うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!?
あそこで「BELIEVE YOURSELF」はズルいって!!!そんなんテンション上がるに決まってんだろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!
しかも次回は響鬼編!!
トドロキさん、お久しぶりっす!!
京介!?2代目響鬼になったのかお前!?
いやぁ~ほんと、今日のジオウも最高でしたわ。
・シノビ
おいおいおいおい何だよめっちゃ気になる終わり方したな!!
別に1クールくらい配信してくれても良いのよ?←
・龍騎
ただ一言……最高でした。ありがとう、龍騎。
さてさて。今回は第18話の更新になります。
せっかく「RIDER TIME 龍騎」が配信された記念に、前回のラストシーン&次回予告では主題歌の「Go! Now! ~Alive A life neo~」を流してみました。
この演出自体は別に毎回やる訳ではありません。前回のような、ストーリーにおいて重要な局面が来た時にまたやってみようと思います。
という訳で、今回の次回予告はまたいつものBGMに戻ります。
それではどうぞ。
「ッ……お前、北岡秀一か……!!」
ファムにトドメを刺そうとしていたタイガの前に現れ、彼が振り下ろそうとしていたデストバイザーをギガホーンで受け止めたゾルダ。互いの武器が押しつけられた状態で睨み合う中、ゾルダの姿を見上げていたファムは、彼が再び自分を助けたというこの状況に困惑を隠せなかった。
「お前……どういうつもりだよ……何でここに来た……!!」
「……ハッ!!」
「ぐっ!?」
ファムからそう問われてもなお、ゾルダは彼女を庇う事をやめなかった。ゾルダはタイガの腹部を蹴りつけて強引に押し退けた後、振り回したギガホーンで更に強烈な一撃を喰らわせ、怯んだタイガは後ろに下がりつつもゾルダを睨みつける。
「お前も、僕の邪魔をする気か……ならお前から先に倒すまでだ!!」
「フッ……!!」
タイガがデストバイザーで斬りかかり、ゾルダがギガホーンで上手く防御しながら応戦する。2人が激しい戦いを繰り広げる間に、ファムは痛む体で這いずりながらも先程弾き落とされたブランバイザーを手に取り、壁伝いに立ち上がろうとする。
(ッ……何でだよ……あれだけ言ったのに、何で……?)
助けられる義理はないと言ったのに。
もう姿を見せないでくれとも言ったのに。
それなのにどうして。
「何でだ……何でアタシを助けようとする……!?」
ゾルダの意図が読めず、ファムは頭の中で混乱していた。彼女がそんな事になっている一方、ゾルダはギガホーンによる猛攻で少しずつタイガを押し始めていた。
「フンッ!!」
「くっ……ぐあぁ!?」
タイガの振り下ろしたデストバイザーがギガホーンで受け止められ、ギガホーンの砲口から噴出された火炎がタイガを押し返す。タイガが地面を転がる中、ゾルダはギガホーンを放り捨て、手に取ったマグナバイザーの開かれた装填口にカードを差し込んだ。
≪FINAL VENT≫
『グォォォォォォォン……』
「アレは……」
マグナバイザーから鳴り響く電子音と共に、ゾルダの目の前に地面から現れた巨大なモンスター。銀色の装甲で守られている胸部。大砲となっている両腕。光線砲を収納した両足。そして牛のような角を生やした頭部。全身が武器と化した、バッファローとロボットが混ざり合ったかのような巨体を持つ怪物―――“
「!? マズい……!!」
地面から体を起こしたタイガも、マグナギガを見て慌ててデストバイザーを拾い上げる。その間に、ゾルダはマグナギガの背部にマグナバイザーの銃口を接続し、それによってマグナギガが両腕の大砲を上げ、更には両足に収納されていた光線砲、そして胸部装甲の内部に仕込まれている複数のミサイル砲が一斉に展開され始める。
「!! よせ、北岡!!」
あとはゾルダがマグナバイザーのトリガーを引けば、ゾルダのファイナルベントが発動される。しかしそんな事をしてはタイガを殺してしまう。目の前でライダーを殺させる訳にはいかないと、ファムは壁伝いに歩きながらゾルダに向かって叫んだ。
しかし……
≪FREEZE VENT≫
デストバイザーから鳴り響く電子音。その瞬間、マグナギガの身に異変が起き始めた。
「!? 何……ッ!?」
突然、マグナギガがエネルギーの収束をやめてしまい、
「!? 動きが、止まった……?」
その様子を見ていたファムも、マグナギガが突然動きを止めてしまったのを見て困惑した。その一方で、2人が困惑する要因を生み出したタイガはデストバイザーにカードを装填する。
≪ADVENT≫
『グオォォォォォォンッ!!』
「!? ぐぁっ!!」
直後、ゾルダの真横から飛び掛かって来たデストワイルダーが、捕まえたゾルダを街灯に叩きつけ、そのまま地面薙ぎ倒した。そのままゾルダを捕まえた状態で素早く引き摺り回し始め、仰向けの体勢で引き摺られているゾルダの背中からは無数の火花が飛び散っていく。
「無様だね、北岡秀一。悪として裁かれる気分はどうかな?」
「ぐ、がぁぁぁぁぁぁぁぁ……ッ!!」
タイガが見下したような態度でそう言い放つ間も、デストワイルダーはガリガリ音を立てながら素早い動きでゾルダを引き摺り回し続ける。ゾルダは仮面の下で苦悶の表情を浮かべながらも、右手に構えていたマグナバイザーの銃口をデストワイルダーの顔面に向け、すぐさまトリガーを引いた。
「ッ……ああぁ!!」
『グルゥ!?』
顔面に数発の弾丸を喰らい、怯んだデストワイルダーが地面に倒れた事でゾルダを手離した。解放されたゾルダが地面を転がった後、そこに疾走して来たタイガがデストバイザーにカードを装填する。
≪STRIKE VENT≫
「はぁっ!!」
「ッ……うあぁぁぁぁぁぁっ!?」
タイガが振り下ろして来たデストクローの一撃は、フラフラの状態で立ち上がろうとしていたゾルダの胸部を強く斬りつけた。そこに追撃で振り上げられたデストクローで薙ぎ払われ、ゾルダは大きく吹き飛ばされて壁に叩きつけられた後……
「くっ……がは、ぁ……ッ」
ゾルダの体が地面に倒れ伏し、変身が解けて吾郎の姿に戻ってしまった。ゾルダを変身解除に追い込んだタイガ、2人の戦いを見ていたファムは、その光景を見て驚愕した。
「!? 何……!?」
「なっ……北岡、じゃない……!?」
北岡秀一だと思っていた相手が、実は北岡ではなく別人だった事に、タイガとファムは驚きの声を挙げる。しかも両者にとって、その人物は過去に見覚えのある人物だった。
「アイツ、確か北岡の秘書の……!?」
「う、あ、ぁっ……」
ダメージを受け過ぎた吾郎は、傷の痛みのせいで上手く立ち上がれない。そこにデストクローを構えたタイガが近付いて来た。
「お前、あの北岡秀一の秘書か……どういうつもりだい? 奴は今どこにいる?」
「ッ……先生は、いない……あの人は、もう……!」
「……まぁ良いや。あの男の秘書をやってたんだからね。どうせお前も、裁かれるべき悪に違いはない」
(!? ヤバッ……!!)
タイガが右手のデストクローを振り上げ、倒れて動けない吾郎にトドメを刺そうとする。それを見たファムはすかさずカードを引き抜く。
「悪は僕が断罪する……死ねぇ!!!」
タイガがデストクローを勢い良く振り下ろす。デストクローの鋭い爪が、吾郎の体を引き裂こうとしたその時……
≪GUARD VENT≫
「!? 何……ッ!?」
タイガと吾郎の周囲に、無数の白い羽根が広がり始めた。突然の事態にタイガは驚きつつも、構わず吾郎に向かってデストクローを振り下ろした……が、吾郎の姿は白い羽根と共に一瞬で姿が消え、デストクローの斬撃は空振りに終わった。
「な、消えた……どこだ!? どこにいる!!」
デストクローを乱暴に振り回しながら、タイガは消えた吾郎の行方を探し続ける。しかし何度デストクローを振り回しても、その攻撃が当たる感覚は訪れる事がなく、白い羽根が全て消えた頃には、吾郎もファムも完全に姿を消してしまっていた。
「……まさか、逃げたのか……?」
周囲を見渡したタイガは、2人に逃げられてしまった事を悟った。それを理解すると同時に……タイガの体がワナワナと震え始める。
「ふざけるな……僕から逃げるなよ……秩序を乱す悪の分際でぇっ!!!」
犯罪者に逃げられた。
悪を断罪できなかった。
滅ぶべき悪にコケにされたのだ。
「ッ……あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!」
タイガの中で、
その様子を、建物の屋上から柵越しに見下ろしている1人のライダーがいた。
「あ~らら。メチャクチャするわねぇ、あの虎の奴」
スラリと細い体型をした灰色のボディ。
カメレオンの目を模した仮面の複眼。
カメレオンの舌を模した両肩の装甲の突起。
左太ももに装備されている召喚機。
カードデッキに刻まれているカメレオンのエンブレム。
灰色のカメレオンを模したそのライダーは、同じく灰色のボディを持ったカメレオン型モンスターをすぐ傍に付き従えながら、呆れた様子でタイガの様子を眺めていた。
「話には聞いてたけど、困った問題児ね。あの緑の奴はともかく、霧島美穂はまだ倒されちゃ困るのに」
『シュルルルルル……』
「まぁ良いわ。2人共、私が手を出す前に上手く逃げてくれたみたいだし。私達も帰りましょっと」
そのライダーは未だ雄叫びを上げているタイガには目も暮れず、その場から跳躍してどこかに去って行く。それと共にカメレオン型モンスターも全身を透明化させ、その場から姿を消すのだった。
場所は変わり、八神家では……
「改めて名乗るとしようかの。山岡吉兵じゃ、これからよろしく頼むのぉ」
「手塚海之です。こちらこそ、よろしくお願いします」
ヴィヴィオ達が異世界旅行に出かけて行った後、手塚は八神家を訪れ、そこに居候させて貰っているという山岡に会いに来ていた。向かい合っているソファから立ち上がり、手塚と山岡は握手を交わしながら改めて自己紹介を終えており、そこにシグナムとヴィータも立ち会っているところだ。
「しっかし驚いたなぁ。まさかこんなおっちゃんまでライダーやってるなんて」
「ヴィータ、失礼だぞ」
「あぁ、構わんよ。聞いた話では、儂よりもヴィータちゃんの方がよっぽど年上のようじゃしの」
「お? 良いねおっちゃん、アタシ等の事よくわかってんじゃん」
「その代わり、儂より年上なんじゃ。こんな老いぼれの世間話に付き合って貰えるだけでも充分じゃよ」
「うげっ。そ、それは勘弁して欲しいなぁ~……おっちゃんの自慢話なげーんだもん」
「ほっほっほ。孫の事なら儂はいくらでも語れるわい」
「……苦労しているようだなヴィータ」
どうやら八神家に来てからというもの、山岡の孫についての自慢話に(実質的には)山岡よりも年上であるヴォルケンリッターの面々が付き合わされているようだ。。既に何度か付き合わされているヴィータがゲッソリした表情を浮かべているが、山岡はまだまだ楽しく語る気満々でいる様子。手塚にできるのは精々、そんなヴィータに同情する事くらいだった。
「まぁまぁ。自慢話もええけど、まずはお昼ご飯でも食べながらゆっくり話すとしようやない」
「お昼の素麺、出来上がったぜ~」
「いっぱい食べるです~♪」
そんな時、この日の昼食である素麺の用意ができたのか、はやて・シャマル・アギト・リインの4人が手塚達を呼びにやって来た。
「手塚さんもどう? せっかく来てくれたんだし、一緒に食べて行ったら良いと思うわ」
「そうだな。せっかくだ、遠慮なく頂こう」
「まさかこちらの世界でも素麺を食べられるとは、ミッドの文化は面白いのう……む? そういえばザフィーラ殿は今どこにおるんじゃ?」
「あぁ、ザフィーラなら今日もあの子の指導中だよ」
「ふむ、あの子とな?」
山岡にとって聞き覚えのない人物が出て来た。事情を知らない山岡の為に、シャマルとヴィータが詳しく説明する。
「実は私達、近所の子供達を集めて格闘技の指導をしてるんです」
「名付けて八神道場! つってもまぁ、あくまで子供向けの教室だから、流石に都市大会レベルの選手指導は難しいけど」
「ほうほう……して、先程言ったあの子とは?」
「八神道場の秘蔵っ子です! ここ最近すごく伸びて来ているんですよね。今日もザフィーラが指導してるはずやけど……」
そんな時だった。玄関が開く音が鳴り、人間態のザフィーラが帰宅して来た。その後ろにはザフィーラに連れられている少女が1人。
「主はやて、ただいま帰りました」
「お、噂をすれば! おかえりザフィーラ。それから……」
「八神家の皆さん、こんにちは!」
「……あぁ、なるほど。八神達が言っていたのはミウラちゃんの事か」
ザフィーラに連れられて来た薄いピンク色の髪が特徴的な少女―――“ミウラ・リナルディ”がビシッと敬礼のポーズを取りながら挨拶する。八神道場について既に知っていた手塚は、はやてが言った秘蔵っ子の正体がミウラである事に気付いた。
「ってあれ、お客さん!? こんにちは手塚さん……と、そちらの方は……?」
「あぁ、こんにちはミウラちゃん」
「ほぉ、可愛らしい子じゃな。初めましてお嬢さん。儂は山岡吉兵という者じゃ。よろしくのぉ」
「あ、え、えっと、ミ、ミ、ミ、ミウラ・リナルディと申します! ここここちらこそ、よ、よろしくお願いしままま……!」
「ミウラ、初対面だからと言って緊張のし過ぎだ」
「ほっほ、構わんよ。礼儀正しいのは良い事じゃ」
初対面の相手には緊張しやすいのか、ガチガチに震えながら自己紹介するミウラ。その様子にシグナムが呆れた様子で溜め息をつき、山岡はむしろ微笑ましい目を向けていた。
「それじゃあミウラ。せっかくやし、一緒に素麺でも食べよっか~」
「え、良いんですか? 私なんかが」
「良いの良いの。皆一緒の方が食事も楽しくなるでしょ?」
「確かにその通りじゃな。お前さん、格闘技をしとるらしいの? 後でどんなトレーニングをやっておるのか、見物させて貰っても良いかの?」
「あ……はい! それじゃあ、お言葉に甘えて!」
八神家の面々から昼食に誘われ、最初は初対面の相手に緊張していたミウラもにこやかな笑顔を浮かべ、一緒に昼食を楽しむ事になった。そして昼食を食べ終えた後、ザフィーラによるミウラの指導を見物させて貰った山岡だった……が、ミウラが稽古用のサンドバッグをキックの一撃で蹴り破り、それを見て驚愕させられる事になったのはまた別の話である。
(……そういえば)
手塚は通信端末を取り出し、ある人物に送ったメールの返信が来ていないかどうかを確かめる。今もまだ、その返信は返って来ていないようだった。
(あれから、夏希の反応がない……バイトで忙しいのか、それとも……)
『吾郎ちゃん』
あの人は言った。
『俺……やっぱり浅倉とはちゃんと決着つけてやんなきゃいけないと思うのよ』
あの人は、
『でも先生……今は体が……』
『勝ち負けの問題じゃないよ。奴がライダーになった事には多少なりとも責任がある訳だし……デッキ、出してくれる?』
病気が悪化しているはずなのに。
それでもあの人は、決着をつけに行かなければならないと言った。
『先生……やっぱり無理じゃないですか……?』
『行かせてよ吾郎ちゃん……このままじゃ俺……何か1つ染みを残していく感じで、嫌なんだよね……』
あの人はそう言った。
でも、俺にはわかっていた。
『それにしても……今日は
この日は
俺は知っていた。
『吾郎ちゃんの顔が……見えないよ』
先生はもう……先が長くない事を。
先生は結局……その望みを果たす事ができなかった。
だから俺は決めた。
先生に代わって……俺が、先生の意志を継ぐ事を。
それなのに……
≪FINAL VENT≫
『くっ……!!』
≪UNITE VENT≫
『クハハハハハ……!!』
俺は
ライダーとして戦うのはこれが初めてだった。
だから俺は……ライダーの戦い方がどういう物なのかを、まだよく知らなかった。
『グギャオォォォォォンッ!!』
『!? ぐぁっ……!!』
『クハハハハハ!!』
そのせいで俺は、背後からのモンスターの奇襲に気付けなかった。
不意を突かれたせいで……
≪FINAL VENT≫
『ハァッ!!!』
『ッ……ぐぉあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!?』
俺は
先生が果たせなかった事を、俺も果たす事ができなかった。
『北岡……』
『……北岡ァッ!!』
無駄だ。
お前が何度名前を呼んだって、先生はもういない。
先生はもう……
『ッ……お前……』
その事には、
でも、そんな事は関係ない。
俺は最期まであの人に……先生に、忠義を尽くすだけ。
『……アァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!!!』
先生……
『先生……また……美味いもん買って帰ります……ッ……』
死ねばまた、先生に会えるのだろうか。
死に行く間も、淡い希望を抱いている自分がいた。
そんな俺を待っていたのは、魔法の文化が発達した別の世界と……
『大丈夫ですの!? しっかりして下さいまし!!』
こんな俺の事を拾ってくれた、1人の若いお嬢様だった。
「―――ッ!?」
そこで、吾郎は目を覚ました。ガバッと起き上がった彼の視界に映ったのは、彼の知らない天井に彼の知らない部屋。自分の体には毛布がかけられており、上半身には白い包帯が巻かれていた。よく見ると、部屋のテーブルには救急箱が置かれており、その周りに傷薬の容器や包帯などが置かれている。
「……ここは……?」
確かあの時、自分は虎のライダーに殺されかけたはず。何故今もこうして生きているのか。疑問が尽きない吾郎だったが、そこに部屋のドアを開けて入って来る人物がいた。
「目が覚めた?」
「……!」
それは夏希だった。彼女が持っているお盆には水の入ったコップと、切ったリンゴが盛りつけられた皿が乗せられており、彼女は吾郎がいるソファの前にあるテーブルにお盆を置いてからコップを手に取る。
「ここがどこかって顔してるから言うよ。ここはアタシが今住んでる家。正確には、居候させて貰ってる家って事になるけど」
「……君は」
差し出されたコップを受け取った吾郎は、夏希の顔をジッと見据えた。その顔は、吾郎にとっても見覚えのある物であり、同時に吾郎は確信した。彼女がファムである事。彼女が自分をここまで運んでくれた事。そして……彼女があれだけ北岡秀一を恨んでいた理由を。
「……君が、俺を助けてくれたのか」
「勘違いするなよ。別にアンタの為じゃない……ただ、目の前で誰かに死なれると気分が悪くなるだけ。それに」
夏希は皿に盛りつけられているリンゴを1つ手に取り、それを齧りながら吾郎の隣に座る。
「アンタには色々聞きたい事がある。だから、あそこで死なれるとアタシが困るんだよ。アンタがこれを持っている理由を聞けなくなるから」
「!」
夏希から吾郎に、ゾルダのカードデッキが投げ渡される。その際、吾郎は夏希の表情を見て気付いた。彼女は今もなお、こちらを強く睨むような目で見ている事に。
「アンタ、北岡のところにいた秘書だよな?」
「……はい」
「そんなアンタが、どうしてゾルダに変身してる? 北岡の奴はどうしたんだよ?」
「……先生は」
コップの水を飲んだ吾郎はテーブルにコップを置き、ゾルダのカードデッキを両手で握り締めながら夏希に告げた。
「先生は、亡くなりました……患っていた病気が悪化して、それで……」
「……は?」
それを聞いて、夏希は目を見開いて吾郎の方に目を向けた。
北岡が死んだ?
北岡が病気を患っていた?
衝撃的な情報が入って来た夏希は、脳内でその情報処理が追い付かず、思わず吾郎の両肩に掴みかかった。
「ち……ちょっと待てよ!! 北岡が病気って、どういう事だよそれ!! 初耳だよそんなの!!」
「……先生はライダーになってからも、ずっと病気と戦ってました。それでも完全には治らなくて、結局は……」
「ッ……嘘だろ……?」
あの北岡が、まさかそんな状態だったなんて。夏希は吾郎の両肩から手を離してからも、信じられないといった表情で首を何度も振り続ける。
「えっと、ゾルダが何度もアタシの事を助けて、北岡だと思ってたのが実は北岡じゃなくて、北岡がとっくに死んでいて、しかもその原因が悪化した病気で……あぁ~もぉ~頭がグッチャになって来た!!」
衝撃的なイベントや情報が続き過ぎるあまり、もはや夏希の頭の中は情報の整理ができずグチャグチャに混乱してしまっていた。訳がわからず苛立って頭を掻く事しかできない夏希に対し、吾郎は静かに問いかけた。
「……今も、先生の事は恨んでるんすか?」
「は? 当たり前だろ、アイツのせいで浅倉が死刑にならなかったんだぞ! 奴がアタシのお姉ちゃんを殺したってのに……!」
「だとしたら」
今、夏希は混乱していて上手く理解ができていない。だから吾郎は一から説明してあげる事にした。彼女がきちんと把握できるように。そして……自分自身が、己の罪と正面から向き合う為に。
「君が恨むべきは先生じゃなくて……俺の方です」
「俺って……ど、どういう事だよ?」
「……先生が浅倉を弁護したのも。先生がライダーになったのも。先生の病気が治らなくなったのも」
「全部、俺が昔巻き込まれた事件から繋がってるんです」
ミラーワールド、とある地下通路……
『『『『『ギギギギギギ……』』』』』
『グギ、ガガガ……!』
電灯がチカチカと点滅する中、無数のトルパネラが通路内を進行しようとしていた。その後方からは大型の盾を装備した武装個体―――“トルパネラ・シールド”が、何かを守ろうとしているかのように周囲を見渡しながら移動している。そして……
シャラァァァァン……!
『フフフ……』
錫杖の輪の音が鳴り響く。トルパネラ・シールドに守られながら歩行している
『フッフフフフフフフフ……!』
『『『『『ギギッ……ギシャアァァァァァァッ!!!』』』』』
トルパネラの大群を率いる女王―――“トルパネラ・クイーン”は不気味な笑い声をあげながら、錫杖を地面に力強く突き立てる。その鳴り響く音を合図に、トルパネラの大群が一斉に進行速度を上げ、地下通路を駆け抜けて行くのだった……
To be continued……
リリカル龍騎ViVid!
吾郎「先生の意志を継ぐ為に、俺はデッキを手に取ったんです……」
椎名「逃がさないぞ悪党め……!!」
手塚「何だこれは!?」
イヴ「数が多過ぎる……ッ!!」
夏希「ちゃんと前に進まないと、また皆に怒られちゃうからさ……!」
戦わなければ生き残れない!