リリカル龍騎ライダーズinミッドチルダ   作:ロンギヌス

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はいどうも、第30話の更新です。

現在も活動報告にて募集中のオリジナルライダーですが、読者の皆様から送られて来る設定がどれもこれも面白過ぎて、どれを選ぶべきか物凄く悩んでおります。1人しか選べないのが本当に辛いでぇ……(←自分で自分の首を絞めている人)
なお、オリジナルライダー募集は8月末まで続きますので、もし送ってみたいと思った方は活動報告までどうぞ。













戦闘挿入歌:果てなき希望









第30話 恐怖心

ミラーワールド内のどこかの建物内部……

 

 

 

 

「くっ……はぁ、はぁ……!!」

 

いつもの通り、ミラーワールドへと戦いに出向いていたイーラだったが……彼女は今、息が絶え絶えになるほど追い詰められていた。

 

「あれれぇ、もうバテちゃったのかなぁ? お嬢さ~ん♡」

 

彼女を追い詰めているのは、エビルソーの稼働音をブンブン鳴らしながら近付いて来るリッパーだった。楽しそうな口調で近付いて来る彼は、興奮のあまり声がいくらか上ずっている。

 

「ッ……負け、ない……やあぁっ!!」

 

「おっとぉ!!」

 

膝を突いた体勢から立ち上がったイーラがデモンセイバーを突き出し、リッパーはそれをエビルソーで防御。刃と刃がぶつかり合う中、エビルソーの回転した刃がデモンセイバーの刃をギャリギャリと削っていき、結果としてデモンセイバーの方がイーラの手から弾き飛ばされてしまう。

 

「あっ……!?」

 

「へっへぇ、ガラ空きだぁい!!」

 

「きゃあぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

デモンセイバーを手離してしまい、武器を失ったイーラをリッパーがエビルソーで何度も斬りつける。壁に叩きつけられたイーラは床に倒れ込み、胸部を両手で押さえながら苦しそうに呻く。

 

「ゲホ、ゴホッ……」

 

「おや、苦しそうだねぇ。ちょっとやり過ぎちゃったかな? 可哀想に……今度はちょっとだけ手加減してあげるからねぇ~♪」

 

「ぐ……がはっ!?」

 

リッパーに蹴り転がされたイーラがうつぶせの状態になる。そこにエビルソーの刃を高速回転させたリッパーは、大きく振りかぶったエビルソーを一気に振り下ろし……

 

「ヒヒャハハハアァッ!!!」

 

ズギャギャギャギャギャアッ!!

 

「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!?」

 

イーラの背中を斜めに斬りつけた。あまりの痛みにイーラは甲高い声で悲鳴が上がる。

 

痛い。

 

苦しい。

 

殺される。

 

死ぬ。

 

いやだ。

 

怖い。

 

死にたくない。

 

助けて。

 

殺さないで。

 

お願い。

 

「はぁ、はぁ……ッ……ぐ、うぁ……!!」

 

傷つけられる痛み。殺されかけている恐怖。心が折れかけたイーラは、床を這いずってでもリッパーの襲撃から逃げようとしたが……

 

「おっとぉ、どこに行く気だぁい?」

 

「あがっ……!?」

 

残念ながらそれは叶わない。エビルソーで斬りつけられた彼女の背中をリッパーが右足で踏みつけ、それ以上逃げられなくしてしまう。

 

「い、いや……助け、て……お願い……ッ!!」

 

「えぇ~もう帰っちゃうのぉ~? もうちょっとおじさんと遊ぼうよぉ~♡」

 

「ひっ……!? い、いやだ、いやぁ……ッ!?」

 

怯えてまともな抵抗ができないイーラを捕まえ、仰向けの状態にしてからリッパーが床に押さえつける。そしてイーラの頭を掴んだまま、彼女の顔面を右手で思いきり殴りつけた。

 

「がっ……」

 

「おじさん、まだまだ足りない(・・・・)んだよねぇ……もっともっと楽しもうよぉっ!!!♡」

 

「がふっ!? ごはっ……や、め……てっ……!!」

 

イーラが懇願しようとも、リッパーは殴る手を止めようとしなかった。右手でひたすら彼女の顔面を殴りつけ、そのたびにイーラの仮面が罅割れ、ひしゃげて徐々に歪んだ形状になっていく。そんなズタボロ状態になったイーラの仮面をペタペタ触りながら、リッパーは興奮した様子で顔を近付ける。

 

「あぁ、これだ、これだよぉ……もっともっと味わいたいぃ……!!」

 

「げほっ……だ、助げ……でっ……」

 

「お嬢さぁん、俺の……俺の愛を受け取ってくれよぉ……!!」

 

そんなリッパーが再び構えたのはエビルソー。稼働してブンブン音を鳴らしているそれを高く振り上げ、イーラ目掛けて振り下ろそうとする。

 

「い、いや、だ……ッ……」

 

「イクよぉ……お嬢さぁぁぁぁぁんッ!!!」

 

そして今、再びエビルソーが振り下ろされる。高速で回転しているその刃が、イーラの首元を狙い―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――ッ!!!!!」

 

―――かけたところで、目覚めたイヴがガバッと起き上がった。

 

「はぁ、はぁ、はぁ……」

 

場所はどこかの建物ではなく、常夜灯が点いた薄暗い部屋の中。イヴが必死に周囲を見渡すが、どこにもリッパーの姿は見当たらない。

 

(今の、は……夢……?)

 

フカフカの温かいベッドの中。自分が着ているのはフリルが付いた水色の可愛らしいネグリジェ。そして自分のすぐ隣で眠っているのが、ピンク色のネグリジェを着たヴィクター。そこまで確認したところで、イヴは先程までの出来事が全て夢である事を悟った。

 

(……良かった)

 

リッパーはいない。それがわかっただけでもイヴは内心ホッとしていた……そう、ホッとできるはずだった。

 

「……?」

 

イヴは気付いた。布団を握っていた右手が、僅かにカタカタと震えている事に。左手で右手を押さえても、震えが収まる様子はなかった。

 

「嘘……どうして……ッ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『俺の愛を受け止めてくれよぉ、可愛い子ちゃ~んッ!!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――!?」

 

その瞬間、イヴの中で起こったフラッシュバック。その光景は、イヴにとって悪夢(・・)だった。

 

「う、ぁあ……はっ……!!」

 

リッパーが自身を斬りつけて来る姿。

 

リッパーが自身を殴りつけて来る姿。

 

リッパーが自身を踏みつける姿。

 

リッパーに甚振られる自身の姿が、イヴの頭の中で次々と浮かび上がって来た。そのたびに、イヴの中でリッパーに対する恐怖心が少しずつ増幅していき、彼女の右手も震えが収まらなくなっていく。

 

「ッ……いや……いやだ……!!」

 

「イヴ……?」

 

たまたま起きたヴィクターがイヴに呼びかけるも、それに気付いていないイヴは震えが大きくなっていき、それと共に呼吸も徐々に荒くなっていく。

 

「はぁ、はぁ……い、いや、やめて……殴らない、で……ッ!!」

 

「ッ……イヴ、どうしたの……!? イヴッ!!」

 

「ひっ!? いや、来ないで……!!」

 

イヴの様子がおかしい事に気付いたヴィクターが強く呼びかけるも、恐怖に苛まれていたイヴはそんなヴィクターの伸ばした手を拒絶しようとする。それでもヴィクターは手を伸ばす事をやめず、抵抗するイヴを強引にでも自身の傍まで抱き寄せた。

 

「落ち着きなさい、イヴ!! 私よ!!」

 

「ッ……ヴィクター、さん……?」

 

強引にでも抱き寄せた事で、イヴはやっとヴィクターの存在を認識する事ができた。目の前にいるのが彼女だと理解した事で、抵抗していた彼女の動きが止まる。

 

「大丈夫よ、イヴ。私が付いてるから」

 

「あ、ぅ……う、あぁぁぁぁ……ッ!!」

 

ヴィクターが傍にいるとわかった事で、心が安心したからか。徐々に体の震えが収まってきたイヴはその場で泣き始め、ヴィクターの胸に顔を埋めるように強く抱き着いた。ヴィクターもそんな彼女を抱き締め、あやすように語りかけながら彼女の頭を優しく撫で続ける。

 

「ッ……イヴ、あなたやっぱり……」

 

どうしてイヴがこんな状態になってしまったのか、ヴィクターは既に原因を理解していた。それはこの日の昼間、ウェイブと話をしている中で聞いていたからだ。

 

(ジャック・ベイル……とても許せない事をしてくれたわね……!!)

 

これまで、イヴが戦ってきたのはモンスターばかり。それ故、彼女が自分以外のライダーと戦ったのはリッパーが初めてだった。そのリッパーから変態染みた言動と共に暴行を受けた為に、イヴはリッパーに対する死の恐怖心が芽生えてしまっていたのだ。

 

「可哀想に、とても怖かったのね。大丈夫、私達があなたを守るから……!」

 

ヴィクターがそう語りかけると、イヴが更に強くヴィクターに抱き着き、ヴィクターの着ているネグリジェを掴む力が強まった。それによりネグリジェが皴になる事もヴィクターは全く気にせず、今はとにかくイヴを落ち着かせる事だけに意識を向け続けるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

イヴがそんな事になってしまっている中、ミッドの住宅街では……

 

 

 

 

「ふぅ……」

 

手塚は今、この日の仕事を終えて急いで帰宅しようとしているところだった。時間帯は既に夜の21時。家に到着する頃には、既に愛娘は明日に備えて就寝している事だろう。

 

(すっかり遅くなってしまったな……ハラオウンもこの日は遅くなるんだったか……)

 

ジャック・ベイルが起こした事件の捜査を担当している為、フェイトもこの日は夜遅くまで管理局執務官の捜査部で仕事中である。今の手塚では、彼女やティアナ達が無事に事件を解決してくれる事、そして彼女達の身に何事もないまま終わってくれるのを祈る事しかできなかった。

 

「もうこんな時間か……急がないとな」

 

既に時間帯は21時半。これでは家に帰る頃には22時になってしまっている事だろう。これでは夕食の時間が遅くなると考え、手塚は早足で移動しようとした……しかし。

 

ポスンッ

 

「……!」

 

街灯に照らされた十字の道を通りかかった時。道をまっすぐ進もうとしていた手塚の横方向から、グシャグシャに丸められた紙屑が飛んで来た。それが頭に当たった手塚は紙屑の存在に気付き、それが飛んで来た方向に視線を向ける。

 

「ども、エイのお兄さん♪」

 

「お前は……」

 

紙屑を飛ばして来たのはウェイブだった。街灯に寄りかかった状態で腕を組んでいた彼は、手塚が視線を向けて来たのを見て、親指・人差し指・中指の3本を伸ばした右手で敬礼のようなポーズをしながら笑みを浮かべる。

 

(……夕食は当分先か)

 

帰宅する頃には0時を過ぎてしまっているかもしれない。手塚はそう考えながらも通信端末で『帰りは遅くなる』となのはにメールを送った後、ウェイブの呼びかけに応じる事にしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「手を貸して欲しいだと?」

 

「そゆ事」

 

その後、場所を移動して無人の公園までやって来た手塚とウェイブ。公園に到着すると同時に振り返ったウェイブが手塚に告げたのは、手塚達との共闘の提案だった。

 

「お宅、ジャック・ベイルって犯罪者を知ってる?」

 

「……つい先日、奴が起こした事件の現場に出くわしたばかりだ」

 

「ありゃ、マジで? じゃあもう知ってるか」

 

例の殺人現場に遭遇して以降、手塚は事件の解決をフェイト達に一任し、自身は彼女達が行う捜査の邪魔にならないように自分からは極力事件に関わらないようにしていた。ライダーやモンスターが関わっているならまだしも、それらと関わりのない事件にまで手塚は深く首を突っ込むつもりはなかった。

 

「管理局の執務官からも、部外者は関わらないようにと口うるさく言われていてな。脱獄犯を捕まえるだけなら、管理局の人間に任せるのが一番だろう」

 

「ま、普通はそう考えるだろうねぇ……けど、そうも言ってられない状況になってきたと言ったらどうする?」

 

「……何が言いたい?」

 

「ジャック・ベイルがライダーになったかもしれない」

 

ウェイブの口からいきなり発された爆弾発言。これには手塚も思わず目を見開き、ウェイブの方に素早く振り向いてしまうほどだった。

 

「……確かな情報か?」

 

「間違いないだろうねぇ。うちの連れも、奴さんの被害を被ったばかりでね。このままじゃ色々マズい事になりかねない」

 

「それで、俺達と手を組みたいという事か……」

 

「ただでさえ厄介な相手なのに、そんな奴がライダーの力まで手に入れたんだ……奴をどうにかしたいのは、お宅等だって同じでしょ?」

 

「……」

 

手塚の脳裏に真っ先に思い浮かんだのは、かつて元いた世界で自身を葬り、このミッドでも己の本能のままに暴れまくった凶悪な男の姿。普通の犯罪者ならまだしも、ライダーの力を手に入れた犯罪者が今も悪事を繰り返しているとあっては、流石の手塚もそれをスルーしている訳にはいかない。その為、ウェイブと再び共闘関係を結ぶ事自体は手塚も特に文句はなかった……しかし。

 

「……1つ聞きたい事がある」

 

「うん?」

 

「……お前が言っていた連れ(・・)の事だ」

 

手塚が問いかけたのは、アイズと共に行動をしているイーラの事だ。彼がその事で問いかけて来た途端、ウェイブの眉がピクリと僅かに反応を示した。

 

「その連れとは、あの白いライダーの子……イーラで間違いないか?」

 

「……へぇ、覚えてたんだ。あの子の事」

 

「彼女は今どうしている?」

 

「今は知人に預けてるよ。信頼のできる相手にね」

 

「その子の事で、お前には聞きたい事が山ほどある。彼女の素性についてな」

 

これまで、手塚がイーラと出会った回数はほんの数回。しかもトルパネラの大群と戦って以来、彼はまだ一度も彼女と対面していなかった。だからこそ、彼女の素性について手塚はウェイブに聞きたいと思っていたのだが……

 

「悪いけど、俺からは何も話せないよ」

 

その問いかけに、ウェイブは応じようとしなかった。

 

「……何故話せない?」

 

「あの子の事情はちと複雑でさ。状況がある程度わかるまで、まだ話す訳にはいかないのよ。管理局の人間と深い関わりを持っているお宅等にはまだ、ね」

 

「こちらの事は色々知っておいて、フェアじゃないな」

 

「世の中、フェアじゃない事柄なんてしょっちゅうでしょ? いくらアンタでも、ちょっと図々し過ぎるよ」

 

ウェイブも話の途中から笑みが消失し、鋭い目付きで手塚と正面から睨み合う。それにより2人が今いる公園は空気がどんどん張り詰めていき、両者共に無言のまま睨み合う時間が続いた……その時。

 

 

 

 

 

 

キィィィィィン……キィィィィィン……

 

 

 

 

 

 

「「―――ッ!?」」

 

突然響き渡って来た金切り音。モンスターの気配を察知した2人は睨み合いをやめ、モンスターの気配がする方角を把握する。

 

「……話は一旦後だな」

 

「だね」

 

優先すべきはモンスターの討伐。2人は一瞬だけ互いに目を合わせてから、両者同時にその場から走り出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな彼等が向かって行った先、とある川沿いの道では……

 

「はぁ、はぁ……ッ!!」

 

「ヒッヒッヒッヒッヒッ……」

 

哀れな女性がまた1人、ある凶悪な男にその後を追われているところだった。街灯の明かりが少なく真っ暗な道の中、女性はハイヒールが脱げるのも気にせず必死に逃げており、その後ろからはリッパーがリッパーバイザーの刃先を地面に引き摺りながら、不気味な笑い声を上げている。

 

「待ってよぉ、お姉さん……俺と存分に愛し合おうよぉ……♪」

 

「い、いや、来ないで……!?」

 

引き摺られているリッパーバイザーの刃先が甲高い金属音を鳴らしており、それが余計に女性の恐怖心を倍増させていた。このままではリッパーに追い付かれてしまう。ハイヒールが脱げた後も裸足で必死に逃げようとする女性だったが……そんな彼女に、更なる悲劇が襲い掛かって来た。

 

 

 

 

 

 

キィィィィィン……キィィィィィン……

 

 

 

 

 

 

『ギギギッ!!』

 

「え……きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

川の水面から水飛沫と共に飛び出して来たスラッシュクレイフィが、川の上の橋を走ろうといていた女性に襲い掛かり、両腕のハサミで器用に捕まえてから川の方へ飛び込んで行ってしまった。

 

「……は?」

 

その光景を目の前で見せつけられたリッパー。彼は数秒間ほど唖然とさせられた後……先程までの楽しそうな口調が一変し、怒気を含んだ物に変化した。

 

「いやぁ、おいおいおいおい……俺の目の前で何勝手な事してんだよォッ!!!」

 

リッパーは怒り狂った様子で柵を飛び越え、川の水面を介してミラーワールドに突入していくが……その光景を、少し離れた位置から見ている者達がいた。

 

「ッ……今のライダー、まさか……!!」

 

「たぶん、あなたの予想通りでしょうね」

 

それはジャック・ベイルの行方を追っていた、椎名とナタリアの2人だった。リッパーが川の水面からミラーワールドに突入して行ったのを目撃し、ナタリアが橋の上から見下ろしながら冷静にそう告げる中、椎名は柵の上に乗せていた拳を強く握り締める。

 

「やっと見つけたぞ、ジャック・ベイル……!!」

 

「油断せずに行くわよ。あなた、ただでさえ頭に血が上りやすいんだから」

 

椎名がタイガのカードデッキを川の水面に向ける中、ナタリアもカメレオンのエンブレムが刻まれたカードデッキにチュッとキスをしてから左手で突き出し、2人の腰にベルトが装着される。椎名は素早い動きで左手と右手を左腰に持って行った後、右腕を正面に伸ばしてから素早く曲げ、右手を開いた状態のままカードデッキをベルトに装填。ナタリアはカードデッキを持った左手を左腰に持って行き、顔の右側まで上げた右手でパチンと指を鳴らすポーズを取ってから、カードデッキをベルトに装填する。

 

「「変身!」」

 

両者同時に姿が変化し、椎名は仮面ライダータイガに、ナタリアは仮面ライダーベルデによく似た容姿を持った灰色の戦士―――“仮面ライダーグリジア”に変身。タイガがすぐに川の中へ飛び込んで行く中、グリジアはそれを見て小さく溜め息をついてから同じように飛び込んで行く。その後、先程まで2人が立っていた橋の上に手塚とウェイブが遅れて到着する。

 

「「ッ……変身!!」」

 

カードデッキを突き出した2人はそれぞれのポーズを取った後、ベルトにカードデッキを装填。手塚はライアに、ウェイブはアイズに変身してから同時に川の水面へと飛び込んで行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この時、彼等は気付かなかった。

 

 

 

 

 

 

『ピピ、ピピピピピ……!』

 

 

 

 

 

 

今の光景の一部始終を、離れた場所から監視しているギガゼールガジェットの存在があった事に……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ギギ、ギギギギギ……』

 

ミラーワールド、川沿いの道。女性を捕食したスラッシュクレイフィが水中に立ち去ろうとした時、その背後から追いかけて来たリッパーが斬りかかろうとしていた。

 

俺の女(・・・)に……余計な手を出すんじゃねぇ!!!」

 

『ギギィ!?』

 

背中の甲羅を斬りつけられたスラッシュクレイフィが振り向き、リッパーが振り下ろして来たリッパーバイザーを両腕のハサミで受け止める。そこにリッパーが右足で蹴りを炸裂させ、怯んだスラッシュクレイフィが地面に転倒している間にリッパーバイザーにカードが装填される。

 

≪SWORD VENT≫

 

「俺の邪魔をする奴は許さねぇ……ブッ殺す……!!」

 

『ギギッ……ギィ!?』

 

リッパーが召喚したエビルソーを右手に装備し、リッパーバイザーとエビルソーの二刀流でスラッシュクレイフィに斬りかかる。スラッシュクレイフィも両腕のハサミを駆使してリッパーに応戦する中、そこに他のライダー達も駆けつけようとしていた。

 

≪ADVENT≫

 

『グルゥアッ!!』

 

「うぉ!?」

 

『ギギッ!?』

 

飛び掛かって来たデストワイルダーの体当たりを受け、リッパーとスラッシュクレイフィが同時に転倒する。何事かと急いで立ち上がったリッパーが見たのは、デストバイザーを構えたタイガの姿と、その後ろで腰に右手を置いているグリジアの姿だった。

 

「脱獄犯のジャック・ベイルだな……!!」

 

「アンタに用があるんだけれど、文句はないわよね?」

 

タイガはリッパーに対する殺意を隠そうともしておらず、その様子にグリジアが呆れつつもリッパーに対して指先をチョイチョイ動かして挑発する。ここまでは両者共にいつもの調子だったのだが……

 

「……お、おぉ……」

 

タイガとグリジア……特にグリジアの姿を見た途端、リッパーの中でスラッシュクレイフィに対する怒りが一瞬にして消え失せ、その興味が彼女の方に向けられていた。

 

「お、俺と同じライダー……あのお嬢さん以外にも、こうして出会う事ができるなんて……!!」

 

「うわ、やっぱ気色悪いわねコイツ……」

 

「? あのお嬢さん……?」

 

リッパーの言動に対してグリジアが気色悪がり、タイガが「あのお嬢さん」発言に引っかかりを覚える中、リッパーはエビルソーを大きく振り上げながらグリジア目掛けて突っ走って来た。

 

「カメレオンのお姉さぁん!! 俺と一緒に、ラブラブの熱い夜を楽しも―――」

 

「フンッ!!」

 

「うごぉう!?」

 

グリジアに向かって斬りかかろうとしたリッパーを、タイガがデストバイザーで擦れ違い様に斬り伏せる。

 

「彼女に手を出すな……!!」

 

「何がラブラブの熱い夜よ、勘弁して貰いたいわ」

 

≪HOLD VENT≫

 

グリジアは左太ももに装備されている召喚機―――“舌召糸バイオバイザー”からカードキャッチャーを伸ばし、そこに装填したカードをバイオバイザーに戻して装填。それによりヨーヨー型の武器―――“バイオワインダー”を召喚したグリジアはそれを勢い良く投擲し、リッパーが構えていたエビルソーの刃先に巻きつかせた。

 

「ん、おぉ……!?」

 

「悪いけど、その武器はもう使わせないわ」

 

リッパーはバイオワインダーが巻きついた状態のまま稼働しようとした為、エビルソーの刃にバイオワインダーの糸が絡まり、回転が止まって動かなくなってしまった。それを見てリッパーが驚くも、すぐに高いテンションを取り戻す。

 

「おぉ、良い……良いねぇ!! 愛し甲斐があるじゃないかぁっ!!」

 

「ッ……チィ!!」

 

リッパーはエビルソーに巻きついたバイオワインダーの糸をリッパーバイザーで切断した後、使い物にならなくなったエビルソーをその場に放り捨て、リッパーバイザーを構えてグリジアに襲い掛かろうとした。それを見たグリジアが後ろに下がるも、彼女を庇うように割って入ったタイガがリッパーバイザーの斬撃を受け止める。

 

「お前の相手は僕だ……!!」

 

「あぁん? 邪魔だ、テメェに用はねぇ!!」

 

タイガの妨害を受けたリッパーが機嫌悪そうにリッパーバイザーを振るい、タイガもデストバイザーでそれに応戦する。その一方、残されたスラッシュクレイフィはこの隙に逃走しようとしたが……

 

「おっと待った」

 

『ギッ!?』

 

逃げようとしたスラッシュクレイフィの右足に糸が巻きつき、スラッシュクレイフィが転ばされる。そこに駆けつけたのは糸を放った張本人であるアイズと、エビルウィップを構えたライアの2人だった。

 

「!? アイズ、アレは……」

 

「ん……うげ、ジャック・ベイル!? それにアレはタイガと……誰?」

 

リッパーと戦っているタイガとグリジアの姿を見て驚く2人だったが、今は目の前のモンスターを倒すのが先だ。アイズは右腕のディスシューターから放出した糸でスラッシュクレイフィの胴体を厳重に拘束し、まともに動けない状態にさせる。

 

『ギ、ギギ……ッ!?』

 

「悪いけど、お前も逃がさないよ」

 

「一気に倒す……!!」

 

『ギギィッ!?』

 

スラッシュクレイフィは胴体を拘束されたまま、エビルウィップの一撃を受けて転倒させられる。その間にライアがエビルバイザーにカードを装填し、ファイナルベントの構えに入る。

 

≪FINAL VENT≫

 

「ハッ!!」

 

『キュルルルル……!!』

 

飛来したエビルダイバーにライアが飛び乗り、高速でスラッシュクレイフィに迫って行く。それに気付いたスラッシュクレイフィは巻きついていた糸を力ずくで引き千切り、急いで川の中に飛び込もうとしたが……

 

「はい、残念でした~」

 

『ギッ!?』

 

飛び込もうとした川の上部には既に、アイズが糸で形成した蜘蛛の巣が張り巡らされていた。おかげでスラッシュクレイフィは蜘蛛の巣に引っかかって逃走に失敗してしまい……

 

『ギギィィィィィィィィィッ!?』

 

結局、ライアの発動したハイドベノンを避けられずに終わってしまった。橋の上で着地したライアの後方で大きな爆発が起こり、エビルダイバーがエネルギー体を捕食する中、爆発音に気付いたグリジアがライアとアイズの姿を見据える。

 

(! 来たわね、手塚海之に蜘蛛のライダー……)

 

ライアとアイズを一目見た後、グリジアはすぐに視線をリッパーの方へと戻す。タイガとリッパーが互いの武器で斬り結んでいる間に、グリジアはカードデッキから引き抜いた1枚のカードをバイオバイザーに装填する。

 

≪CLEAR VENT≫

 

発動したクリアーベントの効果で、グリジアのボディが徐々に透けて見えなくなっていく。そして数秒も経たない内に、グリジアはあっという間に姿が見えなくなった。

 

「はぁ、全く……鋭介の言葉を借りるなら、面倒臭い(・・・・)わね。本当に」

 

彼女の目の前では、今も激しく斬り結んでいるタイガとリッパーの姿。そんな状況から、上手く自身の目的を果たさなければならない彼女は、二宮の言葉を借りる形で小さく愚痴を零すのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

To be continued……

 




リリカル龍騎ViVid!


ジャック「隠れてないで、姿を見せてくれよぉ!!♡」

ナタリア「たく、本当に気色悪い男ね……!!」

手塚「すまないが、手を貸して貰うぞ」

椎名「一緒に戦おう、2人共……!」

???「ふぅん、面白い事になってるじゃない」


戦わなければ生き残れない!
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