リリカル龍騎ライダーズinミッドチルダ   作:ロンギヌス

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や、やっと書けた……!!

新年1発目、ようやく本編の更新です。ここに至るまで長かった……!!

今回は特に深い事は言いません。

超久々の本編最新話、どうぞお楽しみ下さいませ。










戦闘挿入歌:Revolution
















次回予告BGM:Go! Now! ~Alive A life neo~










第33話 ようこそ

とあるカフェテラス。

 

「……あのさぁ」

 

青年……ウェイブ・リバーは今現在、困惑していた。

 

「1つ、聞いちゃっても良いかなぁ?」

 

「何だ」

 

「……何この状況?」

 

現在、ウェイブの目の前にあるのは……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「見てわからないか? コーヒーの時間だよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

困惑するウェイブを他所に、コーヒーの味と香りを楽しんでいる二宮の姿だった。

 

「……いやわかんないから聞いてるんだけど!?」

 

二宮だけではない。ウェイブの手元にも同じようにコーヒーカップが置かれており、淹れられたばかりのコーヒーから立っている熱い湯気が、上へと上へと昇って行っている。

 

「どうした。早く飲まないと、コーヒーが冷めるぞ」

 

「待って、お宅も何でそんな当たり前のようにコーヒー飲んでるのかな? ねぇ、俺達さっきまでめちゃくちゃ険悪な空気だったよな? 今にも戦いに突入するかのような空気バリバリだったよな? 何で当たり前のように2人一緒になってコーヒータイムを楽しんじゃってんのかな!?」

 

ウェイブは二宮の正体を知っている。だから二宮と正面から相対した時、ウェイブはこのまま彼と直接対決になるだろうと考え、命懸けで戦う覚悟を決めようとしていた。

 

それがどうだろうか?

 

まさか二宮にカフェまで連れて来られた挙句、現在は彼にコーヒーを奢って貰ってしまっている。まさか敵同士でのんびりコーヒーを飲む羽目になるとは思っていなかったウェイブは、自分が置かれているこの状況を現実の物として受け止める事ができない状態でいた。

 

「随分うるさく突っ込むんだな」

 

「いやお宅のせいだからね!?」

 

この状況が出来上がる要因となった張本人が何を言いやがるのか。ウェイブが声を荒げて突っ込むのに対し、二宮はどこ吹く風でコーヒーを口にする一方である。何故こんなにもマイペースなのかと更なる突っ込みを炸裂させたいウェイブだったが、これ以上騒ぐと他の客にも迷惑になる為、そこはグッと我慢する事にした。

 

(え、何これ、俺が悪いの? むしろ俺が空気を読むべきなの? 空気を読んでこいつと一緒にコーヒーを飲む時間をのんびり楽しむべきなの?)

 

ここまで来ると逆に自分が悪いのではないかという思考にまで陥っていくウェイブ。そんな悶々とした様子で頭を抱えるウェイブの様子を、二宮はコーヒーを飲みながらジッと見据えた後、コーヒーカップをテーブルに置いた。

 

「……話に聞いていた通りだな」

 

「へ?」

 

「数年前。俺はある男から、事件を解決に導く為の写真、そして封印のカードを受け取った」

 

ある泥棒の小悪党が絡んでいた盗難事件の最中、二宮にさりげなく接触して来た人物がいた。それがウェイブだと調べ上げた二宮が、こうしてウェイブの前に姿を現したのには理由があった。

 

「あの時、俺に接触して来たのはお前だろう? 仮面ライダーアイズ……いや、波川賢人」

 

「……今はウェイブ・リバーって名前で通してるし、そっちで呼んでくれない?」

 

「意味は通じるんだから構わんだろう? 話を逸らすな」

 

ウェイブのさりげない頼み事を無視し、二宮は話を続けた。

 

「今日、俺はお前に用があってここに来たんだ」

 

「……お宅等の事を嗅ぎ回ってる俺を、消す為に来たって事で良いのかな?」

 

ウェイブは表向きは不敵な笑みを浮かべながらも、その右手は上着の懐に忍び込ませ、いつでもカードデッキを取り出せるように構えていた。二宮の口からその手の話題が出て来た以上、いよいよ命懸けにならなければならない時が来たのだろうと、今度こそ覚悟を決めるウェイブだったが……

 

「違う」

 

二宮の口から発せられたのは、否定の言葉だった。

 

「別にお前を倒す為に来た訳じゃない。むしろ、お前をこちら側に引き入れようと思ってな」

 

「……何?」

 

その言葉を聞いて、ウェイブは僅かにだが目を見開き、そして訝しんだ。

 

(どういうつもりだ……?)

 

これまで独自に二宮達の裏を調べてきたウェイブの見解では、二宮は自分をコソコソ嗅ぎ回っているような奴を放置するような男ではないはず。それがどうして、ウェイブを倒さないどころか、むしろウェイブを自分達の側に引き込もうなどと二宮が考え出したのか。というか何故自分が二宮達に協力すると思ったのか。ウェイブは二宮の意図が全く読めなかった。

 

「お前のライダーの力を使った情報収集能力は、俺から見ても実に優秀だ。お前が搔き集めた情報の中には必ずと言って良いほど、何かしらの有力な情報が握られている。おまけに特定の職務に就いていない分、フットワークも非常に軽いと来た」

 

「……それで、俺をお宅等の仲間に引き入れようと?」

 

「何か不満でもあるのか?」

 

「むしろ聞かせて貰いたいね。何で俺がお宅等に協力すると思ったのかな?」

 

「お前なら協力するさ。たとえどれだけ嫌な事であってもな」

 

「どれだけ嫌な事であっても、ねぇ……」

 

ますます二宮の考えがわからなくなってきた。一体何が、二宮にそこまでの確信を持たせているのか。ウェイブはどうするべきかと、頭の中でひたすら思考を張り巡らせる。

 

(こいつ等に協力すれば、何か碌でもない事に協力させられるであろう事は明白だ……しかし)

 

今のウェイブは、それだけの理由で勧誘を蹴る事ができない状況にあった。何故なら……

 

(こいつは今、どこまで情報を掴んでいる……?)

 

ウェイブは二宮の周囲を探った事で、かつてこのミッドで起こったJS事件でも、二宮達が裏で密かに動いていた事を突き止めている。

 

かつてこのミッドを震撼させたジェイル・スカリエッティ。

 

そのスカリエッティが開発したガジェットドローン。

 

そのガジェットドローンが今もこのミッドで引き起こしているテロ事件。

 

そのテロ事件が起き始めると同時期に拘置所を脱獄したスカリエッティ。

 

それらの要素は、かつてJS事件の裏で動いていた二宮達とも何か関わりがあるのではないかと。その疑問が絡んでいるからこそ、ウェイブはどう返答するべきかと悩まされていた。

 

「……ちなみに、いくつか質問良いかな?」

 

「答えられる範囲でならな」

 

「どうも。んじゃまずは……」

 

そこでウェイブは、いくつかの質問を投げかける事で、二宮の意図を探ってみる事にした。

 

「俺がお宅等のやる事に協力するとしたらだ……遠くない将来、このミッドで何が起こる?」

 

「少なくとも、今起きているガジェットドローンのテロ事件は解決するだろう。お前の力があれば、この事件の犯人を見つけ出すのも、そう難しい事ではないはずだ」

 

「その過程で、どれだけ犠牲が出る事になってもか?」

 

「手段を選んでいられる状況でもないんでな」

 

「……じゃあもう1つ」

 

ここでウェイブは、どうしても確かめたい事を問いかける。

 

「……イヴって名前の女の子、お宅等は知ってるかな?」

 

「イヴ? 誰だそれは。そんな奴は知らん」

 

(! 知らない……?)

 

イヴの事を知っているかどうか。その質問に対し、二宮が出した答えはNO(ノー)だった。問いかけられた際に二宮が見せた反応からして、嘘をついて誤魔化しているという訳でもないようだ。

 

(どういう事だ? イヴちゃんの過去にまで絡んでいる訳じゃないのか……?)

 

イヴの過去を知るチャンスだと思っていたウェイブだが、そう簡単にはいかないらしい。また手掛かりを知る術がなくなってしまったかと思われた……その時。

 

「……ん、いや待てよ」

 

ここで二宮は、思い出したかのように言葉を発した。

 

「もしかしてアレか、お前が一緒にいるあのガキの事を言ってんのか?」

 

「……!」

 

お前が一緒にいるあのガキ(・・・・・・・・・・・・)

 

そう聞いた瞬間、考え事で俯いていたウェイブはすぐさま顔を上げ、二宮と視線を合わせた。

 

「……なんだ、やっぱ知ってたんじゃん」

 

「あぁ、どうやら知っていたらしい」

 

「それで、教えてくれないかなぁ~? あの子の事」

 

「お前が知ってどうする?」

 

「良いじゃん、教えてくれたってさ」

 

「話すだけ時間の無駄だろうに」

 

二宮は何かとはぐらかし、イヴに関する情報だけは何も話そうとしない。ウェイブはニコニコ笑いながらしつこく問いかけたが、その目は全く笑っていなかった。

 

(……なるほど、そっちはあくまでそういう気な訳ね)

 

この時点で、ウェイブの中で答えは決定していた。

 

「それで、どうする? 俺達と組むか、組まないか」

 

「その事なんだけどさぁ……やっぱ無理だわ」

 

「……ほぉ」

 

二宮の勧誘を、ウェイブは堂々と断った。先程まで浮かべていた笑みも消えるくらい、ウェイブは二宮を鋭く睨みつけていた。

 

「良いのか? 知りたい事がわからないままで」

 

「お宅等に協力すれば、関係のない人達まで大勢が犠牲になると踏んだ。そんな事にまで協力してやる道理はないんでね」

 

「あのガキの事、聞きたいんじゃなかったのか?」

 

「聞かせて貰うさ、力ずくでな」

 

「俺に手を出せば、そこら中の人間がモンスターに喰われる事になるかもしれないぞ?」

 

「その事なんだけどさぁ。仮に自分がピンチになったとして、自分の契約モンスターや自分の仲間を他所なんかに送ってられる余裕が本当にあるのかねぇ?」

 

「ッ!!」

 

ここで初めて、二宮の表情に変化が生じた。ウェイブはしてやったりと不敵に笑い、逆に今度は二宮がウェイブの事を忌々しげな表情で睨みつける。

 

「……なるほど。どうやらお前は、俺が思っていた以上に厄介な相手らしい」

 

「はっは、そりゃどうも」

 

「後悔しても知らんぞ」

 

「後悔するかどうかは、お宅の話を聞いてからだな」

 

「そうか……そういう事なら仕方ない」

 

その言葉を皮切りに、コーヒーを飲み終えた二宮はコーヒーカップをテーブルに置き、懐からカードデッキを取り出す。それに対するウェイブもまた、不敵な笑みを崩さないまま懐からカードデッキを取り出し、二宮に向けて見せつける。

 

「邪魔になる人間は沈めるだけだ」

 

「はてさて、沈没するのは一体どちらでしょうねぇ……!」

 

2人が席から立ち上がるまで、数秒もかからなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「―――はぁっ!!」」

 

ミラーワールド。その街中にて、アイズとアビスは激しい剣戟を繰り広げる。ディスサーベルとアビスセイバーの斬撃が何度もぶつかり合い、何度も火花を散らし合う。

 

「ッ……力ずくってのも、口先だけではないようだな……!!」

 

「へぇ、お褒めに預かり光栄だねぇ……っと!!」

 

ディスサーベルがアビスセイバーを押し返した後、アイズはアビス目掛けて鋭い突きを放つも、アビスは体を回転させる事でその一撃を華麗に回避。そのカウンターとして繰り出した斬撃がアイズの左肩を僅かに掠り、その痛みからアイズは仮面の下でいくらか表情が歪む。

 

「こなくそぉ!!」

 

「フン……!!」

 

アイズは後退しながらディスサーベルを投げつけ、アビスはそれをアビスセイバーで横に弾き飛ばす。その間にアイズはカードデッキから引き抜いたカードをディスバイザーのカードキャッチャーにセットしようとしたが、そうはさせまいとアビスバイザーから水のエネルギー弾が連射される。

 

「ハッ!!」

 

「うぉっと……ッ!?」

 

≪BIND VENT≫

 

飛んで来るエネルギー弾を転がって回避したアイズは、エネルギー弾が当たらない建物の物陰に潜んでから改めてカードキャッチャーにカードをセットし、ディスバイザーに戻して装填。ディスシューターを両腕に装備し、物陰から飛び出すと同時にアビス目掛けて蜘蛛の糸を射出する。

 

「ほいっとな!!」

 

「チッ……!!」

 

アイズがディスシューターから糸を伸ばし、アビスがアビスバイザーのエネルギー弾でそれを撃ち消す攻防が数秒ほど続く。しかし1本の糸がアビスセイバーに絡みつき、アイズが引っ張る事でアビスの手元から引き離され、それで体勢の崩れたアビスの両腕にも糸が巻きついた。

 

「ヒュ~♪ ほぉら、捕まえてやったぜ?」

 

「ッ……面倒な小細工を……!!」

 

アイズの両腕のディスシューターから伸びた糸が、アビスの両腕に巻きついて動きを封じた状態が出来上がる。アイズはご機嫌そうに口笛を吹き、アビスは鬱陶しげな口調で巻きついた糸を睨む。

 

「さ~て、色々話して貰おうか。お宅等の知っている事を全てな」

 

「……俺が素直に話すとでも?」

 

「話さなきゃ、糸でグルグル巻きにしてから外に放り出すぜ?」

 

「……チッ」

 

場所は人の通りが多い市街地だ。こんな所で現実世界に放り出されてしまっては、アビスにとっても都合の悪い事態になる。その事を理解したアビスは小さく舌打ちしつつも、あくまで冷静さは保ち続けた。

 

「ご苦労な事だな……そうまでして、俺から情報を吐かせたいのか」

 

「早いところ、掴まなきゃならない情報がいっぱいあるんでね」

 

「それは、あのガキの過去についてもか?」

 

「ッ……!」

 

アイズが僅かに反応したのを、アビスは見逃さなかった。

 

「何故お前が肩入れする? あんなガキの為に、お前が何かしてあげる義理なんぞないだろうに」

 

「最初は本当にそのつもりだったんだけどねぇ。まぁ、情が湧いちまったってところさ」

 

「その為に自分は命を懸けると? それで後悔する羽目になっても構わないと、お前は言うのか?」

 

「……後悔なんて、もうとっくにしてるさ」

 

「何?」

 

アビスとアイズの問答が繰り返される。そのたびに、アイズの口調からは徐々に軽快さがなくなっていく。

 

「俺のせいで、誰かの人生が歪んでしまったあの時から……俺はずっと後悔してきた。いくら後悔しても足りないくらいにな……だからこそ」

 

「ぐっ……!!」

 

アイズの糸を引っ張る力が強まり、アビスはそれに必死に踏ん張る。

 

「もう二度と、同じ悲劇は繰り返させないと誓ったんだ!! どれだけ後悔する事になろうとも、俺はこの手で真実を突き止めて、前に進んでやる……!! 誰の人生も歪む事がないように……あの子達(・・・・)が、笑って前に進める未来の為に!!!」

 

その為にも、隠された真実は突き止めなければならない。

 

事件を追う中でたまたま知り合った、あの子達の為に。

 

今をまっすぐ進んで生きようとしている、未来ある者達の為に。

 

それこそがこの男、波川賢人の……否、ウェイブ・リバーこと仮面ライダーアイズの果たしたい願いなのだ。

 

「……なるほど」

 

それに対し、アビスの反応は……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「随分とまぁ、そんな無駄な事(・・・・・・・)で頑張ってるんだな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どこまでも冷たく、どこまでも残酷な物だった。

 

「あんなガキの為に、お前がそこまでしてやる価値はない」

 

「何……?」

 

「お前がどれだけ頑張ったところで、もう何もかも手遅れなんだよ」

 

「……どういう事だ!! 何が言いた……ッ!?」

 

アイズが声を荒げて問い詰めようとした瞬間、一瞬だけ生まれた隙をアビスは見逃さなかった。引っ張る力が僅かに弱まった直後、アビスバイザーから放たれたエネルギー弾が糸を切断し、左腕が自由になったアビスは同じように右腕の糸もエネルギー弾で切断。自由になったアビスは即座にカードを装填した。

 

≪UNITE VENT≫

 

『ギャオォォォォォォォォォンッ!!!』

 

「なっ……うぉ!?」

 

上空から現れたアビソドンが両目から弾丸を連射し、飛び退いて回避したアイズとアビスの間に大きな距離が生まれる。その間にアビスはどこかに立ち去ろうとする。

 

「ッ……答えろ!! お宅等は一体、何をしようとしている!?」

 

「真実を突き止めて、前に進んでやる……お前はそう言ったな。ならばお望み通り、お前を前に進ませてやるよ」

 

「待て、逃がすか!!」

 

アビスはアビソドンの背中に飛び乗り、どこかに飛んで逃げようとする。それを逃がすまいとしたアイズは両腕のディスシューターから糸を放ち、アビソドンの片ヒレに付着させる事で何とか掴まり、そのままアビソドンによって市街地から遠く離れた位置にある高層ビルまで運ばれていく。

 

「くっ……!!」

 

「しつこい奴だな……ま、だからこそこうした訳だが」

 

高層ビルの屋上まで飛んで来た後、アビソドンから飛び降りたアビスは壁の窓ガラスに入り込み、現実世界へと帰還していく。もちろんそれを逃がすアイズではなく、同じように屋上に着地してからアビスを追いかけるように窓ガラスへ飛び込んで行く。そして飛び込んだ先の現実世界では、逃げずに立ち止まっているアビスの姿があった。

 

「少しは落ち着いたらどうだ? 息が荒くなってるぞ」

 

「ッ……もう一度聞くぞ……お宅等は一体、何をしようとしている……このミッドチルダで、何を企んでいる!!」

 

「……それを知る為の答えが、今ここにある」

 

そう言うと、アビスは変身を解除して二宮の姿に戻る。それを見たアイズが一瞬困惑する中、二宮は懐からホッチキスで止められた複数枚の書類を取り出し、それをアイズの足元に向かって放ってみせた。

 

「お前、ミッド語は読めるか?」

 

「……それが何だ」

 

「読めるなら読んでみると良い。お前が知りたがっている事の一端が、そこには書かれている」

 

「……?」

 

突然こんな物を寄越して、一体何のつもりなのか。アイズは二宮の行動を怪しみながらも変身を解除し、ウェイブの姿に戻ってから足元に落ちている書類を拾い上げる。そして書類に書かれている文章を読み始めた後……彼の表情は大きく変化した。

 

「なっ……これは……!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、とある公園では……

 

 

 

 

 

「ふっほっはっほっ!」

 

「ん、くぅっ……はっ……!」

 

砂場の近くに設置されている鉄棒にて、山岡とアインハルトは鉄棒を使った筋トレの真っ最中だった。高い位置にある鉄棒に足を着ける事なくぶら下がり、その状態から両腕の筋肉を使って体を上へと持ち上げ、下に降ろしてはまた同じ動作を繰り返す。このトレーニング以外にも様々な運動を行ってきたのか、この時点でアインハルトは若干息が上がりかけていたのだが、山岡はまだまだ余裕のありそうな表情だ。

 

「ッ……はぁ、はぁ、はぁ……!」

 

「ふぅ……む、少しキツそうじゃの?」

 

「はぁ、はぁ……いえ、まだやれます……!」

 

「あまり無理をしちゃいかんよ……どれ、少し休憩しようかの」

 

あまり無理をしては体を壊してしまうだけ。アインハルトの体力に限界が近付いていると悟った山岡は、鉄棒から手を離してから地面に着地し、それを見たアインハルトも地面に足を着け、そのまま地面に座り込んでしまった。

 

「すまんのぉ、こんな老いぼれのトレーニングに突き合わせてしもうて。立てるかね?」

 

「はぁ、はぁ……いえ、こちらこそ、すみません……!」

 

まだやれると言ったばかりのアインハルトだが、やはり立ち上がるのがやっとなくらい息も絶え絶えだった。流石にそんな状態でトレーニングを再開させる訳にはいかず、山岡は鉄棒にかけていたタオルをアインハルトに差し出し、それを受け取ったアインハルトはフラフラな状態でベンチまで歩きゆっくり座り込んだ。

 

(ッ……凄い人だ……こんなにトレーニングを続けて、まだ余裕そうだなんて……!)

 

老人ながらも鍛えに鍛えている山岡の体力は、アインハルトから見ても尋常ではないように見えた。その山岡はと言うと、アインハルトの隣に座り込んでから彼女と同じようにタオルで汗を拭いてから、ベンチに置いていたスポーツドリンクを口にして水分と塩分を補給している。

 

「ふぅ……やっぱり良いもんじゃのぉ。運動して汗を流すというのは。嫌な事も全部一緒に流れ出ていく感じがするわい」

 

「……そうですね」

 

たくさん汗を流したからか、山岡はスッキリした様子で爽やかな表情を浮かべている。それに対し、同じように運動して汗を流したアインハルトは、今もなお無表情で流れる汗をタオルで拭き取っている。

 

「凄いですね。これだけ運動を続けても、まだ体力に余裕があるとは……」

 

「いやいや、大袈裟じゃよ。儂とて体力にはちゃんと限界という物がある。さっきまでやっていたトレーニングはどれも、余計な動きの少ない運動ばかりじゃ。激しい動きばかり続けていては、儂でもすぐに限界が来る」

 

「それでも凄いと私は思います。これだけ運動できて、汗を流して、楽しいと思い続けていられるのは」

 

「ほぉ、自分は楽しいと思っていないかのような口ぶりじゃな」

 

「それは……その通り、かもしれません。私は楽しみたいと思って、鍛えている訳ではありませんから」

 

(……ふむ)

 

俯きながら手元のスポーツドリンクを見つめているアインハルトを見て、山岡は少しだけ考える仕草をする。それから再び口を開いた。

 

「……お嬢さんは好きで運動をやっている訳ではない、という事なんじゃな?」

 

「はい」

 

「それでも、これほどまで鍛錬に時間を費やさなければならない理由があると」

 

「……はい」

 

「なるほどのぉ。それほど自分を追い込んでまで鍛えようとする理由……守りたい物の為、かね?」

 

「ッ……その通り、です」

 

アインハルトの表情が僅かに変わり、そしてすぐに戻る。それだけで山岡は何となくだが察する事ができた。

 

「私には、この手で果たしたい願いがあります。格闘技をやり始めた時からずっと、変わらない願いが」

 

「ふむふむ。願いがあるというのは良い事じゃ」

 

「ですが……今の私では、それができずにいます」

 

スポーツドリンクを持っているアインハルトの両手に、いくらか力が籠る。

 

「今こうしている間も、凄く苦しんでいる人がいるというのに。私はただ、自分を鍛え続ける事しかできない。その鍛えた力すらも、その人の為に何の役に立てる事もできません」

 

「むぅ、それは確かに辛いのぉ」

 

「私は……私は一体、どうすれば良いんでしょうか……?」

 

凶悪な殺人犯に襲われ、そのトラウマで今も苦しんでいる子がいるのに。その子の為に、今の自分では何の力にもなってやれない。アインハルトは、そんな自分の無力さが嫌だった。嫌になるくらい、自分がどうすれば良いのか全くわからずにいた。

 

「……敢えて聞かせて貰いたいんじゃが」

 

ここで山岡が、アインハルトに問いかける。

 

「自分は今、どうしたいと思うとるんじゃ?」

 

「……わかりません。今の私には、とても」

 

「鍛えずともできる事が、お嬢さんにはあるんじゃないかのぉ」

 

「え……?」

 

その言葉に、アインハルトは顔を上げて山岡の方へと向ける。山岡は構わず言葉を続けた。

 

「もう一度聞かせて貰おうかの……お嬢さんが今、本当にやりたい事は何じゃ?」

 

「ッ……私が、やりたい事は……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は戻り、二宮とウェイブは……

 

 

 

 

 

 

「これで、何となくでもわかっただろう? 俺達のやろうとしている事が」

 

「……嘘、だろ」

 

二宮から渡された書類の内容を、最後まで一通り読み終えたウェイブ。その時、彼が見せた表情は……先程までの熱く燃えていた感情が、嘘のように消え失せていた。

 

「何だよ……何だよこれは……ッ!!」

 

書類を手離したウェイブは、その場に座り込んで壁に背をつける。彼の表情はどんどん青ざめていき、その声は震えを全く隠せなかった。

 

「お前のお望み通り、真実を教えてやったぞ。どうする? これも素直に公表するのか?」

 

「……駄目、だ……ッ」

 

ウェイブは何度も首を横に振る。呼吸はどんどん荒くなり、体の震えも止まらなくなる。

 

「駄目だ……こんなの……こんなの、公表したら……ッ!!」

 

「そう、マズい事になる」

 

二宮がウェイブの方に歩み寄って行くと、ウェイブはビクッと怯えた様子で座ったまま後ろに下がろうとする。しかし壁に背を付けている時点でそれ以上後ろに下がる事はできず、二宮はそんな彼を追い詰めるかのようにどんどん近付いていく。

 

「だが、俺が管理局に捕まるような事があれば結局、そこに書かれている内容は全部公表される事になる。それはお前にとっても望んでいる事じゃあるまい? 隠された真実を明かした事で、誰かの人生を歪めてしまった経験のあるお前なら」

 

「ッ……!!」

 

ウェイブの脳裏に浮かび上がる、ある少女の後ろ姿(・・・・・・・・)。それを掻き消そうと、ウェイブは必死に頭を振るう事しかできない。そんな様子のウェイブを見下ろしながら、二宮は小さく笑みを浮かべた。

 

「だったらもう、お前もわかっているよな? お前がこれからどうするべきなのかも」

 

ここまで全て、二宮の計画通りだった。

 

ウェイブの素性について、ある人物(・・・・)から事前に話は聞いていた。そこで二宮は、敢えて自分達が隠している真実の一部を正確に明かす事にした。

 

真実を明かす事で後に起こってしまう悲劇。

 

その悲劇が起こる可能性の高さを明示した事で、二宮はウェイブが取れるはずだった行動を、実質1つになるまで狭めてみせたのだ。

 

「俺は今、ちょっとばかり済ませておきたい仕事があってな。手伝ってくれると非常に嬉しいんだが……手伝ってくれるよなぁ?」

 

二宮はウェイブの前に立ってからしゃがみ込み、ウェイブの胸倉を掴んで自分の方へと引き寄せる。未だ青ざめた表情を浮かべているウェイブに対し、二宮は冷酷な笑みを浮かべながら言い放った。

 

「俺は……俺は……ッ!!」

 

「ようこそ、こちら側へ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「歓迎するぜ? 共犯者(・・・)さんよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

残酷な協定が今、ここに結ばれてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同時刻……ミラーワールド、とあるトンネル内部。

 

 

 

 

 

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴ……

 

 

 

 

 

 

ボディ各部の牙や爪を模した銀色の装甲。

 

 

 

 

 

 

黒と茶色が複雑に混ざり合ったアンダースーツ。

 

 

 

 

 

 

恐竜の顔を模した頭部の意匠。

 

 

 

 

 

 

カードデッキに刻まれた恐竜のエンブレム。

 

 

 

 

 

 

謎の仮面ライダーは1人、長柄の金鎚らしき武器を引き摺りながら、暗いトンネルの闇を闊歩していた……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

To be continued……

 




次回、リリカル龍騎Vivid……!


山岡「自分の胸に問いかけてみると良い。答えが見つかるはずじゃ」

アインハルト「私が今、やりたい事は……」

ヴィヴィオ「駄目、逃げてアインハルトさん!!!」


戦わなければ、生き残れない……!
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