リリカル龍騎ライダーズinミッドチルダ   作:ロンギヌス

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うぇい、久々の更新です。

1話内に書きたい事を限界まで詰め込んだ結果、今回は久々に長くなりました。

それではどうぞ。






ちなみに活動報告にて、リリカル龍騎版「RIDER TIME」に登場予定のオリジナルライダーの募集を諸事情から再開しております。
もし「これ送りたい!」というのがあれば活動報告か、もしくはメッセージボックスからどうぞ。












次回予告BGM:Go! Now! ~Alive A life neo~









第35話 約束

「イヴちゃんが、また1人でミラーワールドに……!?」

 

『本当に、面目ありませんわ……!』

 

「気にしなくて良いよお嬢様、こっちで何とか見つけ出すから……!!」

 

ヴィクターから連絡を受け、イヴがまた1人でミラーワールドに向かった事を知ったウェイブ。イヴが1人で勝手にミラーワールドに向かうなど、これで一体何度目になるのか。もはや数えるのも面倒だと、ウェイブは頭を抱えながらも通信を切った後、すぐにその場から動き出そうとしたが……目の前にいる人物を見て思わず足が止まる。

 

「ッ……アンタ……」

 

「別に構わんぞ。お前の好きに動いて」

 

ウェイブの目の前で壁に寄り掛かっている人物―――二宮は腕を組みながら、軽い口調でそう言ってのけた。

 

「今はまだ、あのガキに死なれちゃこっちも困るんでな」

 

「……変身!!」

 

「やれやれ……ん?」

 

二宮に対して何か言いたげな表情のウェイブだったが、すぐに切り替えてからアイズに変身し、ビルの窓ガラスを通じてミラーワールドへと向かって行く。その様子を見届けていた二宮だったが、そこに何者かからの通信が繋がり、二宮はそれに応じた。

 

「俺だ……あぁ、ルーチェか。どうした?」

 

相手はネヴィア・ルーチェからだった。一体何の用で連絡して来たのかと疑問に思った二宮は、そこでとある情報を入手する事となり、僅かながらも驚きの表情を見せる。そして彼は厄介そうに舌打ちしながらも、ある目的の為にカードデッキを取り出し、即座に行動を開始した。

 

「何だと……チッ……わかった、俺もすぐに向かう。お前からフローレンスに伝えておけ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「予定変更だ。ジャック・ベイルは今日中に始末する……とな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何故、二宮が突然そんな行動に出始めたのか?

 

 

 

 

 

それは今から数十分前の出来事が切っ掛けだった……

 

 

 

 

 

「んっ……」

 

ジャック・ベイルの襲撃を受け、気絶させられてしまったヴィヴィオ。意識を取り戻し、瞼をゆっくり開いた彼女の目にまず映ったのは、皹が生えていてボロボロな石の壁だった。そこから意識がハッキリとしてきたのか、彼女はすぐさまガバッと起き上がり、ここがどこなのか把握するべく周囲を見渡す。

 

「ッ……ここは……」

 

自分が今いるのは、どこかの廃ビルだろうか。自分の状況を落ち着いて把握しようとするヴィヴィオだったが、その際に自身のすぐ近くに倒れている人物を発見する。

 

「!? アインハルトさ……ッ!!」

 

ヴィヴィオは声をかけようとするも、ここで自分の腕と胴体が縄で縛られている事に気付く。その為、ヴィヴィオは同じく縄で縛られた状態で倒れている人物―――アインハルトの耳元で何度も呼びかける事にした。

 

「アインハルトさん、起きて下さい!! アインハルトさん!!」

 

「……ん、ぅ」

 

するとアインハルトもまた意識が戻ったようで、ゆっくり瞼を開けヴィヴィオと視線が合った。外傷も特にないとわかりホッと安心するヴィヴィオだったが、そこに何者かが声をかけてきた。

 

「おやおや、お目覚めかなぁ? おチビちゃん達」

 

声のした方に2人が振り向くと、そこには木箱の上に座り込みながら2人を見据えているガスマスクの男性―――ジャック・ベイルがいた。彼の存在に気付いたアインハルトは縄で縛られた状態ながらも、ヴィヴィオを守るように彼女の前に出ようとする。

 

「ッ……あなたが、ジャック・ベイルですか」

 

「正解♡ 俺を知ってくれているとはヒッヒッ……ヒッハハハハハハハ……!!」

 

ヒッヒッヒと不気味な笑い声を上げる金髪の男性―――ジャック・ベイルはそのガスマスクを取り外し、自身の素顔を露わにする。

 

「「……ッ!?」」

 

ガスマスクの下から現れたジャックの素顔……それは歪な物だった。

 

右上から左下にかけて伸びている一本傷。

 

上側が僅かに千切れてなくなっている左耳。

 

頭部の左側だけ大きく剃り込まれている金髪。

 

顔中の至るところに付いている小さな傷跡。

 

誰から見ても普通じゃない素顔を持ったジャックは醜悪な笑みを浮かべながら立ち上がり、それを見たヴィヴィオはビクッと怯えた表情を見せ、アインハルトは僅かに怯みながらも強気な表情を崩さなかった。

 

「ッ……その顔は……」

 

「んん? あぁ、これかい? これはねぇ……愛情の証(・・・・)なんだぁ」

 

「愛情の、証……?」

 

自身の顔の一本傷に触れながら、ジャックは語り始めた。

 

「ずっと昔……俺のお袋が、俺の為に(・・・・)付けてくれた傷さぁ」

 

「「!?」」

 

お袋……つまり母親が付けた傷。

 

一体、何故そんな傷を?

 

ジャックの顔の傷の由来に驚愕したヴィヴィオとアインハルトはそんな疑問を抱いた。その疑問に答えるかのように、ジャックは語り続ける。

 

「お袋は親父に捨てられたのさ……憎き親父になぁ……それに耐えられなかったお袋は、一生消えないであろう傷を俺の顔にいくつも付けた。お袋はいつも言ってたよ。これはお前への愛情だ(・・・・・・・・・・)ってなぁ」

 

「ッ……あなたの母が、そんな酷い事を……」

 

「んん? それは違うなぁ。お袋は別に酷い奴じゃないぞ」

 

「え……?」

 

母親を憎んでいない?

 

そんなにも酷い傷を負わされたのに?

 

何故ジャックは母親を憎んでいないのか。その答えは、2人を戦慄させるものだった。

 

「だってそうじゃないか。お袋はお前への愛情だ(・・・・・・・)って言ってくれたんだぞ? あの時、俺は凄く嬉しかったんだぁ」

 

 

 

 

 

 

「お袋は俺を、こんなにも愛してくれてるんだ(・・・・・・・・・・・・・・)ってなぁ……♡」

 

 

 

 

 

 

「「……ッ!!!」」

 

恍惚とした表情を浮かべながら、それがさも当然の事であるかのように語るジャックに、2人が抱いた思考は一致していた。

 

この男はイカれている。

 

こんな人間がこの世に存在していたのかと、2人は凄まじいレベルの戦慄が走っていた。

 

「あぁ、でも嬉しいなぁ。俺の顔の事、そんなにも心配してくれるなんて……お礼に今からおじさんが、いっぱい可愛がってあげるからねぇ~♡」

 

「ひっ……!?」

 

「ッ……彼女に近付かないで下さい……!!」

 

ジャックは舌舐めずりをしながら2人に近付き、ヴィヴィオは恐怖のあまり後ろに下がろうとする。そんな彼女を守るべく、アインハルトはそれ以上彼を近寄らせまいとする。

 

「あれ、嫉妬かなぁ? 大丈夫、おじさんは2人の事、平等に愛してあげるからさぁ♡」

 

「くっ……あぅ!?」

 

「アインハルトさん!?」

 

ジャックはアインハルトの胸倉を掴み、近くに設置されていた古ぼけた机の上に彼女を無理やり寝かせる。そしてアインハルトの上にジャックが馬乗りになり、完全に身動きが取れなくなってしまったアインハルトはすぐさま魔法を発動し、大人の姿になってバリアジャケットを纏おうとしたが……

 

(ッ!? 変身ができない……!?)

 

何度やっても、アインハルトは大人の姿になれず、バリアジャケットにも変化しなかった。抵抗する術がないとわかり、アインハルトの中で焦りはより強くなっていく。

 

「あぁ、ちなみにおじさんさぁ。どれだけ愛してあげると言っても、皆俺から逃げちゃうんだよぉ。それは凄く悲しいからさぁ……いっぱい愛し合えるように、ちょっとばかり細工をしておいたんだよねぇ♡」

 

「!? まさか……!!」

 

ここでアインハルトと、そしてヴィヴィオも初めて気付いた。自分達の足をよく見てみると、何やら小さな鉄製のリングらしき物が付けられており、リングには鎖を引き千切ったような跡が残っていた。

 

「前に襲ったお嬢さんが、たまたま魔導師だったみたいでさぁ。ちょっとばかり魔力錠を拝借したんだよ……さぁ、これで準備は整った」

 

「な、何を……」

 

「安心してね、最初は優しく(・・・)愛して……あ・げ・る♡」

 

「あっ……!?」

 

ジャックはアインハルトが着ているTシャツの胸元を両手で掴み、それを左右に力ずくで引っ張った。ビリビリと胸元を破かれ、その下に着けていた白いブラジャーが露わにされてしまったアインハルトは、恥ずかしさのあまり顔がみるみる赤く染まっていく。

 

「おぉ、可愛い下着じゃないか!? 良いねぇ、もっとおじさんに見せてくれよぉ……!!♡」

 

「く、うぅ……!!」

 

「アインハルトさん!!」

 

ジャックは興奮した様子でアインハルトに顔を近付け、彼女の首筋に小さくキスした後、ベロリといやらしく舐め上げる。男の舌で肌を舐められる感覚に、言いようのない嫌悪感を抱いたアインハルトは全身がゾワリと震え、目元には涙が小さく零れ出ようとしている。

 

(ど、どうしよう、このままじゃアインハルトさんが……!!)

 

ここにクリスがいないという事は、ジャックに襲われた際に置き去りにされてしまった可能性が高い。しかも自分の足にも魔力錠のリングが付けられている為、大人モードになるどころか何の魔法も使えない。今の彼女には、何も抵抗する術がなかった。

 

「あぁ良い、良いよぉ、お嬢ちゃん……もっと可愛がってあげるからねぇ~♡」

 

「い、やっ……やめて……ッ!!」

 

ジャックはアインハルトの頬をひと舐めしてから、彼女が身に着けているブラジャーに指を引っ掛け、それを上にずり上げようとする。これから自分が受ける辱めを覚悟し、アインハルトがギュッと目を瞑った……その時。

 

 

 

 

 

 

「―――ぁぁぁあああああああああああっ!!!!!」

 

 

 

 

 

 

「ん……ぐほぁあっ!!?」

 

「……え?」

 

突如、ジャックの体が大きく吹き飛び、ドラム缶や木箱を薙ぎ倒すように叩きつけられた。木箱が潰れる音、ドラム缶が倒れる音が響き渡る中、呆気に取られたアインハルトは何故ジャックが吹き飛んだのか、最初はその理由がわからなかった……が、それはすぐに判明した。

 

「ッ……イヴ……!?」

 

「え、誰?」

 

「はぁ、はぁ、はぁ……!!」

 

ジャックを殴り飛ばしたのは、その手にデモンシールドを構えたイーラだった。イーラは呼吸が荒い状態の中、アインハルトが寝かされている机まで歩み寄って行く。

 

「良かっ……た……間に、合った……!!」

 

「イヴ、どうしてここに……?」

 

イーラは彼女を縛っている縄を無理やり引き千切り、彼女の足に付いている魔力錠もグシャリと握り潰して強引に取り外す。何故イーラがここにいるのか、アインハルトは問いかけた。

 

「モンスターと、戦って、いたら……アインハルト、達を……見つけた、から……!!」

 

それはイーラがミラーワールドでベルゼフライヤーと戦っていた時の事。空中を自在に飛び回りながら攻撃して来るベルゼフライヤーに苦戦し、状況打破の為にカードを引き抜こうとしたイーラだったが……

 

『!? アレは……』

 

その際、彼女はたまたま目撃していたのだ。リッパーの姿に変身したジャックが、意識のないヴィヴィオとアインハルトを抱えてどこかに向かおうとしているところを。

 

『ッ……どいて!!』

 

『ブブゥ!?』

 

その場から動こうとしたイーラは一瞬足が止まったものの、接近して来たベルゼフライヤーをデモンシールドの一撃で強引に薙ぎ払った後、すぐにリッパーの後を追い始めた。そしてリッパーが向かって行った先の廃ビルに到着した後、ミラーワールドを出たイーラは廃ビル内のどこかにいるリッパー達を探し始め、そしてジャックに襲われているアインハルトを見つけ……そして現在に至ったのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

「イヴ……どうして、そこまでして……!!」

 

その経緯を知った時、アインハルトは彼女が助けに来てくれた事に驚愕し、同時に困惑していた。

 

ウェイブから聞いた話では、イヴはジャックに襲われた件でトラウマに近い物を抱いていたはず。

 

それなのに何故、恐怖心を抱きながらも自分達を助けに来てくれたのか?

 

「ッ……怖い、よ……今でも、ずっと」

 

その問いに答えようとするイーラの声は、震えていた。心なしか、アインハルトを抱きかかえる彼女の手は、今もまだ震えが残っていた。

 

「でも……アインハルトちゃんが、襲われてた、から……放って、おけなかった……!!」

 

「イヴ……」

 

それでも、彼女はここにやって来た。ジャックへの恐怖心よりも、アインハルト達を助けたいという気持ちの方を優先させたのだ。そんな彼女の優しさが、アインハルトの心に深く染み込んだ。そんな中……置いて行かれ気味になっていたヴィヴィオが、恐る恐る問いかけた。

 

「あ、あのぉ……アインハルトさんとは、お知り合いなんですか……?」

 

「ッ……イヴ、彼女の方もお願いします……!」

 

「うん、すぐに―――」

 

 

 

 

「また会えて嬉しいねぇ、お嬢さぁん♡」

 

 

 

 

「「「ッ!!!」」」

 

崩れた木箱の中から、ジャックがドラム缶を蹴り飛ばしながら再び姿を現す。イーラはヴィヴィオの縄と魔力錠も強引に引き千切った後、デモンシールドを構えながら2人を守るように前に立ったが、その体は未だ震えが止まらずにいた。

 

「駄目……ッ……それ以上……手は、出させない……!!」

 

「イヴ、駄目です!! 今のあなたでは……!!」

 

「そっかぁ、そうまでして俺に愛して貰いたかったんだねぇ……♡」

 

頑丈なデモンシールドで、かつ素顔を思いきり殴られたというのに、ジャックは怒るどころか先程までよりも興奮した様子で笑っていた。彼は近くの罅割れている窓ガラスにカードデッキを突きつけ、出現したベルトを腰に装着する。

 

「アハァ……変身♡」

 

右手で「J」の形を作った後、カードデッキをベルトに装填し、ジャックはリッパーの姿に変身。左手に装備されたリッパーバイザーを振り上げ、イーラに向かって歩を進めていく。

 

「よぉしわかった、そこまで言うなら……おじさん頑張っちゃうぞぉ!!!♡」

 

「ッ……うあぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

イーラはデモンバイザーの引き鉄を引き、リッパー目掛けて連続で矢を放つ。リッパーはそれをリッパーバイザーの刀身で容易く防ぎながら駆け出し、大きく跳躍してからイーラに向かって斬りかかる。

 

「ヒハハハハァッ!!」

 

「ぐっ……!!」

 

≪SWORD VENT≫

 

イーラはリッパーバイザーの斬撃をデモンバイザーで防ぎ、二撃目の斬撃を転がって回避してからデモンバイザーにカードを装填。召喚したデモンセイバーでリッパーバイザーの斬撃を受け流し、激しい剣戟を繰り広げる。

 

「す、凄い……戦えてる……!!」

 

「え、えぇ……ですが……!!」

 

事情を知らないヴィヴィオはイーラの実力に驚いていたが、アインハルトの表情は不安そうだった。あれだけジャックを恐れていたイヴが、果たしてこの調子のまま戦い続ける事ができるのだろうか、と。

 

彼女の不安は、見事に的中してしまう。

 

「ヒハハハハハ!! 嬉しいねぇ、そんなに俺を愛してくれるなんてぇ!!♡」

 

「ッ……はぁ、はぁ……!!」

 

リッパーが楽しそうに笑いながら攻撃を仕掛けるのに対し、イーラは既に疲弊し切っており、その呼吸は更に荒くなっていた。しかも呼吸が荒い原因は、ただ疲弊しているからだけではない。

 

「はぁ、はぁ、はぁ……ッ!!」

 

リッパーに殴りつけられた記憶。

 

リッパーに踏みつけられた記憶。

 

リッパーに斬りつけられた記憶。

 

リッパーと激しい攻防を繰り広げるたびに、最初にリッパーに襲われた時の恐怖が、イーラの中で強く蘇ろうとしていた。それが災いし、彼女の繰り出す攻撃は徐々にだが勢いがなくなりつつあった。

 

「ほらほら、どうしたのぉ? もっと俺を愛してくれよぉ!!」

 

「あっ!?」

 

とうとうデモンセイバーが弾き飛ばされ、リッパーに腹部を力強く蹴りつけられたイーラはバランスを崩しかけ倒れそうになる。そんな彼女に、リッパーは容赦なく襲い掛かる。

 

≪SWORD VENT≫

 

「ヒヒャッハァ!!!♡」

 

「ぐ……ああぁっ!?」

 

召喚されたエビルソーの斬撃が、イーラの胸部装甲を斜めに斬りつける。強烈な一撃を受けてしまったイーラは壁に叩きつけられて地面に倒れた後、変身が解けてイヴの姿に戻り、戦闘形態(バトルモード)も解除され子供の姿に戻ってしまった。

 

「!? 女の子……!?」

 

イーラの正体が小さい女の子だとは思っていなかったヴィヴィオは、倒れ込んだイヴの姿を見て驚いた。しかし驚いている暇はなかった。

 

「ありゃりゃ、もう疲れちゃったぁ? ごめんねぇ、ちょっと勢いがあり過ぎちゃったかなぁ?♡」

 

「ガハ、ゴホッ……!!」

 

「イヴッ!!!」

 

アインハルトが叫ぶ中、リッパーはエビルソーをブンブン鳴らしながらイヴに迫って行く。咳き込みながらも立ち上がろうとするイヴだったが、顔を上げた先に立っているリッパーを見て、その表情には再び恐怖が戻ってしまっていた。

 

「ひっ……!?」

 

「でも大丈夫! おじさんはまだまだ体力も余裕たっぷりだからさぁ……これからもっと気持ちの良い世界に連れて行ってあげるよぉ!!♡」

 

「い、いや……来ないで……ッ!!」

 

すっかり怯えてしまったイヴは必死に後ずさるも、壁際まで追い詰められてしまう。リッパーはそんなイヴを見下ろしながらエビルソーを高く振り上げ、彼女目掛けて勢い良く振り下ろそうとした……が。

 

「……んん? 待てよ」

 

突如、リッパーはエビルソーを振り下ろそうとした腕を止めた。彼はそのままイヴの顔をジーッと眺め始め、斬られると思って目を瞑っていたイヴは、いつまで経っても痛みが来ない事に気付き、恐る恐る目を開いた。

 

「……あぁそっか、思い出した。お嬢ちゃん、あの時会った子かぁ♡」

 

「はぁ、はぁ……ッ……?」

 

リッパーの言っている意味がわからず、イヴはただ怯えた表情を見せる事しかできない。それに構う事なくリッパーは話を続けていき……驚きの発言が飛び出してきた。

 

「いやぁ~久しぶりだねぇ~お嬢ちゃん、また会えるとは思ってなかったからおじさん嬉しいよぉ~♡ しかも昔会った時より綺麗になってるし♡ お母さんに凄く似て来たねぇ~♡」

 

「―――ッ!!?」

 

それを聞いたアインハルトは、驚いた様子で目を見開いた。

 

 

 

 

 

 

『しかも“昔”会った時より綺麗になってるし、“お母さん”に凄く似て来たねぇ~♡』

 

 

 

 

 

 

(昔……お母さん……それって……!?)

 

イヴは過去の記憶を失っているから、家族の事も何も覚えていない。

 

それを知っているからこそ、アインハルトはリッパーの発言を無視できなかった。

 

(まさか、あの男……!!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

記憶を失う前の(・・・・・・・)イヴを知っている……!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その時……

 

「ソニックシューター!!!」

 

「うごぅ!?」

 

真横から複数の魔力弾が飛来し、数発はエビルソーを横に弾き、そして1発はリッパーの顔面に直撃した。不意を突いた攻撃にリッパーが地面を転がる中、イヴは魔力弾を飛んで来た方向に振り向いた。

 

「アインハルトさん、今の内にあの子を!!」

 

「ッ……は、はい!!」

 

ヴィヴィオに呼びかけられ、ハッと我に返ったアインハルトはすぐ武装形態の姿に変化し、バリアジャケットを纏ってから素早くイヴの元へ駈け出した。起き上がろうとしたリッパーの周囲にはヴィヴィオが再び複数の魔力弾を着弾させ、土煙でリッパーの視界を封じていく。

 

「ッ……あちゃあ、逃げちゃったかぁ」

 

土煙の中から抜け出したリッパーの視界には、既に3人の少女の姿はなかった。まんまと逃げられてしまった事を悟ったリッパーだが、彼は変わらず楽しそうに笑っていた。

 

「今度はかくれんぼかぁ……良いねぇ、おじさん頑張って見つけちゃうぞぉ~♡」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ッ……まさか、あの男……!?」

 

その様子を、少し離れた位置にある別の廃ビルから窺っている人物がいた。ジャック・ベイルの監視をしていたネヴィア・ルーチェだ。

 

(マズい……あの娘の過去(・・・・・・)は、周囲にバレる訳にはいかない……!!)

 

ネヴィアは焦りの表情を浮かべ、自身が所持している通信端末で連絡を取り始める。その通信先は自分にとって非常に忌々しい相手であったが、今はそれを気にしている暇はなかった。

 

『俺だ……あぁ、ルーチェか。どうした?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「はぁ……はぁ……ッ」」

 

「何とか、撒けましたね……」

 

その一方、リッパーから逃れた3人の少女は別の部屋まで逃げ延び、とある部屋に逃げ込んでから物陰に身を潜めていた。大急ぎで通路を走り抜けた為、走り疲れたイヴとヴィヴィオはその場に座り込み、必死に呼吸を整えている。武装形態になっていたアインハルトのみ、今もなお落ち着いた様子で周囲の様子を窺い、リッパーが追い付いて来ていないか警戒を強めていた。

 

「はぁ、はぁ……あの、大丈夫ですか?」

 

「ッ……大、丈……夫……!」

 

ヴィヴィオの心配そうな声に対してそう答えたイヴだが、その様子はどう見ても大丈夫ではない。リッパーとの戦闘で体力を消費し切っていたイヴはヴィヴィオよりも呼吸が荒く、とても戦えるような状態ではなかった。

 

「イヴは休んでて下さい。もしあの男がまた追いついて来ても、私達が対処しますので」

 

「ッ……」

 

「うわっとと!? あ、あの、しっかり!!」

 

アインハルトがそう言うと、イヴは緊張の糸がほどけたのか、隣に座っていたヴィヴィオの肩に寄り掛かるように倒れ込み、そのまま意識を失ってしまった。

 

「疲れて眠ってしまったみたいですね。ヴィヴィオさん、彼女を運べますか?」

 

「へ? あ、はい。それは大丈夫です、けど……」

 

またリッパーが追い付いて来た状況にアインハルトが対応できるよう、ヴィヴィオが眠りについたイヴを背中におんぶし、2人は部屋の外をキョロキョロ見渡す。幸い、今はまだリッパーは追いついて来てないようで、2人は長い通路の先にある階段を見据えた。

 

「ヴィヴィオさん。もしあの男がまた現れたら、彼女をお願いします」

 

「はい……あの、アインハルトさん」

 

ここでヴィヴィオは、ずっと気になっていた事をアインハルトに問いかけた。

 

「この子、仮面ライダーに変身してましたけど……アインハルトさんは、この子と知り合いなんですか?」

 

「……はい」

 

ヴィヴィオの問いかけに対し、アインハルトは申し訳なさそうな表情で小さく頷いた。

 

「今まで黙っていてすみませんでした。彼女の事は、色々と事情が複雑で……」

 

「あぁいえ、気にしないで下さい! 訳ありなのは、アインハルトさん達の様子を見ていて何となくわかりましたから」

 

「……ありがとうございます」

 

ヴィヴィオにそう言って貰えて、アインハルトは内心ホッとしていた。イヴの事をあまり周囲に言いふらせない状況にあったアインハルトにとって、深く詮索しようとしないヴィヴィオの対応は凄くありがたい物だった。

 

「そっか……この子も、ずっと戦っていたんですね」

 

(? この子、()……?)

 

ヴィヴィオの発言が引っかかるアインハルトだったが、イヴの事で隠し事をしていた後ろめたさもあってか、彼女も詮索は控える事にした。

 

「……とにかく、彼女を安全な場所まで運ばなければなりません。その為にも、今は一刻も早くここを抜け出しましょう」

 

「そうですね。でも、アインハルトさんも決して無茶はしないで下さいね」

 

「私の事なら心配はいりません。それに……」

 

「それに?」

 

「……あの男には、聞かなければならない事がありますから」

 

「? それって―――」

 

 

 

 

ズガアァァァァァァンッ!!!

 

 

 

 

「「!!」」

 

「そこにいたかぁ、お嬢ちゃん達~♡」

 

彼女達が部屋を抜けて動き出そうとしたその直後。轟音と共に部屋の天井が破壊され、崩れ落ちる瓦礫の上にリッパーが着地した。

 

「ッ……ヴィヴィオさん、彼女を頼みます!!」

 

「は、はい!!」

 

アインハルトがリッパーを足止めするように対峙し、エビルソーを振り下ろそうとしたリッパーの右腕を蹴りつけ、エビルソーの刃が壁に激突する。

 

「イヴ……あなたにはもう、二度も助けられました……」

 

野良モンスターに襲われかけた時、彼女が助けに来てくれた。

 

今回もジャックに襲われていた自分を、彼女は恐怖を耐え忍んで駆けつけてくれた。

 

その恩義は、何としてでも返さなければならない。

 

「守られてばかりじゃない……今度は、私達があなたを守ります!!」

 

「良いねぇ、もっと楽し……ぷげぁ!?」

 

リッパーの斬撃をかわし、アインハルトはその顔面に拳を炸裂させる。その間にヴィヴィオはイヴを背負って通路を駆け抜け、階段を目指そうとする。

 

(今の内にこの子を……!!)

 

しかし、そう簡単にはいかないのが現状だった。

 

「おっと、逃がさないよぉ♡」

 

≪ADVENT≫

 

『ギュルルルルル……!!』

 

「え……うわっ!?」

 

「ヴィヴィオさ……くっ!?」

 

「ヒヒャハハハァッ!!」

 

通路の窓ガラスからエビルリッパーが飛び出し、突き飛ばされたヴィヴィオが倒れた拍子にイヴの体も床を転がされてしまう。すぐに2人の元へ救援に向かいたいアインハルトだったが、そこにリッパーが笑いながらエビルソーで斬りかかって来た為、そちらの相手をしなければならなかった。

 

「くっ……!!」

 

ヴィヴィオはエビルリッパーの斬撃を転がって回避し、床に落としてしまったイヴの元まで素早く駆け寄る。そこにエビルリッパーは容赦なく突進を仕掛けて来ようとしている。何か、このピンチを切り抜ける方法はないか。頭の中で必死に考え続けたヴィヴィオは……その方法が思い付いた。

 

(!! そうだ、確かこれ(・・)なら……)

 

ヴィヴィオは学生服の胸ポケットに手を突っ込み、そこから取り出したある物(・・・)を正面に突き出した。それは……

 

「お願い、効いて……!!」

 

『!? ギュ、ルル……ッ!!』

 

すると、ヴィヴィオの突き出したそれ(・・)はエビルリッパーに向けて強い光を放射。エビルリッパーは驚いた様子で即座にUターンし、窓ガラスを通じてミラーワールドに逃げ込んで行ってしまった。

 

「や、やった……!!」

 

ヴィヴィオがエビルリッパーに向けて突き出した物……それはブラックホールのような物が描かれた、1枚のアドベントカード。

 

SEAL(シール)

 

それがカードに記された文字だった。

 

 

 

 

 

 

『お守りのカードだ。これを持っている限り、鏡の中の怪物がお前を襲う事はできない』

 

 

 

 

 

 

『パパや夏希が傍にいない間も、このカードがお前を守ってくれる……持っていてくれるか?』

 

 

 

 

 

 

「ありがとう、パパ……!」

 

かつて敬愛する父から、お守りとして授かった封印(シール)のカード。それが今、こうして愛娘達の窮地を救ったのだった。

 

しかし……

 

「ヒィィィィィ……ヒャッハァ!!!」

 

「うあぁっ!?」

 

「!? アインハルトさん!!」

 

リッパーの攻撃を受けたアインハルトが吹き飛ばされ、ヴィヴィオの前まで転がり込んで来た。彼女を吹き飛ばしたリッパーは相も変わらず楽しそうに笑っており、エビルソーの刃を回転させている。

 

「ほらほら、どうしたんだぁ? もっと激しくしてくれよぉ……!!♡」

 

「この……ッ!?」

 

立ち上がろうとするアインハルトだったが、エビルソーで斬りつけられてしまったのか、彼女の右足には僅かにだが切り傷ができてしまっていた。その痛みのせいでアインハルトは上手く立ち上がる事ができない。

 

(この男……あれだけやっても平気だなんて……!!)

 

ヴィヴィオがエビルリッパーを追い払っている間に、アインハルトはリッパーに対し、覇王断空拳の強烈な一撃を炸裂させていた。それは確かにリッパーの胸部に直撃したはずだったのだが……

 

『あぁ~……良い、良いねぇ!! もっと強烈なのを頂戴よぉっ!!!♡』

 

『!? うあぁっ!?』

 

リッパーは苦しむどころか逆に喜んでしまい、逆にカウンターの一撃をアインハルトに喰らわせて来たのだ。女性から攻撃される事で喜ぶその性質は、まさにイカれているとしか言いようがなかった。

 

「アインハルトさん、傷が……!!」

 

「私は大丈夫です……ッ!!」

 

「仲良しなんだねぇ……心配いらないよぉ、皆まとめて愛してあげるからぁ!!!♡」

 

もはや万事休すか。リッパーがエビルソーを構えながら迫る中、アインハルトの後ろで守られていたヴィヴィオは、アインハルトのバリアジャケットの袖をギュッと掴む。

 

(ッ……パパ……!!)

 

殺されかけている状況だからか。

 

この時、ヴィヴィオの脳内には走馬灯のような物が見えかけていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ヴィヴィオ。お前まで、俺達の戦場(・・・・・)に来てはいけない……わかったな?』

 

『ヴィヴィオは絶対に、悪戯や遊び、人を傷つけるような事なんかの為に、この力は使いません。この場で約束します』

 

それは、初めてクリスを受け取った時。

 

ヴィヴィオは父と、ある約束を交わした。

 

『元々、大人の姿になれたって、心まで大人になる訳じゃないからね。ヴィヴィオはまだ子供だから。ちゃんと順を追って大人になっていくつもりだよ』

 

『普通に成長して、この姿になった時に恥ずかしくないように……ママとパパ、お姉ちゃんの家族として、えへんと胸を張れるように……皆と一緒に、笑顔でいられる幸せな時間を過ごせるようにね』

 

悪戯や犯罪行為などの為に、この力は絶対に使わない。

 

恩義ある家族の為に、ヴィヴィオはそれを固く誓った。

 

『……そうか。お前のような娘と家族でいられて、俺達は幸せ者だな』

 

『えへへ……♡』

 

『その上でだ、ヴィヴィオ』

 

ここで父は、ヴィヴィオに対してこうも告げていた。

 

『今さっき、お前はその力を危ない事には使わないと約束したな』

 

『? うん』

 

『だが、今のこの世の中だ。そう上手くはいかないかもしれないのが現状だ』

 

ただでさえミッドの治安が悪く、いつモンスターが襲って来るかもわからない状況下。

 

もしかしたら、娘がそれを望んでおらずとも、事件に巻き込まれてしまう事だってあるかもしれない。

 

それを考慮した父は、ヴィヴィオにある条件を課した。

 

『もしお前や、お前の友達の身に危険が迫るような事があったら……その時だけは、迷わずその力を使え』

 

『パパ……』

 

『ただし、さっきも言ったように、悪戯や危険な事の為には絶対に使うな。お前の力は、人を傷つける為にある物じゃない……お前の力は、人を守る為の力だ』

 

『……うん、わかった。でもねパパ』

 

『?』

 

『いくらヴィヴィオでも、鏡の中の怪物とかに襲われたら流石にひとたまりもないよ。だから……』

 

ヴィヴィオもまた、父と、そして母と姉にある約束を結ばせた。

 

『もしヴィヴィオが危なくなったら……その時は、パパとママ、お姉ちゃん達が助けに来てね』

 

『……もちろんだ。ヴィヴィオがどこにいても、俺達が必ず助けに行く』

 

『約束だよ?』

 

『あぁ、約束だ』

 

再び父と指切りを行い、約束を交わした。

 

この時、ヴィヴィオは引っ掛けていた小指に入る力が、今までで一番強かったのを記憶していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(あの時、約束したんだ……)

 

そして今。ヴィヴィオ達は窮地に追い込まれていた。敵の凶刃が、すぐそこまで迫って来ている。

 

「ヒヒヒヒヒ……ヒヒャハハハハハハァッ!!!!!♡」

 

「……ッ!!」

 

リッパーがエビルソーを振りかぶり、アインハルトがヴィヴィオとイヴに覆い被さる。そんな状況下でも、ヴィヴィオは心から信じていた。

 

家族と交わしたあの約束が、果たされるその時を。

 

「来てくれるよね、パパ……!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

≪SURVIVE≫

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガキィィィィィィンッ!!!

 

「「……!」」

 

高く響き渡る金属音。

 

ブンブンうるさく鳴っていた稼働音が、急に静かになった。

 

「ッ……何ぃ?」

 

凶刃が、振り下ろされる事はなかった。

 

それが確信できた時、リッパーは困惑し、アインハルトは目を見開き、そしてヴィヴィオはその表情に明るい笑顔が戻った。

 

「すまないヴィヴィオ、遅くなってしまった」

 

「……パパ!!」

 

「約束通り、助けに来たぞ」

 

エビルソーを受け止めたその戦士―――ライアサバイブは、愛娘達の方に振り返りながら告げてみせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

To be continued……

 




次回、リリカル龍騎ViVid!


手塚「娘達が世話になったようだな。その礼はさせて貰うぞ……!!」

ジャック「俺の邪魔をするなぁ!!」

ティアナ「ジャック・ベイル……あなたを逮捕します!!」


戦わなければ、生き残れない……!
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