誰か、地獄兄弟に救いをあげて下さい……。
そんなしんみりとした感想はさておき、最新話の更新です。今回はイヴも久々に登場しますぜよ。
それではどうぞ。
(ここは、どこだろうか……?)
少女には見えていた。
崩れた壁や天井。
燃え盛る炎。
血を流して倒れている人達。
悲惨な光景の中、少女は見えていた。
しゃがみ込んでこちらを覗き込んでいる、謎の男の存在を。
『生きたいか』
男はそう問いかけた。
『助けて欲しいか』
少女は答えられなかった。
言葉を上手く話せなかった。
体も上手く動かなかった。
意識が薄っすらと、遠のいていくような感じがしていた。
消えゆく寸前、少女の瞳に映った物があった。
それは……
「―――ん」
イヴが目覚めたのは、ちょうどそんなタイミングだった。
瞼を開いた先には、既に見慣れている綺麗な天井。目覚めると同時に感じ始めたのは、ベッドと布団のフカフカで暖かな感触。そして日差しが強い部屋の窓からは、小鳥がチュンチュン鳴いている声が聞こえて来る。
(……夢、か)
彼女は思い出した。アインハルトが異世界旅行に向かっている間、自分はヴィクターの屋敷で世話になっているという事を。いざ体を起こしてみれば、イヴが現在着ている服も、今まで彼女が一度も着た事がないようなピンク色のネグリジェだった。
「……ふぅ」
イヴは再び倒れ込み、ベッドの枕に頭を乗せる。彼女は今、先程まで見ていた夢の事が気になっていた。
(あの人……)
夢の中で、イヴの前に現れた謎の男。その素顔は薄ぼんやりとしていて見えなかった。
『生きたいか』
『助けて欲しいか』
「……あなたは」
一体何者だったのか。
何故そんな夢を見たのか。
それは自分でもわからない事だった。
「あなたは、誰なの……?」
天井を見上げながら、イヴの右手が天井に伸びていく。
彼女以外に誰もいないその部屋で、イヴはただ、静かにそう問いかけていた……
一方、異世界旅行を存分に満喫していたヴィヴィオ達はと言うと……
「「「あぁ~うぅ~……ッ!」」」
カルナージに着いてから2日目の夜。この日、なのは達がオフトレツアーの恒例行事として行ったのは、練習会と称した陸戦試合。ヴィヴィオ達もその練習会に参加させて貰い、2つのチームに分かれてから合計3試合もの激戦を繰り広げた。そしてヴィヴィオ、リオ、コロナ、そしてアインハルトの4人は今……
「「「か、体が動かないぃ~……!」」」
「わ、私もです……ッ!」
「もぉ、限界超えて張り切り過ぎるからだよ~」
……やる気に満ち溢れ過ぎた結果、自分の体力を考慮せずに戦い抜いた事で限界が来てしまい、疲労で全く動けなくなっている状態だった。大きなベッドに寝転がったまま、4人は全身がガクガクした状態で思うように体を動かす事ができず、その様子をルーテシアは苦笑いを浮かべながら眺めていた。
「ル、ルーちゃんは何で平気なの~……ッ!」
「そこはそれ、年長者なりのペース配分って奴よ♪」
なお、同じく陸戦試合に参加していたルーテシアはピンピンした様子だった。まだ練習会への参加回数が少ないヴィヴィオやコロナ、今回が初参加となるリオとは違い、ルーテシアは過去に何度も参加経験がある為、慣れている彼女はペース配分もバッチリなようだ。
(……それにしても)
ベッドに寝転がりながらも、アインハルトは楽しそうに談笑しているヴィヴィオ達の様子を見据える。
(この子達はやっぱり凄い……)
巨大なゴーレムを創成し、自在に操る事を得意としているコロナ。
ヴィヴィオやアインハルト同様、身体強化魔法で独特の魔法戦技を繰り出すリオ。
そして高いスピードを活かし、素早く正確なカウンター等のテクニカルな技で戦うヴィヴィオ。
今回の陸戦試合を経て、アインハルトは彼女達に対する興味がますます強まっていた。もっと彼女達と勝負をしてみたいと考えていた。ノーヴェの誘いを断らなくて正解だったとも思っていた。
(もっと、彼女達と戦ってみたい……そうすれば……!)
自分はもっと強くなれるかもしれない。守りたい物を守れるくらいの強さを手に入れられるかもしれない。そうすれば
「……ッ」
そこまで考えたところで、アインハルトは考えが途切れた。そうなった理由は、この日のとある出来事が切っ掛けだった。
『お待たせ、アインハルトちゃん』
それはこの日の朝の出来事。まだ子供組がスヤスヤ眠り、大人組もごく一部以外は眠りについている時間帯で、早起きをしたアインハルトは寝巻きから動きやすい服装に着替えた後、同じく早起きをしていた雄一と再び対面していた。
『すみません。これから朝食なのに、お時間を取らせてしまって』
『ううん、気にしないで。メガーヌさんには言ってあるから。そうだ、ココア飲む?』
『あ……頂きます』
宿泊ロッジの裏側までやって来た後、雄一は用意した椅子とテーブルまでアインハルトを案内し、2人一緒に椅子へと座り込む。それからアインハルトの為に温めていたココアを差し出し、アインハルトも素直にそれを両手で受け取り一口だけ喉に流し込む。喉から体内に広がっていくココアの温かさは、自然と彼女の心をも落ち着かせていた。
『それじゃ、昨日の話の続き……って事で良いんだよね?』
『はい。お願いします』
『……アインハルトちゃんは言ってたね。僕の話を詳しく聞きたいって』
『……はい』
『どうして知りたいと思ったのか……聞いてみても良いかな?』
この時、雄一は内心迷っていた。自分がかつて道を踏み外しそうになった戦いの事を、彼女に話すべきかどうか。あまり深くは話さず、簡潔に話すだけに留めるべきか。あの戦いの事は、できる事なら子供であるアインハルトには話すべきじゃないとは雄一も考えていた。
しかしその考えは……
『……雄一さんが話していた、終わりのない戦い』
アインハルトが次に発した言葉から、一変する事となる。
『まさかとは思うんですが……それは、“鏡”が関係している戦いですか?』
『ッ!?』
雄一の目が大きく見開いた。想定してもいなかったからだ。まだ12歳である少女の口から、自分がかつて関わっていた戦いについて、ピンポイントでその全貌を当ててしまうような発言が飛び出して来たのだから。
『アインハルトちゃん、どうしてそれを……!?』
『……すみません。ある人から口止めされていて。私も、あまり詳しい事は話せません。ですが』
アインハルトもまた、ある人物に口止めされていた事から、あまり詳しい事情を雄一に話す事はできなかった。それでも、彼女は雄一に聞いてみたかったのだ。
『最近、1人の戦士と出会いました』
自分が最近知り合った、
『あの子の為に、私も力になってあげたいんです……だから……!』
だから、アインハルトは少しだけ雄一に話してみる事にした。ある少女が仮面ライダーとして、今もミッドで戦っている事を。自分もその少女に、危ないところを助けて貰った事を。その子の為に、自分も何か力になってあげたいと考えている事を。
『……そっか』
アインハルトの話を、雄一は何も言わず、黙って真剣に聞いていた。話している時の彼女の目が、心からそう思っている事を察していたからだ。彼女の話を一通り聞いた雄一は、眠気覚ましのコーヒーを口にしてから再度口を開いた。
『アインハルトちゃんは、その子の力になってあげたい……そう思ったんだね』
『はい……彼女は、今も無茶を続けていると思います。そう思うと……』
『……その子は、アインハルトちゃんから見てどんな子かな?』
『へ……?』
雄一から投げかけられた質問に、アインハルトが思わずキョトンとした表情を浮かべる。雄一は優しく微笑みながらも言葉を続けた。
『あ、ごめんね。急に変な質問しちゃって。その子がどういう子なのか、俺も気になっちゃっただけだよ。大丈夫、話せない事は無理に話さなくても良いからさ』
『私から見て、どんな子、ですか……そうですね』
ココアを口にしながら、アインハルトはこれまでの出来事を思い返した。
初めてその少女と出会った時の事。
その少女に危ないところを助けて貰った時の事。
その少女と一緒に食事をしている時の事。
その少女が眼鏡を手に入れてご機嫌になっている時の事。
その少女が物静かながらも、穏やかな笑顔を浮かべている時の事。
『……とても、優しい子です』
それらを思い浮かべて、アインハルトが最初に思った事がそれだった。自分の記憶がないはずなのに。そうだと思わせないような明るい雰囲気が、その少女にはあった。
『いつも、私の事を気にかけてくれていて。その優しさが凄く嬉しくて……申し訳ないと思っている自分もいます』
自分はまだ、彼女に何も恩返しらしい恩返しができていない。その少女が戦いに出向くたび、彼女の手助けをしているのは彼女と同じライダーだけ。ライダーじゃない自分は何も力になれていない。そんな歯痒さがアインハルトの中にはあった。
『その子の事、大事に思ってるんだね』
『え? あ、えっと、その……仲良しというか、私はただ、その……!』
雄一からそう言われ、思わず恥ずかしそうに顔を赤くするアインハルト。慌てふためく彼女を、雄一は温かい目で見ながら穏やかに微笑んでいた。
『アインハルトちゃんはさ。その子が笑っている理由、わかるかな?』
『え?』
次に雄一から告げられた問いかけ。それを聞いた時、アインハルトはすぐに答えられなかった。
『たぶんだけどさ……きっと、アインハルトちゃんがいるからじゃないかな』
『私、が……?』
私がいる事が、どうしてその少女の笑顔に繋がるのか。理由がわからないアインハルトの為に、雄一は言葉を続けた。
『ライダーの戦いは凄く痛くて、凄く苦しいんだ。それでもライダーは自分から戦いをやめられない。1人でずっと戦い続けると、いつか壊れていまいそうになる』
『ッ……それは……』
『でも、その子はきっと違うと思うんだ。だって、その子には君がいるから』
『あっ……』
その少女の傍にはアインハルトがいるから。それを聞いて、アインハルトは驚いたような表情を浮かべた。
『帰りを待ってくれている人がいる……それだけでもかなり違う事だと俺は思ってる。君がその子の傍にいてあげるだけでも、その子にとっては嬉しい事なんじゃないかな』
『傍に、いてあげる事だけでも……』
『俺もかつてはそうだった。誰かが傍にいてくれるだけで、俺はそれが凄く嬉しいって思えたんだ……もしそうじゃなかったら、俺は今頃、どこかで壊れてしまっていたと思う』
雄一は宿泊ロッジの2階の窓を見上げる。その窓の先の部屋で今も静かに眠っているであろう、かつての戦いで自分を心配してくれた少女の事を思いながら。
『守ってあげたいって気持ちは、俺にも凄くわかるよ』
『はい……』
『でもだからって、誰かの為に自分の事を顧みないのだけは絶対に駄目だよ。俺はそれで失敗しちゃったから』
『うっ……わ、わかってます』
図星だったのか、アインハルトが言葉に詰まりかける。雄一は苦笑しながらも優しい表情で語りかける。
『こういうのってさ、難しく考えなくて良いと思うんだ。誰かが傍にいるだけで、人は支えて貰う事ができると思うから』
『……はい』
『だからアインハルトちゃんも、ずっとその子の傍にいてあげて。それは君とその子にとって、お互いに支え合える力になるはずだから』
(私が、傍にいてあげる事……)
それが、早朝にあった1つの出来事だった。雄一から受け取った言葉が脳裏に浮かび、アインハルトは拳を強く握り締める。
「? アインハルトさん、どうかしましたか?」
「え……あ、いえ。何でもありません」
ヴィヴィオから呼びかけられ、それにハッと気付いたアインハルトがすぐに首を振る。不思議そうに見るヴィヴィオだったが、その表情はすぐに笑顔に変わる。
……~♪~~♪~♪
「あ、始まった!」
「……?」
宿泊ロッジの1階から聞こえて来たのは、鮮やかなピアノの音色。それを聞いたヴィヴィオ達が興奮し、何も知らないアインハルトはクエスチョンマークを浮かべる。
「この音色は……」
「あぁ、そういえばアインハルトはまだ知らなかったよね。この音色ね、お兄ちゃんが演奏してるの」
「! 雄一さんが……?」
「雄一さん、ピアニストを目指してるんですって!」
「地球にいた時も、コンクールで入賞した事もあるとか!」
ルーテシアやヴィヴィオ達がそう説明している間も、雄一が演奏しているピアノの音色がロッジ内を流れていく。それは陸戦試合で疲れているヴィヴィオ達だけでなく、別の部屋でのんびり過ごしていたフェイト達や、一緒に栄養補給用のジュースを作っていたなのはやメガーヌ、風呂上がりのスバルやティアナ達の耳にも聞こえており、音色を聞いた全員の心を癒していく。
(なんて、素敵な音色……)
雄一が奏でる癒しの音色。それを聞いている内に、自分の心が落ち着いていくのがわかった。何となく、疲れも消えていくような感じがしていた。
(……イヴ)
彼女は今、どうしているだろうか。ウェイブ達と一緒に過ごしているだろうか。ライダーとして戦いに出向いているだろうか。それはカルナージにいるアインハルトにはわからない。
(この音色……彼女にも、聞かせてあげたい……)
しかし、残念ながらそれは叶わない。だからアインハルトは決めている事があった。
この素敵な音色の事を、彼女にも話そう。
今回の旅行で体験した事を、彼女にいっぱい話そう。
彼女の事だ。そうすればきっと、楽しそうな様子で聞いてくれるかもしれない。
あの明るい笑顔を、また見せてくれるかもしれない。
(待っていて下さい、イヴ……!)
それから時は大きく流れる。
ヴィヴィオ達がカルナージで4日目の朝を迎えている頃、ミッドの方では……
「つ、疲れた……ッ!」
イヴは今、とてつもないグロッキー状態となっていた。
「もう、イヴったら。無理して練習を続けようとするからよ」
この日もまた、イヴはヴィクターの屋敷で
「申し訳ありません、お嬢様。私からも強く止めた筈なのですが……」
「全く、世話の焼ける子ね……これで少しは懲りたでしょ? 今後はペース配分をきっちりなさい」
「は、はい……ッ……」
「……前に買い出しに行った時、美味いアイスクリーム屋を見ました。そこで休憩するのはどうでしょう?」
「あら、良いですわね。ぜひそうしましょう♪」
そういう訳で現在、イヴ達はリムジンに乗って街のアイスクリーム屋まで出かけようとしていた。吾郎が運転席で運転し、助手席に座ったエドガーがアイスクリーム屋のチラシを見てアイスの種類を見ている。そして後部座席では未だ疲れが取れていないイヴの為に、ヴィクターがその肩を貸すようにしてイヴを休ませてあげている。
「ところでエドガー。あれから、イヴの調子はどうかしら?」
「今のところ、順調ですね。体力の消費が早かったのも、やはり魔力の制御が上手くできていなかったのが大きいかと。今は少しずつですが、武装形態を保つ時間も伸びていっております」
「そう、それなら良かった」
ヴィクターとエドガーが練習に付き合ってあげたのもあってか、イヴは少しずつだが
(本当なら、戦わないのが一番なのだけれど……)
モンスターとの契約がある以上、残念ながらそれは叶わない話である。だからこそヴィクターは、イヴが少しでも戦いやすくなれるよう、彼女が戦闘を行える時間を伸ばしてあげたいと思っていた。同時に、そうする事しかできない自分の無力さが歯痒いともヴィクターは思っていた。
「イヴ……どうしてあなたなの……?」
こんなにも優しい子が、どうしてライダーになってしまったのか。その理由はウェイブの調査を以てしても未だわかっていない。自身の肩に寄り掛かりながら眠っているイヴの頭を優しく撫でながら、ヴィクターはやり切れない気持ちでいっぱいになっていた。
そんな中、リムジンが山の中のトンネルに入ろうとした時だった。
「……ッ!?」
キキィィィィィィッ!!
「きゃっ!?」
「ッ……!?」
リムジンを運転していた吾郎の表情が一変し、突然急ブレーキをかけてリムジンを停車させた。その勢いで体が大きく前に引っ張られたヴィクターが悲鳴を上げ、突然の大きな揺れにイヴも即座に目を覚ます。
「どうしましたの!?」
「ッ……アレは……」
トンネルに入る前に停車したリムジン。その前方にあったのは大きな木箱だった。道を塞ぐように置かれているその木箱を見たヴィクター達は不審に思い、吾郎は特に警戒を強めていた。
「アレは、木箱でしょうか……?」
「……俺が見て来ます。お嬢様方は待っていて下さい」
リムジンを降りた吾郎はカードデッキを取り出し、出現させたベルトを腰に装着してから恐る恐る木箱に近付いて行く。その様子をリムジンの中から見ていたイヴは、何か嫌な予感がしていた。
「……ッ!? 駄目、逃げて……!!」
「「え?」」
突然、イヴがそう叫び出す。それと同時に……
バキャアッ!!
「……ッ!!」
木箱に耳を当てて中身を確認しようとした吾郎も、身の危険を察知し即座に後ろへと下がる。その瞬間、木箱の中から機械で出来た触手のようなチューブが飛び出し、そのまま木箱が破壊されてその中身が露わになる。
「なっ!?」
「そんな、アレは……ッ!!」
その正体を見て、ヴィクターとエドガーは驚愕した。彼女達の前に現れたのは……
『『ピピ、ピピピピピピ……!』』
複数のチューブを伸ばした、球体状のボディを持った謎の機械兵器が2体。その機械兵器の正体を、ヴィクター達は知っていた。
「ガジェットドローン……ッ!? どうしてアレがここに……!!」
『ピピピピピ……!』
「!? 危ないっ!!」
現れた2体の機械兵器―――ガジェットドローンが黄色いコアのような部分を点滅させ始め、それを見たイヴ達がすぐにリムジンから飛び出すように降りた。その直後……
チュドォォォォォンッ!!
「「きゃあっ!?」」
「くっ!?」
ガジェットドローンが発射した光線が、リムジンに命中し爆発を引き起こした。直前で脱出したヴィクターとイヴは互いを抱き締めながら道路を転がり、エドガーは吹き飛びながらも道路を転がって素早く体勢を立て直す。
「お嬢様、イヴ様、お怪我は!?」
「ッ……大丈夫、イヴも無事ですわ……!!」
「全員下がって!! 変身ッ!!」
吾郎はすぐさまカードデッキをベルトに装填し、ゾルダに変身してマグナバイザーから銃弾を発射。ガジェットドローンが伸ばそうとして来るチューブを銃弾で弾き返す中、イヴもカードデッキを取り出して戦闘に挑もうとしたが……
「!? しまった……!!」
鏡面として使えそうな物は、周囲にはリムジンしかない。そのリムジンもガジェットドローンの攻撃で大破してしまった為、現在イヴはイーラに変身できない状態となっていた。
『ピピピピピ……!』
「やってくれるじゃありませんの……ブロイエ・トロンベ!!」
≪Set up≫
ヴィクターはガジェットドローンを睨みつけながら、自身が所有しているデバイス―――“ブロイエ・トロンベ”をすぐさま起動。長い金髪を結わえ、姫騎士のような意匠を持つバリアジャケットをその身に纏った彼女は斧槍となったブロイエ・トロンベを構え、ガジェットドローンが撃って来た光線を的確に弾き返す。
「四式……“瞬光”!!」
『ピピ、ガガガ……ッ!?』
ブロイエ・トロンベの刃先に電撃を纏わせ、その一撃を振るったヴィクターは1体のガジェットドローンを斜めに大きく斬り裂いた。斬り裂かれたガジェットドローンは電撃でショートを起こしたのもあって、少し震えた後に爆発して木っ端微塵となる。
「ふっ!!」
『ピピピ……!』
一方、ゾルダと戦っていた方のガジェットドローンは彼の銃撃を受けた後、突然その黄色いコアが強く発光。それと共にそのボディを素早く変形させ始めた。
「!? 何……ッ!!」
『ギギ、ガガガガガガ……!!』
ガジェットドローンは姿を変え、青いトンボのような特徴を持ったレイドラグーンガジェットとなってゾルダに攻撃を仕掛ける。レイドラグーンガジェットが振り下ろして来た槍をゾルダがかわす中、その光景を下がって見ていたイヴは……
「!? アレ、は……」
―――××××、逃げろ……ッ!!
ズキィン……
「ッ……う、くぁ……!!」
突然、謎の頭痛がイヴに襲い掛かった。イヴは両手で頭を押さえながらその場に蹲り、その様子にヴィクターとエドガーが気付いた。
「!? イヴ、どうしたの!?」
「イヴ様、しっかり!!」
「ッ……ハァ!!」
『ギシャアッ!?』
イヴの身に何かあった事を察したゾルダも、レイドラグーンガジェットの槍をマグナバイザーで防御し、逆に力強く蹴り倒す。その後すぐにマグナバイザーの装填口を開き、1枚のカードを装填した。
≪SHOOT VENT≫
「ハァッ!!!」
『ギシャアァァァァァァァァァッ!!?』
召喚されたギガランチャーを構えたゾルダは、迫り来ようとしていたレイドラグーンガジェット目掛けて強力な砲弾を発射。正面から堂々と砲弾を受けたレイドラグーンガジェットは呆気なく爆散し、その残骸が周囲に散らばって行く事となった。
「ッ……何だんだ、コイツは……」
ゾルダは変身を解いて吾郎の姿に戻り、周囲に散らばった残骸の中から1つの小さな薄いプレートを発見。それを拾い上げ、そこに刻まれている文字を発見した。
(! これは……?)
プレートに刻まれていたのは、『J・S』という何かのイニシャルだった。ガジェットドローンを知らない吾郎は眉を顰める事しかできなかったが、その後ろからヴィクターがイヴに呼びかける声が聞こえて来た。吾郎もすぐにそちらの方へと駆け寄って行く。
「イヴ、しっかりして!! イヴ!!」
「う、あぁ……ッ!?」
両手で頭を押さえながら倒れ込んだイヴ。ヴィクター達が必死に呼びかける中、イヴの頭痛は更に大きくなっていく。
(痛、い……頭が……ッ……!!)
意識がどんどん薄れていく。自分の名前を呼んでいるヴィクター達の声も、段々小さくなっていく。
この頭痛は何なのか。
先程聞こえて来た声は誰の物なのか。
何もわからないイヴは、ただただ頭痛に苦しんだ後、次第にその意識が闇へと落ちていくのだった……
場所は変わり、ミッドチルダ東部……
「―――そうか、わかった」
ビルの屋上から、フードを被った男が街全体を見渡していた。男は通信端末で何者かの連絡を受けた後、通信の切れた端末を懐に収めてから溜め息をつく。
「また派手にやってるようだな、あの変態殺人鬼め」
男は被っていたフードを脱ぎ、その素顔を露わにする。
「全く。奴と言い椎名と言い……」
「どいつもこいつも、面倒臭い奴等だな……!!」
ミッドチルダ東部の街を見下ろしていた男。
その左目は、
その右目は、
To be continued……
リリカル龍騎ViVid!
ウェイブ「イヴちゃんが倒れた……!?」
イヴ「誰かの、声が、聞こえて来たの……!」
手塚「奴め、また動き出したか……!!」
シャーリー「2人共、すぐミッドに戻って下さい!!」
戦わなければ生き残れない!
???「さぁ、いっぱい愛し合おうぜぇ……!!」