リリカル龍騎ライダーズinミッドチルダ   作:ロンギヌス

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どもども、第22話の更新です。

今回はウェイブ・リバーこと仮面ライダーアイズに視点を向けてお送りします。彼はこれまで、ヴィクター達とイヴの眼鏡を買いに行ったり、トルパネラ軍団と戦ったりしている間も、裏では色々やってるんです。

それではどうぞ。






あ、活動報告では現在、質問受付タイムと一緒にトチ狂ったあの企画を再び開催しました。
詳しくは活動報告にて。











戦闘挿入歌:果てなき希望









第22話 学院の怪奇

時刻は午後16時。

 

「へん、ざまぁ見ろバーカ」

 

「素直に渡さねぇからそうなんのさ」

 

とある学院の校舎裏。2人の男子生徒はニヤニヤ笑い、地面に倒れている1人の男子生徒を見下ろしていた。倒れている男子生徒は頬に痣のような物があり、近くにはレンズの罅割れた眼鏡が落ちている。

 

「う、ぅ……返し、てよ……僕の、財布……!」

 

「やなこった。お前の金も俺達が使ってやるよ」

 

「おい、行こうぜ」

 

どうやらこの2人の男子生徒が、眼鏡の男子生徒から財布を奪い取り、それを取り返そうとしてきたところを暴力で叩きのめしたようだ。2人の男子生徒は奪い取った財布を片手でポンポン放りながら去って行き、1人残された眼鏡の男子生徒は悔しそうに涙を流す。

 

「返して……返してくれよぉ……ッ!」

 

眼鏡の男子生徒は泣きじゃくりながら地面に拳を打ちつけ、立ち去ろうとする2人の男子生徒を睨みつける。しかし殴られた顔や腹部が痛むせいで、思うように立ち上がれず距離はどんどん遠ざかっていく。このまま見ている事しかできないのかと、眼鏡の男子生徒が自分の無力さを嘆いて俯いていた……その時。

 

「へ……な、うわぁ!?」

 

「うわ!? 何だこれ……あぁっ!?」

 

「……え?」

 

前方から聞こえて来たのは、何かに驚いているかのような声を上げた2人の男子生徒の声。何事かと思って眼鏡の男子生徒が顔を上げると、そこには立ち去ろうとしていた筈の2人が見当たらなかった。代わりにそこには、奪い取られたばかりの自分の財布だけが落ちていた。

 

「あれ……アイツ等は……?」

 

 

 

 

キィィィィィン……キィィィィィン……

 

 

 

 

『キュキュキュキュキュ……』

 

校舎の窓ガラスに映り込む謎の影。影はそのままどこかに走り去って行くのだが、そんな事など知る由もない眼鏡の男子生徒は、いなくなった2人の姿をキョロキョロ見渡して探す事しかできなかったのだった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ジ~クちゃ~ん? ちょっと聞いても良いかなぁ~?」

 

「……な、何の事やぁ~?」

 

とある森林内部。湖付近の小さなテントの前で、ウェイブは手に持っていたある物を目の前に掲げながら、何故か正座している黒髪の少女を見下ろしていた。長い黒髪をツインテール状に結び、フード付きの黒いジャージを着たその少女は、焦った様子で露骨に視線を逸らしている。

 

「テントの中にこんな物があったんだけどさぁ~……これ、誰が食べたのかなぁ~?」

 

ウェイブが掲げているのは、空になったポップコーンの容器。容器にまだ微妙に食べカスが残っているそれをウェイブが少女の前に突き出した途端、少女は汗をだらだら流しながら下手糞な口笛を吹き始めた。

 

「ヒュ、フヒュ~ヒュ~……ウ、ウチは知らへんよぉ~……?」

 

「本当にぃ~? ジークちゃんがそう言うんなら俺は信じるよぉ? だってジークちゃん、ジャンクフードばっかり食べちゃ駄目だって、お嬢様に厳しく言われてるもんねぇ……その口元に付いている食べカスっぽい物が一体何なのかは、敢えて聞かないであげるとして」

 

「え、嘘!? ちゃんと顔洗った筈……あっ」

 

「じ・は・く・し・た・ね? ジークちゃん」

 

「……あ、あはははは~」

 

ウェイブの引っ掛けに乗せられた少女がゆっくり後ろに下がろうとしたが、その前にウェイブが少女の両肩を掴んで逃がさない。少女が見据えたウェイブの表情は、口元こそ笑っていたものの、目が全く笑っていなかった。

 

「言ったよねぇ~ジークちゃ~ん? 健康に悪いからジャンクフードは控えなさいって~」

 

「むぎゅっ!?」

 

「人の言いつけを破る悪い子は一体、どこのどいつかなぁ~?」

 

「い、いひゃいいひゃい!! 勘弁なぁ~ッ!!」

 

ウェイブが両手で少女の頬を左右から引っ張り、頬を引っ張られた少女が涙目で悲鳴を上げる。言いつけを破った少女にお仕置きした後、ウェイブは呆れた様子で溜め息をついた。

 

「うぅ……酷いやんケンさん(・・・・)……!」

 

「自業自得でしょうがに。全く、お嬢様がこれを知ったら何て言うか……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この黒髪の少女―――“ジークリンデ・エレミア”とウェイブが出会ったのは、今からおよそ3年前の事。

 

『ッ……ここは……』

 

『あ、あのぉ……大丈夫なん? お兄さん……』

 

元いた世界のライダーバトルの中で死亡し、ミッドチルダに転生したウェイブを拾ったのは、たまたま森の中で鍛錬をしていたジークだった。

 

ジークに助けられた彼は、ここが地球ではない事、魔法文化の事、時空管理局の事などについて教えて貰い、今後はどうするべきか考えたのだが……彼にとって一番不可解な事は2つ。

 

1つは、何故死んだ筈の自分がこうしてミッドチルダに転生したのか。

 

そしてもう1つは、何故今も自分の手にカードデッキが存在するのか。

 

それらの理由はウェイブにはわからなかった。しかし理由わからずとも、契約状態(・・・・)のカードデッキが自分の手元に存在する時点で、何となく嫌な予感はしていた。

 

キィィィィィン……キィィィィィン……

 

『ギギギギ……ギシャアッ!!』

 

『!? 危ない!!』

 

予感は的中。事情を話している最中に湖の水面から現れたゼノバイターが、背を向けているジークに襲い掛かろうとした。ウェイブはすかさず立ち上がり、押し飛ばしてでもジークを助けようとした……のだが。

 

『ッ……ハァッ!!!』

 

ドゴオォンッ!!

 

『シャアッ!?』

 

『……へ?』

 

そんな彼の心配は杞憂に終わった。飛び掛かって来たゼノバイターがジークを両手で捕まえようとした瞬間、殺気を感じ取ったジークがすぐさま両手でゼノバイターの右手首を掴み、飛び掛かって来た勢いを利用して近くの岩場に叩きつけたのである。カウンターを喰らうと思っていなかったゼノバイターが短い悲鳴を上げ、ジークを助けようとしていたウェイブは動きがピタリと止まる。

 

『びっくりしたぁ、急にどこから出て来たんこの青いの……!?』

 

『……うっそーん』

 

まさかモンスターの不意打ちを避けるどころか、逆に掴んで投げ飛ばしてしまうとは。ゼノバイターが溜まらずミラーワールドへ逃げて行った後も、ウェイブはジークが見せた戦闘力を前にしばらく唖然とさせられる事となったのが今でも記憶に残っている。

 

その後はジークにミラーワールドの事、ライダーの事、モンスターの事を一通り説明し(ライダーバトルその物については上手くボカしながら)、彼女の紹介でヴィクターと出会ったウェイブは、彼女達のおかげでこの世界で活動する為の資金や自分専用のカメラ等、必要な物を揃える事ができた。その為、ウェイブにとってこの2人は恩人でもある。

 

そう、恩人でもあるのだが……

 

「あぁもう、さてはまたこっそり買ったなジークちゃん。君だってインターミドルの選手なんだから、健康面にもちゃんと気を遣わなきゃ」

 

「ちゃんと食べてるよ~。これはたまたま食べてただけやも~ん」

 

「へぇ? 君の言うたまたまが、これまでに何回あったか教えてやろうか? 回数なら正確に覚えてるよ俺」

 

「うっ……え、遠慮しとくわぁ~」

 

そしてジークもまた、ヴィクターと同じインターミドルチャンピオンシップの選手であり、過去に世界代表戦で優勝経験もあるトップファイターでもある。それ故にモンスターすらも撃退するほどの高い実力の持ち主なのだが、彼女は特定の住所を持たず野宿生活を送っている。聞いた話では、行き倒れになる事もしょっちゅうだという。

 

(あのお嬢様も、よくまぁこんな娘の面倒見れたもんだよ……)

 

ウェイブは恩返しの一環として、ヴィクターからの「ジークの健康面について面倒を見てあげて欲しい」という頼み事を自ら引き受けている。だからこそ、ジークがなけなしの資金で許可なくジャンクフードを食べていた場合はこうして説教してあげているのだが、何度説教してもジークは懲りる様子がない。ヴィクターの気苦労が嫌でも理解できてしまうウェイブであった。

 

「それで? この数日間、モンスターには狙われずに済んだのかい?」

 

「ん~、何度かウチを狙って来おったよ。出て来たところを逆に捕まえて、消えるまでずっと押さえつけてた」

 

「いやおいおい、ライダーでも簡単じゃない事を普通にやってのけちゃう? 流石は『黒のエレミア』だ」

 

ウェイブが告げた『黒のエレミア』という呼び名。それを聞いたジークの表情が暗くなるのを彼は見逃さなかった。

 

「……それはちゃうよ。前にも言うたけど、ウチはそんな凄くはない。ウチはただ……」

 

「俺は詳しい事までよく知らないけどさ」

 

ジークのすぐ近くで、ウェイブは焚き火で温まった鍋に入ったシチューを煮込みながら言葉を続けた。

 

「君の持ってる力がどうだろうと、君がモンスターを退けられるほど強いのは実際その通りなんだ。その力があるおかげで、何度か襲われかけてた人を助けられた事もあったでしょ」

 

「……うん」

 

「なら、誇って良いんじゃないの? ご先祖様が君にくれたその力が、君や君の周りの人達の事も守ってくれてるんだしさ。要は向き合い方次第って事でしょ」

 

「……そう、なんやろか」

 

「そういうもんさ……ま、どんだけ強い奴でも、腹が減っては戦はできぬってね。ほれ、シチューできたよ」

 

「ん……おぉ~!」

 

そうこう話している内に出来上がったシチューの匂いに、お腹を空かせていたジークは目をキラキラ輝かせながら涎を垂らす。実にわかりやすい反応だと苦笑いを浮かべながらも、ウェイブは今もグツグツ音が鳴っているシチューを皿によそい、スプーンとセットでジークに渡す。

 

「熱いから気を付けなよ」

 

「は~い。フー、フー……!」

 

スプーンで掬ったシチューに息を吹きかけて冷ましながら、少しずつ食べ始めるジーク。そのすぐ傍では自分が食べる分を皿によそったウェイブが、肩にかけていたショルダーバッグから数枚の資料と写真、メモ帳とボールペンを取り出し始める。

 

(さて……今日でだいぶ情報は集まった)

 

この数日間、ウェイブは様々な情報収集を行ってきた。現在もミッド各地で発生している失踪事件。モンスターが原因で引き起こされているその事件について、少しでも関わっていそうな出来事があればひたすら調査し、それと同時にイヴの素性に関する調査も並行して行っている真っ最中である。この男、実は思った以上に色々な事をやっていたのである。

 

(イヴちゃんに関する情報は相変わらずゼロ。こっちはめげずに続けていくとして……)

 

残念ながら、イヴに関する情報は未だ入手できていない。これほどまでに情報が手に入らない事にそろそろ違和感を感じ始めているウェイブだったが、今その理由を考えてもキリがない。その為、彼は思考をすぐに切り替えて別の事件についての情報を纏めていく。

 

「情報はこんなもんか……そろそろ動かなきゃな」

 

「はむはむ……んむ? どしたんケンさん?」

 

「ん、なに。ちょいと事件解決に動こうと思ってさ」

 

「?」

 

ウェイブの言葉にキョトンとした様子で首を傾げるジーク。ウェイブは手にしている資料を一纏めにしてからショルダーバッグに収め、少しずつ冷め始めているシチューを食べ始めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、首都クラナガンでは……

 

 

 

 

「情報提供、感謝します」

 

学生達が歩いている通学路。その付近ではギンガ・ナカジマが、とある捜査の為に周囲の学生や通行人などに聞き込み調査を行っているところだった。一通り調査を終えたところで、ギンガの表情は暗く沈み込んでいた。

 

「これでまた、失踪者が1人……」

 

彼女が聞き込み調査を行っている通学路。この付近では現在、とある騒ぎが起こっていた。

 

(騒ぎが起き始めたのがおよそ3日前……学院に通っていた生徒が、家出(・・)したままいつまで経っても帰って来ていない。それが既に何件も発生してるなんて……)

 

学生が何人も行方不明になっているというこの騒ぎ。世間では家出として扱われているのだが、ギンガはこれがどうにもただの家出とは思えなかった。犯罪に巻き込まれたのか、それとも……

 

「まさか、モンスターが……?」

 

もしこれがモンスターの仕業だとしたら、急いで討伐しなければならない事態である。何も知らない子供が次々と命を奪われるなど、到底見過ごせる事ではなかった。

 

(でも、だとしたらそのモンスターは一体どこに……)

 

仮に失踪の原因がモンスターだったとしても、そのモンスターがどこに現れるかなど、ライダーではないギンガにとっては全くわかりそうにない。こうなれば一度、手塚や夏希に連絡するしかないだろう。そう思ったギンガが待機状態のブリッツキャリバーを通じて、2人に連絡を取ろうとした時だった。

 

「あれま、どこかで見た顔だ」

 

「!」

 

ギンガの横からひょいっと顔を覗き込んで来た1人の青年。首にカメラをかけ、ショルダーバッグを背負ったその青年の顔に、ギンガは見覚えがあった。

 

「あ、確か前に会った……ウェイブさん?」

 

「おぉ、覚えてくれてたんだギンガちゃん。嬉しいねぇ~」

 

意外なところで再会したウェイブとギンガ。出会ったのが数週間ほど前であった為、まさかギンガに覚えて貰えていると思っていなかったウェイブは素直に嬉しく思っていた。

 

「こんな所で奇遇だねぇ。どう? 前に言ってた写真でも撮らせて……って言おうと思ったけど、流石に職務中は無理だよねぇ~」

 

「え、えぇ。本当にすみません、せっかくまた会えたというのに」

 

「いやぁ、良いの良いの。写真はまた今度にするからさ」

 

流石に職務中であるギンガの邪魔をする訳にはいかない。手に持っていたカメラを大人しく降ろしたウェイブは、ギンガが手に持っているメモ帳に気付く。

 

「どしたの? 何か事件でもあったの?」

 

「えぇ。しかし立場上、あまり部外者にこういう話は……」

 

「ま、そりゃ当然だよね。内容は聞かないでおくよ……で、その捜査が上手くいかないせいで困ってると」

 

「うっ……まぁ、そんなところです。なかなか上手くいかない毎日です」

 

「大変だねぇ局員さんは……と、事件と言えば」

 

「?」

 

ウェイブはショルダーバッグのチャックを開き、中から数枚の資料と写真を取り出す。いきなりの行動にギンガが首を傾げる中、彼は手に持った資料を彼女に見せつけるように突き出した。

 

「俺はフリーのカメラマンだけどさ。それとは別に、興味本位で色々な事件に関する情報も集めてるんだ。まぁボランティアな訳だけど……最近特に目立ち始めているのは、学生の失踪事件」

 

「……!?」

 

ウェイブが挙げた失踪事件。それはちょうどギンガが追っている真っ最中であり、その言葉を聞いたギンガは目を見開いて彼の方に視線を向けた。

 

「始まりはおよそ3日前だったかな? その日から何人もの学生が行方不明になる事態が多発している。世間では家出みたいな扱いにされてるようだけど、俺にはどうも別の理由があるように思えてならない……そこで」

 

ホッチキスで止められた資料を1枚捲り、2枚目の資料に書き記された地図を見せつける。そこにはいくつかの×印と、その全ての×印を囲むようにできた大きな円が描かれていた。資料に張り付けられていた写真は、その×印が付いた場所を撮影した物のようだ。

 

「行方不明になったその学生が、最後に目撃されたっていう場所を一通りマークしてみたのよ。最初は誘拐事件の可能性も考えてみたんだけどさ。こんなに広い街で、しかも人の通りが多い場所もたくさんある。ざっと調べた限りでは、行方不明になっている生徒の人数は既に2桁にも達している。たったの3日間で、そんなに多くの生徒を誘拐できるのかって考えると、そこには少し疑問が残る」

 

「! じゃあ、この円で囲んだエリアは……」

 

「ここらの学生達が行方不明になった大体の範囲さ。あくまで推測でしかないけど、失踪した学生が最後に目撃された場所は、その円を超えた外部では1つもなかったのよ。んでもって、この円で囲んだエリアの中心部にあるのが……」

 

ウェイブが指差したのは、円で囲んだエリアの中心部。そこに存在していたのは、この付近の学生が通っている中で唯一、円で囲んだエリアの中に入っていた1つの学院だった。

 

「ッ……フィアモルド魔法学院……!」

 

「俺としては、ここに事件の鍵が存在しているように思えてならないんだよねぇ。どうギンガちゃん? 局員の視点から見て」

 

ギンガは驚愕する事しかできなかった。3日間というあまりに短い期間かつ大きく広いこの街の中で、この男は既にこれほどまでにたくさんの情報を集め終えていたのだ。普通に調査するだけでは、3日間でこんなに多くの情報は集められない。

 

「凄い、この3日間でこんなに情報が……!」

 

「ただ、先に言っとくよ。情報を集めたって言っても、結局はただの憶測に過ぎないって事をね。もしかしたら全くの見当違いって可能性もある。それでも良いって言うのなら、その資料はタダで君にあげるけど……どう?」

 

「……いえ、充分です。情報提供、ありがとうございます!」

 

「へ? まぁどう致しまし……って足速ッ!?」

 

ウェイブから譲り受けた資料を手に、ギンガはすぐさま地図に描かれた学院に向かうべく駆け出した。バリアジャケットを纏っていない状態でも速い彼女の走るスピードには、ウェイブも思わず目が飛び出るような勢いで驚くほどだった。

 

(資料に付いている写真で確信できた……!!)

 

ウェイブから受け取った資料に付いていた、行方不明になった生徒が最後に目撃されたエリアの写真。それは高層ビルの付近、河原、公園の公衆トイレなど場所はバラバラなのだが……その全ての写真には、1つの共通点があった。

 

(ビルの窓ガラス、川の水面、公衆トイレの手洗い場の鏡……どれもミラーワールドの入り口がある!!)

 

それこそが、ギンガを1つの確信に導いた最大の要因だった。そしてモンスターが関わっているとなれば、ライダーの力を借りない訳にはいかない。彼女は走りながらもブリッツキャリバーを介して通信を繋げ、手塚と夏希に連絡を取り始める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おぉ~、ギンガちゃん足速いねぇ~……さて」

 

一方、1人残されたウェイブはと言うと、ギンガが走り去って行く後ろ姿を見届けているところだった。しかし彼もこのまま何もしないでいるつもりはなく、懐から取り出したカードデッキを手に持ち、人目がない建物の裏に入り込んで窓ガラスの前に立つ。

 

(たぶんあのライダー達も来るだろうし、俺も準備しなくちゃねぇ)

 

ギンガに情報を提供したのは、モンスターが現れる可能性の高いエリアに手塚と夏希を誘導させる為。この3日間で既に多くの生徒が行方不明になっているのだ。もしこれがモンスターの仕業となれば、そのモンスターは人を襲う頻度がかなり高いという事。それを確実に倒すには、ライダーの人数も多ければ多いほど都合が良い。

 

「ギンガちゃんには悪いけど、先回りさせて貰おっかね」

 

ウェイブはカードデッキを窓ガラスに突き出し、出現したベルトを腰に装着。左手をベルトの装填口に持って行きながら、右手拳を胸元に素早く移動させたポーズを取り、カードデッキをベルトに装填する。

 

「変身!」

 

いくつもの鏡像が重なり、ウェイブの姿が仮面ライダーアイズの物へと変化する。アイズは胸部装甲の左側の鎖骨付近を右手で軽く払ってから、ライドシューターで先回りするべくミラーワールドに突入していく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ、はぁ……や、やっと着いた……!」

 

そして場所は変わり、フィアモルド魔法学院。学院のチャイムが鳴り響き、生徒達が休憩時間に入る中、全力で走って来たギンガは息が切れかかりながらも何とか到着していた。

 

(もし、本当にモンスターの仕業だとしたら……!)

 

モンスターはこの学院を拠点に、この学院に通っている生徒を狙って襲っている可能性がある。ギンガは正門側のインターホンを鳴らし、「例の家出した生徒達に関する聞き込み調査」という名目で何とか学院内に潜入する事に成功する。

 

(生徒達は休憩時間中……モンスターが現れるとしたら、人目が付かない場所……?)

 

そう考えたギンガは校舎裏や校舎内のトイレなど、色々な場所を見て回る事にした。その際、ギンガの容姿を見た何人かの男子生徒達が彼女に見惚れていたのだが、ギンガはそんな事など知る由もない。

 

(あの音は聞こえて来ない……ウェイブさんが言ってた通り、ハズレの可能性も……)

 

が、その時だった。

 

 

 

 

 

 

キィィィィィン……キィィィィィン……

 

 

 

 

 

「きゃあぁっ!?」

 

「―――ッ!!」

 

例の金切り音、そして女子生徒の悲鳴。それらを聞き取ったギンガはすぐに廊下の窓を開け、3階から地上まで一気に飛び降りて着地。彼女が駆けつけた校舎裏では、折れ曲がった長い耳、首元から吊り下げた金色の懐中時計、そして着ぐるみのような太いボディを持ったウサギのような怪物が、1人の女子生徒を窓ガラスまで引っ張り込もうとしていた。

 

「はぁっ!!」

 

『キュキュ!?』

 

ギンガは即座に駆け出し、女子生徒を引っ張っていたウサギ型の怪物―――“タイムラビット”にタックルを仕掛けた。ギンガのタックルを受けたタイムラビットが距離を離された間に、ギンガは襲われていた女子生徒の方へと駆け寄る。

 

「大丈夫!?」

 

「は、はい……!!」

 

『キュキュキュキュ!!』

 

「!? ぐ、かはっ……!!」

 

しかしタイムラビットはすぐに距離を詰め、女子生徒を逃がそうとしたギンガに襲い掛かる。タイムラビットは両手でギンガの首を掴み、首を絞められたギンガが自慢の腕力でタイムラビットの両手を引き剥がそうとしたその時……

 

「そいやっ!!」

 

『キュキュウッ!?』

 

窓ガラスから飛び出して来たアイズが、繰り出した跳び蹴りでタイムラビットを真横から蹴り倒した。それにより解放されたギンガは喉元を押さえて咳き込みながら、自身の前に立ったアイズを見て驚愕した。

 

「ゲホ、ゲホッ……あなた、は……!?」

 

「後は俺に任せなよ……っと!!」

 

『キュ、キュキュ……!?』

 

アイズは右腕に装備したディスシューターから糸を放ち、タイムラビットのボディに巻き付ける。動きを封じられたタイムラビットをアイズが窓ガラスまで蹴り飛ばし、ミラーワールドに戻されたタイムラビットを追うようにアイズも窓ガラスからミラーワールドに突入していく。

 

「コホッ……赤い、蜘蛛のライダー……ッ!」

 

ギンガは襲われていた女子生徒の方まで駆け寄りながらも、タイムラビットを捕らえたアイズが突入して行った窓ガラスを見据える。彼女が見たその姿は、3年ほど前に夏希から聞いた仮面ライダーと特徴が一致していた。

 

「ッ……もしかして、彼があの時の……?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よっと!!」

 

『キュキュキュ……ッ!?』

 

タイムラビットを捕縛し、ミラーワールドに突入したアイズ。左右反転した学院内のグラウンドまで移動した彼は、巻き付いた糸を力ずくで引き千切ったタイムラビットと相対する。

 

『キュウ……キュキュキュッ!!』

 

「うぉ!? マジか、凄ぇパワーだな……っと!!」

 

糸を引き千切ったタイムラビットが地面を力強く踏みつけ、一瞬でアイズの目の前まで距離を詰める。それに驚いたアイズが慌てて後ろに下がる中、タイムラビットは太い腕をブンブン振りながらアイズに攻撃を仕掛けていく。

 

「クソ、太い癖に俊敏な……!!」

 

『キュキュウッ!!』

 

「どぉわっ!?」

 

タイムラビットの繰り出したドロップキックがアイズの胸部に命中し、大きく蹴り飛ばされたアイズが地面を転がる。そこにタイムラビットが追撃を仕掛けようと大きく跳躍し、アイズに襲い掛かったが……

 

≪ADVENT≫

 

『キュッ!?』

 

「おっ?」

 

別方向から飛んで来たエビルダイバーが、アイズに飛び掛かろうとしたタイムラビットを撃墜。タイムラビットが地面に落ちる中、エビルダイバーに乗って来たであろうライアがアイズのすぐ横に着地する。

 

「ヤッホー♪ 来ると思ってたよ、エイのお兄さん」

 

「何? どういう意味だ」

 

「今はどうでも良いっしょそんな話。ほら、来るよ」

 

『キュキュキュキュキュ……ッ!!』

 

立ち上がったタイムラビットは苛立った様子で地団駄を踏むと、タイムラビットが首に吊り下げている懐中時計に変化が生じ始めた。時計の長針と短針が動き出し、時計回りに猛スピードで回転していく。

 

「ん、何だ……?」

 

『キュキュキュキュ……キュウッ!!!』

 

「!? 消え……うぉあ!?」

 

「何……くっ!?」

 

するとタイムラビットが一瞬で姿を消し、その行方を追おうとしたアイズとライアの背中に謎の衝撃が襲い掛かって来た。突然の攻撃にアイズが転倒し、ライアが怯んで膝を突く中、再び姿を現したタイムラビットはピョンピョン飛び跳ねながらその場に留まっていた。

 

「今、何が起きた……!?」

 

「ッ……あの時計の動き……まさか、自分の動くスピードを速めたのか……!!」

 

「はぁ!? おいおい何だよそれ、反則にも程があんだろ!!」

 

『キュキュキュッ!!』

 

「「うわぁっ!?」」

 

タイムラビットの懐中時計が再び動き出し、時計の針が高速回転すると共に再び高速移動を開始。目に見えない速度で繰り出して来たパンチを受けてしまい、アイズとライアが地面を転がされる。

 

「この……面倒臭い奴め!!」

 

『ッ……キュキュウ!?』

 

もちろん、やられてばかりのアイズではない。アイズは地面に倒れた状態からもディスシューターから糸を放出し、あちこちの地面に糸を粘着させる。すると糸に足を引っ掛けられたタイムラビットが転倒し、それにより高速移動が途中で止まってしまった。

 

「やるなら今だよ!!」

 

「あぁ……!!」

 

タイムラビットが転倒している隙に、ファイナルベントのカードを引き抜くライア。しかしそれを見たタイムラビットは焦った様子で起き上がり、地面を蹴り砕いてから岩を2人に向かって蹴り飛ばして来た。

 

『キュッキュウ!!』

 

「うぉわっ!?」

 

「ぐっ……!?」

 

『キュキュキュキュキュキュ!!』

 

2人が蹴り砕かれた岩に怯んでいる隙に、タイムラビットは高い跳躍力を活かしてその場から素早く移動を開始。2人が体勢を立て直した頃には、既にどこかへ逃げ去って行ってしまった後だった。

 

「ッ……逃げられたか」

 

「あらら、駄目だこりゃ。一旦外に戻って、体勢を立て直そうかね―――」

 

「待て」

 

その場から立ち去ろうとしたアイズを、後ろからライアが呼び止める。

 

「どこに行く気だ? 俺と同じ場所から出ても、特に問題ないだろう」

 

「どこって、別にどこから出ても俺の自由でしょ?」

 

「随分頑なだな……なら質問を変えよう。何故素性を明かさない?」

 

立ち去ろうとするアイズの足がピタッと止まる。彼は数秒間だけ無言が続いた後、ライアの方へと振り向いてから言い放った。

 

「……慎重に動きたいのさ、俺は。下手に素性を明かして、どこから敵に情報が行き渡るかなんてわかったもんじゃないしね」

 

「敵だと? どういう意味だ」

 

「悪いけど、管理局の事はまだ完全には信用してないんだよね」

 

「……ッ!」

 

「んじゃ、そういう事で。またモンスターを倒す時に会おうじゃないの」

 

そう言って、アイズはディスシューターから放出した糸を校舎の壁に引っ付け、それを利用して校舎の屋上まで一気に飛び去って行く。彼が立ち去って行った後も、ライアはアイズから告げられた発言が心に刺さったのか、少しの間だけその場から動けずにいたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――ほっと」

 

その後、校舎屋上入り口の扉のガラスを通じて、ミラーワールドから帰還したアイズ。授業開始のチャイムが鳴り響く中、彼はそのまま変身を解こうとしたが、その前にある光景が視界に映る。

 

「ん? あれはさっきの……」

 

アイズが屋上から見下ろした先。そこでは校舎外の水道で、怪我をした女子生徒の手当てをしているギンガの姿があった。

 

「大丈夫? 傷、痛くない?」

 

「は、はい、大丈夫です。ごめんなさい、わざわざこんな事……」

 

「ううん、気にしないで。担任の先生には私から事情を話すから」

 

どうやらタイムラビットに襲われた際、女子生徒が片足の膝を擦り剥いてしまったらしく、ギンガが女子生徒の膝の傷口を水で濡らしてあげているようだ。水で濡らし終えた後は水道を止め、ハンカチで丁寧に拭いてから女子生徒を保健室まで連れて行こうとしている。

 

「へぇ、優しいねぇギンガちゃんは」

 

その様子にはアイズも感心しており、柵に頬杖を突きながら温かい目で2人を見守っていた。その際、彼の脳裏にはライアから告げられた言葉が思い浮かぶ。

 

『なら質問を変えよう。何故素性を明かさない?』

 

「……ま、悪い奴ばかりじゃないのはわかってるんだけどねぇ」

 

それでも、こっちにはこっちの都合がある。アイズは自分にそう言い聞かせながら、今度こそ変身を解除しようとした……しかし。

 

 

 

 

 

 

キィィィィィン……キィィィィィン……

 

 

 

 

 

 

「―――ッ!?」

 

再び聞こえてきた金切り音。今は聞こえる筈がないその音を聞いて、アイズはすぐさま屋上から見下ろす。

 

『キュキュキュキュキュ……!!』

 

「ッ……まさかアイツ、逃げたフリしてまた……!!」

 

先程逃げた筈のタイムラビットが、再び窓ガラスを介して女子生徒に狙いを定めていた。タイムラビットはすぐさま窓ガラスから飛び出し、保健室に向かおうとしている2人に襲い掛かった。

 

『キュキュウッ!!』

 

「!? 危ない!!」

 

「きゃあっ!?」

 

「ッ……クソ!!」

 

それを見たアイズは柵を跳び越えて跳躍。ギンガと女子生徒に襲い掛かろうとするタイムラビットに対し、アイズは飛び降りながら右腕のディスシューターを向けて糸を放出する……!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

To be continued……

 




リリカル龍騎ViVid!


ギンガ「待って!! あなたに伝えたい事が!!」

タイムラビット『キュキュキュキュキュキュ……!!』

ウェイブ「俺がやってるのは所詮、ただの自己満足でしかないよ」

手塚「お前のおかげで救われた人間がいる事を、どうか忘れないで欲しい」


戦わなければ生き残れない!
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