[先天]あなたは問題児だ。   作:赤坂 通

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第八話『廃人の領域に立つ者に気軽に挑んではいけない』

 ───白夜叉に全力一本を振るった次の日。白夜叉の私室に潜り込み眠っていたあなたの耳にゲーム再開の鐘の音が響いた。

 あなたが喜び勇んで勢いよく外に飛び出すのとほぼ同時に世界がガラリと様相を変えた。

 見下ろす町並みはその配置も、並びも様相も全てを変えていた。あなたの見たことの無い街の光景だ。

 もしや、対魔王用とかの街で一粒で二度美味しいということだろうか。

 

 

 

 実にどうでもいい。

 

 

 

 祝福された魔法の地図の巻物を読んで全貌を把握しておいた。

 明らかにボスがいそうな部屋や空間が殆ど見当たらない。

 ということは昨日のつくし、乳お化け、地面から生えた足はどこかに潜んでいるのだろう。

 どんな格好をしていたか忘れてしまった。印象に残っているのがそれだけだ。

 脅威には成りえないから特に緊張感は無い。

 廃人になってからミノタウロスの巣に挑むようなものだ。駆け出しのころに頼まれるままに潜り込んだ時の事は忘れたい。

 

 

 曲がり角からこんにちは。死ね。

 

 

 ……あの光景は今思い出しても頭が痛くなる。一国の大臣が後先も考えずに駆け出しに頼む依頼ではないと思う。

 ミノタウロスが居なくならないのも冒険者という餌を撒いているからではないだろうか。

 数年後に再度挑み、同じ様な状況で曲がり角で出くわし、その瞬間に辻斬りで殺したのはあなたの方なのだが。

 

 

 思い出から現実に意識を戻そう。

 そういえば確認すら忘れていたギフトゲームの勝利条件だが、主催者をぶちのめす。もしくは、偽りの伝承を砕き~とかなんとか。

 どちらかを満たせばクリアだそうだ。

 

 あなたが選ぶのは主催者の打倒ただ一つ。

 徹頭徹尾、確実に捻り潰す。今度は一発屋の一撃などで終わらせるつもりはない。

 

 あなたにとってギフトゲームの裏に隠された真実だなんだは知った事ではない。

 箱庭のギフトゲームはチキュウなる星の歴史だとか物語だとかの発祥が多いからあなたは欠片も知らないし調べるつもりもない。

 そもそもノースティリスについての歴史だとか物語だとかにもあなたは疎いのだ。

 まぁティリス全土の歴史であればレシマス攻略の果てに手に入れ、解読まで終わらせた『アレ』があれば可能なのだが……。

 如何せん。持ち出すと効力を失う性質のせいであなたが手に入れた瞬間以降の歴史は残されていないし使い道など殆どない。

 精々黒天使のスリーサイズを調べるのに使った程度だ。

 全ての歴史ということもあり全力で隅々まで調べたら見つける事が出来てあなたも当時はニッコリしたものだ。

 まさか個々人の歴史まで残されているとは思わなんだ。黒天使はこれを手に入れたから記されたのではとかなんとか言っていたが詳しい事はよくわからない。

 役に立てばそれでいいのだ。黒天使のスリーサイズを調べるとか。黒天使の下着の色を調べるとか諸々。

 そのために三年もの歳月を費やして正解だった。

 

 話を戻そう。それといい加減に思い出に耽らずにしっかり現実に目を向けよう。

 ゲーム再開とほぼ同時に現れた黒ウサギに現在あなたは猛烈に警戒されている。

 白夜叉の私室から出る時にインコグニートを発動しておいて本当に良かった。バレてはいない。まだ負けていない。まだ * きもちいいこと *は出来るはずだ。

 見たことも無い顔と声に対してしきりに耳を動かして睨んできているがまだ負けていないはずだ。

 敵ではない、と伝えたもののやはり不審なのだろう。

 あなたは、ここにいても埒が明かないし他のところに行くと伝えて歩き出した。

 背中に黒ウサギの目線が突き刺さる。他人なのだから気にしないで欲しい。

 

 ともかく、まずはつくし……確か斑ロリだったはず……を探して叩き潰そう。

 ばるんばるんしてるけしからん乳持ちをもいでもいいのだが。

 地面から生えた足は割とどうでもいい。見かけたら全裸に剥いてまた埋めて足を地面から生やしておこう。

 あと何かいた記憶が……。

 そう思って歩いていたら白い陶器っぽい巨人に出くわした。

 ノースティリスの<ポーン>やら<キング>やらの<駒シリーズ>に似ているソレはあなたを見るや否や襲い掛かってきた。

 目障りだしとりあえず殴り飛ばしておこう。

 死んだらその時はその時だ。力量差も考えないこいつらの悪い頭が……。

 

 

 

 瞬間、あなたに電流走る。

 

 

 

 頭が悪い=ポンコツ=抹殺対象。

 この方程式が成り立つのでは。

 あぁまさに悪魔的発想……! 

 理由をこじつけている様にしか見えないのはきっと気のせいだ。そっとしておいてほしい。そっとしておけ。

 そうと決まれば我慢などできようはずもない。ミンチだ。

 

 思い直して襲い掛かり、裏拳で木っ端微塵に砕いておいた。

 手ごたえがない。残念だが当然だろう。巨人と蟻のフンくらいの力の差があるのだから。

 相手の体力が300程度だとしたらあなたの一撃で入ったのは60000かそのくらいだろうか。

 裏拳で殴ったとはいえ小突いた程度の威力でこれだからやる気が出ない。

 オーバーキルにも程がある。物理でこれなら魔法だとどうなってしまうのか。

 それに血肉が付いているわけでもなしに。壊してもそこまで気持ちよくない。

 たまに現れる陶器っぽい巨人を遠慮せずにぶち壊していく。

 特に何も考えずにぶち壊す快感に浸りながらテクテクと歩いていたら黒ウサギと、なんか赤い少女が斑ロリと戦っていた。

 ちょうどいいし混ぜてもらおう。

 

 斑ロリに奇声を上げながら後ろから襲い掛かった所、殴るより先に黒ウサギに思いっきり見つけたと叫ばれた。

 何故バレたのだろう。インコグニートは適宜かけ直してるからしっかり発動している。

 

 他の人と間違えているのでは、とまた言ってみたがそもそもに決められたメンバー以外は斑ロリとの戦いには参加しないという手筈だったらしい。

 ゲーム参加者全員に徹底したはずなのに無視して突っ込むとなると作戦について知らない上に、話が通してあっても問答無用に突っ込むあなたしかいない。

 というかお前の顔を見たことが無いし、あなたならきっと変装くらいなら余裕でこなすはずだと。

 そう完全に言い切られてしまった。

 面倒だし反論しなくていいだろう。

 

 

 バレてしまっては仕方ない。

 

 

 その慧眼を賞して、あなたを見つけ出した報酬に星の彼方への案内ツアーはいかがだろうか。

 ヌメヌメした長棒によるフルスイングぶっ飛び旅行案内ツアーなのだが。

 首がちぎれるのではないかというくらいの速度で首を振って拒否された。

 

 きっと楽しいはずなのだが。主にあなたが。

 そんな風に遊んでいたら斑ロリの袖口からわさわさと黒い煙が漂ってきてあなたに纏わりついてくるが……これはなんなのだろう。

 不審に思いながら喰らい続けていたら病気になった。

 ステータスが一時的にとはいえ下がるから止めて欲しいのだが。

 ダメージはないのでほぼ実害無しと判断して斑ロリの頭を叩いて昨日の様に地面に突き刺しておいた。

 つくしの気分を再び味わうがいい。

 

 気持ちのいい悲鳴と共に地面に突き刺さったまま下を向いて俯いてしまった。

 面白おかしい顔を見せて欲しいのだが。嘲笑うために。もしや頭を叩いたせいで首が折れてしまったのだろうか。

 そう思っていたら斑ロリがふわりと地面から出て浮かび上がった。

 物凄い怒っている。激怒だ。

 

 

 

 ははは。喚くな。

 

 

 

 長棒をぺしぺししながらにっこりとした微笑みでまた地面に植えようとしたところ、再び黒い煙……というより風だろうか。が漂ってあなたに纏わりついてくる。

 死を齎す風だ、とかなんとか言っているが9999ダメージを受けるだけだ。

 この程度ではあなたの体力を削り切るにはしばらくかかる。毒の様な継続ダメージとはいえそこまで痛くない。

 普通にスタスタと歩いて風を突破して殴り飛ばした。

 ギフトを無効化したのかとかなんとか黒ウサギが驚いているが決して無効化したわけじゃない。そもそも無効化の仕方がわからない。

 あらゆるダメ―ジの無効化の仕方はわかるが一身上の都合で単純作業以外で装備するつもりはない。

 

 無効化ではなく、余りある体力に物を言わせて無理やり突破しただけだ。

 

 駆け出しなら数千回か数万回は死ぬ合計ダメージ量だが、あなたの体力は数十秒喰らっただけでは半分も減らない。

 そうはいうものの、さすがにこの風の中では10分以上は耐えられないと思う。

 一応、回復魔法を唱えて回復しておいた。何度もずっと喰らうと正直不安というのもある。

 これがステータスに縛られないギフトの強さだろうか。魔法と何が違うのかという感じはするが。

 とはいえ、あらゆる耐性を貫通して固定ダメージを与えてくるという点を考えると強いのだろう。

 

 ギロチン台やアイアンメイデンと同等であり、かつ継続した火力。正に、ダメージ9999固定の毒という表現が一番伝わりやすいだろうか。実に欲しいギフトである。

 確かに9割くらいの敵は為す術もなく死ぬだろう。9割くらいの敵は。

 悲しい事だ。廃人のあなたには通用しない。残りの一割があなただ。それだけのこと。

 というか、武器として使えるなら物凄く欲しい。この効果はとても強い。

 

 風を突っ切って斑ロリをぶっ飛ばしてはみたものの、一向に倒れる様子もないし風が地味に痛い。

 体の節々に痛みが生じて、頭痛と悪寒が凄い感じだ。気持ちが悪い。

 打倒という話だがどう打倒すればいいのだろう。ギフトゲームのルール上で、打倒は長棒でシバくだけでは足りないのだろうか。

 もしや殺す必要があるのだろうか。だとしたらあなたでは殺せな、い……し……、

 

 瞬間、再びあなたに電流走る。

 

 電流が走り過ぎではないだろうか。同じネタを繰り返すのは三流のすることだ。

 

 とはいえ説明はさせてもらおう。

 先程の陶器っぽい巨人はポンコツという事で木っ端微塵にしていいとした。

 元締めのこいつらもポンコツの関係者という事で殺していいのではないだろうか。

 ふとそう思ったのだ。際限なくなるから止めておこう。

 

 流石に何度もポンコツをネタに乱用したら女神様がいい加減にしろと怒ってきそうだ。

 まぁあなたの自重や自制など、ノースティリスの各種ギルドの警備くらいガバガバだ。

 インコグニート一回で解かれる警備体制……。今にして思っても流石にザル過ぎるだろう。

 とりあえず、ポンコツを殺してからミンチ作成を行うとかなんとか言ってはいるものの、有事の際や茶目っ気を発揮したい時は普通に知った事かと暴力を振るう所存である。

 ムーンゲートの先の世界等ではむやみやたらに人々を殺して回ると世界観とか組まれた物語とかがよくわからないまま観光する事になる事があるからあまり殺すつもりはない。

 箱庭も同じだ。

 

 とまぁ、あなたの自分語りはここまででいいだろう。

 面倒になってきたと伝えてもう一回斑ロリを殴り飛ばして離してから黒ウサギに後は任せたと伝えてあなたは立ち去ることにした。

 後の事は現れた少年少女三人組に任せてあなたはこの見慣れない街をぶらり観光にでも行くことにしよう。

 どうせ斑ロリもあなたの度重なる攻撃で満身創痍だろう。体力が減っていないのだとしても精神面で死に体だろう。

 最後の後処理は任せるくらいでちょうどいい。

 あなたの手を煩わせるまでもない。

 

 

 

 

 

     *

 

 

 

 

 

 全てが終わった後、闘技場の大幅な破損や一部死人が出たという話でお祭りは中止となってしまった。

 あなたとしてはもっと楽しみたかったのだが。

 やはり魔王が現れた瞬間に首を刈って殺しておくべきだったのだろう。反省しよう。次の機会に活かされるかは知った事では無いが。

 

 

 魔王は絶対に許さない。祭りの会場を破壊してあなたの娯楽を奪うとは許せない。

 

 

 破壊の原因の9割があなたという事実はさておき、ノイエルの祭りを開催日に核の炎で包み復興・再開と共に何度でも懲りずに毎年のように爆破しているのでお前が言うな状態だが知った事ではない。

 棚に上げて言わせてもらおう。祭りの邪魔をするやつが悪い。

 主にあなたやあなたの妻の黒天使に何を思ってか、改宗を提案した昔の他教の狂信者が悪い。もう数百か数千年前の話だが。あの腐れ信者共はポンコツの信者の次にあげられる抹殺対象だ。神は別に悪くないから変な事をしでかさない限り対象外だがその信者は殲滅させてもらおう。

 

 

 とにもかくにも、終わってしまったものはしょうがない。

 次回の開催を心待ちにしながら、あなたは白夜叉のパンツを強奪しに向かう事にした。

 突然の狂行と思うなかれ。あなたは崇高な考えの元動いているだけだ。

 

 

 

 祭りで遊べないなら、知り合いで遊べばいいじゃない。 byアナター・ワネット

 

 

 

 出来れば黒ウサギのパンツを奪ってみたいが、今回は司会進行に私情を挟んであなたを吊りだそうとした件や壁に阻まれた件と言い白夜叉への鬱憤の方が溜まっている。

 発散先は白夜叉で決定だ。

 

 パンツを奪ってからサンドバッグに高めに吊るして下から覗けるようにしてやろう。

 ついでにあなたが下で演奏でもすれば人も集まって更に楽しくなりそうだ。

 サンドバッグとストラディバリウスを四次元ポケットから取り出しつつあなた雪原を走り回る子犬の様な笑顔で白夜叉の元へと走った。

 

 

 

 

 ───数分後。白夜叉に全力でぶん殴られて空を舞うあなたの姿があった。

 まぁ完全に遊ぶ気分だったからこそ吹っ飛ばされたのだが。油断大敵。今度こそ真正面から奪って見せる。

 今度はあなたの全力の隠密窃盗で盗んでやろう。

 あなたは決意を抱きながら微笑んだ。

 

 

 あなたの箱庭での遊びはまだまだ始まったばかりだ。




どうも赤坂です
帰ってまいりました。
六話分程書き溜めてあるのでぼちぼち投稿していきます。
ではでは

追記:イン「コグニ」ート を イン「グニコ」ート と数年間か数十年間か呼んでた(驚愕)多分この二次を投稿してなかったら永遠に間違えてたと思う(報告に感謝)
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