リリカル龍騎ライダーズinミッドチルダ   作:ロンギヌス

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お待たせしました。第12話の更新です。

前回の第11話から引き続き、今回も吾郎ゾルダ回をお送りします。

それではどうぞ。















戦闘挿入歌:果てなき希望(※ゾルダがある人物を助け出すシーンでお流し下さい)











第12話 雷帝の従者

「あれ、イヴちゃんまだ戻って来てないの?」

 

「はい。私が家に帰った時も、まだ……」

 

アインハルトの自宅、玄関先。イヴ達の様子を見に行こうと思いアインハルトと対面したウェイブだったが、彼女の口からイヴがまだ帰って来ていない事を知らされていた。

 

「イヴちゃん、どこに行くか聞いてない?」

 

「割れたコップに代わりに、新しいのを買いに行くとは言っていましたが……すみません。どのお店に買いに行ったかまでは……」

 

「そっか……もうお昼の時間なのに、ちょっと不安だなぁ。こっちで探してみるか」

 

「大丈夫でしょうか……? もしかして、何か事件にでも巻き込まれてるんじゃ……」

 

「お、心配してくれてるのかい? ちょっと前まで事件を起こす側だった君が、随分変わったねぇ」

 

「うっ……か、からかわないで下さい……!」

 

「ははは、ごめんごめん。んじゃちょっと探してみるわ。何かあったら連絡頂戴よ」

 

指摘されて赤面しているアインハルトにそう告げてから、ウェイブは家を出て街中に向かって行く。しかし今の時点ではイヴの行方に関する手掛かりがない為、ウェイブは困ったような表情を浮かべていた。

 

(しかし参った、一体どこにいるのやら……ここはちょいと、あのお嬢様(・・・)照れ屋さん(・・・・・)にも聞いてみるべきかね……?)

 

ウェイブはそんな事を考えながら、とある喫茶店の近くを通り過ぎて行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なお、その通り過ぎた喫茶店の店内では……

 

 

 

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁ……」

 

何やら落ち込んだ様子でテーブルに顔を突っ伏している夏希の姿があった。どんよりした雰囲気を醸し出しながら溜め息をついている夏希に対し、向かいの席に座っている少女―――ラグナ・グランセニックは苦笑いしながら彼女に問いかける。

 

「……夏希さん、もしかしてまたですか?」

 

「うん……どうしようラグナァ~!! またクビになっちゃったよぉ~!!」

 

「ちょ、夏希さ、首元が苦し……ッ!!」

 

突然顔を上げたかと思えば、涙目でラグナに泣きついて来た夏希。夏希に力強く抱き着かれたラグナが危うく窒息しかけたが、何とか夏希を引き剥がした事で難を逃れる。何故夏希がそんなに泣いているのかと言うと……

 

「迷惑な客を懲らしめてクビになった?」

 

「そうだよぉ……あんのナルシスト野郎、店の同僚にナンパしたりして散々迷惑かけまくってたからさぁ、アタシが思い切って懲らしめてやったんだ!! それなのに店長からクビにされちゃったんだよぉ~!!」

 

「は、はぁ……」

 

話によると、まず夏希はとあるファミレスでバイトをしており、ある程度は仕事にも慣れてきた状況だった。しかしある時、店にやって来たその迷惑な客が夏希の同僚にナンパをしてきた挙句、あまりの態度の悪さに店側も散々迷惑をかけられていた。そこで夏希が助太刀に入り、その迷惑な客を懲らしめた事で事態は解決したのだが、それが店側にも被害を与えてしまったらしく、それでクビを言い渡されてしまったようだ。

 

「ちなみに、懲らしめたってどんな風に……?」

 

「どんな風にって言うとさ、そのナンパ野郎がこっちにも声かけて来て『へぇ、君も可愛いね。どう? 俺と情熱的なロードを歩んでみないかい?』なんて言ってきてさぁ。あまりに気色悪かったもんだから、その腕掴んで思いっきり背負い投げしてやっただけだって……まぁ、その時に店の皿やコップも盛大に割っちゃったんだけどさ」

 

「あぁうん、それはクビになります」

 

「だってしょうがないじゃん!? あんな耳元でそんな気色悪い台詞吐かれたら、誰だって拒否反応は示したくなるでしょ!? 背負い投げしたくもなるでしょ!? 周りのお客さん達もアイツ懲らしめた時に拍手してくれてたしさぁ!!」

 

「お店側が拍手できる状態じゃないですそれ」

 

「もぉ~!! おかげで仕事クビにされちゃったのこれで3回目だし、今までクビにされて来た仕事も全部アホな男共が原因だし!! ティアナに一体なんて報告すれば良いんだよぉ~!!」

 

(夏希さん、もしかして男運ない……?)

 

ワンワン泣きついて来る夏希の頭をヨシヨシと撫でながら、ラグナは夏希のあまりの男運の悪さに同情し、苦笑いを浮かべる事しかできない。今回も恐らく、クビにされた自分を慰めて欲しいという理由から自分をこうして呼び出したのだろう。そんな理由が容易に想像できてしまったラグナだが、それでもわざわざ呼び出しに応じている辺りに彼女の優しさが窺える。

 

「でも、何でそこまでナンパを嫌うんですか? というか聞いた話だと、夏希さんもそのナンパ野郎相手を何度もカモにして来たって……」

 

「うぐっ! 今それは言わなくて良いじゃん……まぁ、アタシもやり過ぎたとは思ってるよ。けど、あぁいう奴を見てると無性に腹が立って来るんだよ。嫌な奴の事を思い出しちゃってさ」

 

「嫌な奴?」

 

「そう、その迷惑な客と同じナルシスト野郎。金の為なら何だってする最低な奴だよ」

 

「はぁ……それって、どんな人だったんですか?」

 

「う~ん……あんな奴の事はあんまり話したくないけど、まぁラグナちゃんなら良いかな」

 

夏希はストローを咥えてジュースを飲んでから、ラグナに説明し始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そいつ、とんだ悪徳弁護士(・・・・・)でさ。本当に碌でもない奴だったよ、アイツは」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、イヴは現在どこにいるかと言うと……

 

 

 

 

 

「うわぁ……!」

 

豪華な装飾のシャンデリア。

 

キラキラと輝く床に壁。

 

綺麗に整えられた敷物やテーブルクロス。

 

フカフカそうなベッド。

 

金持ちが暮らしているという事を、これでもかと言わんばかりに表現している豪華な屋敷。ある理由からそこに招待されたイヴは、初めて見る金持ちの家を見て目を輝かせていた。しかし……

 

「……うん?」

 

床に置かれている大きなダンベル。

 

天井から吊り下げられたサンドバッグ。

 

その他、部屋中に並べられているトレーニング用具。

 

金持ちのクラス豪華な屋敷……とは程遠いイメージのある代物が、その部屋には存在していた。

 

「あら、目が覚めたみたいね」

 

「!」

 

いくつものトレーニング用具に困惑しているイヴの前に、ヴィクターがエドガーとゴローを連れてやって来る。エドガーとゴローが椅子を引いてヴィクターとイヴを座らせてあげた後、エドガーがカップと紅茶を用意し、ゴローがお手製のお菓子をテーブルに並べていく。

 

「少しは疲れも取れたかしら?」

 

「はい……ここは……ヴィクター、さんの……?」

 

「えぇ。我がダールグリュン家の有するお屋敷よ」

 

エドガーが淹れた紅茶を飲みながら、自慢げな表情でイヴに説明する。それを聞いていたイヴが部屋中のトレーニング用具に視線が向いている事にも気付き、それについても詳しく明かした。

 

「トレーニング用具、が、いっぱい……」

 

「常日頃から鍛えてるの。インターミドル出場者として、1日も鍛錬を怠る訳にはいかないわ」

 

「インター、ミドル……?」

 

「若い魔導師達がフィールド上で競い合う魔法戦競技会、インターミドル・チャンピオンシップ……お嬢様はその大会に出場者として、毎年参加しておられます」

 

「フフフ……そう、私はヴィクトーリア・ダールグリュン……!」

 

紅茶を飲んでいたカップを置き、椅子から立ち上がったヴィクターが高らかに告げる。

 

「聖王でも覇王でも、ましてや冥王でも氷壁でもない……我が先祖、“雷帝(らいてい)ダールグリュン”こそが旧ベルカの最強覇者である事!! その現実を、雷帝の血を(ほんの少しだけ)引くこの私が叩き込み、この今の世に知らしめる!! その為に私は日々鍛錬を行っているのよ!!」

 

ヴィクターがそう言い放ちながらオーッホッホッホと笑い、それと共に窓の外で雷がピシャーンと鳴り響く。それを目の前で見ていたイヴは、ヴィクターに問いかけてみる事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「雷帝って、誰……?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……その数秒後、イヴの目の前には盛大にズッコケているヴィクターの姿があった。その姿にエドガーが隠れて小さく噴き出し、ゴローが敢えて何も言わず無表情を貫き、イヴがよくわからずクエスチョンマークを浮かべる。

 

「……まぁ、聖王や覇王に比べると、知名度が低いのは実際その通りですし……プッ」

 

「エドガー、今こっそり笑いましたわね!?」

 

小さく笑っているエドガーに対し、恰好の付かなかったヴィクターが「ムッキィィィー!!」と怒り出す。その様子を見ていたイヴは、何故だか申し訳ない気持ちになってきた。

 

「え、えっと……ごめん、なさい……?」

 

「……大丈夫、気にしないで」

 

そんなイヴにゴローが優しく語りかけ、彼女の手に一口サイズのクッキーを渡す。それを口の中に放ったイヴは何度か咀嚼した後、イヴは大きく目を見開いた。

 

「! 美味しい……!」

 

今まで食べた事のない美味しいクッキーにイヴが幸せそうな表情を浮かべ、それを見たゴローは何も言わない代わりに少しだけ嬉しそうな表情を見せる。その一方、落ち着きを取り戻したヴィクターがわざと咳き込む事で話題を切り替える事にした。

 

「ゴホン……話が逸れてしまいましたわね。まぁそういう訳で、この日は新しいトレーニング用具を買う為に下の街まで降りていたのだけれど……そんな時にたまたま見かけたのがあなたよ。イヴ」

 

「あ……」

 

新しいトレーニング用具を買い揃えたヴィクター達が帰る途中に見かけた、ガラの悪い男達に連れて行かれそうになっていた少女……それがイヴだった。たまたまヴィクター達が気付いてくれたから良かったものの、もし彼女達はその場にいなかったら、今頃イヴはもっと酷い目に遭っていたかもしれない。イヴはその事を改めて認識させられる事となった。

 

「あの……助けて、くれて、ありがとう……ございます……」

 

「お礼はもう良いわ。あなたが助かっただけでも……ただ、少し気になっている事があるわ」

 

ヴィクターは真剣な顔つきになり、ある物を取り出してイヴの前に置いた。それはイヴが変身に使用しているイーラのカードデッキだった。

 

「あ、私の……」

 

「見た目からして、およそ中等科1年生くらいの年齢にしか達していないであろうあなたが、どうしてこのカードデッキを持っているのか……それがずっと気になっていたの。話せる範囲だけでも構わないわ。あなたがライダーとして戦うようになった理由、教えて貰えないかしら」

 

午前中から学校にも行かずに外出し、おまけにカードデッキまで持っているイヴ。何故学校にも行かずにそんな事をしているのか、何故イヴがライダーとして戦っているのか、ヴィクターはそれを突き止めたかった。しかし……イヴはそんなヴィクターの問いかけには答えられなかった。

 

「……わかり、ません」

 

「? どういう事……?」

 

「私……自分が、何者なのか……ライダーになった、理由も、覚えてなくて……」

 

「!? あなた、まさか記憶が……!?」

 

「……ごめんな、さい」

 

「「……!?」」

 

イヴが記憶喪失だと知り、ヴィクターだけでなくエドガーとゴローも驚いた表情で顔を見合わせる。

 

「そう……ごめんなさい。何も知らずに問い詰めてしまって」

 

「いえ……大丈夫、です。自分の事は、自分で、どうにかします……その為に、ライダーになった、から……」

 

「イヴ……」

 

過去の記憶がないのに、まるで気にしていないかのように振る舞うイヴ。そんな彼女の為に何かしてやれる事がないかどうか、頭の中で思考を張り巡らせる。

 

(管理局に事情を明かすべき……? いえ、ライダーの力を持っている以上、下手に事態をややこしくするのは得策じゃない……だとしたら、この子の過去について調べられそうなのは……)

 

「……ヴィクター、さん?」

 

「え? あぁ、ごめんなさい。何かしら?」

 

考え事の最中にイヴから話しかけられ、ヴィクターは慌ててそちらに耳を傾ける。

 

「さっきの……私を、助けてくれた、ライダーは……」

 

「あぁ、その事ね。それなら、さっきからずっとあなたのすぐ近くに立ってるわ」

 

「え……?」

 

ヴィクターが視線で促し、イヴが右方向に振り向くと、そこには彼女達の話を黙って聞いているゴローとエドガーの姿。そしてエドガーがゴローに視線を向けたのもあって、イヴは自分を助けてくれたライダーの正体をすぐに知る事ができた。

 

「あなたが、さっきの……?」

 

「由良吾郎さん、またの名を仮面ライダーゾルダ。あなたの同業者よ」

 

ヴィクターに紹介され、ゴロー改め“由良吾郎(ゆらごろう)”はイヴに対して無言でペコリとお辞儀をする。寡黙で少し不気味なように見える彼だが、先程美味しいクッキーを渡してくれた事、モンスターとの戦いで助けてくれたをイヴは忘れていなかった。

 

「さっきは、助けてくれて、ありがとう……ございます」

 

「……どういたしまして」

 

吾郎はそう言って、イヴが飲み終わっていたカップにお代わりの紅茶を注ぐ。寡黙ながらも優しさを感じられる彼の行いにイヴは笑顔を浮かべながら、彼が注いでくれた紅茶に砂糖を入れようと、角砂糖の入ったシュガーポットに彼女が左手を伸ばそうとした時だった。

 

カチャンッ

 

「あっ……!」

 

「おっと」

 

左手のすぐ近くにスプーンが置かれている事に気付かなかったのか、イヴの左手とぶつかったスプーンが床に落ちてしまった。それを見たエドガーがすぐ拾いに動き、吾郎も新しいスプーンを取りに向かう。

 

「あら、大丈夫?」

 

「大丈夫、です。ごめんなさい……」

 

「いえ、お気になさらず。すぐに吾郎さんが代わりのスプーンを持って来ますから」

 

すぐにエドガーがスプーンを拾い、イヴは申し訳なさそうに謝罪する。ここまでは何て事のない光景に思われた……が。

 

「……?」

 

ヴィクターだけは、目の前の光景を見ていて1つの違和感を感じていた。

 

(今のぎこちない左手の動き……もしかして)

 

「? 何です、か……?」

 

「……ごめんなさい。もう1つだけ、聞いてみても良いかしら」

 

ヴィクターは問いかけてみる事にした。彼女の記憶等についてではなく、それとは別の疑問を解決する為に。

 

「イヴ、あなたひょっとして……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キィィィィィン……キィィィィィン……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「―――ッ!?」」」」

 

しかし、そんな暇は与えられなかった。再び聞こえて来た金切り音に、その場にいた全員が一斉に表情を一変させる。

 

「モンスター……ッ!!」

 

イヴはテーブルに置かれていたカードデッキを手に取り、窓の方へ向かおうとする。しかしその前にヴィクターが彼女の手を掴んで制止する。

 

「待ちなさいイヴ!! あなたまだ完全には回復し切っていないでしょう!? そんな状態で無理したら……」

 

「駄目……私も、行かなきゃ……デモンホワイターが……怒るから……!!」

 

「怒るって……ッ!?」

 

『ブルルルルル……!!』

 

その時、ヴィクターは窓に映り込んでいるデモンホワイターの存在に気付く。デモンホワイターはヴィクター達に対して威嚇するかのように唸り声を上げており、鋭い目付きで睨みつけて来ていた。

 

「私なら、大丈夫、です……だから、行かせて下さい……!!」

 

「イヴ、でも……」

 

「お嬢様」

 

その時、イヴとヴィクターの傍に吾郎が歩み寄った。彼はイヴの手を掴んでいたヴィクターの手に触れ、優しく離させる。

 

「俺が、彼女をフォローします」

 

「ゴローさん……」

 

「大丈夫です……俺に、任せて下さい」

 

小さく頷く吾郎の表情を見て、何かを感じたのか。ヴィクターは掴んでいたイヴの手をゆっくり離し、吾郎はイヴと共に窓ガラスの前に立つ。

 

戦闘形態(バトルモード)……!!」

 

イヴは自身の魔法で大人の姿に変化した上で、吾郎と共にカードデッキを窓ガラスに突き出す。2人の腰にベルトが装着され、イヴはその場でクルリと回転し、吾郎は右腕を力強く振り上げるポーズを取る。

 

「「変身!」」

 

2人はカードデッキを同時に装填し、イヴはイーラの姿、吾郎はゾルダの姿に変身。イーラが一足先に窓ガラスに飛び込み、ゾルダはヴィクター達の方を一目見てから、すぐに後を追いかけるように窓ガラスに飛び込み、ミラーワールドへと向かって行った。

 

「イヴ……」

 

「お嬢様。彼女にはゴローさんも付いています。きっと大丈夫でしょう」

 

「それはわかってますわよ……でも、さっきからずっと気になって仕方ないの。あの子の事が」

 

「気になって……?」

 

モンスターの接近を察知する前。ヴィクターはイヴに、何かを問いかけようとしていた。その事を思い出したエドガーは、ヴィクターにその意味を問いかける事にした。

 

「お嬢様……先程、イヴ様に何かを聞こうとしておられましたが、一体何を?」

 

「……心配なのよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの子、ちゃんと視えてないんじゃないか(・・・・・・・・・・・)……って」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キキィィィィィィッ!!

 

 

 

 

ミラーワールド、屋敷から少し離れた場所にある崖の上。イーラとゾルダは乗っていたライドシューターを停車させて降りた後、気配を察知したモンスターを探すべく周囲を見渡していた。

 

「モンスター、一体どこに……」

 

『クカカカカカ!!』

 

「!? うぁっ!!」

 

「ッ……フン!!」

 

突如、不意打ち気味に現れたシェルツイスターがイーラの背後から飛びかかり、気付いたイーラが振り返った直後にシェルツイスターが右腕のドリルで彼女を攻撃。イーラの装甲から火花が飛び散る中、それを見たゾルダがすぐにマグナバイザーを構えてシェルツイスターを狙い撃つが、シェルツイスターが構えた右腕のドリルで弾丸を次々と弾かれ、ゾルダにもドリルの一撃を炸裂させる。

 

『クカァッ!!』

 

「く……ぐぁっ!?」

 

ドリルの一撃を喰らったゾルダが倒れている隙に、シェルツイスターは再びイーラに襲い掛かる。イーラもデモンバイザーを構えて矢を連射するが、シェルツイスターは矢を受けながらも接近し、薙ぎ払うように振るったドリルで彼女を突き飛ばした。

 

『クカカァ!!』

 

「うあぁ!?」

 

「ッ……イヴちゃん!!」

 

薙ぎ払われたイーラが崖下から落下し、シェルツイスターもそれを追いかけるように崖下へ飛び降りる。ゾルダも落としたマグナバイザーを拾い上げてから、すぐに彼女達の後を追いかけて崖下に飛び降りて行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、イーラとシェルツイスターが場所を移動した先では……

 

 

 

 

 

 

キィィィィィン……キィィィィィン……

 

 

 

 

 

 

「!? 夏希さん、あれ!!」

 

「ッ……アイツは……!!」

 

喫茶店を出てから街中を歩いていた夏希とラグナ。彼女達も金切り音を聞いて周囲を見渡し、そしてラグナが気付いた方向に夏希も振り向き、音の正体を発見していた。

 

『クカカカカ!!』

 

『くぅ……ハァァァァァァァッ!!』

 

とある建物の窓ガラス……そこにはドリルを構えて駆け出しているシェルツイスターと、デモンセイバーを召喚して構えているイーラの姿が映り込んでいた。イーラの姿を見た夏希はすぐにカードデッキを取り出し、自身も戦いに介入するべく窓ガラスの方に向かい出す。

 

「ごめんラグナちゃん、アタシちょっと行って来る!!」

 

「は、はい、お気を付けて!!」

 

夏希は窓ガラスの前に立ち、カードデッキを突き出して出現したベルトを装着する。そのすぐ近くでは、イヴを探し回っていたウェイブもまた、窓ガラスに映り込んでいるイーラを発見していた。

 

「! あれ、あそこにいるのイヴちゃんか? 何だってあんな所に……まぁ良いや」

 

ウェイブもカードデッキを取り出し、夏希とラグナに見えないところで建物の窓にカードデッキを突き出し、ベルトを装着。すぐにイーラの元へ助太刀に向かっていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『クカカカカカァ!!』

 

「ッ……硬い……!!」

 

場所を移動し、街中まで移動して来たイーラ。彼女はデモンセイバーでシェルツイスターに斬りかかるも、シェルクリッパーと同種のモンスターだからか、やはりシェルツイスターの貝殻も非常に頑丈で、ほとんどダメージを与えられずにいた。

 

『クカァ!!』

 

「!? くあぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

おまけにシェルツイスターのドリル攻撃も非常に厄介で、イーラの胸部装甲に押しつけられたドリルがそのまま高速回転し始め、装甲を削るように押し当てられたイーラを大きく吹き飛ばす。

 

「痛ぅ……ッ!!」

 

『クカカカカカ……!!』

 

倒れているイーラに追撃を加えようと、シェルツイスターは右腕のドリルを回転させながら迫り来る。そして彼女に向かってドリルを振り下ろそうとしたが……

 

 

 

 

≪BIND VENT≫

 

 

 

 

「させないよっと!!」

 

『クカ!?』

 

「おりゃあ!!」

 

アイズのディスシューターから伸びた糸に巻きつかれ、シェルツイスターは両腕を封じられる。そこに跳躍して来たファムが飛び蹴りを放ち、シェルツイスターを蹴り倒した。

 

「よっと……ってあれ、またアンタかよ!?」

 

「ヤッホー、奇遇だねお嬢さん。ちょっとコイツ倒すの手伝ってくんない?」

 

「いやノリ軽いな!? まぁ手伝いはするけど……」

 

『クカカカカ……ッ!!』

 

アイズのあまりにノリの軽い台詞にファムが突っ込む中、立ち上がったシェルツイスターは自分を蹴りつけたファムと、自身の動きを封じているアイズを睨みつける。するとシェルツイスターはその場で両足を閉じ、なんと自身の体をドリルのように高速回転させ始めた。

 

『クカカカカカカカ!!』

 

「ん? え、ちょ、嘘だろおま……うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!?」

 

「うわ危なっ!?」

 

そうなれば当然、シェルツイスターに糸を巻き付けていたアイズもタダでは済まない。糸に引き寄せられたアイズは自分が逆に引っ張られ、シェルツイスターと一緒にグルグルと回転させられる羽目になってしまい、そんなアイズと激突しそうになったファムは慌ててその場に伏せて回避する。

 

「めーがーまーわーるーッ!!」

 

『クカァ!!』

 

「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!?」

 

「ッ……ウェイブさん……!!」

 

そしてシェルツイスターが突然回転を止めた瞬間、糸が千切れたアイズはそのまま勢い良く吹っ飛んで行き、近くの噴水がある水場にドボンと落下してしまった。アイズの糸による拘束から抜け出したシェルツイスターは続けてファムに飛びかかり、高速回転させたドリルを振り下ろして来た。

 

『クカカァ!!』

 

「くっ!?」

 

≪GUARD VENT≫

 

ファムは召喚したウイングシールドを両手で構え、シェルツイスターが振り下ろして来たドリルを正面から堂々と受け止める……つもりだったのだが、高速回転していたドリルはギャリギャリ音を立てながらウイングシールドを簡単に弾き飛ばし、守りが手薄になったファムに容赦なく追撃を喰らわせる。

 

『クカァ!!』

 

「きゃあぁっ!?」

 

「ッ……大、丈夫……!?」

 

追撃を喰らったファムが、倒れていたイーラのすぐ傍まで吹き飛ばされる。イーラが這いずりながらもファムの元まで近付き、彼女を守るようにシェルツイスターを迎え撃とうとする。

 

「これ以上、傷つけないで……!!」

 

「!? よせ、アンタもそんな状態じゃ……」

 

『クカカカカァ!!』

 

シェルツイスターが再び飛びかかり、イーラはデモンセイバーを構えて攻撃を防ごうとした……その時。

 

 

 

 

 

 

≪SHOOT VENT≫

 

 

 

 

 

 

ズドドオォンッ!!

 

『グカァッ!?』

 

「……ッ!?」

 

高く跳躍したシェルツイスターを、2人の後ろから飛んで来た2発のビームが撃墜。撃墜されたシェルツイスターが地面に落下する中、後ろを振り向いたファムは仮面の下で表情を一変させた。

 

「!? お前は……!!」

 

「……フッ!!」

 

『グガガァ!?』

 

イーラの後を追いかけて来たのは、両肩に大型のビーム砲―――“ギガキャノン”を装備したゾルダだった。ゾルダは立ち上がろうとしているシェルツイスター目掛けて追撃のビームを発射し、命中したシェルツイスターは何度も地面を転がってから立ち上がり、ゾルダを睨みつける。

 

『クカカカ……グガァ!!』

 

「!?」

 

シェルツイスターはその場で回転し、自らがドリルとなって地中に潜り始める。ゾルダは周囲をキョロキョロ見渡しながら警戒するも、そんな彼の足元の地面が、ほんの僅かに盛り上がる。

 

「ッ……下です!!」

 

「!? ぐぅ!?」

 

『グカカカカッ!!』

 

地面から飛び出して来たシェルツイスターがゾルダを攻撃し、ゾルダは転倒しそうになるも何とか踏みとどまる。そこにシェルツイスターが再び突撃しようと、その場から駆け出した時……

 

≪SWORD VENT≫

 

「でやぁっ!!」

 

『グカ!?』

 

ファムが地面に倒れた状態からウイングスラッシャーを召喚し、それをシェルツイスターの足元に伸ばす事で上手く足を引っかける。それによりシェルツイスターがバランスを崩してその場に転倒し、それを見たゾルダはすぐにギガキャノンを構える。

 

「ハッ!!」

 

『グガ、ギッ……グガァァァァァァァァァァァァッ!!?』

 

ギガキャノンから連射されたビームを何度もその身に喰らい、シェルツイスターは立ち上がる間もなくその身を撃ち砕かれた事であっという間に爆散。跡形もなく消滅したのを確認し、ゾルダは外したギガキャノンをその場に放り捨てる。

 

「はぁ……はぁ……」

 

ゾルダは息を整えながらも、倒れているイーラの方へと歩み寄ろうとする……が、そこに待ったをかける人物がいた。

 

 

 

 

 

 

「ちょっと待てよ……!」

 

 

 

 

 

 

「……!」

 

ゾルダの行く手を阻むかのように、イーラの前にファムが立ち尽くす。シェルツイスターとの戦いで疲弊している彼女だったが、フラフラな状態でありながらも、その右手はブランバイザーをゾルダに向けて突きつけていた。

 

「ッ……?」

 

「お前……お前も来てたのか、この世界に……!」

 

何故自分が剣を向けられているのか。事情がわからず困惑するゾルダだったが、ファムが次に言い放った台詞で、その理由を知る事となる。

 

「よくも、アタシの前にノコノコと出て来れたな……アイツを……浅倉を弁護(・・)しておきながら……!!」

 

「……ッ!?」

 

その一言で、ゾルダも目の前に立っているファムの正体を察した。ファムはブランバイザーを突きつけている右腕が痛みで震えながらも、仮面の下ではゾルダの事を強く睨みつけていた。

 

「今更何をしに来た……点数稼ぎのつもりかよ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――北岡秀一(きたおかしゅういち)ッ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ッ……おいおい、どんな状況だよこりゃ」

 

その状況を、水場から上がって来たアイズもしっかり目撃していた。

 

(ありゃ確か、お嬢様んとこ(・・・・・・)の秘書さんじゃないの。何だってこんな所に……って)

 

ファムと相対しているゾルダ。そしてファムがゾルダに向かって言い放った台詞。そこから、アイズは2人の関係性を何となくだが把握する事ができた。

 

「なるほど……コイツはまた、ややこしい状況になってきたじゃないの」

 

そんなアイズの言葉通り、ファムとゾルダが相対しているこの広場は今、緊迫した空気に包まれている。

 

とてもじゃないが、口を挟めるような状況ではない。

 

イーラもアイズも、その事を嫌でも理解させられてしまっていたのだった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

To be continued……

 




リリカル龍騎ViVid!


夏希「どうして今になって、アタシを助けようとした!! 人でなしの癖に!!」

吾郎「俺に、そんな資格はない……」

ギンガ「あなた、どこかで……?」

ウェイブ「真実を明かす事が、必ずしも良い結果に繋がるとは限らない……」


戦わなければ生き残れない!
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