リリカル龍騎ライダーズinミッドチルダ   作:ロンギヌス

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第7話、更新です。

ビルドのVシネクストですが、どうやら第2弾として仮面ライダーグリスが主役に抜擢されたそうで。
しかも新フォームは『仮面ライダーグリスパーフェクトキングダム』……果たしてどんな能力を持ったフォームなのでしょうか?
というか名前なげぇなオイ←

それはさておき、本編をどうぞ。



第7話 アインハルト・ストラトス

「ん、んんぅ……」

 

夜中の決闘から翌日の朝。ノーヴェとの勝負で体力を消耗し、ポイゾニックモスに襲われて意識を失っていたハイディは今、眠りから目覚めようとしていた。意識が少しずつハッキリしてくると共に、開きかけている目に飛び込んで来る強い光と、どこからか聞こえて来る風の音と小鳥のさえずる声。

 

「……ッ!?」

 

それらを認識した瞬間、完全に意識が戻ったハイディはかけられている布団を払い除け、自分が今いる場所が何処なのかを確かめる。そこはハイディが知る部屋ではなかった。

 

「よぉ、起きたか」

 

「あ……あの、ここは……?」

 

そんなハイディの事を、ベッドに寝転がったノーヴェがニヤニヤと笑いながら見ていた。タンクトップ1枚にホットパンツというラフな格好をしている彼女の手元には1冊の本が置かれているが、恐らくハイディが目覚めるまで横で読書しながら待っていたのだろう。

 

コンコンコンッ

 

「入って良いかしら?」

 

その時、部屋のドアをノックする音と、1人の女性の声が聞こえて来た。それを聞いたノーヴェが「おう」と返事を返してから数秒後、ドアを開けてオレンジ髪の女性が入って来た。

 

「おはようノーヴェ。体の方はもう大丈夫?」

 

「おう、問題ねぇ。一応これでもタフなんでな」

 

「良かった。それから……」

 

ノーヴェの体調を確かめに来たオレンジ髪の女性―――ティアナ・ランスターは、特に異常はないとわかりホッとした表情で笑みを浮かべる。その次に彼女はハイディの方へと視線を向ける。ティアナの台詞が途切れた事から、ハイディはすぐに自身の名前を名乗ろうとしたが、それより前にノーヴェが彼女の名前を読み上げる。

 

「自称、覇王イングヴァルト……本名はアインハルト・ストラトス。ザンクトヒルデ魔法学院の中等科1年生……だな?」

 

「……!」

 

ハイディ―――改め“アインハルト・ストラトス”は自分の素性がバレていると知り言葉が出なかった。何故彼女達が自分の名前と素性を知っているのか。その理由はすぐにティアナが説明してくれた。

 

「ごめんね。コインロッカーにあったあなたの荷物を出させて貰ったの。ちゃんと全部持って来てあるから」

 

ティアナが手で視線を向けた先には、確かに床に置かれているアインハルトのカバン、それから彼女が昨夜着ていたワンピース、そして彼女が学校で着ていると思われる制服なども、丁寧に畳まれた状態でカバンのすぐ傍に置かれていた。

 

「にしても、制服に学生証まで持ち歩いてっとはな。随分とぼけた喧嘩屋もいたもんだ」

 

「ッ……学校帰りだったんです。それに、あんな所で倒れるなんて……」

 

アインハルトからすれば、モンスターに襲われかけたとはいえ、あんな場所で倒れてしまう事がそもそもの大きな不覚だったのか。少し恥ずかしそうに顔を赤くするアインハルトにノーヴェとティアナが微笑ましいような目で見ている中、再びドアがノックされる音が聞こえて来た。

 

「あ、ノーヴェ達起きた?」

 

今度はティアナと違い、ノーヴェ達の確認を取らずにドアから別の女性がヒョコっと顔を覗き込んで来た。ノーヴェ同様、タンクトップにホットパンツのラフな恰好をした長い茶髪の女性は、その手に朝食を乗せたお盆を持って部屋に入って来た。

 

「あぁ、おはよう夏希さん」

 

「ん、おはよ~。これで全員起きたね、そんじゃ朝御飯といこっか」

 

長い茶髪の女性―――白鳥夏希は部屋の中のテーブルにお盆を置き、この日の朝食をテーブルに並べていく。そこに続いて青髪の少女―――スバル・ナカジマも両手にお盆を持って入って来た。

 

「おっ待たせ~♪ 今日の朝御飯で~す♪」

 

「お、ベーコンエッグか!」

 

「あと野菜スープもね。ノーヴェはコーヒー砂糖とミルクいる?」

 

「ん、お願いします」

 

「オッケー。任された」

 

夏希とスバルのお手製である朝食が並び終わり、アインハルトの鼻に美味しそうな匂いが漂って来る。思わずゴクリと唾を飲んでしまうアインハルトに、ティアナは微笑みながら背中をポンと押す。

 

「大丈夫よ。あなたの分もちゃんとあるから」

 

「! い、いえ、私がそこまでして貰う訳には―――」

 

グゥゥゥゥ……

 

「……ぁぅ」

 

「あははは……遠慮しなくて良いわ。一緒に食べましょう」

 

アインハルトのお腹から聞こえて来た腹の虫。アインハルトが更に恥ずかしそうな表情で顔を赤くしていき、ティアナ達は苦笑いしつつも彼女を朝食の並んだテーブルまで誘う。そして5人全員が食卓に並んだところで、スバルがアインハルトに自己紹介をする。

 

「初めましてだね、アインハルト。私はスバル・ナカジマです」

 

「あ、はい、初めまして……えっと……」

 

「そんなに緊張しなくても大丈夫だよ。色々事情とかあると思うけど、まずは朝御飯でも食べながら……お話、ゆっくり聞かせて貰えると嬉しいな」

 

「……はい」

 

スバルは穏やかな表情でそう告げながら、アインハルトの前にスプーンやフォークを置いていく。この時点で既に空腹状態な上に、ここまで優しく接してくれている以上、アインハルトにそれを断る意志は存在しなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――で、ここはアタシの姉貴であるスバルの家だ」

 

その後、5人はテーブルを囲んで朝食を取りながら、順番に自己紹介をしていった。昨夜まで路上で喧嘩をしていたとは思えないくらい、その部屋の空気は物凄く和やかな物だった。

 

「その姉貴の友人である本局の執務官と、その執務官の家に居候しているフリーター」

 

「ティアナ・ランスターです。よろしくね」

 

「アタシは白鳥夏希。夏希で良いよ……っていうかノーヴェ? その紹介の仕方だとなんかちょっと悪意を感じるんだけど?」

 

「そりゃ気のせいです……ゴホン、それはさておき」

 

夏希からジト目で見られたノーヴェは目線を逸らして口笛を吹いた後、わざと軽く咳き込んでからアインハルトとの会話を再開する。

 

「倒れていたお前を探し出して保護してくれたのも姉貴達だ。感謝しろよ? ここ最近はお前の喧嘩を差し引いても物騒だからな。あんな所で女の子が1人倒れてちゃ、何が起こるか分かったもんじゃない」

 

「……ありがとうございます」

 

ノーヴェの言う通り、現在のミッドチルダは4年前に悪化した治安がまだ完全には改善し切っていない。そんなご時世で、女の子が夜中に1人倒れていたとなっては、怪しい不審者などに目を付けられてしまう危険性だってあるのだ。ノーヴェが早めにスバル達に連絡を取ったのは大正解と言えよう。

 

「でも駄目だよノーヴェ。いくら同意の上の喧嘩だからって、こんな小っちゃい子に酷い事しちゃ」

 

「あのなぁ、こっちだって思いっきりやられたんだぞ。今だってまだ全身痛てぇしよ」

 

「あらノーヴェ。自分でタフだから問題ないって言ってなかったかしら?」

 

「ぐっ……揚げ足取らないでくれ」

 

「や~い、揚げ足取られてる」

 

「夏希さんは黙っててくれ!!」

 

(……痛み)

 

ノーヴェがからかってくる夏希にイラっとしている中、アインハルトは自身の体の具合を確かめる。現在は体中のどこも痛みを感じておらず、拳をギュッパギュッパ握っては開きを繰り返す。

 

(体が軽く感じる……やっぱり、あの時の……?)

 

自身が気絶する前、イーラが呼び出したデモンホワイターの角に触れた時の事。現在、自身の体調がすこぶる良いのも、あの時にデモンホワイターが自身の傷を全て癒してくれたからだろうか。その時の光景をアインハルトが脳内に思い浮かべていた時、コーヒーを飲んで気分を落ち着かせたノーヴェが、改めて話を切り替えて来た。

 

「取り敢えずだ。お前の事、色々聞かせて貰うぞ」

 

「格闘家相手の連続襲撃犯があなただというのは本当?」

 

「……はい」

 

「理由、聞いても良い?」

 

ノーヴェとティアナからの問いかけに、アインハルトは静かに頷いて肯定する。何故そのような事をしているのか。その理由は、昨夜の喧嘩で聞いていたノーヴェが代わりに説明した。

 

「大昔のベルカの戦争が、こいつの中ではまだ終わってないんだとよ」

 

「ベルカの戦争? それって、聖王オリヴィエが生きていた時代の?」

 

「そ。んで、自分の強さを知ろうとしている。あとはなんだ、聖王と冥王をぶっ飛ばしたいんだっけか?」

 

「……最後のは少し違います」

 

ノーヴェの説明に、アインハルトが補足を加える。

 

「証明したいんです。私の強さを……古きベルカのどの王よりも、覇王のこの身が強くある事。それさえ証明する事ができれば、私は……」

 

アインハルトが望んでいる事、それは覇王としての強さのみ。あくまで自分の強さを証明する事が目的であって、聖王家や冥王家に個人的な恨みがある訳ではないらしい。

 

「じゃあ、聖王や冥王を恨んでいるって訳じゃないんだね?」

 

「はい」

 

「……そっか。それなら良かった」

 

それを聞いて、スバルがニコリと笑顔を浮かべる。それに対し、もう少し厳しく怒られるだろうと思っていたアインハルトは少し意外そうな反応を見せた。

 

「それじゃあ、御飯を食べ終わったら一緒に近くの署まで行きましょう。被害者からも被害届は出てないって話のようだし、二度と路上で喧嘩しないって約束できるなら、今日中には解放されるはずだから」

 

「あ~……その事なんだけどさティアナ」

 

ティアナの提案にノーヴェが待ったをかけた。

 

「今回の件なんだけど、先に攻撃したのはアタシの方なんだ」

 

「あら、そうなの?」

 

「あぁ。だからアタシも一緒に行く。喧嘩両成敗って奴にして貰って、一緒に怒られて来るよ」

 

喧嘩を売りに来たのはアインハルトからとはいえ、先に攻撃を仕掛けたのはノーヴェ自身である。その事をきちんと自覚していたのか、ノーヴェはその事をあやふやにするつもりはないようで、自身もアインハルトと一緒に怒られに行く事を既に決めていたようだ。

 

「ふぅん……ま、良いんじゃない? 取り敢えず2人纏めてガミガミ怒られて来ると良いよ」

 

「ちょ、その言い方はどうかと思うぞ夏希さん……!」

 

「迷惑かけるような事したんだから仕方ないじゃん。アインハルトもさ、できる限り被害者の人達に1人ずつ順番に謝りに行くとか、せめてそれくらいの事はした方が良いんじゃない?」

 

「……はい、そのつもりでいます」

 

「ちゃんと反省して来なよ? アンタはまだまだ子供なんだからさ……そんな年で後ろめたい事ばっかりやってたらさ、後で自分が辛くなってくるだけだよ」

 

「……はい」

 

夏希の語りかける言葉が、少しだけ暗い口調に変わる。その言葉に何かを感じ取ったのか、アインハルトの夏希を見る目が少しだけ変わった事に、スバル達は気付いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後。朝食を食べ終えた5人はすぐに出かけ、スバルの家の近所にある湾岸第六警防に到着。ノーヴェとアインハルトが戻って来るまでの間、スバルとティアナ、夏希の3人は受け付け前の座席に座って待ち続けた。

 

「ごめんねティア、夏希さん。2人も付き合わせちゃって」

 

「良いわよ。今日は私も非番だし」

 

「アタシも問題ないよ。今日はバイト休みだしね」

 

夏希が見据える先では、受付の場で手続きを行っているノーヴェの姿が確認できる。アインハルトは今頃、別室で署員の人にしこたま怒られている事だろう。

 

「しかしアンタってば、ベルカの王様とよく知り合うわよねぇ」

 

「あはは、確かに。でもあの子……アインハルトも色々抱え込んじゃってるみたいだしさ。何だか見てて放っておけないと思って」

 

「相変わらずお人好しだよねぇ~スバルは」

 

「そう言う夏希さんこそ、アインハルトの事がだいぶ気になってるんじゃない?」

 

「ん~? さて、どうかなぁ~」

 

ティアナの言葉に、夏希が誤魔化すようにわざとらしく語尾を伸ばす。しかし先程まで振っていなかったはずの両足を急にプラプラ振り始めた辺り、誤魔化せているようで全く誤魔化せていない。

 

「さっきの話。あんな厳しめな言い方をしたのも、純粋にアインハルトの事が心配だったんじゃないですか?」

 

「……ティアナってさ、また変なところに気付くよねぇ」

 

夏希は小さく溜め息をついた後、プラプラ振っていた両足を止める。その表情は先程まで呑気そうで明るい物だったのが、少し儚げな物へと変わった。

 

「……心配だと思ってるのは確かにそうだよ。あんなに若いのに、あんな人に迷惑かけるような事ばかりしちゃってるのがさ。なんか、昔の自分を思い出しちゃうんだよね」

 

「ッ……それって……」

 

「それはもう過ぎた事かもしれない……けど、自分がやってしまったという事実が、消える事はないから」

 

昔の自分。それはつまり、詐欺師やスリを働いていた頃の自分。自分が果たしたい悲願の為とはいえ、その為に多くの人達に迷惑をかけてきたという点から、夏希はアインハルトと昔の自分を重ねてみていた。

 

「自業自得とはいえ、アタシも数年前はそれが原因で散々な目に遭わされたしねぇ……あんな若い子にまで、アタシと同じような罪を背負わせちゃいけない」

 

「夏希さん……」

 

数年前、夏希が巻き込まれてしまったとある事件。その時の事を思い出したながら語っているからか、夏希の目にもどこか悲哀のような感情が込められていた。それに気付いたのか、ティアナは敢えて笑った表情のままノーヴェの方に視線を向ける。

 

「その前にスバル。アンタの可愛い妹が、一肌脱いでくれそうじゃない? あの子の為に」

 

「ふふん、自慢の妹ですから!」

 

「そこアンタが威張っちゃうところ?」

 

現在、ノーヴェはどこかやる気に満ちた表情を見せている。もしかしたらノーヴェなら、アインハルトの為に何かしてやれるかもしれない。そんなノーヴェの事で自慢げに胸を張るスバルに夏希が突っ込んだ後、夏希はある事を思い出して話題を切り替える事にした。

 

「あ、そうだ。今の内に2人に伝えておきたい事があるんだ」

 

「伝えておきたい事?」

 

「ん。アタシも1つ、気になる事があってさ」

 

今、この場にノーヴェとアインハルトはいない。ノーヴェはともかく、今から話そうと思っている件についてアインハルトは部外者である。だからこそ、夏希は2人が不在のタイミングでスバルとティアナにある事を伝えようと思っていた。

 

「昨日ノーヴェ達を保護する途中、モンスターの反応があって、アタシが途中で車の窓からミラーワールドに向かって行ったでしょ?」

 

「はい。それが?」

 

「実はその時にさ。アタシ以外のライダーを見たんだよ。それも2人ほど」

 

「「え……!?」」

 

自分と手塚以外のライダーを見た。それも2人ほど。その事はたった今初めて知らされた為、スバルとティアナはかなり驚いていた。

 

「片方は数年前、ロザリーの屋敷で見かけた蜘蛛みたいなライダー……そんでもう片方は、今までで一度も見た事のないタイプのライダーだった」

 

「蜘蛛みたいなライダー……それって確か、ギン姉が危ないところを助けられたって言ってた……?」

 

「しかも、それに加えて新しいタイプのライダーも……そのライダー達はどこに?」

 

「それがさ。アタシが話を聞こうとする前に、蜘蛛のライダーがもう1人のライダーを連れてすぐまたいなくなっちゃったんだよね。流石にミラーワールドの中で長時間も追いかけっこする事はできないし」

 

「そうですか……」

 

とにかく、その2人のライダーの事は手塚達にもすぐに伝えるべきだろう。夏希達は通信端末で手塚達に連絡を取る事を考えながら、ノーヴェとアインハルトが戻って来るのを待ち続ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「大変、ご迷惑をおかけしました」

 

「うんうん。それじゃアインハルト、帰り道も気を付けてね」

 

その後。ノーヴェとアインハルトが署員から厳重注意を受けた上で何とか解放され、5人は帰路についているところだった。唯一、この日も学校があるアインハルトだけが途中で別れる形となった。

 

「アインハルト。さっき言った話、覚えてるか?」

 

「……はい。予定が特に被らない限りは、問題なく行けそうです」

 

「そっか。んじゃ、また今日の放課後よろしくな」

 

「こちらこそ、よろしくお願いします……それでは。私はこれで」

 

「おう、気を付けてな」

 

アインハルトはペコリと頭を下げてから学校に向かい、ノーヴェも彼女の姿が見えなくなるまで手を振り続ける。そんな2人の会話が気になったのか、スバルがノーヴェに問いかける。

 

「ノーヴェ、あの子と何か約束でもしたの?」

 

「ん? あぁ。アインハルトにヴィヴィオの事を紹介してな。今日の放課後、ヴィヴィオと一緒に格闘技の練習でもしてみないかって誘ってみたんだよ」

 

「へぇ、誘いに乗ってくれたんだ。ねぇ、せっかくだし私達も見に行って良い?」

 

「へ? スバル達もかよ」

 

「良いじゃん。私達も今日はどうせ暇だし」

 

「えぇ~……スバルやティアナは良いけど、夏希さんは余計な茶々入れて来そうでなぁ~」

 

「いやどんだけ信用ないのアタシ!?」

 

「「夏希さん、日頃の行いです」」

 

「ハモりで突っ込まれた!?」

 

そんなやり取りがありながらも、4人は一度それぞれの家に帰宅し、ヴィヴィオやアインハルト達が授業を終えた放課後の時間帯に、再び合流する形となった。

 

もちろん、放課後の事で準備しながらも、手塚達に例のライダー達に関する情報伝達も忘れずに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――はぁ」

 

一方その頃。ノーヴェ達と別れたアインハルトはその後、この日の授業をサボる訳にはいかないと、学校に向かって移動している真っ最中だった。警防署で散々説教を受けた事でだいぶ時間が経過した為、流石に1限目の授業には間に合わず遅刻は確定するだろうが、それでもアインハルトは歩みを止める事はしなかった。

 

(これまで多くの人達に迷惑をかけてしまった。もうこれ以上、誰かに迷惑をかける訳にはいかない……でも)

 

アインハルトは自身の右手を見つめ、拳を強く握り締める。

 

(それなら……私のこの悲願は……どうやって果たせば……)

 

彼女の脳裏に浮かび上がる、大昔のベルカの戦乱。

 

戦いに敗れ、地に倒れ伏していく兵士達。

 

灼熱の炎が燃え盛る中、その中心部に佇んでいる2人の王族……覇王イングヴァルトと、聖王オリヴィエ。

 

彼女の思い浮かべるその2人は、片や悲哀の表情を、片や微笑みの表情を浮かべていた。

 

(……ノーヴェさんが言っていた子)

 

この日の放課後、一緒に練習する事になっている少女。

 

聖王の複製体(クローン)……彼女なら、私の拳を……覇王の悲願を、受け止めてくれるのだろうか?

 

(……ひとまず、今は学校に向かわなくちゃ)

 

どれだけ考えていても答えは出ない。まずはその子と出会ってみなければ始まらない。アインハルトはそう思いながら、少しずつ学校までの距離が縮まっていく。その道中、アインハルトは再びあの噴水広場にやって来ていた。

 

その時……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、あの……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――!」

 

アインハルトの後ろから、彼女に声をかけて来る人物がいた。誰だろうかと振り返ったアインハルトの前には、頭に被ったフードと瑠璃色の長髪が特徴的な、数日前にアインハルトが拾ったあの少女の姿があった。

 

「あなたは……!」

 

「ねぇ、君……昨日、怪物に、襲われていた……よね……? ここで、待っていれば……また、あなたに会えるって、聞いたから……」

 

「怪物……あっ」

 

怪物と聞いて、アインハルトは思い出した。

 

昨夜、鏡の中から襲い掛かって来たポイゾニックモス。

 

ポイゾニックモスに襲われていた自分を助けてくれた、イーラとデモンホワイター。

 

そのイーラがベルトのバックル部分に装填していた、一角獣のエンブレムが刻まれたカードデッキ。

 

そのカードデッキと、現在アインハルトの前に立っている少女が持っていたあのカードデッキは、特徴が完全に一致していた。

 

「もしかして、昨日会ったあの戦士はあなた……?」

 

「うん……あれから、大丈夫だった……? 後遺症、とか、残ってない……?」

 

「あ、いえ、私なら大丈夫です。むしろ、昨日は助けて頂いてありがとうございます」

 

「ううん……どう、いたしまして……私も、あなたに、助けて貰ったから……」

 

2人の少女はお互いに頭を下げながら礼を言い合った後、2人はここで自己紹介もする事にした。アインハルトは登校中の為、フードの少女が彼女の歩みに合わせるように歩きながら。

 

「まだ自己紹介をしてませんでしたね……私はアインハルト・ストラトスと言います。あなたは?」

 

「私は……」

 

アインハルトに続いて、フードの少女も名乗ろうとした……しかし、彼女の言葉は続かなかった。

 

「私は……私の名前は……わからない」

 

「え……?」

 

フードの少女が告げた言葉に、アインハルトは目を見開いた。

 

「……でも、それらしい名前はここにある」

 

フードの少女はパーカーのポケットから、ボロボロになっている水色のスカーフを取り出す。そこには……彼女の物と思われる名前が、小さく書かれていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「イヴ……今は、そう名乗ってる……よろしく、ね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――女の子達の監視って、なんか犯罪チックな事しちゃってるなぁ自分」

 

対面している2人の少女。その様子をカメラに収めながら、青年は1人監視を続けていた。こんな時間帯に女の子達を遠くからカメラで見ている大人……傍から見れば通報されてもおかしくない構図だ。

 

(ま、仕方ないかなぁ。あの覇王って子の正体もそうだけど、もう片方の子も気になるしねぇ。このミッドチルダ出身と思われるあの子が、どうしてカードデッキなんか持っているのか……)

 

「悪いけど、まだしばらく様子見はさせて貰おっかねぇ」

 

そう小さく呟きながら、青年はカメラに少女達の姿を映し込みながら、遠目で彼女達を監視し続ける。そんな彼の懐には、蜘蛛のエンブレムが刻まれたカードデッキが収められていた……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ミラーワールド、とある建物内部。

 

 

 

 

キィィィィィン……キィィィィィン……

 

 

 

 

「……」

 

 

 

 

緑色のボディ。

 

 

 

 

頭部から生えている2本のアンテナ。

 

 

 

 

ボディのキャタピラらしき意匠。

 

 

 

 

右腰に取り付けている拳銃型の召喚機。

 

 

 

 

そしてカードデッキに刻まれている、牛らしき金色のエンブレム。

 

 

 

 

「……フッ!」

 

 

 

 

新たな仮面ライダーがまた1人。右腰に取り付けていた拳銃型の召喚機を右手で構え、戦闘を開始しようとしていた……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

To be continued……

 




リリカル龍騎ViVid!


ヴィヴィオ「よろしくお願いします、アインハルトさん!」

アインハルト「本当にこの子が、覇王の悲願を受け止めてくれる……?」

???『『ブブブッ!!』』

イヴ「絶対に……人は、襲わせない……ッ!!」

手塚「あのライダー、様子がおかしいぞ……!?」


戦わなければ生き残れない!

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