今回は前話のラストからもわかる通り、ノーヴェと“彼女”の対決シーンになります。
そして終盤にて、少し前に活動報告で募集していた読者考案のオリジナルモンスター、その1体目が本格的に登場します。
それではどうぞ。
「確かめたい事だぁ?」
帰りの夜道でノーヴェの前に突然現れた、碧銀の長髪が特徴的な謎の女性。ノーヴェを見下ろすように街灯の上に立ちながら、こちらの都合も考えずに素性すら名乗らない。ノーヴェからすれば、彼女の態度はとても気に入るような物ではなかった。
「質問すんなら、バイザー外してからまず名を名乗れ。人に物を聞く態度じゃねぇだろ」
「……失礼しました」
ノーヴェがそう言うと、碧銀の女性は街灯から飛び降りフワッと地面に降り立つ。そして目元に付けていたバイザーを取り外し、その素顔をノーヴェに晒した。
(! 左右の目の色が違う……)
右目が紺色で、左目が青色。色彩からして少しわかりにくいものの、女性が見せたその瞳は、ヴィヴィオと同じオッドアイになっていた。それに気付いたノーヴェも少しだけ驚く表情を見せたが、なるべくそれを見せないようすぐに表情を切り替える。
「私はカイザーアーツ正統……ハイディ・E・S・イングヴァルト。“覇王”を名乗らせて頂いています」
「覇王……噂の通り魔か」
「否定はしません。私があなたに伺いたいのは、あなたの知己である王達についてです」
碧銀の女性―――“ハイディ・E・S・イングヴァルト”が投げかけて来た問いかけ。その内容を聞いたノーヴェはハイディを鋭い目で睨みつける。
「聖王オリヴィエの
「
ハイディが言い切る前に、ノーヴェは迷わず答えを返す。
「聖王のクローンだの冥王陛下だのなんて連中と、知り合いになった覚えはねぇ。アタシが知ってんのは、一生懸命生きてるだけの普通の子供達だけだ」
ハイディの目的はわからない。しかし通り魔などやっている以上、どうせ碌な目的ではないだろう。そもそもヴィヴィオ達に対してそんな呼び方をするような輩を相手に、素直に教えてやるつもりはない。だからこそ、ノーヴェはそれ以上の言葉は語らなかった。
「……理解できました。その件については他を当たるとします」
それ以上は聞いても無駄だと悟ったのか、ハイディはそれ以上深く聞く事はしなかった。ここで彼女は話題を切り替え、自身の拳を強く握り締める。
「では、あなたに確かめたい事がもう1つ……あなたの拳と私の拳。一体どちらが強いのかです」
「要は喧嘩売りに来たって事かよ……良いぜ、上等だ」
相手が通り魔である以上、見過ごす事はできない。取り敢えずこの場で叩きのめしてから、管理局に突き出してしまえば良い。そう考えたノーヴェはカバンを地面に放り捨て、拳をパキポキ鳴らしながらハイディと相対する。
「防護服と武装をお願いします」
「いらねぇよ」
「……そうですか」
ハイディの実力がどれほどの物なのか、それによってバリアジャケットを纏うかどうかも変わって来る。ノーヴェは敢えてバリアジャケットを纏わず、敢えて私服の状態で様子見を行う事にした。
「つーかお前、よく見りゃまだガキじゃねぇか。何でこんな事をしてる?」
「……強さを知りたいんです。私の強さを」
「そんだけか? はん、馬鹿馬鹿しい―――」
ドゴォォォンッ!!
言い切った直後。素早く前に出たノーヴェが左足の膝を突き出し、ハイディの顔面目掛けて飛び膝蹴りを繰り出していた。ハイディも両腕を前に出してそれをガードするが、そこにノーヴェがすかさず追撃を放つ。
(もう一丁!!)
ノーヴェは握り締めた右手の拳に僅かな電流を纏わせ、ガードの隙間を通ってハイディの顔面を狙う。しかしハイディはすぐさま両腕を動かしてその拳も防ぎ切り、その衝撃で大きく後ろに下がっていく。地面に着地したノーヴェは小さく舌打ちした。
(ガードの上からとはいえ、不意打ちとスタンショットをまともに受け切った……言うだけの事はあるってか)
並の相手ならば、今のたった二撃で呆気なく落とせていた。しかし目の前のハイディは防ぎ切った。それだけでも簡単に勝てる相手じゃないと悟ったノーヴェは、懐から取り出した自身のデバイス―――“ジェットエッジ”を右手で突き出した。
「ジェットエッジ!」
≪Start Up≫
電子音性と共に、ノーヴェの着ていた服装が変化していく。ナンバーズの頃とは違う形状で、余計な武装のない動きやすいバリアジャケット。右腕には籠手型の武装であるガンナックルを、両足にはローラースケートの付いたブーツ型の武装であるジェットエッジを装着し、バリアジャケット姿になったノーヴェはハイディと対峙する。
「武装、ありがとうございます」
「……敢えて聞かせて貰うが、強さを知りたいって正気かよ?」
「正気です」
ハイディはそう言い切った。
「そして今よりもっと強くなりたい。その為に私は戦っています」
「ならこんな事してねぇで、真面目に練習するなりプロの格闘家を目指すなりしたらどうなんだ? 単なる喧嘩馬鹿なら、ここらへんでもうやめにしとけ。ジムなり道場なり、良い所なら紹介してやっからよ」
「ご厚意、痛み入ります。ですが」
ハイディは右手拳を自身の腰辺りまで下げ、左手を前にゆっくり突き出しながら構えを取る。
「私の確かめたい強さは……私が生きる意味は、表舞台にはないんです」
(? この距離で構えた……?)
ハイディとノーヴェの間にはかなりの距離がある。そんな状況にも関わらずハイディが素手で静かに構えているのがノーヴェは不可解だった。
「―――って、うぉっ!?」
ハイディがゆらりと動いたその直後。ノーヴェが気付いた頃には、既にハイディは目の前まで接近し、正拳を繰り出す寸前だった。ギリギリ気付けたノーヴェは頭を下げて正拳をかわす事ができたが、ハイディはすぐに次の一手を繰り出そうとしていた。
(速い、しかも違う
ノーヴェの予想とは違うステップで迫って来るハイディの動きは、ノーヴェにとってはかなりやり辛い物だった。そのせいか、ノーヴェの反応が僅かに遅れてしまい、ハイディの拳がノーヴェの腹部に強く打ち込まれる。
「がっ……チィ!!」
ノーヴェは腹部の痛みに表情を歪めるも、ジェットエッジのローラースケートを高速回転させて素早く後方に跳んで下がり、乱れかけている呼吸を整えるべくハイディから距離を離す。
「ハァ、ハァ……お前、んな事して何になるってんだ……お前がそうまでして戦う理由は何だ!!」
「私の目的は1つ。列強の王達を全て倒し、ベルカの天地に覇を成す事……それが私の成すべき事です」
「ッ……寝惚けた事抜かしてんじゃねぇ!!」
ノーヴェは再び駆け出し、ガンナックルを装備した右手で拳の連撃を叩き込む。強力な拳を受けたハイディはほんの少しだけ痛みに耐える表情を見せるが、それでも両手拳でノーヴェのパンチを的確に捌いていく。
「昔の王様なんざ皆とっくに死んでる!! 末裔や生き残り達だって、皆普通に生きてんだ!! 戦いのない日常をな!!」
「平穏な日常は、戦う事を忘れさせる」
互いの拳が激突し、その衝撃で両者同時に後退する中でも、ハイディは語り続ける。
「戦いを忘れれば力は弱まっていく。弱い王なら、この手でただ屠るまで……」
「……ッ!!」
弱い王に価値はない。ハイディが語るその言葉は、まるでヴィヴィオの平穏な日常を否定するかのような心のない物だった。彼女のそんな冷たい言葉が、ノーヴェの逆鱗に触れる事となった。
「この馬鹿ったれがぁっ!!!」
体中から魔力を放出し、身体能力を更に高めたノーヴェは足元からエアライナーによる足場を展開。それがハイディの周囲に張り巡らされる中、ハイディの右手と両足がバインドで封じられる。
(ッ……バインド!?)
「ベルカの戦乱も、聖王戦争も!! ベルカって国その物も!! お前が求めてる物なんざ、もうとっくに終わってんだよ!!!」
ウイングロードの上でローラースケートを回転させ、その勢いでノーヴェが放った一撃が、ハイディの頭部目掛けて猛スピードで飛来していく。そしてノーヴェの繰り出した蹴り技―――リボルバースパイクが叩き込まれ、ハイディを確実に打ちのめした……かに思われた。
「!? 何……ッ!!」
技が決まったその直後、ノーヴェの右足がハイディの左手で掴まれ、チェーンバインドで厳重に縛りつけられる。更にはノーヴェの胴体にもチェーンバインドが巻きつき、彼女の胴体を両腕ごと封じてしまう。
(カウンターバインド!? どうかしてる……防御を捨てて
回避や防御をするのではなく、敢えて正面から技を受け止めた事。次の反撃に繋げる為とはいえ、自身が傷つく事すらも厭わないハイディの考えは、ノーヴェからすれば正気の沙汰ではなかった。
「終わっていないんです。私にとっては、まだ何も……」
そんなハイディが高く振り上げた右手。それはゆっくりと握り拳を作り上げ……身動きが取れないノーヴェの背中目掛けて、勢い良く振り下ろされた。
「
「
ドゴオォォォォォォォォォォォンッ!!!
「が、ぁ……ッ……」
叩き込まれた一撃。その衝撃による轟音は空まで響き、周囲の空気を激しく震わせてみせた。動きを封じられて成す術がなかったノーヴェは膝を突き、力なくその場に崩れ落ちていく。
「……弱さは罪です」
勝負ありだった。ノーヴェが倒れ伏したのを見届けたハイディは、クルリと背を向けて立ち去って行く。
「弱い拳では……誰の事も守れないから」
パシャリ!
「―――いやぁ、凄い衝撃だったなぁ今の」
ハイディとノーヴェが繰り広げた激しい戦い。その一部始終を、隠れて眺めていた人物がその場にはいた。カメラのシャッター音を鳴らしたその青年は、立ち去って行くハイディの後ろ姿をバッチリ写真に収めていた。
(さてさて。例の通り魔事件の犯人を見つけてから、色々調査はしてきたものの……ここから俺はどうするのが正解なのかねぇ? あの子を尾行するべきか、それとも……)
青年は横目でチラリと、倒れているノーヴェの方を見据える。
「……ひとまず、あっちのお嬢さんの方をどうにかするべきかな」
青年はカメラを首にかけた後、倒れているノーヴェの傍まで駆け寄って行き、彼女の体を起こしてからお姫様抱っこの要領で運んでいく。そして近くのベンチにゆっくり寝かせた後、ノーヴェがまだ気を失っているのを確認してから、彼女が先程放り捨てていたカバンをベンチのすぐ傍にそっと置いてすぐにその場を離れていく。
キィィィィィン……キィィィィィン……
「……!」
そんな時、彼の耳に聞こえて来た金切り音。青年は一瞬で目付きが変わり、近くの建物のガラスに目を向ける。
「場所はわかるか?」
『キシシシシシ……』
ガラスに映り込む巨大蜘蛛の影。その影がどこかに移動するのを見た青年は、その後を追いかけようとガラスの方へ近付いて行く……が、ここで彼は気付いた。
「! へぇ……」
巨大蜘蛛が映り込んだのとは別の建物のガラス。そこに映った別の影を見て、青年は小さく笑みを浮かべる。
「
「ッ……はぁ、はぁ……」
一方、とある施設のコインロッカー前。ノーヴェとの激闘に勝利し、彼女の下から立ち去ったハイディはその後、コインロッカーまで移動しようとしていた。しかし、そんな彼女の足はがくついており、呼吸も先程までに比べるとかなり乱れてきている。
(彼女の一撃……凄い打撃だった……危なかった……)
ノーヴェから喰らわされたリボルバースパイクの一撃。そのダメージは確かにハイディの全身に響いており、彼女は満身創痍の状態だった。
(この体は、間違いなく強いのに……私の心が弱いから……ッ)
心臓の鼓動も通常に比べるとかなり早い。それはこれ以上戦えば、自分の体が危険であるという危険信号。それがわからないほど、ハイディも決して馬鹿ではなかった。
「ッ……武装形態、解除……」
ハイディの体が変化し、バリアジャケットが解除される。それと共に彼女の体もどんどん縮んていき、抜群のスタイルだった女性の体は一瞬にして、白いワンピースを着た少女の姿となる。
(帰って、少し休もう……目が覚めたらまた……)
とにかく、今は帰って体を休めなければならない。ハイディはコインロッカーに収めている自身のカバンを取り出そうと、コインロッカーの鍵をポケットから取り出そうとした……その時だった。
キィィィィィン……キィィィィィン……
「!」
彼女の耳に、聞き慣れない音が聞こえて来たのは。
(何……この音……?)
甲高く響き渡るその音を聞いたのは、ハイディにとってこれが初めてだった。鳴り止む事のない音に混乱した彼女が周囲を見渡す中、コインロッカーの壁にかかっていた1枚の鏡が、突然グニャリと歪み始める。
『ギギギギギ……』
「……え?」
謎の鳴き声が聞こえて来た方へと振り返ったハイディ。彼女の視界に映っていたのは……鏡の中から彼女を睨みつけて来ている、毒蛾のような姿をした巨大な紫色の怪物だった。
「ッ……怪物……!?」
『ギギギギギ……ギシャアッ!!』
「く……あっ!?」
鏡の中から上半身だけ飛び出して来た毒蛾の怪物―――“ポイゾニックモス”は目玉のような禍々しい紋様がある羽根を羽ばたかせ、ハイディに向かって紫色の鱗粉を飛ばす。鱗粉はハイディの全身を覆うように纏わりつき、ハイディはその場に膝を突く。
(毒の鱗粉!? 体が、動かない……ッ!!)
本来のハイディなら、この鱗粉も問題なく避けられたはずだった。しかしノーヴェとの戦いで既に満身創痍だった彼女は、体が思うように動かず、毒の鱗粉を正面から浴びてしまった。毒の鱗粉はハイディの全身に痺れを与えていき、動けない彼女はその場に倒れ伏してしまう。
(駄目……逃げられ、ない……ッ)
『ギシシシシシ……!!』
鏡から上半身だけ突き出しているポイゾニックモスは、胴体から生えている6本の細い腕を伸ばし、倒れて動けないハイディを捕まえようとする。戦いで傷付いて弱りかけているその少女は、ポイゾニックモスにとってはタダの美味しい獲物でしかない。
(死ぬ、の……こんな、所で……?)
まだ死ぬ訳にはいかない。まだ成すべき事を成せていないのに。しかし無情にも、彼女の体は全く動こうとしてくれなかった。
(私、は……)
ポイゾニックモスの伸ばす腕が、ハイディの白いワンピースを、彼女の手足を掴み取る。そして鏡の方へと引き摺り込む―――
「はぁっ!!」
ドガァッ!!
『ギシャアッ!?』
―――事はできなかった。
(……え?)
ハイディを鏡の中に引き摺り込もうとしていたポイゾニックモスの顔面に、何者かの強烈なハイキックが炸裂していた。攻撃を受けたポイゾニックモスはハイディを離し、溜まらず鏡の中へと逃げ込んで行く。
「ねぇ、大丈夫……?」
ハイディを助けたその人物が、心配そうな様子でしゃがみ込む。うつ伏せに倒れているハイディの目に、その人物の姿が映り込む。
(だ、れ……?)
白いアンダースーツの上に黒と銀色の装甲を纏い、どこか聖騎士を彷彿とさせる仮面の戦士。その戦士が身に着けているベルトのバックル部分を見て、ハイディは僅かに目を見開いた。
(!? アレは……)
一角獣らしきエンブレムが刻まれたカードデッキ。それはハイディにとって見覚えのある物だった。
「お願い……デモンホワイター……!」
『ブルルルル……』
先程までポイゾニックモスがいた鏡から、今度は別の怪物が飛び出して来た。一角獣を思わせるその怪物は、頭部から生やしている長い1本角を、倒れているハイディの腕にゆっくり触れさせた。すると触れている1本角が白い光を放ち……ハイディの体に変化が起こった。
(!? 痺れが……)
光が収まると共に、ハイディは自分の体から痺れがなくなっていくのを感じ取った。それどころか、ノーヴェとの戦いで受けたダメージも、彼女の体から綺麗に消え去っていく。
「これで、大丈夫……」
顔は仮面で隠れていて見えない。しかしその声は女性の物である事、その雰囲気が穏やかで優しい物である事は、うつ伏せになっているハイディでもわかった。
「行こう……デモンホワイター……!」
『ブルルルルルァッ!!』
その戦士―――仮面ライダーイーラは立ち上がり、デモンホワイターの背中に飛び乗って正面の鏡を見据える。イーラが背中に乗ったのを確認したデモンホワイターは鳴き声を上げてから、鏡の中へと勢い良く突入していく。
(あの人、は……一体……)
鏡の中へと姿を消したイーラ。彼女は一体何者なのか。そんな疑問に駆られたハイディは、先程見たカードデッキを見て思い出した。
それは確かに、自分が先日見た事のある物だったのだから。
(もしかし、て……あの、子……が……ッ……)
意識がどんどん遠のいていく。イーラの正体に何となく気付き始めたハイディだったが、彼女の瞼はゆっくり閉ざされていき、目の前が真っ暗になっていくのを感じていたのだった。
「ッ……見つけた……!」
『ギギギギギ……!!』
ミラーワールド、とある大きな広場。デモンホワイターに乗って移動していたイーラは、彼女から攻撃を受けて逃げ出そうとしていたポイゾニックモスに追いついていた。イーラが追いかけて来ている事に気付いたポイゾニックモスは振り返り、怒り狂った様子で大きな羽根を羽ばたかせる。
「誰も、死なせない……倒さなきゃ……ッ!!」
『ブルルルルル!!』
『ギシャアッ!!』
イーラを乗せたままデモンホワイターが駆け出し、ポイゾニックモスは頭部の1つ目から放つビームで彼女達を狙い撃つ。イーラはその手に構えたデモンバイザーから1発の矢を放ち、ポイゾニックモスが放ったビームと相殺させ爆発音を響かせていく。
そんな彼女達の戦場に……
「今の爆発……この近くか!?」
マントを靡かせた白い戦士もまた、後少しで辿り着こうとしていた。
To be continued……
リリカル龍騎ViVid!
ノーヴェ「わりぃスバル。ちょっと頼まれて欲しい事があるんだ」
???「駄目……やっぱり、
夏希「嘘だろ、また新しいライダー……!?」
???「さっさと仕留めちゃいなよ、こっちも余裕ないんだからさ!」
戦わなければ生き残れない!