許せない。

 

 

 境界壁と言われる赤い壁の上に立つ4つの影。

 4つの敵影。その姿は一つは露出痴女。一つは軍人。一つは斑ロリ。一つは白亜のゴーレム。

 一番強い気配がするのは斑ロリ。次点で軍人。痴女。ゴーレムは多分ペット枠だろう。 掃いて捨てれるほど強くなさそうだ。

 

 とりあえず全部ぶちのめしておこう、そうしよう。

 

 一歩で地面を割り砕き、二歩で音速を超え、三歩で力任せに跳躍する。

 いざ高い所から悠々と降り立ち、格好よく姿を現そうなどと考えているのかもしれないがそんな演出はノースティリスの冒険者、特に廃人には全く通じやしない。

 一本道があるなら壁を掘り回り込み。部屋が広いならドアや壁が部屋に溢れて道を狭め。障害がないなら呪われた酒が乱れ飛ぶ。

 特殊なネフィアのボスの殺し方なんて大体そんな感じなのだ。

 あなたは戦い方に拘りはない。あなたは廃人だが狭量ではない。

 相手がどんな戦い方をしようといいのだ。

 どんな戦い方だってあなたは認める。勝てば正義なのだ。

 

 恰好がつけたいなら、付けるといい。

 決め台詞が吐きたいなら、吐けばいい。

 舞台演出をしたいなら、すればいい。

 

 あぁ、すべて良い物だ。きっとそうだろう。相手が気持ちよく戦いたいというなら恰好を幾らでもつけるといい。

 あなたはその全てを否定しない。

 

 そのどれもに等しく価値などない。

 

 演出で生存率が高まるなら幾らでもしてやろうじゃないか。

 駆け引きもクソもない。命の奪い合いには必要無い。

 

 力 is パワー。

 

 あらゆる手段・方法を使っていいのだ。

 捻って擦って切って打って撃って叩いて潰して千切って刻んでそうして殺し、ミンチにする。

 最後に立っていればそれがあなたにとっての『勝利』だ。

 勝ち方に拘るつもりなどない。だからこそあらゆる戦い方をあなたは認める。

 あなたはわざわざご丁寧に勝ち方に拘る雑魚に付き合って名乗りを上げるつもりなどない。

 命のやり取りに無粋なものを混ぜ込む方が愚かだろう。

 

 愚かと言えば、そう。例えばポンコツとか。

 あぁ許せない。あなたの命の奪い合いに余計な横槍を刺してあなたにポンコツを殺すまでの不殺を植えこむなんて。

 

 現実に戻ろう。

 あなたが跳躍で一気に距離を詰めた所明らかに目線があったので、敵も逃げ出さない優しい微笑みを見せて長棒を振り回して全員を地面に直葬。……もとい直送しておいた。

 会場に全員が落ちていった。会場が爆発した様に遠くから見えた事だろう。モクモクと土煙が会場を覆った。

 割と洒落にならないくらいおぞましい高さの粉塵が上がっているが、何かが死んだ音はしないし生きているだろう。

 一番強い斑ロリの相手をしてみるか、とあなたは悠々と壁に足を突き刺して歩きながら地面に向けて進みだした。

 

 さて、元ではない魔王との初接触。はたしてあなたを楽しませてくれるだろうか。

 




どうも赤坂です。
まだ作者本体は帰ってきません。
ではでは
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