えぇ~皆様、大変お待たせしました。やっと本編最新話の更新になります。
と言ってもまぁ、ぶっちゃけた事を言うとストーリー自体はそんなに進んでいる訳でもないという……何とかしなければ。
さて、そんな作者の呟きはどうでも良いとして(ぇ
それでは最新話をどうぞ。
ちなみに、現在活動報告にて実施中のオリジナルライダー募集ですが、今月末で完全に締め切る予定です。
もし送ってみたい方がいらっしゃったらお急ぎ下さいませ。
昨夜のライダーバトルから時間は経過し、翌朝となったミッドチルダ。
そんな中、アインハルトは何をしているかと言うと……
「はぁ……」
朝のランニングをする為、アインハルトはとある公園にやって来ていた。普段の彼女ならば、ランニング中は公園などあっという間に走り過ぎていく……ものなのだが、今回は何故か公園を通り過ぎていく事もなく、途中でベンチに座って休んでしまっていた。
(駄目だ……とても走る気分になれない……)
公園のとあるベンチに座り込んだまま、ただボーッとする事しかできないアインハルト。彼女が何故こんなにもランニングに集中できていないのか。それは外出する数十分前、アインハルトの元に連絡を入れて来たウェイブの言葉が切っ掛けだった。
『イヴが、殺人犯に……!?』
早朝、ウェイブからの連絡を受けたアインハルトの一言目がそれだった。ウェイブが殺人犯に襲われた。その一言を聞いた瞬間、アインハルトは衝撃のあまり危うく倒れてしまいそうになるほどだった。
『今はお嬢様んとこの屋敷に匿って貰ってるところでね。悪いけど、しばらくアインハルトちゃんのところには帰れそうにない』
『で、では私もそっちに……!!』
まさか自分が知らないところで、イヴがそんな大変な目に遭っていたなんて。少し前まで合同合宿で張り切っていた自分を恥じたくなったアインハルトは、ウェイブに頼んでイヴの元へ向かう事を願ったのだが……。
『いや、相手は普通の殺人犯じゃない。
『ッ……仮面ライダー……!』
『そゆ事。さすがに君も、いつ、どの鏡から敵が襲って来るかなんてわからないでしょ?』
イヴを襲った殺人犯もまた、イヴやウェイブ達と同じ仮面ライダーだ。そうなるとライダーの力を持たないアインハルトでは、その殺人犯がどんなタイミングで襲って来るかがわからない。殺人犯の思想を考えると、下手をするとアインハルトまで同じように命を狙われかねないのだ。
『ここはひとまず、同じ仮面ライダーの俺達に任せて頂戴よ。幸い、お嬢様んとこの屋敷にも、信頼できる仮面ライダーの知り合いがいるからさ』
『で、ですが……』
『心配なのはわかるよ。ただ、こればっかりはライダーの力を持つ人間じゃなきゃどうしようもない一件でもあるからねぇ。その気持ちだけでも受け取っておくよ』
そんな会話が、早朝にて行われていた。それを思い出した時、アインハルトの膝に置かれていた両手が拳を作り、強く握り締めていた。
(自分が情けない……)
イヴには命を救われた恩義がある。できる事なら今度は自分が彼女を助けてやりたい。しかし相手がイヴと同じ仮面ライダーである以上、ライダーの力を持たない自分では、彼女を守り切れない可能性の方が圧倒的に高い。その事が彼女に何とも言えない歯痒さを感じさせていた。
「私は、一体どうするべきなんでしょうか……」
守りたい物を守れなかった者の後悔。それがアインハルトの中で、今の自分と重なっていた。また、同じ過ちが繰り返されてしまうのだろうかと。そんなネガティブな事を考えている内に、アインハルトの目元にはほんの僅かに涙が溜まり始めていた。
「ッ……イヴ……私は、どうすれば……!」
「悩み事かの?」
「……!」
俯いていたアインハルトの耳に、老人の呼びかける声が聞こえて来た。それに気付いて顔を上げたアインハルトの前には、首にかけたタオルで汗を拭き取っている、黒いジャージを着た白髪の老人が立っていた。
「えっと……あなたは……?」
「うむ、最近はこの辺りでよくトレーニングをしておってのぉ。今日も朝からランニングしとったんじゃが、そこでたまたまお嬢さんを見かけてな」
「は、はぁ……」
「お嬢さん、何やら悲しそうな目をしてるようにも見えるが……何か辛い事でもあったんかの?」
白髪の老人―――山岡もアインハルトと同じように、この公園にはよくトレーニング目的で訪れる事が多いらしい。この日もまた、ランニングの為に早朝からやって来ていたのだが、その途中でベンチに座って何か悩んでいる様子のアインハルトを偶然発見し、心配に思った彼は声をかけてみる事にしたようだ。
「あ、えっと……」
「あぁ、構わんよ」
「へ……?」
何をどう話すべきか考えながらも、律儀に答えようとしたアインハルト。しかし彼女が答えようとする前に、山岡の方から先に手で制した。
「別に無理に話そうとせんでもええ。世の中、人に語りたくない秘密を抱えておる人間など仰山おる。そうじゃろう? 儂だってそうじゃ」
「それは……」
「しかしまぁ何じゃ。このままここで座っておっても気分は変わらんじゃろ……じゃから」
山岡は公園の砂場付近にある鉄棒まで移動し、首にかけていたタオルを鉄棒にかけてから、両手で鉄棒を強く握り締める。何をするつもりなのかとアインハルトが困惑する中、山岡は明るい表情で彼女に呼びかけるのだった。
「せっかくじゃ。少しばかり、この老いぼれの鍛錬に付き合って貰えんかの?」
その数時間後、高町家の自宅では……
『『ジャック・ベイルが仮面ライダーに……!?』』
「あぁ。実際に会って、奴と直接戦った」
昨日の夜遅くまで働き、更にはリッパーとの戦いで帰りが0時過ぎになってしまった手塚だが、この日は休みだったのもあって家で静かに過ごしていた。それでも報告するべき事は今の内にしなければならないと、この日も仕事で出かけているなのはとフェイトに通信端末で連絡を取り合っている。なお、ヴィヴィオはいつも通り学校にいる為、現在この場には手塚1人しかいない。
『じゃあ、今まで目撃情報があっても捕まらなかったのは……』
「恐らくライダーの力を使って、管理局から逃げ続けていたからだな。ミラーワールドを通ってしまえば、逃走なんて遥かに容易い」
ジャック・ベイルを目撃した者も、場合によっては本人に殺害されてしまっている可能性すら出てきている。その事がわかっている以上、手塚は今回の事件を無視する訳にはいかなくなった。
「普通の事件ならまだしも、ライダーが関わっている以上は見過ごす訳にもいかない」
『あ……でも、手塚さんが動いていると知ったらスクラム執務官が……』
「……良い目で見られないのは確かだろうな」
しかし、事件の現場で対面したヘザー・スクラム執務官からは、この事件に首を突っ込まないようにと厳しく言い渡されている。スクラムの視点から見れば、手塚はあくまで事件現場を目撃しただけの一般人に過ぎないのだ。そんな彼が事件を調査している事を知られたら、また口うるさく注意して来るに違いないだろう。
「だが今は、そんな事を気にしていられる状況でもない。隠れながらも少しずつ調べて回っていくつもりだ」
『にゃははは……手塚さんも、はやてちゃんの影響しっかり受けちゃってるかも』
「……かもな」
4年前の機動六課時代も、はやてに頼んで管理局員に変装し、フェイトと共に事件を調べて回った事が一度だけあったのを手塚は思い出す。流石に今回はあの時のようなマネはできないが、それでも隠れて事件を調べ回るつもりでいる点は変わらない。
『でも、気を付けて下さいね。ジャック・ベイルはかなり危険な存在ですから』
「それを言うなら、高町とハラオウンの方がよほど危ないだろう。奴は女性ばかり襲って回っていると聞いている……2人も充分気を付けてくれ」
ジャック・ベイルの犯行動機を考えると、むしろ女性であるなのはとフェイトの方が危険である。そう考えた手塚は2人に忠告し返す事を忘れず、彼に心配して貰えた事をなのはとフェイトは嬉しく感じていた。
『ありがとうございます手塚さん。でも、私達は大丈夫です。私の方はティアナも付いていますし』
『私も、簡単にやられるつもりはありませんから。勝てはせずとも、意地でも食らいつきます』
「フッ……そうか。それなら確かに大丈夫そうだ」
手塚は小さく笑みを零してから、2人との通信を切って通信端末を懐に収める。その後、手塚の表情からすぐに笑みは消え失せ、その場で再び思考を張り巡らせ始めた。
(問題は、二宮のあの行動だ……何故あの時、ジャック・ベイルをわざと逃がした……?)
リッパーと戦っている最中、突然現れたアビスはライア達を妨害した後、リッパーをその場で逃がしてしまった。何故アビスがそのような行動を取ったのか、手塚はその理由を考え続ける。
(二宮の性格上、ライダーが目立つ行動を取る事はできる限り避けようとするはず……それとも、奴を野放しにする事に何か意味があるのか……?)
目立つ行動を取り過ぎているライダーを、あの二宮が意味もなく野放しにしておくとは到底思えない。もしかしたらスカリエッティの時みたいに、利用する為に敢えて放置しているのか。そうなると、また新たな疑問が浮かび上がって来る。
「奴は、ジャック・ベイルを利用して何をするつもりなんだ……?」
ジャック・ベイルが事件を起こすその裏で、二宮はまた何かを企んでいるのだとしたら。二宮の目的が何なのかも突き止めなければならないが、現時点では判断材料が少な過ぎる。その為、どれだけ深く考えたところで、今の手塚ではとてもその答えに辿り着けそうにはなかった。
「まいどあり! 次もまたよろしくな、兄ちゃん!」
「いつもありがとうございます。では」
場所は変わり、とある商店街。ここでは食材を買いに来ていた吾郎が、いつも通っている八百屋で必要な食材を買い揃えているところだった。八百屋の店長が手を振っている中、吾郎は買い揃えた食材が入った複数のビニール袋を一度に持ち運び、リムジンを停めている駐車場まで戻ろうとする。
(……一度に買い過ぎたか)
しかし、無理して一度に買い揃えてしまった為か、荷物の重量は吾郎が想定していたよりも上だった。その重さに吾郎の表情が僅かに歪みかけるが、それでも彼は1人で全ての荷物を持ち運ぼうとした。
その時……
「手伝おっか?」
「!」
そんな彼に、電柱に寄り掛かっていた1人の女性が声をかけて来た。吾郎はその女性の顔を見て目を見開いた。
「君は……」
「ヤッホー、吾郎ちゃん。また会ったね」
声をかけて来たのは夏希だった。彼女は明るい笑顔で手を振りながら吾郎に近付き、彼が持っていた荷物の中から2つほど手に取った。
「なんか大変そうだね。いくつかアタシが運ぶよ」
「いや、手を煩わせるほどでは……」
「遠慮しなくて良いの。吾郎ちゃん、こうでもしないと1人で無茶するでしょ。アタシにはよくわかるよ」
「……では、お願いします」
「OK、任された♪」
吾郎はお言葉に甘えて、いくつかの荷物を夏希に運んで貰う事にした。任された夏希は機嫌が良さそうに荷物を手に持ち、2人でリムジンが停められている駐車場まで歩き始める。
「どう、吾郎ちゃん。元気にしてる?」
「えぇ、変わらず」
「そっか、なら良かった。ここ最近、物騒な事件が色々多発してるからねぇ。吾郎ちゃんも気を付けなよ?」
「……どちらかと言うなら、君の方が危ないんじゃ?」
物騒な事件と聞いた吾郎が、真っ先に思い浮かんだのはジャック・ベイルの事件。被害者がいずれも女性ばかりな事を知っている彼からすれば、むしろ女性である夏希の方が危険なのではないかと心配だった。
「あ。ひょっとして吾郎ちゃん、アタシの事を心配してくれてる?」
「……えぇ、まぁ」
「ふ~ん、そっかぁ」
吾郎は特に否定する事もなく告げ、それを聞いた夏希はニヤニヤ笑いながら吾郎の方を覗き込むように見据える。そんな彼女の態度に吾郎は若干だが困惑する。
「あの、何か……?」
「ううん、何でもない。ありがとね、心配してくれて♪」
夏希は嬉しそうな表情で荷物を運んでいき、吾郎はよくわからないといった様子で首を傾げながらも、駐車場のリムジンまで荷物を持ち運ぶ。そしてリムジンに荷物を乗せていく中、夏希は思い出したように吾郎に問いかけてきた。
「あ、そうだ。吾郎ちゃんに聞きたい事があったんだけどさ」
「?」
「前にモンスターと戦ってた時、白いライダーと一緒にいたでしょ? ほら、あのユニコーンみたいな子」
夏希が吾郎に聞こうと思ったのは、ミラーワールドで野生モンスターと戦っていた時、ゾルダと一緒にいたイーラの事だ。質問の内容がイヴに関係している事だとわかり、吾郎は少しだけ表情が変化する。
「……あの子の事は、俺からは何も答えられません」
「えぇ~、何でだよ? あの子の事、何か知ってるんじゃないの?」
「ある人から、口止めされてるんです。今はまだ誰にも話さないように、と」
残念ながら、吾郎は夏希のその問いかけには何も答えられなかった。ある人物とはウェイブの事であり、彼からイヴの事は周囲にはあまり広めないようにと口止めされている為、たとえ相手が夏希であっても、自分の口から答える訳にはいかなかった。
「口止めって、もしかしてあの赤い蜘蛛の奴が?」
「はい」
「はぁ~……あの蜘蛛男、一体何のつもりだよ。教えてくれたって良いじゃんか、あのケチンボ」
「色々、考えがあるんだと思います。今はまだ……と言ってましたので、たぶんいつかは話してくれるかと」
「だと良いんだけどさぁ……」
知りたい事が知れると思って期待していたのか、何も情報を得られず落胆する夏希。そんな彼女に申し訳なさを感じる吾郎だったが、彼は少し考える仕草をした後、夏希に語りかける。
「……今、このミッドで脱走した囚人が逃げているのは知ってますか?」
「? えっと、確かジャック・ベイルとか言ったっけ。それがどうかしたの?」
「……そのジャック・ベイルに、あの子も襲われました」
「ッ!?」
吾郎の口から語られた内容に、落胆していた夏希が驚いて吾郎の方に顔を向ける。
「あの子は今、安全な場所に匿っています。あの子の事で口止めされているのには、その件も関係しています」
「じゃあ吾郎ちゃんも、その子の為に……?」
吾郎は無言で頷く。本来ならこういう事もあまり話すべきではないのだが、夏希の事を信頼していた彼は、イヴの素性をあまり多くは語らない上で、彼女が置かれている状況だけでも夏希に伝えておく事を考えていた。
「ジャック・ベイルを捕まえなければ、また被害者が出てしまう。だから俺達は―――」
「この俺がどうしたってぇ?」
「「―――ッ!!」」
声のした方向に、吾郎と夏希が同時に振り返る。2人が振り向いた先では、駐車場に停められている車の陰からガスマスクを被ったジャックが姿を現した。
「ん? おぉ、可愛い子がいるじゃないかぁ……♡」
「ッ……ジャック・ベイル……!!」
「アイツが……!?」
現れたガスマスクの男がジャック・ベイルだとわかり、吾郎は強く睨みつけながら素早く構えを取り、夏希もそれに続くように身構える。そんな2人に対し、ジャック・ベイルは吾郎に対しては目も暮れず、夏希の方にその視線を向けていた。
「おぉ~、睨んで来るその顔も良いねぇ……俺と愛し合ってくれよぉ……♡」
「!? カードデッキ……まさかアイツも!?」
ジャック・ベイルはリッパーのカードデッキを取り出し、車のフロントガラスに向けてベルトを出現させる。ここで初めてジャック・ベイルがライダーだと知った夏希が驚く中、出現したベルトを腰に装着したジャック・ベイルはカードデッキを左腰に持って行った後、指先でアルファベットの「J」を作った右手を前に出し、あの台詞を口にする。
「変身……!♡」
カードデッキを装填し、ジャックの全身に鏡像が重なっていく。そしてジャックの姿が仮面ライダーリッパーの物へと変化した後、リッパーは左腕に装備しているリッパーバイザーを2人に向かって振り下ろして来た。
「楽しもうぜぇ……ヒャハハハハァッ!!」
「「ッ!!」」
夏希と吾郎はそれぞれ左右にかわし、吾郎はリムジンの窓ガラスに、夏希は別の車のフロントガラスにカードデッキを突き出す。そしてベルトが出現した後、2人は変身ポーズも取る事なくカードデッキをベルトに装填するのだった。
「「変身!!」」
そして同時刻、とある路地裏では……
「―――おっとぉ」
ジャック・ベイルの行方を追って、ミッド各地を捜索して回っていたウェイブ。しかしそんな彼の前に、思わぬ人物が姿を現していた。
「う~ん、ちょっと想定外だったかなぁ。まさか、お宅が俺の前に姿を見せるなんてね」
「俺がここにいちゃ悪いのか?」
ウェイブの前に現れた人物―――二宮鋭介は、アビスのカードデッキをチラつかせながらも言い放つ。
「昨日ぶりだな、仮面ライダーアイズ……少し、俺と話でもしようじゃないか」
To be continued……
リリカル龍騎Vivid!
ウェイブ「
二宮「邪魔になる人間は沈めるだけだ」
山岡「自分は今、どうしたいと思うとるんじゃ?」
アインハルト「私が、やりたい事は……」
戦わなければ生き残れない!
ウェイブ「何だよ……何だよこれは……ッ!!」