今回はカルナージまで異世界旅行に向かったヴィヴィオ達の視点からお送りします。その為、今回は戦闘シーンはありません。
あと活動報告にて現在、作者に向けての質問受付タイムを実施中です。もし作品の設定、作者に聞きたい質問などあれば、ぜひ活動報告の方までどうぞ。
それでは第21話、ご覧下さいませ。
追記:上述の質問受付タイムと同時進行の形で、またしてもトチ狂った企画を開始しちゃいました。詳しくは活動報告にて。
無人世界カルナージ。
今日この日。このカルナージに存在する宿泊施設―――ホテル・アルピーノでは、ヴィヴィオを始めとする一行が、異世界旅行(&訓練合宿)の為にやって来ていた。
これから彼女達にとって、楽しい4日間が始まろうとしている……
「「ホテル・アルピーノへようこそ~♪」」
「「「「「お邪魔しま~す!」」」」」
ホテル・アルピーノに到着した御一行様をお出迎えしたのは、このホテル・アルピーノを経営しているアルピーノ親子の2人。馴染みが深いメンバーも、今回が初対面であるメンバーも皆、笑顔で話し合っていた。
「ルーちゃん!」
「ルールー、久しぶり~!」
「ヴィヴィオとコロナこそ。リオとは直接会うのは初めてだよね」
「今まではモニターでしか会ってないしね」
「うん、モニターで見るより可愛い♪」
「ほんと~?」
ヴィヴィオ達仲良し3人組の中では、リオだけがルーテシアと直接会うのが初めてのようだ。ルーテシアに可愛いと褒められながら頭を撫でられ、リオは少し照れながらも嬉しそうに笑う。それから今回はもう1人、モニター越しでも出会った事のない、完全な初対面の人物も存在していた。
「あ、ルールー! こっちがメールでも話した……」
「は、初めまして。アインハルト・ストラトスです」
「うん、初めまして。ルーテシア・アルピーノです。ここの住人で、ヴィヴィオの友達の14歳。よろしくね」
完全な初対面であるアインハルトが緊張した様子で挨拶するのに対し、ルーテシアは明るい表情かつ落ち着いた口調で挨拶を返す。そこは年長者だからか、2人の落ち着き具合は全く違っていた。
(この人が、ヴィヴィオさんやノーヴェさんが言っていた……)
カルナージに到着する前、アインハルトはルーテシアの事についてヴィヴィオ達から話を聞いていた。ルーテシアは歴史の分野にも詳しいらしく、彼女なら古代ベルカ諸王時代の事も色々知っているかもしれない。その点でもアインハルトは彼女に強い興味を示していた。
「あれ、エリオとキャロと、あと雄一さんは?」
「あぁ、雄一君達は今……」
一方、スバルはこの場に数名ほど人数が足りない事に気付いていた。スバルが名前を挙げた人物が3人、今はどこで何をしているのか……をメガーヌが説明しようとしたその時、ちょうどそこに2人の人物がやって来た。
「あ、皆さん!」
「お疲れ様です!」
「キュクル~!」
「あ! エリオ、キャロ、それにフリードも♪」
六課時代に比べ、だいぶ身長が伸びている赤髪の少年―――エリオ・モンディアル。六課時代から身長はあまり変わっていないものの、明るさも変わっていないピンク髪の少女―――キャロ・ル・ルシエと、その頭上で飛んでいる小さな白い飛竜―――フリードリヒ。ちょうど良いタイミングで拾った薪を運んで来た2人と1匹に対面した一同、特にフェイトは嬉しそうに笑顔を浮かべた。
「わぁお、エリオったらまた身長伸びてる!?」
「そ、そうですか?」
「えぇ~! 私もちょっとは伸びましたよ!? 1.5cmくらいは!」
身長が伸びた事をスバルに気付かれたエリオが照れ臭そうにしている中、キャロは自分だって身長は伸びてるんだと頑張って言い放つ。悲しいかな、エリオに比べてキャロは体の成長に恵まれなかったようだ。
「アインハルト、紹介するね。この2人は私の家族」
「エリオ・モンディアルです」
「キャロ・ル・ルシエです。こっちはパートナーのフリードリヒ」
「キュクゥ~♪」
「あ、1人チビッ子がいるけど3人で同い年ね」
「何ですと!? 1.5cmも伸びたのに!?」
フェイトの紹介でエリオとキャロが挨拶し、フリードリヒもアインハルトの顔の近くまで移動してから挨拶するかのように鳴き声を上げる。そしてここでもルーテシアから身長の事でキャロが弄られ、それにキャロが突っ込みを入れる。エリオが苦笑いしている事から、このやり取りは既に恒例のようだ。
そんな時だった。
シュタッ
「―――ッ!?」
草木の中を掻き分け、ピンク色のマフラーを巻いた2足歩行型の黒い召喚獣が一同の前に姿を現した。突然の出現にアインハルトが素早く身構えたが、ヴィヴィオとコロナが慌てて彼女を制止する。
「あぁ、ごめんなさいアインハルトさん! 大丈夫です、その子は敵じゃありません!」
「へ……?」
「えっと、あの子はルーちゃんの家族で……」
「私の召喚獣で、ガリューって言うの。この子の事もよろしくね」
「あ、し、失礼しました!」
アインハルトの前に現れた召喚獣―――ガリューはルーテシアの紹介と共にペコリとお辞儀をする。よく見るとガリューが背負っている大きな籠には、近くの川で捕って来たと思われる数匹の魚がピチピチと動いており、敵ではないとわかったアインハルトが慌てて謝罪する。するとそこに、再びガサガサと草木を掻き分ける音が聞こえて来た。
「あぁコラ、駄目じゃないかガリュー! お客さんを驚かせちゃ!」
「!」
草木を掻き分けて来たのは、ガリューと同じく背中に大きな籠を背負った1人の青年だった。青年はいくつもの木の実が入った籠を降ろしながらガリューを叱った後、すぐにアインハルト達に謝罪の言葉を述べた。
「あぁ、ごめんね君達。いきなり出て来てびっくりしちゃったかな」
「え? あ、あぁいえ。私は大丈夫、です……」
「あ、雄一さん!」
「お久しぶりです!」
アインハルト達に謝罪した青年―――斉藤雄一の姿を見たヴィヴィオとコロナが笑顔で駆け寄り、ヴィヴィオは両手で彼の右手を握りブンブン振りながら握手する。ヴィヴィオとコロナの存在に気付いた雄一もまた、その元気な握手に笑顔で応じている中で、雄一の事を知らないアインハルトとリオはキョトンとしていた。
「久しぶりだねヴィヴィオちゃん、コロナちゃん。元気にしてた?」
「はい、それはもう飛びっきりに!」
「雄一さんこそ、元気そうで何よりです!」
「え、えっと……あなたは……?」
「アインハルトはもちろんの事、リオも話をするのは初めてだったよね。あの人もここの住人で、私にとっての優しいお兄ちゃん!」
「へぇ~……あ、初めまして! ヴィヴィオとコロナの友達、リオ・ウェズリーです!」
「は、初めまして、アインハルト・ストラトスです。よろしくお願いします……!」
「俺は斉藤雄一。よろしくね、リオちゃん、アインハルトちゃん」
リオの明るく元気な挨拶、アインハルトの緊張しつつも丁寧な挨拶を見て、雄一もにこやかな笑顔で挨拶を返す。その際、ヴィヴィオは雄一が降ろした籠の中に入っているたくさんの木の実を見て目を輝かせた。
「うわぁ、木の実がたくさん! これ全部雄一さんが?」
「うん、そこの近くの森で採って来たんだ。ここら辺は美味しい木の実がたくさん手に入るからね。今日も食後のデザートに使う予定だよ」
「本当!? やったー! 雄一さんの作るデザート凄く楽しみ!」
雄一の作るデザートが食べられるとわかり、ヴィヴィオ達は楽しそうに大はしゃぎし、雄一もはしゃぐヴィヴィオ達の姿を見て楽しそうに笑っている。そんな彼の笑顔をジッと眺めていたアインハルトは、彼の見せる笑顔から優しい雰囲気を感じ取っていた。
(この優しい感じ……どこかで……)
その優しい雰囲気を、アインハルトはつい最近、どこかで感じた事があった。雄一の表情を見ながらアインハルトがそう感じていたのを他所に、大人組のメンバー達はこの日の予定をメガーヌと共に確認し合っていた。
「さて、お昼前に大人の皆はトレーニングでしょ? 子供達はどこに遊びに行く?」
「まぁ、まずはやっぱり川遊びかなぁって。お嬢も来るだろ?」
「うん、もちろん!」
「で、アインハルトもこっち来なよ」
「は、はい」
この後、一同はそれぞれ分かれて行動する事になり、大人組はアルピーノ家が用意したアスレチック施設でトレーニングを、子供組と保護者役のノーヴェは近くの川で水遊びをする形となった。アインハルトも水遊びの方に参加する事となったのだが、大人組と同じトレーニングに混ざりたいと思っていたアインハルトは、少しだけ複雑そうな表情を浮かべながらも大人しくそれに了承していた。
「それじゃ、大人組は着替えてアスレチック前に集合しよう!」
「「「「はい!」」」」
「こっちも水着に着替えて、ロッジ裏に集合な!」
「「「「は~い!」」」」
「み、水着……ッ!?」
そういう訳で、なのは達大人組は着替え終えてからアスレチック施設に移動し、ヴィヴィオ達は水着に着替えてロッジ前に集合した後、川に移動する事となった。ちなみに川で水遊びをする事になると思っていなかったアインハルトはと言うと、彼女が水着を持って来ていない事を想定していたノーヴェとルーテシアの計らいにより、ルーテシアの水着を借りる形で解決したのだった。
「私いっちば~ん!」
「あ、リオずっる~い!」
透き通った水が流れる大きな川。魚達も元気に泳ぎ回っている中、我先にと水着姿のヴィヴィオ達が飛び込み、楽しく水遊びを開始した。彼女達が水遊びではしゃぐたびに、近くを泳いでいた魚達がUターンして素早く泳いで逃げて行く。
「アインハルトさんも来て下さーい! 楽しいですよー!」
「ほれ、呼ばれてるぜ」
「うぅ……」
同じく水着に着替え終えたアインハルトはと言うと、着替えた黒い水着の上からパーカーを着る事で水着姿を隠しており、ヴィヴィオに名前を呼ばれてからも恥ずかしそうにしていた。元々訓練合宿のつもりで同行する事を決めたアインハルトは、こうして水遊びをする事に対してはあまり乗り気ではなかった。
「あ、あの、ノーヴェさん。できれば私は練習を……」
「まぁまぁ。練習前の準備運動だと思って遊んでやってくれよ。それに、あのチビ達の水遊びは結構ハードだぜ」
「……?」
「アインハルトさーん、早く早くー!」
ヒソヒソと小声でノーヴェに頼むアインハルトだったが、ノーヴェからは「せっかくだから」という理由で呆気なく却下されてしまった。その際、ノーヴェが告げた言葉を聞いたアインハルトは少しだけキョトンとした表情を浮かべた後、ヴィヴィオ達が呼んでいるのもあり、諦めてパーカーを脱いで川まで移動する事にした。
「じゃあ、今から向こうの川岸まで往復、皆で競争しよう!」
「「「おーっ!」」」
「お、おー……」
コロナの提案で、子供組の5人は今から川岸まで泳いでから往復する速さで競争する事となった。ヴィヴィオ、リオ、ルーテシアが元気な声で賛成し、アインハルトも小声で掛け声を上げてから、5人は同じタイミングでスタートし、一斉に泳ぎ始める。
(……あれ?)
その時、泳ぎながらアインハルトは気付いた。
(皆、速い……!?)
そう、4人の泳ぐスピードがアインハルトの想像していた以上に速く、気付いたら4人とアインハルトの間で大きな差が出来てしまっていたのだ。それに驚いたアインハルトは必死に泳ぐスピードを上げようとするも、それでもなかなか差が縮まらず、結果としてこの競争はアインハルトがビリとなってしまった。
(なんと言うか……皆さん本当に元気いっぱい……というか)
「ほれ、ヴィヴィオにパース!」
「よいしょ! リオ、行くよー!」
「OK! コロナに続けー!」
「おっとと! それ~!」
(……その、元気過ぎるような……?)
その後もビーチボールを使ったボール遊び、水中に潜ってどれだけ呼吸を我慢できるかの勝負など、様々な遊びを楽しむ子供組だったが、アインハルトは途中から段々疲れを感じながらも、他の4人が未だに元気良く遊んでいる姿を見て、彼女達の体力の多さに少なからず驚かされていた。
「はぁ、はぁ……」
「やっぱり、水の中はあんまり経験ないか?」
それからしばらくして、アインハルトは途中で岸に上がって休憩し、近くの岩場にノーヴェと共に座り込んでいた。2人が話をしながら眺めている先では、今もまだヴィヴィオ達が元気にボール遊びをしている。
「体力には、自信があった方なのですが……」
「いやぁ、大したもんだと思うぜ。アタシも救助隊の訓練の時に知ったんだけど、水中で瞬発力を出すには、また違った力の運用がいるんだよな」
水中での運動は地上での運動に比べて、同じ運動でも何倍も大きい抵抗が肉体にかかって来る為、水中では地上よりも人体の運動量が多くなり、それにより体力の消費がかなり早くなる。その為、水中での運動に慣れていないアインハルトは他の4人よりも疲れが早く溜まってしまったのだ。
「それじゃあ、ヴィヴィオさん達は……」
「なんだかんだで週2くらいか? 市民プールとかで遊びながらもトレーニングしてるからな。柔らかくて持久力のある筋肉が自然と出来ていってるんだよ」
(それであんな元気いっぱいに……)
水遊びをするかしないかで、こんなにも違いが出て来るものなのか。ヴィヴィオ達が元気いっぱいに遊び続けられる体力がどこから来ているのか、その理由がわかったアインハルトは納得した様子だった。
「どうだい。ちょっと面白い経験だろ? 何か練習の役に立つ事があると更に良いぜ」
「……はい」
最初は「たかが水遊び」という意識があった。しかしこんな形で効果が出て来るものだと知れた以上、アインハルトは先程までとは全く違う認識を抱き始めていた。その様子に気付いたノーヴェはニカッと笑いながら、水遊び中のヴィヴィオ達に声をかける事にした。
「んじゃ、せっかくだから面白いもんを見せてやろう……ヴィヴィオ、リオ、コロナ! ちょっと“水斬り”やってみせてくれよ!」
「「「はーい!」」」
「水斬り……?」
一体何だろうかと、アインハルトの興味がそれをやろうとしているヴィヴィオ達の方へと引かれていた。ノーヴェに声をかけられたヴィヴィオ達3人は、水中で静かに構えを取り始める。
「簡単に言えば、ちょっとしたお遊びさ。おまけで打撃のチェックもできるんだけどな」
ノーヴェがアインハルトにそう告げる中、まずはコロナが動き出した。右腕を水面に浮かせるようにゆっくり下げていた彼女は、数秒ほどその場で体を制止させた後、右腕の拳を素早く正面に突き出した。
「……えいっ!!」
突き出された拳の衝撃と共に、前方の水面が大きく波打ち、まるで
「やぁ!!」
リオの突き出した拳が水面を大きく揺らし、コロナの物よりも水柱が大きく斬り裂かれる。コロナ、リオと続いて、今度はヴィヴィオが拳を握り締める。
「行きます……はぁっ!!」
ズシャアァンッ!!
「ッ……!!」
ヴィヴィオが突き出した拳は、リオやコロナよりも更に大きな水柱を上げ、水面をより前方に大きく斬り裂いていた。水飛沫が宙を舞って水面に落ちていく中、アインハルトは3人が見せた光景を前にただ圧倒されるばかりだった。
「アインハルトも格闘技強いんでしょ? 試しにやってみる?」
「……はい」
見ている内に自分もやってみたいと思い始めたのか、アインハルトは首にかけていたタオルを岩場に置き、再び川の中に入って静かに構えを取り始める。ヴィヴィオ達がワクワクした様子で見ている中、アインハルトは川の底に立っている両足を大きく開き、右腕を後ろにゆっくり下げていく。
(水中では大きな踏み込みは使えない。抵抗の少ない回転の力で、できるだけ柔らかく……)
「―――はっ!!」
ドッパァァァァァンッ!!
「「「きゃあー♪」」」
「……あれ?」
アインハルトが素早く拳を突き出すと共に、水面から大きく上がる水柱。上から降って来る水飛沫に興奮しているヴィヴィオ達だったが、アインハルトは水が前方に向かってあまり斬れなかった事に違和感を感じていた。
「ん~、お前のはちょいと初速が速過ぎるのかもな」
そんな時、パーカーを脱いだノーヴェも川の中に入り、アインハルトの隣まで来てからやり方を教え始める。
「初めはゆるっと脱力して、途中はゆっくり……で、インパクトに向けて鋭く加速。これを素早く、かつパワーを入れてやると―――」
シュパァンッ!!!
「―――こうなる」
最初はゆっくり動き、力を入れるべきタイミングで素早く蹴りを放ったノーヴェ。すると彼女が放った蹴りはヴィヴィオ達の物よりも更に大きく水を裂き、水柱も高く上がっていた。それを見ながら聞いていたアインハルトも、ノーヴェと同じような手順で構えを取り始める。
(構えは脱力で、途中はゆっくり。インパクトの瞬間にだけ……撃ち抜く!!)
ズバシュウゥンッ!!!
「「「おぉーっ!」」」
そしてノーヴェの教え通りにやった結果、今度は先程よりも斬られた水柱が前に少し進んでいた。ヴィヴィオ達が拍手を送る中、確かな手応えを感じたアインハルトは拳をギュッパギュッパと握り締める。
「も、もう少しだけやってみても良いですか?」
「どうぞどうぞ!」
「どんどん来ちゃって下さい!」
やっている内に段々やり応えを感じ始めていたアインハルトは、その後もヴィヴィオ達と共に水斬りの練習を続ける事にした。アインハルトが水を大きく斬り裂くたびに、ヴィヴィオ達が楽しそうにはしゃぎ回る。その様子を川岸から眺めていたノーヴェとルーテシアは笑顔で見守り続けていたのだった。
それから数十分後……
「皆~、お昼の時間よ~!」
「「「わーい♪」」」
昼食の時間になった為、一同は再びロッジに集まり、昼食の準備を行っていた。水着からラフな私服に着替え終えた子供組を待っていたのは、メガーヌと雄一が作った手料理と、先にトレーニングを終えて戻って来ていた大人組が焼いている美味しそうなバーベキューだった。肉や野菜の焼ける匂い、グツグツ煮込まれた温かいスープの匂いが漂う中、すっかりお腹が空いていた子供組は涎を垂らすほどだった。
「あらあら、ヴィヴィオちゃんにアインハルトちゃんも大丈夫?」
「い、いえ、その……」
「だ、大丈夫でぇ~す、あはははは……!」
「あぁ~……コイツ等、2人で水斬りの練習ずーっとやってたんですよ。自分の体力も考えずに」
ただし子供組は子供組でも、現時点でヴィヴィオとアインハルトは例外だったりする。水遊びの中で水斬りを何度も練習し続けた結果、そのエネルギー消費量は半端ではなく、2人は自分の足で席まで移動するのが精一杯なくらい体中がガクガクの状態だった。
「あ、あははは……大丈夫だよ。水遊びをした後も体を冷やさないよう、かつ疲れが取れる温かいご飯を作ったからさ。遠慮しないで存分に食べてね」
「「はい、ありがとうございます!」」
「「あ、ありがとうございます……!」」
雄一はそんなヴィヴィオとアインハルトに苦笑しつつも、子供組の元まで温かいスープが入った皿、美味しく焼けたバーベキューが乗った皿を運び終え、それらを見たリオとコロナは目を輝かせ、ヴィヴィオとアインハルトも疲れでガクガクな状態ながらも美味しそうな匂いを前にいくらか元気を取り戻しつつあった。そして料理や食器などが一通り並べ終わった事で、一同は全員席に座っていく。
「それじゃあ、今日の良き日に感謝を込めて……」
「「「「「頂きます!」」」」」
そうして始まった昼食タイム。水遊びで疲れた子供組も、トレーニングで疲れた大人組も、目の前に並べられている料理を美味しそうに食べ始め、その全員があまりの美味しさに舌鼓を打った。
「美味し~い♪」
「本当、良いですねこの味!」
「ふふん♪ 私とお兄ちゃんで作った自慢のソースです!」
「お代わりもたくさんありますから。遠慮しないで、どんどん食べていって下さいね」
「「「スープお代わり~!」」」
「「「早ッ!?」」」
「わ、私もお代わりを……!」
「はいは~い、1人ずつ順番にね~♪」
子供組の食べ終わる早さに大人組が驚き、雄一とメガーヌが順番にお代わりのスープを渡していく。一同が昼食を味わっているロッジのすぐ近くではガリューがフリードリヒに小さな木の実を食べさせていたりと、それぞれが楽しい食事の時間を過ごしていったのだった。
「それじゃあ、片付け終えて一休みしたら、大人チームは陸戦場に集合ね~」
「「「「はい!」」」」
そして昼食の時間が終わり、一同は食べ終えた皿や食器を洗い場まで持って行き、片付けを始めていた。美味しい昼食を食べたからか、この時点でヴィヴィオとアインハルトもある程度は体力が回復しており、皆で洗い場まで持って行った皿や食器を順番に洗って行っている。
「じゃあ私は洗い終えた分を持っていきますんで、そこに置かれている分は任せても良いですか?」
「はい。お任せ下さい」
ヴィヴィオが洗い終えた皿を食器棚の方まで運んで行き、アインハルトは引き続き洗い場で食器を洗っていく。スポンジを洗剤で泡立てながら、彼女はヴィヴィオと話をしていた時の会話の内容を思い出していた。
(ヴィヴィオさんには、指導してくれる人がいる……)
ヴィヴィオから聞いた話では、ヴィヴィオも最初はスバルから格闘の基礎だけを教わった後、独学で格闘技の練習をしていた。しかし練習で無茶な動きをしているところを見かけたノーヴェが声をかけ、それ以降はノーヴェが予定を空けては時間を作り、ヴィヴィオだけでなく、リオやコロナに対しても格闘技の様々な指導をしてくれるようになったという。
(……少し、羨ましい)
自分はこれまで
(
一緒に歩けたら、どれだけ良いだろうか。ヴィヴィオ達と関わっていく内に、次第にそう思うようになっていったアインハルトは洗い終えた食器を重ねて運ぼうとする……が、そこはアインハルトの真面目過ぎる性分が出て来たのだろうか。運ぼうとしている皿の量は、子供が1人で運ぶには少し量が多く、アインハルトはバランスを崩さないようゆっくり運ぼうとする。
「っとと……!」
しかしその途中、危うくバランスが崩れそうになりアインハルトが慌て出す。そんな時、落ちそうになった皿を両手で支えてくれる人物が現れた。
「大丈夫? アインハルトちゃん」
「あ……」
それは洗った調理器具を片付け終えた雄一だった。アインハルトが1人で多くの皿を運ぼうとしていたのをたまたま見かけた彼は、積み重なった皿で前が見えにくくなっていた彼女の為に、何枚かの皿を手に取ってから一緒に食器棚まで運び始めた。
「一度に無理して運ぼうとすると大変だからね。半分は俺が持つよ」
「す、すみません。苦労をおかけします」
「気にしないで。1人で大変そうな時は、遠慮しないで周りの人達にも頼ると良いよ。今ここには君の友達や、大人の人達もたくさんいるからね」
「……ありがとうございます」
そういう訳で、アインハルトは雄一と一緒に、洗い終えた皿を食器棚まで運んで行く事にした。アインハルトは両手で皿を運びながらも、時折チラリと雄一の顔を見上げる。
(この感じ……やっぱりどこかで……)
「ん、どうかした?」
「あ、い、いえ! 何でもありません」
自分に視線が向いている事に気付いた雄一が声をかけ、アインハルトは慌てて首を振って視線を逸らす。そんな彼女の様子に首を傾げた雄一は、クスリと笑みを浮かべてから会話を切り出した。
「どう、アインハルトちゃん? 皆と一緒に楽しめてる?」
「へ? あ……そうですね。皆さんと一緒に、こうして行事を楽しむというのは、悪くない感じがします」
「そっか、良かった。アインハルトちゃんがちゃんと楽しめてるかどうか、ちょっと不安だったからさ」
「不安、ですか……?」
「うん。こう言うと何だけど……アインハルトちゃんって、なんだか表情の変化が少ないように感じてね。あ、気に障っちゃったならごめんね!」
「いえ。自覚はしてますので」
アインハルトは普段から表情の変化が少なく、人前で笑顔を見せるような事がない。それ故、アインハルトが楽しく過ごせているか、何か不満に感じているような事があったりしないかと、雄一はその事が少し不安に感じていたようだ。
「楽しめてるなら良かった。アインハルトちゃんが凄く真面目な子だという事は俺にもわかってたからさ。もしかしたら不満を抱えてるんじゃないかって、心配してたんだ」
「いえ、そのような事は決して。ですが、何故私が真面目な子だと……?」
「だってアインハルトちゃん、今も食器を一度にたくさん運ぼうとしてたでしょ?」
「うっ……」
図星を突かれたアインハルトが言葉に詰まり、申し訳なさそうに俯く。雄一はその様子に苦笑しながらも、食器棚の前に着いてから1枚ずつ皿を食器棚に戻していく。
「わかるよ、君の気持ち。1人でやれると思った事は、つい1人で全部こなそうとしちゃうよね。俺も実際そうだったから」
「雄一さんも、ですか……?」
「うん。ずっと昔、俺も1人で抱え込んじゃってた事があってさ。誰かの力になりたくて、1人で全部背負い込もうとして……それで俺は失敗してしまった。過ちを犯してしまった」
「過ち……?」
それはどういう事なのだろうか。アインハルトが見上げた先にあったのは、かつて自身が体験した出来事を思い浮かべながら、どこか儚さのある表情を浮かべている雄一の姿だった。
「アインハルトちゃんは、格闘技は好きかい?」
「……好きかどうかは、わかりません。成し遂げたい悲願の為に、私はもっと強くなりたい。守るべき物を守り通せるだけ……私は、その為に練習を続けています」
「……そっか。凄く良いと思うよ、その気持ち」
「え?」
「ただ、これも覚えておくと良いかもしれない。1人でやれる事は1人で全部やろうとする、というのも決して悪い事じゃないと思う……でも、1人でやれる事にはどうしても限界がある。そんな時は、誰かに支えて貰うのが一番良いんじゃないかって。俺はそう思ってる」
「誰かに、支えて貰う……」
「……俺は守りたい物を守りたくて戦った。けど、1人で全部背負い込んじゃったせいで、道を踏み外してしまうところだった。そんな俺に、皆が手を差し伸べてくれた。皆が俺を、
「……ッ!?」
雄一の言葉に、アインハルトが目を見開いた。彼がたった今述べた台詞。その台詞の中に、アインハルトは心当たりのある言葉があった。
「雄一さん、それって―――」
「アインハルトさ~ん!」
そんな時、ヴィヴィオのアインハルトを呼ぶ声が聞こえて来た。名前を呼ばれたアインハルトは一瞬そちらに視線を向け、その間に雄一が彼女の持っていた皿を受け取って食器棚に戻していく。
「あ、ほら。ヴィヴィオちゃんが呼んでるよ。残りは俺が片付けるから、アインハルトちゃんはしっかり休んで来ると良い」
「はい、ありがとうございます……あの、雄一さん」
「ん、何だい?」
先程告げていた言葉が、気になって仕方なかった。彼が告げた、
「時間が空いた時で良いんです……今の話、詳しくお聞かせ願えませんか?」
雄一が自身に告げた、その言葉の意味を。
これが、カルナージにおける1日目の出来事。
時刻は変わり、ミッドチルダにおける2日目の夜では……
「ふぅ……相変わらず、ここまでの移動は疲れるねぇ」
クラナガンのとある森林内部を、ウェイブは疲れ切った様子で歩き続けていた。現在この場にいないイヴはどこにいるかと言うと、現在はヴィクター達の屋敷で過ごしている最中だ。ヴィクターの傍には吾郎もいる為、万が一モンスターが現れても大丈夫だと判断したウェイブは1人、ある目的の為にこの森の中までやって来ていた。
「さて。あの子は今どうしてるかねぇ……っと」
拳が風を切る音。それが耳元まで聞こえて来たウェイブは、森林内部の大きな湖の近くに立てられているテントを発見し、そのすぐ近くで格闘技の練習をしている少女の姿を見据えた。
「おぉ、やってるやってる」
ウェイブは食材や調理器具の入ったバッグを背負いながら、格闘技の練習をしている少女の元へ近付いて行く。するとウェイブの姿に気付いた少女もまた、練習を止めて笑顔で手を振り出した。
「ういっす、また来たよっと」
「あ、
ウェイブの事を、その少女は確かにそう呼んでいた。
To be continued……
リリカル龍騎ViVid!
ウェイブ「人の言いつけを破る悪い子は一体、どこのどいつかなぁ~?」
???「いひゃいいひゃい、勘弁なぁ~ッ!」
ギンガ「また、失踪者が1人……」
手塚「何故素性を明かさない?」
ウェイブ「慎重に動きたいのさ、俺は……!」
戦わなければ生き残れない!