リリカル龍騎ライダーズinミッドチルダ   作:ロンギヌス

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お待たせしました、第25話の更新です。

今回も前回から引き続き、山岡爺さんの視点から物語をお送り致します。今回もか~な~り長いです。
そして今回、今まで不明だった“あのライダー”の名称がようやく判明します。

それではどうぞ。







ちなみに活動報告で開催中の質問受付タイムですが、こちらは明日の金曜日で受付がラストになりますので、何か聞きたい事がある人はお早めに活動報告まで。

オリジナルライダー募集の方はまだまだ続きますのでご安心を。











追記:ラルゴの過去について、時系列に関するミスがあったので修正しました。













戦闘挿入歌:果てなき希望












第25話 ライダーの戦い

「あ、やっと見つけた……ってラルゴ君!?」

 

ラルゴを探して街中を駆け回っていたヴォルケンリッター達。その中で、駐車場の近くをたまたま通りかかったシャマルが、駐車場の車から離れた位置で意識を失っているラルゴを発見。倒れている彼の姿を見た彼女は大慌てで傍まで駆け寄っていき、ラルゴの安否を確認する。

 

「……気絶してるだけみたいね。良かった」

 

ラルゴが気絶しているだけだとわかりホッとするシャマルだったが、そんな彼女の視線の先にある物が移り込む。それはラルゴが落としたカードデッキだった。

 

「ッ……やっぱりカードデッキだったのね……でも、どうしてラルゴ君が……」

 

どうしてラルゴがカードデッキを持っているのか。一体どうやって手に入れたのか。シャマルにとっては謎だらけだった。彼女が疑問を抱いていたその時……

 

『フ、ハァッ!!』

 

『ぬぅ……とぁっ!!』

 

「!?」

 

ラルゴを抱き起こそうとしたシャマルの目に映ったのは、車のガラスに映り込んでいるホロとタイガの姿。2人はディノバイザーとデストバイザーを交え、激しい戦いを繰り広げていた。

 

「山岡さん……と、別のライダー……!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

≪≪STRIKE VENT≫≫

 

「「はっ!!」」

 

駐車場から大きく移動し、道路付近までやって来たホロとタイガ。ホロは左手にディノクローを、タイガは両腕にデストクローを装備した上で両者同時に接近し、武器を交えて互角に渡り合っていた。

 

「ッ……少しは人の話を聞かんか……!!」

 

「悪党の話なんか、聞く必要もない!!」

 

「ホロが自分のモンスターに子供を襲わせようとしていた」と誤解しているタイガは、ホロの言おうとしている事にも耳を貸そうとしない。説得による戦闘中断は不可能だと判断したホロはディノクローを突きつけ、タイガが振り下ろそうとして来たデストクローを弾いてから距離を取る。そのままホロは離れた場所からディノクローの衝撃波を放とうとしたが……

 

「させるか……!!」

 

≪ADVENT≫

 

『グルゥッ!!』

 

「むっ!?」

 

しかし、その直前でタイガがデストクローにカードを装填し、出現したデストワイルダーが別方向からホロに飛びかかって来た。気付いたホロは倒れ込む事でギリギリ回避に成功したが、ディノクローから衝撃波を放つ事は失敗した為、その間にタイガの接近を許してしまう。

 

「はあぁっ!!!」

 

「ぐぅ……ッ!!」

 

起き上がったホロの振り上げたディノクローと、タイガの振るったデストクローが接触。その衝撃で体勢を崩されたホロがよろめくも、すぐにディノクローで防御姿勢を取りデストクローを防いでみせた。

 

「言い訳なんかしても無駄だぞ……お前があの子にモンスターをけしかけたのは知っている!!」

 

(ッ……ディノスナイパーに探させたのは失敗じゃったか……!!)

 

逃げたラルゴを探し出す為、ホロはディノスナイパーにその後を追わせた。しかしその結果、たまたまディノスナイパーがラルゴと一緒にいるところを見られ、そのせいで誤解したタイガに襲撃される羽目になってしまった。もう少し考えて動くべきだったとホロは内心で密かに後悔する。

 

「あの子の命は奪わせないぞ……この人殺しめ!!」

 

「ッ……むぉっ!?」

 

タイガから「人殺し」呼ばわりされ、その言葉に動きが鈍るホロ。その隙を突いたタイガはホロの腹部を蹴りつけてからデストクローで薙ぎ払い、膝を突いたホロに向かってデストクローを振り下ろす。

 

「死ねぇっ!!!」

 

「……ふん!!」

 

デストクローが振り下ろされる直前で、ホロはディノクローを構えて再び攻撃を防御。そしてすぐさま鞘からディノバイザーを引き抜き、その銃口をタイガの胸部に押しつけた。

 

「何ッ……ぐあぁぁぁぁっ!?」

 

至近距離から銃弾を連射され、タイガはたまらず後退し地面に倒れ込む。その隙にホロはディノクローに収束させたエネルギーを利用し、自身がいる足元に衝撃波を撃ち込んだ。

 

「ぬぅんっ!!!」

 

ズドォォォォォォォンッ!!!

 

「く、うぁっ……!?」

 

地面に向かって撃ち込まれた衝撃波が、2人のいる周囲に大きな地震を発生させる。立ち上がろうとしていたタイガが再び転倒する。一方、地面に衝撃波を撃ち込んだホロは土煙で姿が見えなくなり、少し時間が経過した後、土煙が晴れたそこにホロの姿はなかった。

 

「!? どこに行った……!!」

 

地震が収まり、ようやく立ち上がったタイガは周囲を見渡すも、どこにもホロの姿は見当たらない。自分が倒れている隙に逃げられた事を悟り、タイガはその苛立ちから両腕のデストクローをプルプル震わせる。

 

「どいつもこいつも……ウアァァァァァァァァァァッ!!!」

 

地面を何度も斬り裂き、ぶつけようのない怒りを少しでも晴らそうとするタイガ。彼が怒りの叫び声を上げる中……その様子を、1人のライダーが電柱の陰から眺めていた。

 

「ま~たやってるわねアイツ……それにしても、あの爺さんもなかなかに曲者(・・・・・・・)ね。どう対処していくべきかしら」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから数十分後、現実世界では……

 

 

 

 

 

「ぜぇ、ぜぇ……な、何とかなったわい」

 

タイガの追撃を振り切り、ミラーワールドから現実世界に帰還した山岡はシャマルと合流し、未だ気絶しているラルゴを連れて場所を移動していた。駐車場から遠く離れた先の巨大アリーナ付近にて、ラルゴの捜索とライダーとしての戦闘で体力を大幅に消費した山岡は座り込んで休憩していた。

 

「だ、大丈夫ですか? 山岡さん」

 

「多少疲れたくらいじゃ。わざわざすまんのぉ」

 

そんな彼の為に、現在はシャマルが回復魔法を発動し、少しずつ彼の体力を回復させてあげている。なお、移動している途中でシグナム・ヴィータ・ザフィーラの3人とも合流しており、狼形態となったザフィーラがラルゴを背中に乗せて目覚めを待っている間、シグナムとヴィータは山岡に問いかけていた。

 

「山岡殿。シャマルの話では先程、別のライダーと戦闘になったそうだが……」

 

「うむ……あやつは仮面ライダータイガ。元の世界でも、あやつとは何度か戦った事がある」

 

「へ? じゃあ、知り合いなんですか?」

 

「……いや、儂が知っている口調ではなかったのぉ」

 

山岡の知るタイガと、今回遭遇したタイガとでは口調や雰囲気がかなり違っている。その点について疑問に思う山岡だったが、かつてのライダーバトルの真相を知らない彼では、どれだけ考えたところで理由などわかるはずもなかった。

 

「でも、どうして2人が戦いを?」

 

「儂は少年を見つける為に、ディノスナイパーに行方を追わせたんじゃが……少年を見つけたところを、たまたまあやつに見られておったらしくての。儂がモンスターに少年を襲わせようとしたと、いらん誤解をさせてしまったようじゃ」

 

「なら、アタシ等が事情を話してやれば誤解も解けるんじゃねぇのか?」

 

誤解させてしまっただけなら、自分達が事情を話せば誤解も解けるのではないだろうか。そう考えたヴィータ達だったが、山岡はその提案に対して首を横に振った。

 

「いや、それも難しいじゃろうの」

 

「む、何故ですか?」

 

「儂が何を言っても、あやつは碌に話を聞こうともせんかった。あの手の輩は、ただ話をしてやるだけではどうにもならん」

 

人の話を全く聞こうとしない融通の利かなさ。戦闘中、タイガの発した台詞を思い返した山岡は、タイガの変身者がそう簡単に説得を聞いてくれる相手ではないと察していた。次にタイガと遭遇した時も、戦闘は避けられないであろう事も。

 

「……あやつの話は一旦後じゃ。まずは少年の件をどうにかせねば」

 

山岡がそう言って視線を向けたのは、今も狼形態となったザフィーラの背中で眠っているラルゴの姿。それに続く形でシグナム達も視線を向ける中、ラルゴの眉が僅かにピクッと動き、その意識が戻ろうとしていた。

 

「ッ……ん、ぁ……」

 

「! 目覚めたか」

 

意識が戻ってきたラルゴは少しずつ目を開けていき、ザフィーラの背中からゆっくり体を起こした。それから数秒間ほどポケッとした後、急に意識が覚醒したのか、突然周囲をキョロキョロ見渡し、シグナム達の姿を見て急に青ざめ始めた。

 

「げっ……せ、先生……!」

 

「さて、ラルゴ。これが一体どういう事なのか……説明して貰おうか」

 

シグナムが手に握っている未契約状態のカードデッキ。それを目の前で見せつけられたラルゴはあまりの気まずさに視線を逸らそうとしたが、視線を逸らした先ではヴィータに睨まれ、また違う方向に逸らすと今度はシャマルとザフィーラに真顔でジッと見られ、極めつけに山岡からも呆れたような視線を向けられている。ラルゴは観念した様子で頭を下げた。

 

「ご、ごめんなさい!!」

 

ラルゴは頭を下げて謝罪した後、何故カードデッキを持っているのか、そのカードデッキをどこで拾ったのか、それらの事情を山岡達に説明する事となった。

 

「道端に落ちていただと?」

 

「う、うん……最初はこれが何なのか、俺にも全くわかんなくて」

 

ラルゴがこのカードデッキを拾ったのは、八神道場に入って1ヵ月が経過したくらいの頃だった。トレーニングを終えて家に帰ろうとしていたラルゴは、たまたま道端に落ちていたカードデッキを拾い、その日を境に鏡やガラスから金切り音が聞こえるようになったという。

 

「あっちこっちから変な音が聞こえてきて、滅茶苦茶怖かったんだけどさ……ちょっと前に、おじさんがよくわからない姿に変身して、ビルのガラスに入って行くのを見たんだ」

 

「なるほどなぁ。ここ最近、道理でトレーニング中も妙に集中力が欠けていた訳だ」

 

「まさか見られておったとは、迂闊じゃったの……」

 

最初はその金切り音の正体がわからなくて怯えるラルゴだったのだが、ある時、たまたま山岡がホロに変身して戦いに出向くところを目撃し、そのおかげでカードデッキの使い方を知ったようだ。変身するところを見られていた事を知った山岡は、今後は人に見られそうな場所では迂闊に変身するまいと深く心に誓っていた。

 

「それで、自分もライダーになろうとしたんかの?」

 

「……俺、道場の中じゃ滅茶苦茶弱くてさ。俺が練習してる間も、皆はどんどん先に進んでいって、ミウラなんかインターミドルに出るくらい強くなって……こんな弱いままじゃ嫌だって思ったんだ」

 

強くなりたいから。八神道場に通う生徒の中でも実力が低かったラルゴは、そんな思いを抱いていた。山岡が変身して戦う姿を見て、この拾ったカードデッキがあれば、自分もあんな風に強い力を手に入れられるんじゃないかとラルゴは考えたのだ。

 

「これがあれば、俺もあんな風に戦う力を手に入れられると思って……!」

 

「あのなぁ……爺さんが戦ってるところを見たんなら、お前だってわかってる筈だろうが!! それがどんだけ危険な力なのかも!! そんな物を持ってたって、お前の思い通りにはならねぇぞ!?」

 

ヴィータの口から説教が飛び出し、ラルゴは罰が悪そうな様子で両目をギュムッと閉じる。ラルゴがヴィータに説教されている光景を見て、シグナム達も呆れた様子で溜め息をついた。

 

「全く、とんだ人騒がせな……」

 

「拾ったのなら、せめて私達に事情を話してくれればまだ色々できたものを」

 

「もぉ、駄目よラルゴ君。そういう事は黙ってないで、ちゃんと話してくれないと。あなたが危ない事をしていると知ったら、あなたのお姉さんだって心配するのよ?」

 

「……!」

 

そんな中、山岡だけは他と違う反応を見せていた。シャマルが告げた「お姉さん」という台詞を聞いた彼は、座っていた状態からスッと立ち上がり、ヴィータに説教されている最中のラルゴの傍まで歩み寄る。

 

「お嬢ちゃん、少し良いかの?」

 

「? 悪いけど爺さん、今は説教中だから後に―――」

 

「少年に聞きたい事があるんじゃ」

 

「……?」

 

山岡はラルゴの前でしゃがみ込む。ヴィータに説教されている途中から泣きそうになっていたのか、ラルゴは目元が若干だが涙目になっており、鼻水をズズッと啜ってから山岡と視線を合わせた。

 

「そのデッキを使ってライダーになれば強くなれる……お前さんはそう思ったんじゃな」

 

「うん……」

 

「お前さんが強くなりたいと思った理由、教えてくれんかの?」

 

「……うん」

 

山岡は右手を伸ばし、ラルゴの頭を優しくゆっくりと撫でる。撫でられている内に落ち着いてきたのか、ラルゴは目元の涙を腕で拭った後、山岡達にその理由を明かした。

 

「俺、1つ上の姉ちゃんがいるんだけどさ……姉ちゃん、体が不自由なんだ」

 

「! 何じゃと……?」

 

「1年前、事件に巻き込まれたんだ。そのせいで姉ちゃんは……」

 

「……その事件、詳細は知っとるかの?」

 

「え、えぇ。実は……」

 

ラルゴの話を聞いた山岡は、シャマルからその事件の詳細を聞く事にした。

 

今からおよそ半年前。とあるショッピングモールで姉と一緒に買い物をしていたラルゴは、突然発生したテロに巻き込まれたという。

 

そのテロを引き起こしたのが……かつてジェイル・スカリエッティが開発・量産した、あのガジェットドローンの大軍だった。

 

多数の死傷者が出てしまった、ガジェットドローンによるテロ事件。ラルゴと彼の姉もそのテロに巻き込まれるも、奇跡的に両者共に死なずに済んだ。

 

しかし、軽傷だったラルゴは問題なく回復できたものの、重傷を負った姉の方はそうはいかなかった。姉の体には傷の後遺症が残ってしまっており、ミッドの医療を以てしても完全な回復は見込めず、現在は生活するのに車椅子が欠かせない状態だという。

 

「そうじゃったのか……」

 

「だから俺、強くなりたいって思ったんだ。姉ちゃんを守れるくらいにって。でも、俺は喧嘩も弱いから、学校でも周りから虐められてばっかりで……その時、道場の皆に会ったんだ」

 

体の不自由な姉を守りたいのに、周りから虐められるくらい自分は弱かった。そんな自分が悔しかった。そんな思いを抱えながら学校生活を送っていたラルゴは、たまたま砂浜でトレーニングをしていた八神道場の生徒達を見かけた。

 

『ウチに興味あるん? 何なら、見学だけでもしてみる?』

 

その時、ラルゴに声をかけたのがはやてだった。はやての提案に乗ったラルゴは八神道場のトレーニングの様子を見学させて貰っている内に、ここなら自分も強くなれるかもしれないと思い、そのまま八神道場に入れさせて貰う事を決意した。その後はミウラを始めとする他の生徒達と一緒に格闘技を練習し、互いに応援し合っていく関係となっていったのである。

 

「ここなら、姉ちゃんを守れるくらい強くなれるって思って……俺、すっごく嬉しかったんだ。俺が強くなろうとするのを、皆が凄く応援してくれたのが。だから姉ちゃんの事も、道場の皆も、守れるくらい強くなりたいって、本気でそう思えたんだ」

 

「……なるほどのぉ」

 

何故、ライダーになってまで強くなりたいと思ったのか。その理由を知れた山岡は、ラルゴの頭をポンポン触れながらうんうんと頷いていた。

 

「事情はわかった。お前さんの気持ちは少なくとも、儂には凄く伝わってきた」

 

かつて、交通事故に遭った孫が不自由な体になってしまった山岡。その時の過去とラルゴの過去が重なっていたからか、山岡はラルゴの気持ちが痛いほど理解できていた。しかしそんな彼にとっても、どうしても許容できない事が1つだけあった。

 

「山岡殿だけじゃない。お前が言おうとしている事は私達にもわかった……しかし、それでもだ。お前がこのデッキを使おうとしている事だけは見逃す訳にはいかない」

 

「ッ……どうしてだよ先生!! おじさんだって、もう年寄りなのに変身して戦ってるじゃんか!! 俺だって、皆をこの手で守りたいんだ!!」

 

「あのねラルゴ君。山岡さんだって本当はあまり戦って良い状態じゃ……」

 

「なら、俺がおじさんの代わりに戦う!! それなら良いでしょ!!」

 

「いや、そうじゃなくてだな……!!」

 

「う~ん、困ったわねぇ。どうしましょう」

 

守りたい物の為に強くなりたい。そんな譲れない願いを抱いてしまった事で、ラルゴはどうしてもライダーの力を諦め切れない様子だった。どうすれば良いものかと思い悩む一同だったが……

 

 

 

 

 

 

キィィィィィン……キィィィィィン……

 

 

 

 

 

 

「「「「「―――ッ!!」」」」」

 

一同の耳に聞こえて来た金切り音。モンスターが近くにいる事を察し、ヴィータは忌々しげな表情で舌打ちする。

 

「くそ、こんな時にかよ……!!」

 

「……むしろ、ちょうど良いタイミングかもしれんの」

 

「ん……?」

 

ちょうど良いタイミングとはどういう事なのか。その意味を聞こうとしたシグナムが問いかける前に、自身のカードデッキを構えた山岡はラルゴの方に振り返りながら告げる。

 

「少年……いや、ラルゴ。よく見ておくと良い。これが、お前さんがなりたがってる仮面ライダーじゃよ……!」

 

「……うん!」

 

どこか哀愁のような何かが込められた山岡の目。その意味に気付いていないのか、ラルゴが元気な声で返事を返した後、自分達が今いる巨大アリーナの壁のガラスにカードデッキを向け、出現したベルトを装着してからポーズを決める。

 

「変身!!」

 

山岡はカードデッキをベルトに装填し、ホロの姿へと変身。ホロは首元に右手を置いてから首の骨を軽くコキンと鳴らした後、壁のガラスからミラーワールドに突入して行こうとしたが、その前にシャマルが問いかけた。

 

「あの、山岡さん。一体何を……?」

 

「……なに、ちょっとした荒療治(・・・)じゃよ」

 

何故わざわざ、自分がミラーワールドで戦っているところをラルゴに見せようとするのか。山岡の意図が読めないシャマルが問いかけたところ、ホロはそれだけ答えてから、ミラーワールドに突入していく。

 

 

 

 

 

 

「!? この音、近い……!!」

 

 

 

 

 

 

「ッ……まさか、さっきのライダーか……!!」

 

 

 

 

 

 

彼女達がいる場所からそう遠くない場所で、他のライダー達も同時に動き始めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ブブブブブ……!!』

 

「また会ったのぉ、ハチさんや」

 

ミラーワールド、巨大アリーナ外部。ライドシューターに乗ってやって来たホロを待ち構えていたのは、先程取り逃がしたばかりのバズスティンガー・ブロンズだった。ホロがカードデッキから1枚のカードを引き抜く中、剣を構えたバズスティンガー・ブロンズがその場から素早く駆け出した。

 

「少しばかり、儂のやる事に付き合って貰うぞ……!!」

 

≪SWORD VENT≫

 

『ブブブッ!!』

 

ディノバイザーにカードを装填し、ディノスナイパーの鉤爪を模した短剣―――“ディノダガー”を召喚したホロはそれを両手に装備。バズスティンガー・ブロンズが振り下ろして来た剣を2本のディノダガーで受け止め、金属音が周囲に強く響き渡るのを合図に戦闘が始まった。

 

『ブブブブブブ!!』

 

「く、ぬぅ……むぉあっ!?」

 

しかし、接近戦においてはバズスティンガー・ブロンズの方が上手だった。いくら小回りの利くディノダガーを装備したとしても、老体故に接近戦を苦手としているホロでは、接近戦を得意とするバズスティンガー・ブロンズの攻撃を思うようには捌けない。結果、戦況はバズスティンガー・ブロンズの方が優勢だった。

 

(さて、あやつ(・・・)はいつ来るかの……!!)

 

『ブブゥッ!!』

 

「ぐぉ!?」

 

バズスティンガー・ブロンズの繰り出した斬撃が、ホロの胸部装甲に命中し火花が飛び散る。ダメージを受けたホロが僅かによろめくも、斬りかかって来たバズスティンガー・ブロンズの背中を擦れ違い様に蹴りつけながら、ある人物(・・・・)がこの場に到着するのを待ち続ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、おじさん……!?」

 

「山岡殿……」

 

その様子を、現実世界から見ていたシグナム達。ラルゴはホロが劣勢になっているのを見て焦っていたが、その一方でシグナム達は違う事を考えていた。何故、ホロがわざと苦戦しているのか(・・・・・・・・・・・)を。

 

『まさか爺さん、苦戦しているように見せかけて、ライダーの戦いが命がけだってラルゴに教えたいのか……?』

 

『でも、大丈夫かしら? ラルゴ君がそれで納得するかどうか……』

 

『それに山岡殿の体力も心配だ。あまり戦闘が長引いてしまうと、本当に命が危うくなってしまう』

 

念話で話し合いながら、シグナム達はホロがわざと苦戦している理由は、そうする事でライダーの戦いが命懸けである事を教え、ラルゴを諦めさせようとしているからだと推測していた。しかし、守りたい物への思いが一際強いラルゴに対し、そのやり方が果たして通用するのかどうか。加えて、あまり戦闘が長引けばホロも体力を消費し、本当に命が危なくなってしまうのではないか。4人は不安な気持ちでいっぱいだった。

 

「! ねぇ、アレ見て!」

 

「! アレは……」

 

その時、何かに気付いたシャマルが別のガラスを指差した。そちらに向いたシグナム達もまた、その先に映り込んでいる存在に気付く事となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ブブァ!!』

 

「ぬぐ……ッ!?」

 

そんな中、ホロは自身の胸の前で2本のディノダガーを×字にクロスさせ、バズスティンガー・ブロンズが突き立てて来た剣を何とか防御していた。しかしその衝撃で仰け反ってしまい、バランスが崩れたところにバズスティンガー・ブロンズが再び斬りかかろうとする。

 

(さて、いつまで待てばよいのか……ッ!!)

 

ある人物(・・・・)が到着するまで、今か今かと待ちながらバズスティンガー・ブロンズと交戦するホロ。しかし、やはり苦手な接近戦で時間を稼ごうとするのは無理があったのか、ホロの動きがほんの僅かに鈍り、その隙を突いたバズスティンガー・ブロンズが容赦なく蹴りを加えた。

 

『ブブブッ!!』

 

「ぬぉあ……ッ!!」

 

蹴り倒されたホロが地面に倒れ、2本のディノダガーを手離してしまう。丸腰になったホロにトドメを刺すべくバズスティンガー・ブロンズが素早く接近し、ホロ目掛けて剣を突き立てようとした……その時。

 

 

 

 

≪ADVENT≫

 

 

 

 

『ブァッ!?』

 

『ピィィィィィィィィ……!!』

 

別方向から飛んで来たブランウイングが、ホロを貫こうとしたバズスティンガー・ブロンズを突き飛ばした。体当たりを受けたバズスティンガー・ブロンズが地面に転倒し、ホロも頭上を飛んでいるブランウイングの存在に気付いた。

 

「ぬ? アレは……」

 

「どうも、恐竜おじさん♪」

 

体を起こして膝を突いた体勢をするホロの隣に、モンスターの気配を辿ってやって来たファムが並び立つ。

 

「なんか苦戦してるみたいだけど、どうする? アタシも手伝おっか?」

 

「……いや、少し待って貰おうかの」

 

『ブブブ……ッ!!』

 

転倒していたバズスティンガー・ブロンズもすぐに起き上がり、前方に立っている2人を睨みつける。一方でホロもファムの手を借りて立ち上がる。

 

「知り合いがこの戦いを見とるんでな。お嬢さんや、少しばかり付き合ってくれんかの?」

 

「へ? いや、付き合うって何を……?」

 

「儂が良いと言うまで、時間を稼いでくれればそれで構わんよ」

 

「?」

 

ホロはディノバイザーを引き抜き、その装填口にカードを装填しようとする。事情を知らないファムは首を傾げるだけだったが、取り敢えず彼の指示に従うべく、こちらに向かって来ようとしているバズスティンガー・ブロンズを迎え撃つ。

 

「でやぁっ!!」

 

『ブブッ!?』

 

ファムの振り上げたブランバイザーが、バズスティンガー・ブロンズの剣を弾き上げる。体勢の崩れたバズスティンガー・ブロンズを連続で斬りつけて攻撃している間に、ホロはカードを装填してディノライフルを召喚する。

 

≪SHOOT VENT≫

 

(さて、そろそろ来ても良い頃じゃが……)

 

ファムとバズスティンガー・ブロンズの戦闘を眺めながら、ディノライフルを構えたホロは静かに待ち続ける。仮面の下で両目を閉じ、ファム達の足音や剣と剣のぶつかる金属音などが聞こえて来る中、それらとは違う音を聞き取ろうとする。

 

それから少しの時間が経過した後……遂に待ち望んでいた時が来た。

 

 

 

 

『グルルルルル!!』

 

 

 

 

「ッ……フン!!」

 

背後から聞こえて来た唸り声。その正体を見抜いたホロはその場でしゃがみ込み、背後から飛びかかって来たデストワイルダーの奇襲攻撃を回避する事に成功。すぐさまディノライフルを構え、地面に着地したデストワイルダーの背中を狙撃する。

 

『グガゥ!?』

 

「来るのを待っておったぞ……!!」

 

「!? おじさん!!」

 

『ブァウ!?』

 

ホロとデストワイルダーが戦っている光景を見たファムは、斬りかかって来たバズスティンガー・ブロンズの足を引っ掛けて転倒させた後、すぐにサバイブ・烈火のカードを引き抜き、変化したブランバイザーツバイにカードを装填。彼女の周囲では熱い炎が燃え盛る。

 

≪SURVIVE≫

 

「はっ!!」

 

『ブブブッ……!?』

 

炎に全身を包まれ、ファムサバイブの姿に変化した彼女はすぐにブランセイバーをブランシールドに収納。ファムサバイブの姿を見たバズスティンガー・ブロンズが動揺する中、ファムサバイブは開いた装填口にファイナルベントのカードを装填した。

 

「悪いけど、アンタの出番は終わりだよ……!!」

 

≪FINAL VENT≫

 

『ピィィィィィィィィッ!!』

 

電子音が鳴り響いた後、ファムサバイブは後方から姿を変えて飛んで来たブランフェザーに飛び乗り、ブランフェザーをバイクモードに変形させる。身の危険を感じ取ったバズスティンガー・ブロンズは背を向けて逃げ去ろうとしたが、背中のマントを翼に変形させたファムサバイブがそれを逃がさない。

 

「逃がすか!!」

 

『ブブッ!? ブァァァァァァァァァァァァッ!!?』

 

ファムサバイブの背中の翼から赤い羽根が複数放たれ、それを背中に何発も受けたバズスティンガー・ブロンズは逃走に失敗。そのままファムサバイブのマントに包まれたブランフェザーが猛スピードで突っ込み、発動されたボルケーノクラッシュでバズスティンガー・ブロンズのボディを粉砕してしまった。

 

しかし……

 

「らあぁっ!!!」

 

「!? うわたっ!?」

 

ボルケーノクラッシュが決まったばかりのファムサバイブの胸部に、どこからか回転しながら飛んで来たデストバイザーが命中。直撃したファムサバイブはブランフェザーから落とされ、地面を転がりながら通常の姿に戻ってしまった。

 

「ッ……またお前か……!!」

 

誰が来たのかはファムもすぐに予想できた。仰向けに倒れた状態から右方向に首を向けた彼女は、振り向いた先でデストバイザーをキャッチしているタイガの姿を捉える。

 

「2人一緒とはちょうど良いね……纏めて死んで貰おうかなぁ!!」

 

≪STRIKE VENT≫

 

「アンタ、ホントに懲りないな……!!」

 

≪SWORD VENT≫

 

デストクローを装備したタイガがすぐさま駆け出し、立ち上がったファムもウイングスラッシャーを装備してタイガを迎撃。デストクローの爪とウイングスラッシャーの刀身がぶつかり合う中、ホロもその光景を横目で見ながらディノライフルでデストワイルダーを狙い撃つ。

 

「来ると思っておったわ……ちょうど良いタイミングじゃ!!」

 

『グルァ!?』

 

狙撃されたデストワイルダーが地面に倒れ、ディノライフルのボルトアクションを行いながらもホロはアリーナの壁のガラスを見据える。その視線は正確に、現実世界からこちらを見ているラルゴ達と合わさっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――何だよ、これ」

 

ファムとタイガが参戦した後。3人の戦いを見ていたラルゴが、最初に発した一言がそれだった。

 

「何で……何でライダー同士が戦ってるの……?」

 

仮面ライダーは人々を守るヒーローだ。つい先程まで、ラルゴはそう思っていた。しかし目の前で起こっているその戦いは、彼がイメージしていたヒーローの戦いとは全く違っていた。動揺のあまり後ろに下がろうとするラルゴだったが、彼の後ろに立っていたシグナムがそれをさせない。

 

「よく見ろ、ラルゴ。あれが……お前がやろうとしていた戦いだ」

 

「ッ……し、知らない……あんな戦い、知らない……!!」

 

「目を逸らすな!!」

 

シグナムが強く言い放ち、ラルゴがビクッと怯えたように体を震わせる。それでもシグナムは、目の前で見えている戦いをラルゴにしっかり眺めさせる。

 

「ライダーの敵はモンスターだけじゃない。あんな風に、ライダー同士で戦わなければならない時もある」

 

「な、何で……仮面ライダーは、皆を守るヒーローなんじゃないの……?」

 

「それは違う」

 

ラルゴが彼女に向けてきた目は、僅かな希望に縋ろうとしているかのようだった。それに対し、シグナムは敢えてそう強く断言する事で、彼の僅かな希望すらも打ち砕く事にした。

 

「あの戦いを見ればわかるだろう? 街の平和を守るヒーローが、あんな戦いをすると思うか?」

 

「ッ……!!」

 

ウイングスラッシャーを弾かれ、タイガのデストクローで斬りつけられるファム。

 

ディノバイザーで防御するも、デストワイルダーの爪に押され気味なホロ。

 

彼等が見せている戦いが、とても良い物とは言えない物である事。それはラルゴも薄々だが感じ始めていた。

 

「ライダーは皆、あぁやって人間同士で戦わなければならない時がある。それでもライダーは戦いをやめる事ができない。どれだけ目を背けようとも、どれだけ逃げ出したいと思おうとも……その事実が変わる事はない」

 

何故、ホロがわざとモンスター相手に苦戦するフリをしたのか。シグナム達も、その理由がようやく理解できた。

 

彼の目的は、モンスターを利用してタイガをこの場まで誘導する事だった。

 

ライダーの戦いがどれだけ痛く、苦しい物なのか。

 

実際にタイガと戦っている光景を見せる事で、それをラルゴに伝えようと考えたのだ。

 

(全く、荒療治とはよく言ったものだ……)

 

下手をすれば子供にトラウマを与えかねない行動だ。それを敢えて実行に移した山岡の大胆な考えには、ザフィーラがそんな事を思うのも無理のない話だった。

 

「ラルゴ。今まで黙っていた事だが、それも敢えて伝えよう」

 

そこでザフィーラもまた、山岡やシグナムに便乗する事にした。かつて自分が行方を見失ってしまったせいで、二度と帰って来る事がなかったあの少年(・・・・)の話をする事で。

 

「4年前、ある少女の為に戦うライダーがいた。その少年はまだ16歳だった」

 

「……?」

 

「その少年は、自分を犠牲にしてでも少女を守ろうとしていた。守る為に戦いに出向いて……それから二度と、戻って来る事はなかった」

 

「……ッ!!」

 

ザフィーラが今もなお、止めてやれなかった事を強く後悔しているあの日の出来事。あの日、残された少女は酷く悲しんだ。その時の少女の嘆く声を、シグナム達は未だ忘れられずにいた。

 

「ライダー同士で戦う以上、どちらかが死ぬかもしれない。相手を殺してしまうかもしれない。自分が死んで、残された人達を悲しませるかもしれない。山岡殿も、あの白いライダーも、そんな重い覚悟を背負いながら必死になって戦っている」

 

「ラルゴ。守りたいって思うのは良いさ。けどな……その為に自分の手を穢す覚悟が、重いもんを背負っていく覚悟が、お前には本当にあるのか?」

 

「ッ……お、俺……俺は……!!」

 

覚悟がある、とは言えなかった。ライダーが一体何と戦っているのか。ライダーがどんな覚悟を背負って戦っているのか。それを今になってようやく思い知らされたラルゴは、既に先程までの自信は完全に消え失せていた。

 

「……守りたい物の為に戦う。あなたのその気持ちはとても立派よ」

 

またがる泣きそうになっているラルゴの両肩を、シャマルが後ろから優しく触れる。

 

「ライダーの力なんかじゃない。あなた達子供が、そんな物に頼らないでちゃんとした強さを得られるように……その為にあの人達は戦ってる」

 

「シャマル先生……」

 

「ラルゴ君がちゃんと強くなれるように、私達もいっぱい努力するから。だから、ね?」

 

ライダーの戦いに関わってはいけない。そんな物に頼らなくても、強くなれる方法はある。シャマル達からそう諭されたラルゴは、自分でも気付かない内に涙が止まらなくなっていた。カードデッキへの執着も、既に完全に消え失せていた。

 

「ごめん、なさい……ごめんなざい……ッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はあぁっ!!」

 

「くっ……でやぁ!!」

 

場面は変わり、ミラーワールド。こちらでの戦闘は未だ続いていた。タイガのデストクローをウイングスラッシャーで防御し、その弾かれた勢いを利用して回転したファムが回し蹴りを放つ。そこから少し離れた場所では、飛びかかろうとして来たデストワイルダーをホロがディノクローで吹き飛ばしていた。

 

「フンッ!!」

 

『グゴォォォォォッ!?』

 

「なっ……デストワイルダー!?」

 

「隙あり!!」

 

「くっ!?」

 

吹き飛ぶデストワイルダーにタイガが気を取られ、その隙を突いたファムがウイングスラッシャーでタイガを一閃。ウイングスラッシャーを放り捨てた彼女は鞘に納めていたブランバイザーの装填口を開き、引き抜いたカードを装填する。

 

≪GUARD VENT≫

 

「よっと!」

 

召喚されたウイングシールドをキャッチし、ファムの周囲に白い羽根が無数に広がっていく。それを見たタイガはデストクローをその場に捨て、デストバイザーにカードを装填した。

 

「そう何度も逃がすか……!!」

 

≪FREEZE VENT≫

 

電子音が鳴り響き、タイガがデストバイザーを大きく振り上げてから振り下ろす。するとデストバイザーから放たれた冷気が周囲の白い羽根を全て凍りつかせ、一斉に砕け散ると共に隠れていたファムの居場所もバレてしまった。

 

「げ、そんな事もできるのかよそれ……!?」

 

「ふんっ!!」

 

「うわっと!?」

 

タイガの振るったデストバイザーが、ファムのウイングシールドを遠くに弾き飛ばす。そのままファムを斬りつけたタイガは倒れ込んだ彼女を見下ろし、デストバイザーの刃先を向ける。

 

「二度も同じ手が通じると思ったのかい? だとしたら大間違いだよ」

 

「ッ……確かにね。でも良いの? アタシにばっか気を取られてて」

 

「何……ッ!?」

 

そこまで言われてハッと気付いたタイガが、即座に後ろへと振り返る。彼が振り返った先では、既に構えたディノクローにエネルギーを収束させ終えているホロの姿があった。

 

「ぬんっ!!!」

 

「ぐ……うあぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

ホロがディノクローを突き出し、放たれた衝撃波がタイガの足元に直撃。その衝撃でタイガが吹き飛ばされ、地面を何度も転がされる事となった。

 

「儂もおるんじゃ。気を抜いてはいかんぞ」

 

「ッ……き、貴様等ァ……!!」

 

うつ伏せに倒れた状態のタイガが2人を睨みつけ、並び立ったホロとファムがタイガに1歩ずつ近付いて行こうとした……その時。

 

 

 

 

 

 

≪HOLD VENT≫

 

 

 

 

 

 

「!? うわぁっ!?」

 

「何ッ……むぅ!?」

 

突如、どこからか飛んで来た謎のヨーヨー状の武器。それはファムとホロを順番に攻撃した後、それを伸ばして来た張本人の元まで一瞬に引き戻されていく。

 

「!? アレは……」

 

ファムが見上げた先にある街灯。その一番上でヨーヨー状の武器をキャッチしていたのは、カメレオンのような意匠を併せ持った灰色の仮面ライダーだった。

 

「また別のライダーじゃと……?」

 

「……はっ!」

 

灰色のライダーは街灯から飛び降り、うつ伏せの状態から起き上がろうとしているタイガの目の前にシュタッと着地。タイガもまた、その灰色のライダーの姿を見上げて驚愕した。

 

「随分苦戦してるみたいね、虎男(とらお)君?」

 

「グリジア!? どうしてここに……!!」

 

カメレオンのような灰色の戦士―――“仮面ライダーグリジア”が何故この場に現れたのか、タイガにはその理由がわからなかった。それに対し、グリジアは呆れ果てた様子でタイガを見下ろしている。

 

「これ以上戦ったところで、あなたが不利になって追い詰められるだけ。今日はもう帰るわよ」

 

「ま、待ってくれ、僕はまだ戦える!! アイツ等は僕が―――」

 

雇い主さん(・・・・・)から召集がかかったわ」

 

グリジアがタイガに向けて言い放った雇い主(・・・)という一言。それを聞いた途端、意地になってでも戦おうとしていたタイガの態度も一変する。

 

「なっ……あの人が……!?」

 

「それとも。あなたはその命令に逆らうつもり?」

 

「……くっ……!!」

 

グリジアからそう問われたタイガは悔しげながらも、両手で構えようとしていたデストバイザーをゆっくり降ろし、大人しくグリジアに従う事にした。その様子を見たグリジアは満足そうに微笑みながら、左足の太ももに装着されている召喚機―――“舌召糸(ぜっしょういと)バイオバイザー”からカードキャッチャーを伸ばし、そこに1枚のカードをセットする。

 

「ふふ、良い子ね」

 

≪CLEAR VENT≫

 

「あ、おい待て!!」

 

「ぬっ……!!」

 

カードキャッチャーにセットされたカードがそのままバイオバイザーに装填され、電子音が鳴り響く中でグリジアがタイガの左肩に触れる。するとグリジアとタイガのボディがみるみる透明化していき、2人が逃げる気だと悟ったホロがすかさずディノバイザーから銃弾を放った……が、その銃弾は壁のガラスを粉砕するだけだった。

 

「どこに行った……!?」

 

「むぅ、なんと厄介な力を……」

 

ファムとホロが周囲を見渡すが、どこにもグリジアとタイガの気配は感じ取れない。2人が逃げ去って行った事でこれ以上探しても無駄だとを悟ったのか、ファムとホロは捜索を中断し、2人一緒に現実世界へと帰還して行くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の夕方……

 

 

 

 

 

「巻き込んでしまってすみませんでした、山岡さん」

 

「なに、気にする事はない」

 

ラルゴが持っていたカードデッキを巡る騒ぎは無事に解決し、山岡達は砂浜に戻って来ていた。現在はザフィーラが再び人間態の姿となって八神道場の生徒達に師導を行っており、山岡はその様子をシグナム達と共に見守っていた。

 

「ラルゴは、もう大丈夫そうかの?」

 

「はい。あの後、何度も私達に謝って来まして」

 

「あんだけ謝られたんじゃ、流石にアタシ等も許すっきゃねぇわな」

 

あの後、ラルゴはカードデッキをシグナム達に手渡し、二度とライダーの戦いには関わらない事を固く誓った。その際に土下座してまで何度も謝って来た事から、流石のシグナム達も許してあげる以外の考えは浮かばなかったという。結果、カードデッキは山岡がホロに変身して粉々に握り砕き、騒ぎは終結する事となった。

 

「かなりの荒療治じゃったからの。上手くいって良かったわい」

 

トレーニング中、山岡が見ている事に気付いたラルゴが大きく手を振り、山岡もそれに笑顔で手を振り返す。その時ラルゴが見せた笑顔は、飛びっきり明るい物だった。

 

「ホントだぜ爺さん。あんな光景を見せられたアタシ等の身にもなってくれ」

 

「本当、見てる私達もハラハラしたわ」

 

「ほっほ、それはすまんかったのぉ♪」

 

いくらラルゴを説得する為とはいえ、その為にあそこまで危険な事をする必要が果たしてあったのか。そう突っ込みたいシグナム達だったが、そこは山岡にも考えがあった。

 

「万が一白いお嬢さんが来なかった時は、あやつにモンスターを押しつけて自分1人で撤退しとったよ。白いお嬢さんが来てくれたおかげで上手く行っただけじゃ」

 

「ねぇ、その白いお嬢さんってアタシの事?」

 

ちなみにその白いお嬢さんこと夏希はと言うと、山岡達のすぐ近くの石階段に座りながら、切ったスイカを食べているところだった。彼女の近くには食べ終えたスイカの皮がいくつも皿に乗っており、現在もスイカを食べてはスイカの種をプップと噴き出していた。

 

「ちょ、白鳥テメェこっち飛ばすな!?」

 

「いやぁ~ごめんごめん、たまたまヴィータが近くにいたからさ~♪」

 

「わざとか、もしかしなくてもわざとだなテメェ!! よぉし上等だ、その喧嘩買ってやらぁ!!!」

 

「うわひゃあっ!? ちょ、ごめん、ごめんって!! アタシが悪かった!!」

 

「ヴィータちゃん落ち着いて!? いくら何でもアイゼン振り回しちゃ駄目だってば!?」

 

ヴィータが夏希を追いかけ回し、シャマルがそれを止めに入ろうとドタバタ騒ぎになる。その光景を見ていたシグナムが溜め息をつき、山岡は楽しそうに笑う。

 

「全く、何をやってるんだアイツ等は……」

 

「ほっほっほ、楽しく騒げるのは良い事じゃよ♪」

 

何にせよ、今回は誰も犠牲者を出す事なく騒ぎを解決する事ができた。それを素直に喜びたい山岡だったが……残念ながらそうはいかなかった。

 

「しかし、困った事になったのぉ」

 

「? どうしましたか、山岡殿」

 

「……ラルゴが拾ったデッキは、彼が家に帰る途中で拾った物じゃ。これが何を意味するか、わかるかの?」

 

「それは……ッ!!」

 

それを聞いた瞬間、シグナムもハッと気付いた。自分達が考えていた以上に、事態は深刻であるという事が。

 

「子供が拾えるような場所でもデッキが手に入ってしまうんじゃ。ライダーは元々、デッキと契約のカードさえあれば誰でも変身できてしまう」

 

「山岡殿、つまりそれは……」

 

「うむ……最悪の可能性を考慮せねばならん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ライダーのデッキを、この世界の犯罪者が手に入れてしまったケースをのぉ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな彼の予想は、最悪な形で的中していた。

 

 

 

 

 

「ヒ、ヒヒヒヒヒ……!!」

 

とある路地裏。ガスマスクの男は笑っていた。前方に落ちている物を見ながら、楽しそうに笑っていた。

 

「これだ、これだよぉ……最高の気分だぁ……ヒーッハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!」

 

夜空へと響き渡る不気味な高笑い。その高笑いをしている張本人の前には、人の形をした物(・・・・・・・)が、赤く染まった状態で道端に転がっていたのだった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

To be continued……

 




リリカル龍騎ViVid!


アインハルト「あの子の為に、私も力になってあげたいんです」

雄一「傍にいてあげるだけでも、その子にとっては嬉しい事なんじゃないかな」

イヴ「あなたは、誰なの……?」

ヴィクター「どうしてアレ(・・)がここに……!!」


戦わなければ生き残れない!
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