リリカル龍騎ライダーズinミッドチルダ   作:ロンギヌス

121 / 160
ジオウ最新話を見た感想……士、お前何してんねん←

そんな感想は置いといて。
腰痛に耐えながら、こちらも何とか最新話を更新しました。

それではどうぞ。










戦闘挿入歌:果てなき希望











第10話 初めまして

『クラウス。今まで、本当にありがとう』

 

 

 

 

戦火の広がっていく国土……

 

 

 

 

『だけど、私は行きます』

 

 

 

 

『ッ……待って下さいオリヴィエ!! 勝負はまだ着いて……』

 

 

 

 

()は、彼女(・・)との戦いに敗れた……

 

 

 

 

『あなたはどうか良き王として、国民と共に生きて下さい』

 

 

 

 

『この大地がもう、戦で枯れぬよう』

 

 

 

 

『青空と綺麗な花をいつでも見られるような、そんな国を―――』

 

 

 

 

去り行く彼女(・・)を、()は引き留められなかった……

 

 

 

 

『待って下さい!! まだです!! ゆりかご(・・・・)には僕が……!!』

 

 

 

 

彼女(・・)の背中が、遠く、小さくなっていくのが見えた……

 

 

 

 

『オリヴィエ、僕は―――』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――ッ!?」

 

そこで、アインハルトは目覚めた。

 

(……夢)

 

目覚めたその目からは、涙が零れ落ちていた。アインハルトは目元を拭ってベッドから起き上がり、壁にかかっている鏡の前に立つ。

 

(いつもの夢……一番悲しい、覇王(わたし)の記憶……)

 

アインハルトの右手が拳を握り締め、鏡にコツンと触れる。触れている鏡に映り込んでいる自分の姿。それが一瞬だけ、あの覇王の姿に見えたような気がしていた。

 

(果たせなかった願い……私がこの手で……)

 

「おはよう」

 

その時。部屋のドアを開けて、イヴがヒョコッと顔を覗かせて来た。彼女は朝食の乗ったお盆を持ちながら部屋に入って行く。

 

「! イヴさん……」

 

「朝ご飯、できたから……一緒に、食べよ……?」

 

「……はい。わざわざすみません」

 

「ううん……私が、好きでやってる事、だから……それじゃ、頂きます」

 

「……頂きます」

 

小さなテーブルの上に朝食が並べられ、イヴとアインハルトは座布団の上に座り込んでから一緒に朝食を食べ始める。イヴが味噌汁から口にする中、イヴの向かいに座っているアインハルトは彼女の事をジッと見つめていた。

 

(鏡の世界の怪物と戦える、仮面ライダー……こんな小さな子が……)

 

過去の記憶がなく、イヴと名乗っている少女。そんな彼女もまた、仮面ライダーイーラとしてモンスターと戦っている。しかしアインハルトの視点で見ると、目の前で美味しそうに朝食を食べているイヴの姿は、とても戦いを知っている戦士には見えなかった。

 

(この子はどうしてライダーになったのか……そして、どうして戦っているのか……)

 

現在、アインハルトはイヴの事がずっと気になって仕方なかった。過去の記憶を持たない少女が、どうして仮面ライダーとして戦っているのか。そこまでして人を守りたい理由は何なのか。そして自分が彼女に助けて貰った時に感じた、あの優しさの由来は何なのか。

 

(知りたい……この子の事を、もっと……)

 

イヴの戦う理由が知りたい。イヴが持っている強さがどんな物なのか見てみたい。

 

(そうしたら私は―――)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『なら君に、人の命を奪う事ができるのかい?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ッ……」

 

そこまで考えると同時に思い出される、ウェイブから投げかけられた一言。

 

あの時、彼が見せた表情は冷たかった。戦闘のプロだとか、そういった雰囲気ではない。命を奪うという事がどういう事なのか、それを知っている表情だった。

 

『戦いを舐めてんじゃねぇぞ』

 

(ッ……私は……)

 

戦いを甘く見ているつもりはなかった。私がそんな態度を示した時、彼はその時の私を厳しい目で見ていた。きっと、彼には私がちゃんと分かっていないと思われてしまったのだろう。

 

(でも、だからこそ……)

 

ウェイブがあの時見せていた表情の意味を。ウェイブが告げていた「純粋な願い」の意味を。アインハルトは知りたかった。今のアインハルトは、そんな気持ちでいっぱいだった。

 

「……今日は」

 

「?」

 

そんな時だった。朝食を食べていたイヴが、コップのお茶を飲んでからアインハルトに話しかけて来た。

 

「この前、言ってた……ヴィヴィオって子と、練習試合、するんだよね……?」

 

「はい。今日の午後の1時半頃、ノーヴェさん達と合流する予定です」

 

「そっか……練習試合、頑張って、ね」

 

「はい、頑張って勝ちに行きます」

 

口ではそう言ったアインハルト。しかし、その内心は少し複雑だった。

 

あの子(ヴィヴィオ)は……私とは、違う)

 

やるからには真面目に勝負しなければならない。その事は理解している彼女だった。しかし今の彼女の中では、ヴィヴィオとの練習試合よりも、目の前にいるイヴに対する興味の方が強いというのも事実だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「悪かったな。アインハルトの事、ちゃんと説明してなくて」

 

「ううん、良いの良いの。ノーヴェも何か考えがあったんでしょ?」

 

同時刻、とある区民公園。この日は学校が休みであるヴィヴィオは朝食を取った後、ノーヴェと共に朝の日課であるジョギングを終え、この公園で少し休憩しているところだった。公園の水場を囲んでいる手すりに両腕をかけながら、ノーヴェはアインハルトが抱えている事情について説明しなかった事をヴィヴィオに謝罪し、その上で事情を語り始めた。

 

「お前と同じなんだよ。旧ベルカ王家の王族……覇王イングヴァルトの純血統」

 

「! ……そうなんだ」

 

「アイツも色々迷ってんだ。自分の血統とか、王としての記憶とか……けど救ってやってくれとか、そーゆーのでもないんだよな。ましてや聖王や覇王がどうこうとかじゃなくて」

 

「わかるよ。大丈夫」

 

ノーヴェの話を聞きながらも、ヴィヴィオは落ちていた小さな石ころを拾い、水場に向かって投げる。投げられた石はチャプンと音を立てて水面に波紋を作ってから、水の底まで静かに沈んでいく。

 

「自分の生まれとか、何百年も前の過去の事とか、どんな気持ちで過ごして来たのか……そういうのを伝え合うのって難しいから。だから思いっきり、ぶつかってみるだけ」

 

そこからヴィヴィオは軽くシャドーボクシングを始め、ノーヴェに向かって軽めのパンチを連続で放つ。ノーヴェはそれを両手で容易く受け止める。

 

「で、もしそれで仲良くなれたら、教会の庭とかも案内したいし」

 

「あぁ、あそこか。確かに良いかもな」

 

聖王教会の庭を思い浮かべながら、ヴィヴィオの拳を右手でパシッと受け止めるノーヴェ。そんな彼女の表情は、ヴィヴィオに対して申し訳なさそうな目を向けていた。

 

「本当に悪いな。お前にはいつも迷惑かけてばっかりで」

 

「ううん、迷惑なんかじゃないよ。友達として信頼してくれるのも、指導者(コーチ)として教え子(わたし)に期待してくれるのも、どっちも凄く嬉しいもん……だから頑張る! アインハルトさんとの勝負、今の私が出せる全力で、挑みに行くから!」

 

「……おう、そうだな!」

 

何にせよ、これから自分がやる事は変わらない。

 

自分が抱いている想いを、拳に乗せて相手にぶつけるだけ。

 

その事を再確認したヴィヴィオは少し強めの拳を放ち、ノーヴェはニカッと笑いながらその一撃を難なく受け止めてみせた。その後も2人はしばらく格闘技の練習を続けながら、アインハルトと戦う約束の時間に備えていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それからいくらか時間は経過し、現在は午後13時。

 

「~♪」

 

とあるデパートにやって来ていたイヴは、アインハルトから渡されたお金を使い、この日の夕食の材料を買い揃えようとしているところだった。彼女は鼻歌を歌いながらもショッピングカートに乗せたカゴに目当ての野菜を放り込んでいき、ショッピングカートを押して次のコーナーへと向かっていく。

 

(えっと、確かソースが切れかかってたから……あ、あった)

 

調味料コーナーにやって来たイヴは、棚の高いところに並べられているソースを発見し、手を伸ばしてそれを掴み取ろうとする。しかし……

 

「……と、届かない……ッ」

 

イヴは元々、それほど身長は高くない部類である。それ故か、彼女が掴み取ろうとしている手は、棚の一番上に並べられているソースに届きそうで届かず、イヴは背伸びをしてでも必死に掴もうとする。

 

そんな時。

 

「これかい?」

 

「!」

 

困っていたイヴの為に、ソースを手に取って渡してくれる人物がいた。

 

「あ、ウェイブさん……」

 

「よっ奇遇だね」

 

それは同じく買い物中のウェイブだった。掴み取ったソースをイヴに渡したウェイブの手には、既に買い終えた安物の弁当がビニール袋に入った状態で吊り下げられている。

 

「イヴちゃん1人? アインハルトちゃんは?」

 

「アインハルトちゃんは、ヴィヴィオって子と、練習試合……私が、帰る頃には、もう、出掛けてると、思う……」

 

「で、君はあの子の代わりに食材の買い出しと。いや君って本当に偉い子だよねぇ」

 

「んぅ……!」

 

感心したウェイブはイヴの頭をガシガシと撫で、イヴは恥ずかしそうな様子で撫でて来る彼の手をどかす。しかし撫でられた際に表情が少し緩んでいた事、撫でて来る手を退かそうとするのが少し遅かった事から、ウェイブに頭を撫でられる事自体は特に嫌がっている訳ではないようだった。

 

「それで、アインハルトちゃんの様子はどう? 君と勝負する事は諦めてくれた?」

 

「……諦めては、いない、と思う。朝、御飯を食べてる、時も……私の事、ジッと、見てたから……」

 

「言われて簡単に諦めるほど素直じゃないって事か……困った子だ」

 

「……迷ってるんだと、思う。あの時から、ずっと……私達が、戦う理由……知りたがってた……」

 

「戦う理由ねぇ……」

 

ウェイブはイヴの方をチラッと見て、今から一週間前の出来事を思い出す。それは、イヴの口から説明されたとある夢についての事。

 

 

 

 

 

 

『どこか、わからない、暗い道……倒れてる、私の前に……その人(・・・)が、現れて……私に、このカードデッキを、くれる……』

 

 

 

 

 

 

その人(・・・)は……私達と、同じ……仮面ライダーの、姿をしていた……』

 

 

 

 

 

 

(……同じ仮面ライダー、か)

 

イヴの代わりにショッピングカートを押してあげながら、ウェイブは考える。もしイヴの言っていたその夢が現実に起こった事だとするなら、イヴにカードデッキを渡したそのライダーは何者なのか、ウェイブはまずそれを突き止めたかった。しかし残念ながら、イヴは夢で見るそのライダーの姿がいつも不明瞭な物で、特徴らしい特徴は分からないと告げていた。

 

(魔法で大人の姿になれるとはいえ、彼女は戦闘を得意としている訳ではない……だとしたら、何故そのライダーはイヴちゃんにカードデッキを渡した……?)

 

「ありがとうございました~」

 

ウェイブとイヴはレジで会計を済ませた後、買い揃えた材料を2人で一緒にビニール袋の中に順番に入れ始める。その間も、ウェイブは考え事をしながらイヴの方をジッと見つめる。

 

(色々調べてみたいところだけど、手掛かりが少ないんじゃどうしようもないかな……まぁそれはさておき)

 

「? どうした、の……?」

 

ジッとみられている事に気付いたのか、イヴが不思議そうな表情でウェイブを見つめている。そんな彼女に、ウェイブは気になっていた事を聞いてみる事にした。

 

「ん~……イヴちゃんはさ。いつも見ている夢の中で、そのライダーからデッキを貰ったんだよね?」

 

「? うん……そう、だけど」

 

「で、君はそれ以外に過去の記憶を失っていると」

 

「うん……」

 

「それなら、1つ聞いてみたい事があるんだけど……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「イヴちゃんはさ、どうして人を守る為に戦おうと思ったのかな?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから時間は経過し、時刻は午後13時20分頃。

 

「お待たせしました、ノーヴェさん、ヴィヴィオさん」

 

アラル港湾埠頭、廃棄倉庫区画。海の波揺れる音が聞こえて来る中、この場で待ち続けていたヴィヴィオとノーヴェの前に、スバル達の車に乗せて貰ったアインハルトが到着していた。

 

「アインハルト・ストラトス、参りました」

 

「来て頂いてありがとうございます、アインハルトさん」

 

アインハルトが来てくれた事に感謝し、ペコリと頭を下げて礼をするヴィヴィオ。その2人から少し離れた場所では、今回の練習試合を見に来たギャラリーとして、リオとコロナ、スバル・ティアナ・夏希の3人、チンク達ナカジマ姉妹、そしてヴィヴィオの護衛役であるオットーとディードといった面子が緊張した様子で見守っていた。

 

「へぇ~、こんな広い所でやるんだね」

 

「ここは普段、ノーヴェが救助隊の訓練で使わせて貰っている場所なんですって。あくまで廃倉庫だから、許可の方も問題なく取れたみたいだし」

 

「つまり、格闘型(ストライカー)が存分に戦える場所って事です!」

 

「あ、始まるみたいですよ!」

 

今いる場所について、夏希がティアナとスバルから説明を受けている中、リオの一言でギャラリー全員がヴィヴィオとアインハルトの方へと視線を集中させる。ヴィヴィオとアインハルトが落ち着いた表情で、互いに少し距離を置いて向かい合っている中、今回の審判役を務めるノーヴェがその間に立ち、ルール説明を行っていた。

 

「今回も魔法はナシの格闘オンリー。5分間の1本勝負だ。問題はないな?」

 

「うん、最初から全力で行きます……セイクリッド・ハート、セットアップ!」

 

「―――武装形態(ぶそうけいたい)

 

ヴィヴィオとアインハルトは同時に大人モードへと姿を変え、構えを取った状態でスタートの合図を待つ。それを見たノーヴェはゆっくり右手を上げていく。

 

「よし、それじゃあ試合……開始ッ!!」

 

ノーヴェが右手を下ろし、それが試合開始の合図となった。しかし勝負が始まったにも関わらず、ヴィヴィオとアインハルトは構えを取った状態のまま、すぐには前に出ようとしない。

 

「あ、あれ? 攻撃しないの?」

 

「……たぶん、相手の出方を見てるんだと思います。一瞬の隙を突く為に」

 

攻めに出ない2人を見た夏希が困惑し、2人が動かない理由をコロナが簡潔に説明する。コロナの説明通り、ヴィヴィオは初めて勝負した時と違い、すぐには動かずジリジリと構え続けている。

 

(綺麗な構え、それに油断も甘さもない……)

 

最初に勝負をした時とは、確かに雰囲気が違っている。アインハルトもそれには気付いていた。

 

(良い師匠や仲間に囲まれていて……この子はきっと、格闘技を楽しんでいる……だからこそ)

 

だからこそ、アインハルトはこの練習試合に消極的な考えを持っていた。相手は純粋に格闘技を楽しんでいるだけ。彼女は自分とは違うのだと。

 

(私の……覇王の拳を向けて良い相手じゃない)

 

そんな想いを抱えながら、アインハルトも静かに構えた状態で動かない。そのアインハルトの姿に、ヴィヴィオの心は圧倒されていた。

 

(凄い威圧感……一体どれくらい、どんな風に鍛えてきたんだろう……)

 

まだ動いていないはずなのに、頬の上を汗がゆっくり流れ落ちていく。それでも、ヴィヴィオは決して構えを崩さない。

 

(勝てるなんて思わない……)

 

(だけど、だからこそ、一撃ずつで伝えなくちゃ)

 

(「この間はごめんなさい」と……!)

 

そして……

 

「―――はぁっ!!」

 

「……!!」

 

ドガァッ!!

 

ようやく両者同時に動き出し、アインハルトの放った右ストレートがヴィヴィオ目掛けて打ち込まれる。その一撃を両腕でガードするヴィヴィオだったが、一撃を受け止めたその衝撃は彼女の全身に響いていた。

 

(怯んじゃ駄目……ちゃんと伝えるんだ……!)

 

今回はアインハルトの方から積極的に攻めており、ヴィヴィオは繰り出されて来る攻撃を冷静に見極め、的確に捌いていく。

 

(この拳で……)

 

アインハルトの左拳を回避するヴィヴィオ。彼女の目には一瞬、ほんの僅かな隙が見えた。

 

(私の想いを……全力で!!)

 

ズドォンッ!!

 

「―――ッ!?」

 

ヴィヴィオの想いが乗せられた拳。

 

その一撃は確かに、アインハルトの腹部に正確に叩き込まれていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は変わり、イヴとウェイブの方はと言うと。

 

キィィィィィン……キィィィィィン……

 

「「……ッ!!」」

 

こちらもまた、モンスターの接近を察知していた。すかさずイヴは買い物袋をウェイブに渡し、鏡面になる物がある場所まで駆け出して行く。

 

「これ、持ってて……!!」

 

「へ? いや、ちょ、イヴちゃん!? ……行っちゃったよ」

 

ウェイブが呼び止めようとする頃には、既にイヴの後ろ姿は遠く離れて行ってしまっていた。ウェイブは彼女の行動力に感心しつつも、先程彼女から言われた一言を思い出していた。

 

「……まさかあんな風に返して来るとはねぇ」

 

それは数十分前。ウェイブがイヴに対し、人を守る為に戦おうとする理由を問いかけた時の事だった。

 

『君は過去の記憶がないんだろう? それならどうして、人を守る為に戦おうと思ったのかが気になってね』

 

『……私は、知りたい』

 

ウェイブから突然そんな事を聞かれたからか。イヴは少しだけ反応に困った表情を見せたものの、ウェイブから投げかけられた質問の意味を理解し、ゆっくりながらもその答えを告げてみせた。

 

『私は、私の事が、分からない……だから、私は知りたい……私が何者なのかを……!』

 

『それがどうして、人を守る為に戦いたいという気持ちに繋がる? それだけなら別に、誰かの為になりたいなんて気持ちにはならないはずだ。君のそれはあくまで、君個人の都合でしかない』

 

『……逆、だよ』

 

『何だって?』

 

『確かに、人の為じゃない、かも知れない……でも、それは』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『人を、守らなくて良い理由にもならない……!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……あぁも言い切ってきたのは予想外だったなぁ」

 

ウェイブには、イヴがそこまで言い切った理由は分からなかった。

 

しかし、そう答える時にイヴが見せてきた表情……そこに浮かび上がっていた感情を、ウェイブは知っていた。

 

「……全く、なんか危なっかしい(・・・・・・)んだよなぁ」

 

しかし、ここでそんな事を呟いている暇はない。ウェイブは自身の髪を掻きながら、まずはイヴから渡された買い物袋をどうにかするべく、その場から移動を開始する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「でやぁ!!」

 

「くっ……!?」

 

一方。ヴィヴィオとアインハルトの練習試合は、意外にもヴィヴィオがアインハルトを押し始めていた。ヴィヴィオが叩き込んだ一撃が効いたのか、アインハルトは僅かに苦悶の表情を浮かべながらもヴィヴィオの攻撃を防いでいく。

 

「おぉ、押してるっスよ!!」

 

「これ、もしかして行けるんじゃない!?」

 

「「ヴィヴィオ、頑張れー!!」」

 

この白熱の試合にギャラリーも興奮し始めている中、アインハルトは自分が押されているこの状況に驚かされていた。無理もない事だろう。一週間前はそこまでの強さを感じなかったはずの少女が、これほどまでに強くなって自身の前に立ち塞がって来たのだから。

 

(ッ……この子はどうして……こんなにも、一生懸命に……!!)

 

師匠が組んだ試合だから?

 

友達が見てるから?

 

いや、きっとそうじゃない。

 

理由は分からないが、きっとそういった簡単な理由じゃない事だけは、アインハルトも薄々気付き始めていた。

 

(ッ……私には、大好きで、大切で、守りたい人がいる……!!)

 

受けた攻撃のダメージに表情を歪めながらも、ヴィヴィオは拳を振るい続ける。その拳に、自身が抱く想いを乗せながら。

 

(小さな私に、強さと勇気を教えてくれた……)

 

自分の母親になってくれたあの人(なのは)の姿が。

 

(世界中の誰よりも幸せにしてくれた……)

 

いつも優しくしてくれるあの人(フェイト)の姿が。

 

(私が人として生きる事を認めてくれた……)

 

自分の運命を変えてくれたあの人(手塚)の姿が。

 

3人の姿が、ヴィヴィオの脳裏をよぎる。

 

 

 

 

(強くなるって、約束したんだ……)

 

 

 

 

(だから強くなる……)

 

 

 

 

(どこまでだって!!!)

 

 

 

 

「―――でやぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

「!? ぐ、ぅ……ッ!!」

 

更なる一撃が、アインハルトの左肩に打ち込まれた。アインハルトの表情が更に歪む中、ヴィヴィオは反撃の隙を与えまいと連続で拳を打ち込み続ける。

 

しかし……

 

(ッ……そこ!!)

 

痛みに耐えながらも、アインハルトは冷静に隙を伺い続けていた。ヴィヴィオの繰り出す連撃を耐え抜き、その先に見えた隙を……彼女は決して見逃さなかった。

 

「覇王……」

 

(ッ!? しまっ―――)

 

「―――断空拳ッ!!!」

 

ドッゴォォォォォォォォォォォン!!!

 

アインハルトの右手が放った鋭い拳。その一撃はヴィヴィオの腹部に叩き込まれ、ヴィヴィオの体が大きく吹き飛ばされ倉庫の壁に叩きつけられた。

 

「ッ……1本、それまで!!」

 

「「ヴィヴィオ!!」」

 

「「陛下!!」」

 

勝敗は付いた。ノーヴェが宣告する中、ヴィヴィオの事を心配したリオとコロナ、オットーとディードの4人が急いで駆け寄って行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、ミラーワールドでは……

 

 

 

 

 

『ゲココココッ!!』

 

「くっ……!!」

 

左右が反転したデパート。その屋上駐車場に現れたカエル型の怪物―――“リボルフロッガー”が口から伸ばして来る長い舌をデモンセイバーで弾きながら、イーラはリボルフロッガーに接近戦を仕掛けようとしていた。

 

「そこ……やぁっ!!」

 

『ゲゴ!? ゲコォ……ゲコ!!』

 

デモンセイバーで斬りつけられたリボルフロッガーだったが、自身の脚力を活かして大ジャンプを繰り出し、デモンセイバーによる攻撃を回避する。そして駐車場に停められていた1台の車の上に着地してから、どこからか取り出した拳銃型の武器でイーラを狙い撃つ。

 

『ゲコォッ!!』

 

「!? うわっ……!!」

 

イーラが慌てて回避した後、彼女が立っていたすぐ後ろの車に銃弾が命中する。すると銃弾の当たった車が、撃ち抜かれた箇所から少しずつ溶解し始め、跡形もなくボロボロに崩れ落ちていく。

 

(ッ……当たると、マズい……!!)

 

≪GUARD VENT≫

 

『ゲココッ!!』

 

デモンホワイターが装備している鎧の一部を模した盾―――“デモンシールド”を召喚し、リボルフロッガーの銃弾から放たれる銃弾を的確に防ぐイーラ。しかし銃弾を防いだデモンシールドもまた、銃弾を受けた箇所から少しずつ溶け始め、そのまま跡形もなく溶け落ちてしまった。

 

「そんな……!?」

 

『ゲコ!!』

 

召喚した盾すらも溶かされてしまった事に驚くイーラ。その隙を突いたリボルフロッガーが、彼女に向けた拳銃から銃弾を放とうとした……その時。

 

 

 

 

 

 

「コラコラ、そんな危ない物を向けなさんな」

 

 

 

 

 

 

≪BIND VENT≫

 

『!? ゲコッ……!?』

 

横方向から伸びて来た蜘蛛の糸が、リボルフロッガーの構えていた拳銃に巻きついた。そのまま糸に引っ張られる形で拳銃が奪い取られ、その先に立っていたアイズがキャッチした拳銃をグシャリと握り潰して破壊する。

 

「ウェイブ、さん……!」

 

「全く、1人で先走っちゃ駄目でしょうが。見ててハラハラするこっちの身にもなりなさいよ……っと!」

 

『!? ゲゴォ……ッ!!』

 

アイズが右腕のディスシューターから放った蜘蛛の糸が、大ジャンプで逃げようとしたリボルフロッガーの胴体と両足に巻きつき、その動きを完全に封じてみせた。逃走に失敗したリボルフロッガーが地面に落ちる中、そこにトドメを刺そうとするイーラをアイズが制止する。

 

「はいはい、君は一旦ストップ。後はお兄さんに任せときなさい」

 

「あっ……!」

 

ただでさえ消耗が早いのだから、これ以上無理に戦わせる訳にはいかない。アイズはイーラから強引に奪い取ったデモンセイバーをその辺に放り捨てた後、左太股のディスバイザーから伸ばしたカードキャッチャーにファイナルベントのカードをセットし、カードキャッチャーをディスバイザーに収納させた。

 

≪FINAL VENT≫

 

「さて、出番だディスパイダー!!」

 

『キシシシシシ……!!』

 

『ゲ、ゲゴァ!?』

 

電子音が鳴り響いた後、デパートの壁を登って現れたディスパイダー・クリムゾンがアイズの後ろに立ち、動けないリボルフロッガーに更に糸を巻きつけてから宙に放り投げる。そしてアイズもまた、ディスパイダー・クリムゾンがクロスさせた前足に飛び乗り、勢い良くトスされる事で空高く飛び上がる。

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……どぉりゃあっ!!!」

 

『ゲゴァァァァァァァァァァッ!?』

 

アイズが両足で挟み込むように繰り出した蹴り技―――“ディスフィニッシュ”をその身に喰らい、リボルフロッガーが空中で跡形もなく爆散。アイズが地面に着地した後、爆炎の中から出現したエネルギー体をディスパイダー・クリムゾンが糸で引き寄せてから捕食し、屋上からピョンと飛び降りる形で立ち去って行く。

 

「はい、終了っと」

 

「ッ……ウェイブさん、良いとこ取り……」

 

「1人で突っ走るのが悪いんでしょう? ほら、帰るよイヴちゃん」

 

疲弊していたイーラを立ち上がらせ、イーラはフラフラしながらもちゃんとした足取りで現実世界へと帰還しようとする。その後ろ姿を見ながら、アイズは小さく溜め息をついていた。

 

(人を守らなくて良い理由にもならない、か……一体、何を恐れている(・・・・・・・)?)

 

そう告げた時に見せたイヴの表情。そこに浮かび上がっていた感情……それが“恐れ”である事を、アイズは確かに見抜いていた。尤も、その“恐れ”が何に対する感情なのかが分からない以上、今のアイズではそれ以上その疑問を解き明かす事はできなかった。

 

(確かに手掛かりは少ないけど、色々調べる必要はありそうだ……)

 

「突き止めなくちゃねぇ。あの子(・・・)の正体も……」

 

それを解き明かすからには、やはり彼女(・・)の素性を突き止めなくてはならないだろう。アイズはそう考えながら、立ち去って行くイーラの後ろを付いて行くように、ミラーワールドを後にするのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ディード、ヴィヴィオの様子は?」

 

「……大丈夫、怪我はないようです」

 

そして現実世界。アインハルトとの勝負に敗れたヴィヴィオは、壁に叩きつけられた衝撃が原因か、目を回した状態で気絶してしまっていた。念の為にオットーとディードが救急箱を用意してくれていたが、特に怪我はしていない事が判明し、一同はホッとした表情で安堵していた。

 

「良かったぁ……」

 

「アインハルトが気を付けてくれてたんだよね。防御(フィールド)を抜かないように」

 

「アインハルト、ありがとっス!」

 

「「ありがとうございます!」」

 

「あぁいえ、そんな……ッ」

 

ウェンディ達から礼を言われて謙遜するアインハルトだったが、突然その体から力が抜け、その場にグラリと倒れてしまいそうになる……が、その前に夏希が両手で受け止め、アインハルトの頭が彼女の胸の中に受け止められた。

 

「ありゃりゃ。アインハルト、大丈夫?」

 

「あ、すみません……ッ……あ、あれ……?」

 

受け止めて貰った事に謝罪しながら離れようとするアインハルトだったが、体に上手く力が入らず、とてもじゃないが動けそうになかった。彼女がそうなった原因は、既にノーヴェが気付いていた。

 

「ラストに1発、カウンターが掠ってたろ。時間差で効いてきたみたいだな」

 

アインハルトが覇王断空拳を繰り出した時。実はその一撃が決まった直後に、ヴィヴィオが振るった拳によるカウンターの一撃が、アインハルトの頭部を掠っていたのだ。アインハルトの体がぐらついたのも、そのダメージが時間差で響いて来たからのようだ。

 

「はいはい、今はそのままジッとしてなよ。アタシが支えといてあげるからさ」

 

「……はい、すみません」

 

取り敢えず、上手く動けないアインハルトは少しの間、夏希の胸の中で支えていて貰う事にした。ヴィヴィオの方ではディードが膝枕で寝かせながら、リオとコロナが下敷きを使ってパタパタと風を当てており、こちらも意識が戻るには少し時間が必要なようだった。

 

その間、ノーヴェはアインハルトが決めた技―――覇王断空拳について話を聞いてみる事にした。

 

「なぁアインハルト。断空拳はさっきのが本式なのか?」

 

「足先から練り上げた力を、拳足から打ち出す技法……それが『断空』です。私はまだ、拳での直打と打ち下ろしでしか撃てませんが」

 

「なるほどな……で、ヴィヴィオはどうだった?」

 

ノーヴェが個人的に一番聞いてみたかった質問。それに対し、アインハルトは今もなお気絶しているヴィヴィオの方を見ながら、ゆっくり口を開いた。

 

「……彼女には、謝らないといけません。先週は失礼な事を言ってしまいました、訂正します……と」

 

「……あぁ、そうしてやってくれ。アイツもきっと喜ぶ」

 

この練習試合を切っ掛けに、アインハルトの中でヴィヴィオに対する認識は変わっていた。その事にノーヴェも嬉しそうに笑い、アインハルトは気絶しているヴィヴィオの方へと歩み寄って行く。

 

(彼女は、覇王(わたし)が会いたかった聖王女じゃない……)

 

(だけどわたし(・・・)は……この子とまた戦えたらと、そう思っている)

 

アインハルトはヴィヴィオの前でしゃがみ、ヴィヴィオの右手を両手で優しく握りながら……改めて名乗る事にした。

 

1つの可能性を見出してくれた、目の前の少女の為に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――初めまして(・・・・・)、ヴィヴィオさん。アインハルト・ストラトスです」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

新暦79年春。

 

 

 

 

 

 

これが彼女達の、鮮烈(ヴィヴィッド)な物語の始まりを告げる、小さな切っ掛けだった。

 

 

 

 

 

 

その物語は少女達にとって……良くも悪くも、決して忘れられない物語となる事を。

 

 

 

 

 

 

この時の少女達はまだ、知る由もなかった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ミッドチルダ、とある屋敷……

 

 

 

 

 

 

「お嬢様、行って来ます……」

 

ある1人の男が部屋の窓ガラスの前に立ち、ミラーワールドに向かおうとしていた。

 

その男が握り締めているカードデッキには、牛の顔を象ったエンブレムが存在していたのだった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

To be continued……

 




リリカル龍騎ViVid!


???「くそ、俺達の邪魔をするな!!」

???「無駄ですわ。あなた達では到底、彼を倒す事なんてできませんわよ」

イヴ「あなたは、誰……?」

???「変身……!!」


戦わなければ生き残れない!


≪SHOOT VENT≫

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。