明日はバレンタインデーですが、今回は特に何も書かずに普通に本編を進めて行きます。
そんじゃどうぞ。
「……ふぅ」
アインハルトが立ち去った後。意識を失った状態でベンチに寝ていたノーヴェはその後、少ししてからその意識を取り戻していた。彼女は小さく息を吐いた後、自身が手に持っているジェットエッジに声をかける。
「ジェット、無事か……?」
『I'm OK(私は大丈夫です)』
ジェットエッジも異常はないようだ。それにひとまずホッとしたノーヴェは、ダメージが溜まっていて力の入らない腕を無理やり動かし、投影されたモニターの画面を操作してある人物に連絡を取り始める。
『はい、スバルです……あれ、ノーヴェどうしたの?』
「あぁ、わりぃスバル。ちょっと頼まれて欲しい事があるんだ。喧嘩で負けて動けねぇ」
『えぇ!? ちょ、喧嘩って……何があったの!?』
「相手は例の襲撃犯だ。きっちりダメージはブチ込んだし、蹴りついでにセンサーもくっつけた。今ならすぐに捕捉できる」
『わ、わかった、取り敢えずノーヴェはそこにいてね! 絶対無理して動いちゃ駄目だよ?』
「だから動けねぇっての……まぁ良いや。取り敢えず頼むわ」
スバルとの通信を切り、ノーヴェはベンチに寝転がったまま彼女の到着を待ち続ける。ここで、ノーヴェはある疑問が思い浮かんだ。
「……そういや、アタシが気絶したのって路上だよな? 何でベンチの上なんだ」
『先程、親切な男性の方がマスターを運んで下さいましたよ』
「親切な男性? 誰だそりゃ」
ノーヴェをベンチまで運んでくれたという謎の人物。それが何者なのかを知らないノーヴェだったが、その人物はもう既に、ある目的を果たす為にその場から姿を消した後だった。
『ギギギギギ……シャアッ!!』
「くっ……!!」
場所は変わり、ミラーワールドの噴水広場。デモンホワイターの背中に乗り込んだイーラは、空中を自在に飛び回るポイゾニックモスを狙い撃とうと、デモンバイザーの引き鉄をひたすら引いて矢を連射していた。しかしデカい図体の割に動きが素早いのか、ポイゾニックモスは飛んで来る矢を次々と回避し、自身に命中しそうな矢だけを頭部の一つ目から放つビームで相殺していた。
「速、過ぎる……ッ!!」
『ギシャアァァァァァァッ!!』
ポイゾニックモスは旋回しながら飛んで来る矢をかわし続け、イーラ達の左側へと飛来。その途端、イーラは何かに焦った様子で周囲をひたすらキョロキョロ見渡し始めた。
「
『ギシャッ!!』
突如、イーラの死角から突っ込んで来たポイゾニックモスがイーラと激突し、イーラがデモンホワイターの背中から突き落とされた。落下したイーラは噴水広場の中に落ち、水飛沫が舞う中で辛うじて受け身を取ってみせる。
(駄目……やっぱり、
『ギギギギギギ!!』
「!? く、あぁ、うっ……!!」
そこにポイゾニックモスが羽ばたき、イーラに向かって大量の鱗粉をばら撒き始める。イーラは突然全身に浴び始めた鱗粉に防御姿勢を見せるも、鱗粉が持つ猛毒の効果で全身が痺れ始め、力が抜けて水場に倒れてしまう。
『ギギギギギ……ギシャアァ!?』
『ブルルルルァッ!!』
「デモン、ホワイター……ッ!!」
身動きが取れないイーラに襲い掛かろうとしたポイゾニックモス……だったが、突っ込もうとした直後にデモンホワイターが真横から突っ込み、ポイゾニックモスを勢い良く突き飛ばした。そのままイーラの傍まで移動したデモンホワイターは自身の角をイーラに優しく触れさせ、イーラの全身を光り輝かせる。
「ん、くぅ……ッ……あり、がとう……!!」
光が収まると共に、猛毒の効果がなくなったイーラは何とか体を起こし、ゆっくり立ち上がろうとする。しかしそれを律儀に待ってくれるポイゾニックモスではなく、頭部から放ったビームでイーラを狙い撃つ。
『ギギギッ!!』
しかし……
「おいおい、その辺にしときなよ」
≪BIND VENT≫
別方向から飛んで来た蜘蛛の糸。それがちょうどビームに命中して爆発し、ビームをデモンバイザーで防ごうとしていたイーラは少しだけ驚く反応を見せる。
「ッ……何……?」
「大丈夫かい? そこのお嬢ちゃん」
空中で1回転し、イーラの隣に着地する謎のライダー。そのライダーはボディが赤く、蜘蛛の巣などの意匠を持つ装甲を纏っており、カードデッキには蜘蛛のエンブレムが刻み込まれていた。
「あなた、は……?」
「俺? あぁ、俺は仮面ライダーアイズ。ちょっとばかし君を手伝っちゃうよ~」
イーラの前に現れた謎の赤い戦士―――“仮面ライダーアイズ”は右手でピースサインを示しながら軽そうな口調でそう言い放った後、両手首に装備されている小型の蜘蛛型装置―――“ディスシューター”を構え、空中を飛んでいるポイゾニックモス目掛けて白い糸を射出した。
「そらよっと!!」
『ギシャ!?』
アイズが両腕のディスシューターから射出した蜘蛛の糸が、ポイゾニックモスの胴体部分に巻きついて厳重に縛りつけた。それによりポイゾニックモスの動きが大幅に制限されたが、蜘蛛の糸を引き千切ろうと力いっぱい抵抗しているからか、ポイゾニックモスが暴れるたびにアイズも力強く踏ん張ってみせる。
「ぐ、この、暴れなさんな……!!」
『ギギギギギ……ギシャシャ!!』
「!? また、来る……!!」
蜘蛛の糸を引き千切ろうとしていたポイゾニックモスが力強く羽ばたき、再び鱗粉をまき散らしてイーラとアイズに浴びせようとする。しかし猛毒の鱗粉が2人に降りかかろうとしたその時……
≪ADVENT≫
『ピィィィィィィィィィィィッ!!』
『ギシャア!?』
「お?」
「! あれは……」
突如発生した大きな突風により、2人にかかろうとしていた鱗粉が一斉に吹き払われた。鱗粉での攻撃が失敗したポイゾニックモスには、どこからか飛んできた白鳥の怪物―――ブランウイングが猛スピードで突進し、激突したポイゾニックモスを噴水広場に突き落としてみせた。
「はぁっ!!」
『ギシャアァァァッ!?』
そして白いマントを靡かせながら、2人の頭上を飛び越えて来た白鳥の戦士―――仮面ライダーファムがウイングスラッシャーを投げつけ、噴水広場に落ちているポイゾニックモスの羽根に貫通させた。羽根を片方貫かれたポイゾニックモスは上手く飛び上がれず、ひたすらバタバタ動いて水飛沫を散らす事しかできない。
「お~お~、こりゃ上手くやったねぇ~」
「凄い……」
一瞬のタイミングでポイゾニックモスの動きを一気に封じてしまったファムの手際に、アイズは感心した様子で拍手し、イーラはただ驚いた様子でその光景を眺めている。ウイングスラッシャーを投げて着地したファムもまた、後ろにいる2人の存在に気付くと同時に驚く反応を見せる。
「ん……って、あれ!? 嘘だろ、また新しいライダー……!?」
「ヤッホー、お嬢さん♪ 3年ぶりだね」
「3年ぶりって……あぁぁぁぁぁぁぁっ!? アンタ、ロザリーの屋敷で会った奴!!」
2人の内、既にアイズとは出会った事があるファムは大声で驚きながらアイズを指差し、アイズは変わらず軽い態度で手を振りながら返す。その一方で、ウイングスラッシャーで羽根を貫かれたポイゾニックモスが体を起こし、もう片方の羽根で再び鱗粉をまき散らそうとしていた。
『ギギギギギ……ッ!!』
「!? また、来る……!!」
「おっと、そいつはさせないよっと!!」
『ギギッ!?』
それにいち早く気付いたイーラが声を出し、それを聞いたアイズもすぐさま両腕のディスシューターから蜘蛛の糸を射出。それがポイゾニックモスの羽根ごと胴体を縛りつけ、羽根を開けなくなったポイゾニックモスがバランスを崩して水場に倒れ込んでいく。
『ギギ、ギシャシャシャ……ッ!!』
「うぉっと、力強いなコイツ……ほら、さっさと仕留めちゃいなよ、こっちも余裕ないんだからさ!!」
「んな……あぁもう、アンタ達との話は取り敢えず後だ!!」
「ッ……倒す……!!」
≪≪FINAL VENT≫≫
『ピィィィィィィィィッ!!』
『ブルルルルル!!』
ファムのブランバイザー、イーラのデモンバイザーにファイナルベントのカードが装填され、ブランウイングとデモンホワイターが同時に動き出す。まずはブランウイングが大きく羽ばたき、その突風が巨体であるポイゾニックモスを難なく吹き飛ばしていき、その先ではデモンホワイターが待ち構える。
『ブルアァッ!!』
『ギシィ!?』
そのままデモンホワイターが角を突き出し、ポイゾニックモスを真上に高く打ち上げる。その打ち上げられたポイゾニックモスを追いかけるように、空高く跳躍したイーラが後方に宙返りし……
「……はぁっ!!」
『ギシャガァッ!?』
サマーソルトキックの要領でイーラが放った一撃―――ラースインパクトの一撃が、ポイゾニックモスを地上へと凄まじい勢いで撃墜していく。そしてポイゾニックモスが落ちて行く先では、ウイングスラッシャーを構えたファムが大きく振り上げ……
「―――おりゃあっ!!!」
『ギ、ギシャアァァァァァァァァァァァッ!!?』
ポイゾニックモスの胴体を、真っ二つに力強く斬り裂いた。胴体がお別れしてしまったポイゾニックモスはそのまま大爆発を引き起こし、その衝撃がファムのマントを激しく靡かせる中、彼女の隣にイーラがスタッと華麗に着地してみせる。そして爆炎の中からは白いエネルギー体がフワフワと浮かび上がっていく。
「ふぅ……さて、この餌はどうしよっかな」
「……私が、貰って、良い……?」
「へ? あぁ、別に良いけど」
「ありがとう……デモン、ホワイター」
『ブルルッ』
残ったエネルギー体はファムから譲って貰い、イーラはデモンホワイターにそれを捕食させる。餌を咀嚼したデモンホワイターはすぐさまどこかに走り去って行ってしまい、餌を食べ損ねたブランウイングは少しだけ不機嫌そうな鳴き声を上げながら静かに飛び去って行く。
「ッ……はぁ、はぁ……」
「! ちょ、アンタ大丈夫?」
無事にモンスターを倒し終えた。それを改めて認識した途端、イーラは持っていたデモンバイザーを手放し、その場に両膝を突いて力なく座り込む。それに気付いたファムが彼女に手を差し伸べようとしたが……
「おっと、今日のところはここまでにしよう」
それよりも前にアイズがイーラの腕を掴んで立ち上がらせ、彼女を脇に抱えるようにしてから左腕のディスシューターから糸を射出。伸ばした糸が大きな建物の壁にピタリと引っ付き、アイズはイーラを抱きかかえたまま建物の方へと一気に跳躍して飛び上がる。
「はっ!? ちょ、どこ行くんだよ!?」
「悪いねぇお嬢さん。この子だいぶ疲れちゃってるみたいだし、今日は一旦帰らせてね♪ 話ならまたいつでもできるからさ……んじゃそういう事でぇ~」
「いや待てってば!! お~い!?」
ファムの制止の声も無視し、アイズはイーラを抱きかかえたまま建物の屋根を走って立ち去って行く。結局、その場には再びファムが1人だけ取り残される形になってしまった。
「また置いてかれた……これでもう何回目だよ……?」
悲しい事に、これで3回目である。
「―――ほいっとな」
そして現実世界。コインロッカーから少し離れた位置にある建物のガラスから、イーラを抱きかかえたアイズが飛び出した。イーラを降ろした後、アイズの変身を解除した青年はイーラの方へと視線を向ける。
「さて、ミラーワールドから帰って来た訳だし。君もここで変身を解いたら?」
「ッ……ぜぇ、はぁ……」
青年に降ろして貰ったイーラは未だ疲れている様子だが、彼の言葉に従ったのか変身を解除する。そこに立っていたのは、白い装甲が付いた水色のドレス状のバリアジャケットを身に纏った、瑠璃色の長髪が特徴的なおよそ18歳と思われる少女だった。
(! バリアジャケット……?)
「はぁ、はぁ……ッ……ぁ、あ……」
「え、ちょ、お嬢ちゃん!?」
青年の呼びかけにも応えられないまま、その少女はその場に倒れ伏してしまい、その全身が一瞬だけ青白い光に包まれる。その光はすぐに収まり、そこにはフードの付いた白いパーカー、短めの黒いスカートで身を包んだ少女が倒れ込んでいる姿があった。青年はすぐに少女の手を取り、静かに脈を測り始める。
「……気絶しただけか。それにしても、魔法で大人の姿になっていたとはねぇ。あの
青年は意識を失った少女を背負ってからゆっくり立ち上がり、ひとまずはその場を移動するべく歩道橋の上を移動していく。その時、歩道橋の真下を通った1台の車が、近くのコインロッカーの施設の前で停車する。
「ん? あれは……」
少女を背負った青年が遠目で眺めている中、停車した車の助手席から1人の少女が降りて来た。それは先程ノーヴェの連絡を受けて来たスバルだった。
(あらら、運ばれて行っちゃったな)
スバルはコインロッカーの前で気絶していた少女―――ハイディを優しく抱きかかえ、彼女達を乗せた車がその場から走り去って行く。その様子を、少女を背負った青年は歩道橋の上から静かに見届ける。
「ん~、少しややこしい事になっちゃったなぁ……取り敢えず、まずはこの子を運んであげなくちゃねぇ」
青年は少女を背負ったまま、器用に服のポケットから通信端末を取り出し、ある人物に連絡を取る事にした。
「……あ、もしも~し?」
『あれ、
「あぁごめん、ちょっと色々あってさ。悪いけど合流はちょっと遅れそうだわ」
同時刻、とある地下トンネル……
『―――ギ、ギギ、ギギギ』
天井の明かりが点滅し、今にも切れてしまいそうな地下トンネル。その真っ暗な通路の中を移動する、1体のモンスターガジェットの姿があった……
To be continued……
リリカル龍騎ViVid!
ハイディ「証明したいんです。私の強さを……」
ティアナ「アンタの可愛い妹が、一肌脱いでくれそうじゃない?」
夏希「アタシも1つ、気になる事があってさ」
???「私の……私の名前は……」
戦わなければ生き残れない!