リリカル龍騎ライダーズinミッドチルダ   作:ロンギヌス

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ジオウは思わぬ急展開!
まさか海東だけでなく剣崎、始、天音ちゃんまで登場するとは!
「RIDER TIME 龍騎」も早く見たいですね!






さて、今回も本編をお送り致します。今回は戦闘シーンはありません。

それではどうぞ。



第13話 真実を明かす事

「答えろ……北岡秀一……!!」

 

シェルツイスターが倒された後。ブランバイザーの刃先を突きつけながら、ファムは怒りの感情が籠った口調でゾルダに言い放った。

 

「あの時と同じだ……どうして今になって、アタシを助けようとした!! 人でなしの癖に!!」

 

「ッ……」

 

ブランバイザーを突きつけられているゾルダは、既にファムの正体を何となく察したからか、何も言葉を出せず俯く事しかできない。そんな彼の態度が、正体を知らないファムにとっては余計に腹立たしい事だった。

 

「どうした……どうして何も言わない!! 何とか言ったらどうなん―――」

 

「やめて!!」

 

「―――!?」

 

そんな時だった。疲れていながらも立ち上がったイーラがファムの前に立ち、ゾルダを守るかのように両手を広げて庇い出したのは。

 

「ッ……どいてくれ!! そいつは―――」

 

「やめて……この人は、私を、助けてくれた……恩人だから……!!」

 

「なっ……」

 

あの北岡が、自分を助けてくれた恩人?

 

ゾルダを庇おうとするイーラの言動にファムが困惑の感情を隠せない中、そこへ更に割って入って来たアイズがファムの前に立ち、彼女のブランバイザーを手で降ろさせる。

 

「!? お前……!!」

 

「はいはい。色々あるんだろうけど、今回はそこまでにして頂戴よ」

 

「うるさい、関係ない奴が余計な口を挟むな!! そいつとのまだ話は終わって―――」

 

「時間切れだよ」

 

アイズがファムの左手首を強引に掴んで持ち上げると、彼女の左手は既に粒子化が始まっているところだった。それを見たイーラとゾルダも、自分達の体が少しずつ粒子化し始めている事に気付く。

 

「残念だけど、話はまた今度だ。これ以上長居すると、ここにいる全員の命が危うい」

 

「ッ……くっ!!」

 

ファムは力ずくでアイズの掴む手を振り払った後、ゾルダの方を仮面越しに睨みつけてから、クルリと背を向けてその場から立ち去って行く。それを見届けたアイズは小さく息をついてから、イーラとゾルダの方に歩み寄る。

 

「さて、やっと見つけたよイヴちゃん。今までどこで何してたのさ? アインハルトちゃんが心配してたよ」

 

「うっ……ごめん、なさい」

 

「? その子と知り合いですか……?」

 

「あ、お嬢様んとこの秘書さん。もしかしてお宅等と一緒にいたの? 何だ、それならもっと早く連絡すれば良かったな」

 

「よっこらせ」とイーラに肩を貸しながら、アイズはゾルダの方にも近付いて行き、ゾルダの肩を軽くポンと触れる。

 

「んじゃ、まずは戻ろっか。そっちで何があったのか、事情も把握しておきたいしね」

 

「……はい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、戦闘が終わり疲弊しているイーラを連れたアイズはゾルダの案内を受け、ダールグリュン家の屋敷の前に到着。窓ガラスを介してヴィクター達のいる部屋に帰還し、イヴ達の帰還を待っていたヴィクターとエドガーが迎える。

 

「! イヴ、吾郎さん……!」

 

「お二人共、無事で何よりです……!」

 

「ただいま戻りました……お嬢様、エドガーさん」

 

「ッ……はぁ、はぁ……!」

 

ゾルダの変身を解いた吾郎が2人に笑顔を見せた一方で、アイズの肩から離れたイーラは膝を突き、変身が解けると共に大人モードも解除。息が絶え絶えな状態のイヴはそのまま床に倒れそうになるも、その前にヴィクターが彼女を受け止める。

 

「イヴ、どうしたの……!?」

 

「疲れてるだけだよ。戦いが終わった後はいつもそうだから」

 

イヴは部屋のベッドに寝かされた後、ヴィクターはエドガーから渡されたタオルでイヴの額の汗を綺麗に拭き取って行く。その間、アイズは変身を解除してウェイブの姿に戻り、ヴィクターとエドガーに対し敬礼のようなポーズを取りながら挨拶した。

 

「ども、お嬢様に執事さん。お宅等がイヴちゃんと知り合ってたのは意外だったよ。一体どこで会ったの?」

 

「え、えぇ、実は……」

 

「その件については、私が説明します」

 

イヴの汗を拭いているヴィクターに代わり、エドガーは自分達がイヴと出会った経緯をウェイブに説明する。イヴがガラの悪い男達に誘拐されそうになっていた事。その光景を目撃したヴィクター達が止めに入り、吾郎がガラの悪い男達を纏めて撃退した事。それらを聞かされたウェイブは呆れた様子で髪を掻く。

 

「おいおい、俺がいない間にそんな事があったとはねぇ……イヴちゃん、今度から1人で出歩くの禁止な。知らないところで何度も変な輩に誘拐されかけてるんじゃ、いくら俺達でも面倒を見切れない」

 

「あぅ……ご、ごめんなさい……」

 

「はぁ、もう良いよ。とにかく、お嬢様んとこの屋敷にいるのなら、ひとまず心配はいらないかな。優秀な秘書さんも付いてるだろうしね」

 

ウェイブにチラリと横目で見られた事に気付いたのか、吾郎は無言ながらも小さく頷く。しかし、ヴィクターの心配事はそれだけではなかった。

 

「ウェイブさん。問題はそれだけじゃありませんわ」

 

「うん? どういう事だい」

 

「……イヴ。単刀直入に言わせて貰うわ」

 

「ッ……?」

 

ベッドの上で体力を回復している最中のイヴを見ながら、ヴィクターは真剣な顔つきで彼女に告げた。

 

「イヴ、あなた……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「左目、ちゃんと視えていないんでしょう?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「―――ッ!?」」」

 

イヴの白く濁った左目の瞳(・・・・・・・・・)を見据えながら、ヴィクターが言い放った言葉。それを告げられたイヴ、そしてその事を今初めて知ったウェイブと吾郎も大きく目を見開いていた。

 

「……どうしてそう思ったんだい? お嬢様」

 

「……この子と同じように、自分一人で悩みを抱え込もうとする子(・・・・・・・・・・・・・・・・・)を私は知っていますわ。その子と何となく雰囲気が似ているような、そんな気がしていたからか……自然と、この子の表情や仕草を目で追っている自分がいた」

 

イヴが部屋中のトレーニング用具を見渡していた時。

 

イヴが吾郎の事を紹介されてそちらに振り向こうとした時。

 

イヴがシュガーポットに手を伸ばそうとしてスプーンを落とした時。

 

自分がよく知っている子(・・・・・・・・・・・)とイヴの姿が重なって見えていたヴィクターは、無意識の内にイヴの表情や仕草などを目で追いかけるようになっていた。その結果、彼女はイヴがスプーンを落とした時の反応に違和感を感じ、そこからイヴの左目の視力の弱さに気付く事が出来たのだ。

 

「イヴの座っていた席から見て、スプーンは左側の手元に置かれていて、常人なら問題なく見えるはずの位置だったはず。それなのにスプーンの存在に気付かず、左手を伸ばそうとした拍子に見えないスプーンと接触し、意図せず落としてしまった……それだけでも何となく推測はできましたわ」

 

(! そういえば……)

 

ヴィクターの推測を聞いて、ウェイブもある事を思い出した。それはアインハルトがノーヴェと勝負を終えた日の夜中、イーラがポイゾニックモスと戦っていた時の事。

 

(なるほど……道理であの時、動きが妙にぎこちなかった訳だ)

 

ポイゾニックモスがイーラの左側に回り込んだ時、イーラはそれだけでポイゾニックモスの姿を見失っていた。左目がちゃんと視えていないのであれば、そんな簡単に相手の居場所を見失ってしまったのにも説明が付く。

 

「ただでさえ体力がない上に、左目は視力が弱くてちゃんと視えていないなんて……そんな状態でモンスターと戦おうだなんて、命がいくつあっても足りないわ。ウェイブさんや吾郎さんがいなければ、あなたは今頃―――」

 

「それでも……」

 

ヴィクターの言葉を遮り、イヴはゆっくり体を起き上がらせる。

 

「それでも……私は、戦うしかない……戦わなかったら……デモンホワイターが、怒るから……!」

 

キィィィィィン……キィィィィィン……

 

『ブルルルル……!』

 

「……!」

 

今も窓ガラスの鏡面から覗き込んで来ているデモンホワイター。ヴィクター達を睨みつけながら唸り声を上げているデモンワイターに対し、ウェイブもそれに怯む事なく逆に睨み返す。

 

「……厄介な事に、本当にやめたくてもやめられないのがライダーの悲しいところさね」

 

「ッ……」

 

どれだけ戦いをやめさせたいと思っても、モンスターとの契約がある限りライダーをやめる事は許されない。ライダーをやめる時はすなわち、ライダーの死を意味する。その事を嫌でも思い知らされている身であるウェイブは小さく溜め息をつき、同じライダーである吾郎もほんの僅かに俯いた。

 

(わからないな……モンスターとの契約があるとはいえ、何が彼女にそうまでさせる……? 彼女の失っている記憶と何か関係があるのか……?)

 

少なくとも、ただ何者かにカードデッキを渡されたからという理由だけでは、彼女が本気で人を守る為に戦う理由に繋がるとは思えない。何がイヴにそうさせているのか。何が彼女に戦う意志を与えたのか。どれだけ理由を考えたところで、イヴの失った記憶を知らないウェイブではそこから先を推測する事はできなかった。

 

「……何にせよ、イヴちゃんは今後、1人でモンスターと戦うのは禁止だ。1人で無茶ばっかして、それで本当に命を落としてしまったら元も子もない」

 

「わぷっ……!?」

 

ウェイブはイヴの汗を拭くのに使われていたタオルを手に取り、イヴの顔に投げかける。不意打ち気味に投げかけられたイヴは顔にタオルが直撃し、間の抜けた声が飛び出る。

 

「今後、モンスターとの戦いに出向く時は、必ず俺か秘書さんのどっちかと一緒になって行動する事。生き残りたいのなら、何があろうとそれだけは絶対に守れ。良いな?」

 

「……うん」

 

普段はノリの軽いウェイブが、いつになく真剣な表情を向けている。そんな彼からそう言われた以上、イヴはその言いつけを守る事を誓う以外の返事は返せず、素直に頷いて応じる他なかった。その様子を見ていたヴィクターは両手をパンと叩き、この暗い雰囲気を変えるべく口を開く事にした。

 

「……さて、説教は一旦終わりですわ。イヴ、しばらくはここで休みなさい。それから、今日明日はモンスターとの戦闘行為も禁止よ。ちゃんと守れるかしら?」

 

「え、でも―――」

 

「ま・も・れ・る・か・し・ら?」

 

「―――わかり、ました」

 

笑顔のまま繰り返しそう言い放つヴィクター。そのにこやかな笑顔の裏にドス黒いオーラを見たからか、「守らなかったらヤバい」と本能で察したイヴは素直にそれに応じ、そのやり取りを見ていた男衆も冷や汗を掻きながら後ずさっていた。

 

「わかったらのなら良いわ。それから明日の昼、リムジンでそちらに迎えに行くから、ウェイブさんと一緒に出かける準備をしてなさい」

 

「? 出かけるって……一体、どこに……?」

 

言っている意味がよくわからず、コテンと首を傾げながら聞き返すイヴ。それに対し、ヴィクターは笑顔でイヴを指差しながら言い放った。

 

「どこにって、決まっているでしょう? 眼鏡を買いに行く為ですわ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――で、こうしてここに連れられて来た訳だけど」

 

翌日、午後13時頃。エドガーの運転するリムジンに乗せられたイヴとウェイブは、そのままとある巨大ショッピングモールに到着し、その無数に並ぶ店舗の1つである眼鏡屋にやって来ていた。

 

(やれやれ、アインハルトちゃんへの事情説明とか大変だったなぁ……)

 

尤も、今日もアインハルトは学校で授業なので家には不在なのだが。ちなみにイヴは既にヴィクターとエドガーによって眼鏡屋の店内まで強制連行されており、ウェイブと吾郎の2人は少し離れた位置から、眼鏡を購入しようとしている3人の様子を静かに見守ってるところだった。

 

「お宅んとこのお嬢様、本当に面倒見が良いよねぇ。ある意味お嬢様らしからぬというか、何というか」

 

「……お嬢様は優しい方ですから。困っている子がいたら、放っておけない性分なんだと思います」

 

「なるほど。その優しいお嬢様に救われた男が言うと、説得力が違うねぇ」

 

ウェイブが肘で突きながら吾郎をからかうも、吾郎は鬱陶しそうにそれを軽く払う程度の反応しか見せない。そんな吾郎に対し、ウェイブはニヤニヤと笑みを浮かべた後、何かを思い出したように手をポンと叩いた。

 

「あ、そうだ。秘書さんにも聞いてみたい事があったんだった」

 

「?」

 

「昨日、モンスターを倒した後の事だけどさ」

 

そこまで言いかけた途端、吾郎の表情が僅かに変わり、睨んでいるかのような視線をウェイブに向ける。ウェイブもそんな吾郎の表情の変化を、一目でしっかり見抜いていた。

 

「あのお嬢さん、お宅の事を北岡秀一と勘違いしてたようだけど……彼女とはどういう関係なのさ?」

 

「……俺の記憶が正しければ」

 

店の天井の明かりを見上げながら、吾郎はボソリと呟くように答える。その時点で、彼の鋭い目付きは既に柔らかい目付きへと戻っていた。

 

「ある男が、1人の女性を殺害しました。彼女はその妹です」

 

「! まさか、その犯人を弁護したのが……?」

 

「はい。その件で、彼女が先生を恨んでるんだとしたら……無理のない事だと思ってます。先生も、()を弁護した事は、強く後悔してましたから……」

 

「良いのかい、それを彼女に話さなくて。このままじゃいつまでも誤解されっぱなしだよ?」

 

「……話したところで、彼女は許してくれないでしょうし、許されちゃいけない……俺に、そんな資格はない」

 

見上げていた天井から視線を下ろし、ウェイブの方を見ながら彼はこう答えた。

 

「それに、彼女が本当に恨むべき人間は……先生じゃなくて、俺の方です」

 

「……?」

 

北岡ではなく吾郎が恨まれるべき?

 

一体どういう事なのか?

 

この時のウェイブは、吾郎が言ったその言葉の意味がまるで理解できなかった。

 

「彼女がまだ、先生を恨み続けているのなら……俺がその恨みを引き受けます。それで彼女が、姉を失った悲しみを紛らわせられるのであれば」

 

「……お宅も、難儀な性格してるねぇ」

 

イヴと言い吾郎と言い、どいつもこいつも誰かの為になるのなら、自分が苦労する事をまるで厭わない。そんな自己犠牲精神の強い2人を間近で見ているウェイブだが、2人の事情を詳しく知らない以上、あまり強く物を言える立場ではない事も彼は理解していた。

 

「ま、俺もこれ以上はとやかく言わんよ……けど、これは覚えときなよ。もしお宅の身に何かあれば、それを悲しむ人間だってちゃんといる事をさ」

 

「……えぇ、わかってます」

 

(本当にわかってんのかねぇ……?)

 

ウェイブは吾郎の返して来た返事がイマイチ信用できなかった。しかし何度も念入りに聞き返したところで、きっと同じ返事しか返って来ないだろうと判断したのか、彼は敢えてそれ以上聞き返そうとはしなかった。

 

「まぁ良いや、この話はここまでにしよう……お嬢様方は、まだ眼鏡選びに時間かかりそうかな?」

 

「そのようで……」

 

「んじゃ、俺はちょっとお手洗いでも済ませて来るわ。ここは秘書さんがいれば大丈夫でしょ」

 

そう言って吾郎にヴィクター達の護衛を任せた後、ウェイブは眼鏡屋を出てから一番近くにある男子トイレまで向かっていく。

 

「ふぅ、スッキリしたっと」

 

そこでお手洗いを済ませたウェイブが、洗い終えた両手をハンカチで拭きながら、男子トイレを出た先の道を曲がろうとした……その時だった。

 

「きゃっ!?」

 

「おぉっと!?」

 

曲がろうとした道の先から1人の女性がやって来た事で、ウェイブはその女性とうっかり正面からぶつかってしまう羽目になってしまった。ぶつかった拍子に女性が手に持っていたカバンが床に落ちてしまい、それに気付いたウェイブがすぐに拾い上げる。

 

「あぁ、ごめんごめん! 大丈夫?」

 

「い、いえ! こちらこそごめんなさい!」

 

ウェイブは拾い上げたカバンの汚れを払ってから、目の前の女性にカバンを手渡そうとした……が、その女性の顔を見て硬直した。

 

「あ、カバン……わざわざすみません!」

 

(……おっと、そう来たかぁ)

 

ウェイブがカバンを渡そうとした女性―――ギンガ・ナカジマはウェイブに礼を言ってからカバンを受け取った。そんな彼女の素顔に見覚えがあるウェイブは、危うくそんな反応が表情に出てしまいそうになった。何故ならギンガの事は、数年前のとある事件(・・・・・・・・・)で何度か姿を見ているからだ。

 

「? あの、どうかしましたか……?」

 

「え……あぁ、ごめんごめん。いや、まさかこんな綺麗な女性とぶつかる日が来るとは思わなかったものでね。つい見惚れてしまった」

 

「へ!? き、綺麗って……そ、そんな事言っても何も出ませんよ!」

 

(ふぅ、危ない危ない)

 

動きが硬直した理由について、ウェイブは咄嗟にそんな嘘をつき、綺麗だと言われたギンガは思わず赤面になった事で上手く誤魔化す事に成功する。とはいえ、ギンガが美人であるとは本気でそう思った為、あながち嘘という訳でもないのだが。

 

「いや、ぶつかっちゃって本当にすまんね。お詫びに何か飲み物でも奢らせてよ」

 

「え? い、いえ、そこまでして貰わなくても……!」

 

「知ってる? そこの自動販売機、美味いコーヒーが売ってるんだって。せっかくだしどう?」

 

「……じ、じゃあ、お言葉に甘えて」

 

「よっしゃ」

 

ウェイブはぶつかってしまったお詫びとして、ギンガに自動販売機の飲み物を奢る事にした。最初は遠慮していたギンガも、ウェイブに強く押された事で素直にそれに応じ、彼の小銭で缶コーヒーを奢って貰う事となり、2人は自動販売機で買った缶コーヒーを近くの休憩ベンチで一緒に飲む事にした。

 

「ほい、お嬢さん。コーヒーどうぞ」

 

「あ、ありがとうございます……えっと」

 

「ん? あぁ、そういや名乗ってなかったわ。俺はウェイブ・リバー。フリーでカメラマンやってんの。君は?」

 

「あ、はい、ギンガ・ナカジマです。管理局の捜査官をやっています」

 

「へぇ、管理局の人か! 今日はお休みの日なの?」

 

もちろん、ウェイブはギンガが管理局の魔導師である事は既に知っている。しかし自分がライダーである事は隠しておきたいのか、彼は敢えて初対面のフリをしておく事にした。

 

「はい。妹達の為に、何か美味しい物でも買って帰ろうと思って」

 

「ほほぉ、良いねぇその家族思いな気持ち。身も心も素敵なお姉さんをやってるじゃないの」

 

「み、身も心もって……それは大袈裟過ぎますよ……!」

 

「いやいや、素敵だと思ったのは本当の事だよ? 実際、写真に撮ったら良い絵が撮れそうだもん」

 

「そ、そうでしょうか……?」

 

「そうそう、それは俺も自信持って言える!」

 

ウェイブがひたすら褒めちぎり、褒められ慣れていないギンガは恥ずかしそうに顔を赤くしながらも、満更でもなさそうな表情だ。そんな彼女の照れた表情を、指先で四角を作りながらウェイブは更に続ける。

 

「家族に美味しい物を食べさせてあげたいって気持ち……誰かを想う気持ちってのは、それだけで人を美しく魅せるもんなんだよ。そこには他に、複雑な理由なんて必要ないくらいにね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『確かに、人の為じゃない、かも知れない……でも、それは』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『人を、守らなくて良い理由にもならない……!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

 

「? あの、どうかしましたか……?」

 

「ん? あ、あぁ、ごめんごめん。何でもないよ」

 

アインハルトがヴィヴィオとの練習試合に挑んだ日。あの時、モンスターを倒しに向かおうとしたイヴから告げられた言葉が、ウェイブの脳裏をよぎっていた。ウェイブが沈黙しているのを心配そうに見ているギンガに、ウェイブは慌てて誤魔化しながらも、イヴの言葉が何度も頭に響いていた。

 

(誰かを想う気持ち、か……)

 

イヴがライダーとして戦う理由。それはまさに自分が今ギンガに対して言った言葉そのままだった。理由なんて単純な物でも良い。そんな簡単過ぎる事に、ウェイブはたった今改めて気付かされていた。

 

(……難しく考え過ぎてたのかな、俺って)

 

もしや、イヴもそんな気持ちで今まで戦ってきたのだろうかと、そんな事を思いながら缶コーヒーを口にするウェイブ。その様子を横で見ていたギンガは、彼の顔をジーっと覗き込んでいた。

 

「ウェイブさんって、なんだか不思議な人ですね」

 

「うん?」

 

「何か考え事をしてる時のウェイブさんって、なんだか難しそうな顔をしてますけど……それと一緒に、なんだか優しさのような物も感じて……」

 

「優しさねぇ……それこそ大袈裟じゃないかな。俺、ただのフリーのカメラマンよ?」

 

「それを言うなら、ウェイブさんが私を褒めたのだって大袈裟じゃないですか。お互い様ですよ」

 

「おっと、言ってくれるじゃないの……で、何でそう思ったんだい?」

 

ウェイブにそう聞かれて、ギンガは「う~ん」と少し難しそうに考えた後、その答えを返してみせた。

 

「何となくなんですけど……私の知っている人達に、似てるからでしょうか」

 

「似てる?」

 

「はい。私の知ってる人達も、いつも誰かの為に、本気で目の前の事に向き合っていて。とても優しい、素敵な人達なんです」

 

「ほぉほぉ」

 

「……でも時々、物事が上手く行かなくて、そのせいで辛い思いもしているんです。今もずっと、その人達は目の前の大きな壁と戦ってる」

 

「そりゃ大変そうだねぇ」

 

「その人達と、ウェイブさんが似てるなぁって思った時から……私、何となく感じてる事があるんです」

 

「……うん?」

 

飲みかけの缶コーヒーを見つめながら、ギンガは思い出していた。かつてとある事件(・・・・・)を追う中で、自身が体験した出来事を。

 

「数年前……私は何度か、ある人に助けられた事があるんです。その人は、私がお礼を言う前に姿を消してしまって……私の知り合いから聞いた話だと、その人とウェイブさんって、なんだか似ているような気がして」

 

(……!)

 

ウェイブの眉がピクリと反応する。しかし、缶コーヒーに視線を向けていたギンガはその事に気付かない。

 

「……あ、すみません! 無駄に長い話をしちゃって!」

 

「いや、良いって良いって。君を助けたっていうその人も素敵じゃないか。いつか会えると良いねぇ、その人に」

 

ウェイブは缶コーヒーを一気に飲み干し、近くのゴミ箱に飲み終えたコーヒーの缶を捨ててから立ち上がる。

 

「さて、気付いたらもう結構時間が経っちゃってたな……俺はそろそろ行かなくちゃな」

 

「誰かと待ち合わせしてるんですか?」

 

「うちの知人が買い物中でね。俺はその付き合い」

 

「そうですか。今回はありがとうございます、わざわざ奢って貰っちゃって。もしまた会う事があったら、何かお礼をさせて下さい」

 

「ありゃ、律儀だね。そうだねぇ……じゃあこうしよう。もしまた会ったら、ぜひ1枚写真撮らせてよ。ギンガちゃんなら絶対良い絵が撮れるからさ」

 

「……わかりました。その時はぜひお願いします」

 

「よっしゃ! んじゃ、そういう事で―――」

 

「あの!」

 

機嫌良く立ち去ろうとしたウェイブを、後ろからギンガが呼び止める。

 

「最後に、1つだけ聞いても良いですか?」

 

「うん? 何かな」

 

ニコニコ笑顔を浮かべながら振り返って来たウェイブに対し、ギンガは1つだけ聞いてみる事にした。

 

その質問の内容は……ウェイブの表情は一瞬だけ固まる事となる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ウェイブさん。あなた、どこかで……私と、会った事ってありませんでしたか……?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……いや、ギンガちゃんとは今回が初対面だよ。それがどうかしたかい?」

 

「……あ、いえ。やっぱり、何でもありません」

 

「ん、そっか」

 

ウェイブはそう言って、今度こそイヴ達のいる眼鏡屋まで立ち去って行く。彼が立ち去ってからも数分間、ギンガはウェイブが立ち去って行った方角を見つめ続けていた。

 

(やっぱり、気のせいかしら……何となく、そんな気はしたんだけど……)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ……あの娘、妙なところで鋭いなぁ」

 

ギンガと別れた後。ウェイブは眼鏡屋に戻る前に近くの洋服屋に身を潜め、ギンガが自分を追って来ていないのを確認してからホッと一息ついていた。

 

(危ないところだった。余計な事を言って、彼女みたいな無関係の人まで巻き込む訳にはいかないしなぁ……)

 

かつて自分とギンガが出会った事件で、ギンガがライアやファム達と連携しているところをウェイブはしっかり見ている。ギンガもひょっとしたら、かつて自分を助けたのがウェイブではないかと思っていて、それで期待をしてしまっていたのかもしれない。

 

「真実を明かす事が、必ずしも良い結果に繋がるとは限らない……悪いね、ギンガちゃん」

 

ある理由から、ウェイブはまだ管理局の人間と深い関わりを持とうとは思っていなかった。ギンガが優しい人間である事はウェイブも既にわかっていたが、彼女が管理局の魔導師である以上、今はまだ正体を明かす時じゃない。そんな考えもあって、ウェイブは敢えて自分とギンガは初対面だと偽ったのだ。

 

(それにしても、自分も似合わない事を言っちゃったよなぁ……)

 

それは先程のギンガとの会話で、自身がさりげなく言った一言。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『君を助けたっていうその人も素敵じゃないか(・・・・・・・)。いつか会えると良いねぇ、その人に』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(……それは違う)

 

他人の人生を歪めた(・・・・・・・・・)この俺が……素敵な人間のはずあるかよ」

 

そう呟いてから、洋服屋を出て眼鏡屋に戻って行くウェイブ。そんな彼の顔は、今まで誰にも見せた事がないくらい、怒りと悲しみの感情が混ざり合った複雑な表情を浮かべていたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は変わり、とある森林内部。

 

 

 

 

 

 

キィィィィィン……キィィィィィン……

 

 

 

 

 

 

滝の水が激しく流れ落ちている広大な湖。

 

その水面には……

 

『フゥゥゥゥゥ……』

 

 

 

 

ライトイエローのカラーリングをしたボディ。

 

 

 

 

ボディ各部に見える、爬虫類のような牙や鱗のような意匠。

 

 

 

 

その右手に握った、銃と剣が一体化したような召喚機。

 

 

 

 

黒いカードデッキに刻まれた、恐竜の顔を象った金色のエンブレム。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『……さて、狩りの時間と行こうかの』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

恐竜を思わせる姿の仮面ライダーが、水面にその姿を映し込んでいたのだった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

To be continued……

 




リリカル龍騎ViVid!


アインハルト「イヴさん、素敵な眼鏡ですね」

手塚「アイツも、今頃荒れていなければ良いが……」

シグナム「失礼、あなたは……?」

???「他にやる事のない、ただの老いぼれジジイじゃよ」


戦わなければ生き残れない!


≪SCOPE VENT≫

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