今回は冒頭からあの人がフリーダムにやっておりますが、やっぱり彼がいると話を書きやすくて本当に助かります。
それではどうぞ。
「はぁ……はぁ……はぁ……!!」
夜のミッドチルダ、人の通りがない真っ暗な道路。1人の女性局員が、何かから必死に逃げるように全力で走り続けていた。既に結構な距離を走っているからか、既に女性局員は息が切れかかっているが、今の彼女には立ち止まる暇など存在していない。
キィィィィィィィィ……
「ッ!!」
後方から聞こえてくる、鉄製の物質が地面に引き摺られる音。女性局員は青ざめた表情で後ろを振り返り、すぐさま近くの建物の物陰に隠れ込み、音が過ぎ去っていくのを待ち続ける。
(いや……こっちに来ないで……お願い……!!)
女性局員はしゃがみ込んだまま、必死に願い続ける。そうしている内に、鉄が引き摺られる音は徐々に小さくなり聞こえなくなっていく。
(……た、助かった……?)
音が聞こえなくなり、女性局員はホッとした様子で胸を撫で下ろす……
「そこにいたかぁ……?」
「―――ッ!?」
……が、無駄だった。既に彼女の背後には、蛇柄ジャケットを着た怖い目付きの男が回り込んでいたのだ。
「ひぃ……!?」
「逃げるなよ……イライラする……」
男は右手に持っていた鉄パイプで地面を何度か小突く。どうやら先程までの鉄を引き摺る音は、この鉄パイプから発せられていたようだ。
「ッ……いや!!」
女性局員は男を睨み、男の頬に平手打ちを喰らわせる……が、男は全く怯んでおらず、それどころか男は平手打ちをしてきた女性局員に対して不気味な笑みを浮かべる。それを見た女性局員は怯えた表情でもう一度平手打ちを当てようと右手を振るうが……
「ッ!? 痛っ……!?」
「はははははは……!!」
二度目は通じなかった。彼女の右手は男に掴まれ、右手を強く握られた痛みで女性局員は表情を歪める。
「懐かしいなぁ……昔、そうやって俺を睨んできた女を思い出す」
「ッ……い、いや、誰か助けて!! 誰か……あぐ!?」
助けを呼ぼうとした女性局員を、男が右足で蹴り倒す。そして蹴られた箇所を押さえて苦しんでいる女性局員の首を左手で掴み、無理やり立ち上がらせてから近くの建物まで引っ張っていく。
「精々醜く、抗え……!!」
ガシャァァァァァンッ!!
「が……!?」
女性局員の後頭部が掴まれ、建物の窓ガラスに思いきり叩きつける。その力強い一撃は窓ガラスをぶち破り、ガラスの破片で顔に傷を負った女性局員は再び地面に倒され、そこに鉄パイプが容赦なく振り下ろされた。
「がふっ!? かは……ッ」
「どうした? 抗ってみろよ……!!」
その後も男は何度も鉄パイプを振り下ろし、女性局員の体に叩きつける。
何度も。
何度も。
何度も。
何度も。
何度も。
何度も殴っている内に、男は女性局員が既に虫の息である事に気付いた。
「ぁ……ぁ、あ……ッ……」
「……つまらん」
男―――浅倉威は飽きた様子で、最後にトドメの一撃を思いきり振り下ろす。鉄の鈍い音が、一際大きく夜の街へと響き渡った。
その翌日……
「はーい、皆そこまでー!」
六課の訓練場ではいつもの通り、なのはの下でフォワードメンバー達は訓練を終えた頃だった。現在はティアナも今までのような無茶な戦い方をする事もなくなり、ティアナを含めフォワードメンバーの全員がキレの良い動きをするようになった。その事になのはは嬉しそうな表情を浮かべつつ、訓練終了の合図を送る。
「「「「ふはぁ~……!」」」」
「皆、お疲れ様!」
「相変わらずハードそうな訓練だったな」
「全くだよねぇ~」
「取り敢えずガキ共、まずは水分を補給しろ」
そこにフェイトと手塚、美穂とヴィータの4人が駆け寄り、フォワードメンバー達に水分補給用のドリンクをそれぞれ配っていく。フォワードメンバー達がドリンクを飲んで水分を補給する中、なのはからフォワードメンバー達にある事が伝えられた。
「これで、今朝の訓練と模擬戦は無事に終了! 実を言うとね。今日の模擬戦は、第2段階の見極めテストも兼ねていたんだけど……」
「「「「えっ!?」」」」
「それで結果は……」
たった今初めて知らされた事実に、フォワードメンバー達が驚愕してドリンクを落としかける。そしてなのはがフェイトとヴィータの方に振り返る。
「うん、合格」
「「早っ!?」」
まさかの早過ぎる結果発表に、スバルとティアナが思わず突っ込んだ。
「皆すごく頑張ってたし、問題ないんじゃないかな」
「むしろこれで駄目だったら、最初の基礎からやり直す羽目になってたぞ」
「まぁそういう訳で……それじゃあ皆! 第2段階に突入って事で、明日からはセカンドモードを基本形にして練習する事になるから! 気を引き締めて頑張っていこう!」
「「「はい!!」」」
「はい!! ……え?」
元気よく返事を返すスバル達だったが、ここでキャロが気付いた。
「なのは隊長、明日というのは……?」
「あぁ、その事なんだけどね。今日の昼間は私達隊長陣も六課で待機予定になってるから」
「それに皆、今日の午前中までずっと訓練漬けだったのもあるし……」
「次の訓練は明日からって事になる」
「今日1日、訓練はお休みだよ!」
「「「「……やったぁー!!」」」」
それを聞いて、少し遅れてフォワードメンバー達が一斉に喜んだ。その様子にフェイトが苦笑し、手塚と美穂は温かい目で眺めていた。
「……こうして見ると、ナカジマ達もやはり年相応の子供のようだな」
「というか、子供なのに精神年齢妙に高くない? アタシとしてはその事が気になって仕方ないんだけど」
「ま、まぁ、皆も色々ありましたし……あ、手塚さんと美穂さんは今日はどうしますか?」
「俺は六課で待機していよう……言っておくが美穂、お前も隊舎で待機だからな」
「えぇ~!? スバルやティアナと一緒に、街まで遊びに行こうと思ってたのにぃ~」
「モンスターがいつ現れるかわからない以上、いつでも出れるようにしておくに越した事はない。諦めろ」
「ちぇ~」
「あははは……」
美穂も手塚と同じように、六課での待機が強制的に決定された。不貞腐れている美穂に、フェイトは思わず苦笑してしまうのだった。
その後。隊舎の食堂では隊長陣の面々、そして手塚と美穂が食事を取っていた。手塚はトンカツ定食を、美穂はカレーを美味しく味わっている。
「そういえば手塚さん。さっき手塚さん1人でメニューを注文してましたけど、ミッド語が読めるようになったんですね」
「ある程度は、だがな。まだしばらく指導が必要な事に変わりはない。今後もよろしく頼む、リイン先生」
「はいはい、お任せです~!」
手塚から先生と呼ばれ、機嫌を良くしたリインが笑顔でビシッと敬礼する。一方で美穂は、何故かグッタリしたような表情でカレーを食べていた。
「すごいなぁ~海之。ミッド語なんてアタシは全然わからないよぉ~……」
「もちろん、美穂さんにもキッチリ指導していきますので、今後ともよろしくです!」
「うへぇ~……」
既にある程度はミッド語が読めるようになっていた手塚と違い、ミッド語の勉強を真面目にしてこなかった美穂はかなり苦労しているらしい。彼女の場合、言語の勉強はさほど得意ではないようだ。
「どうやら、頭の出来においては手塚の方が良いようだな」
「む……シグナム、今ちょっと失礼な事言ったでしょ」
「おっとすまない、聞かれていたか」
シグナムにからかわれた美穂が頬を膨らませている時だった。
『当日、首都防衛隊代表のレジアス・ゲイズ中将による、管理局の防衛思想に関しての表明が行われました』
「……!」
食堂内で設置されているテレビに、ある人物の姿が映し出された。手塚達はテレビに釘付けになる。
『魔法と技術の進歩と進化。素晴らしい物ではあるが……しかし!! それが故に、我々を襲う危機や災害も10年前とは比べ物にならないほどに危険度が増している!! 兵器運用の強化は、日々進歩する世界の平和を、守る為である!! 首都防衛の手は未だ足りん……非常戦力においても、我々の要請が通りさえすれば、地上の犯罪も発生率で20%……検挙率においても35%以上の増加を、初年度から見込む事ができる!!』
大勢の局員達の前で力強く演説を行う、髭を生やした強面の男性局員。彼の演説でテレビに映っている局員達が拍手する中、その演説を見ていたヴィータは呆れた様子だった。
「このオッサン、まだこんな事言ってんのな……」
「レジアス中将は古くからの武闘派だからな」
「ねぇねぇ。このオッサン誰なの?」
テレビで演説をしている人物について、美穂がなのは達に問いかける。
「……レジアス・ゲイズ中将。首都防衛隊の代表にして、管理局地上本部のトップとも呼べる人だよ」
「確か、地上本部の面々からは正義の象徴と謳われていたんだったか……」
「というか、あのブライアン少将の一件もあったってのに、よくこんな強気な姿勢で言えるよな」
「そのブライアン少将も、今は牢屋に送り込まれたらしいがな」
「「……」」
その何気ない一言に、手塚と美穂が沈黙する。
先程名前が出ていたジェームズ・ブライアン少将。裏で麻薬密売組織と共謀し、美穂を自分の女として連行しようとした人物。フェイトと手塚の活躍によって逮捕された彼はその後、表向きは軌道拘置所という場所に収容された事になっているが……手塚と美穂は本当の結末を知っている分、複雑そうな表情を浮かべていた。
「あ、ミゼット提督達も映ってる」
そんな時、なのははテレビに映っている強面の男性局員―――“レジアス・ゲイズ”中将の後ろに、3人の老齢の局員が座っている事に気付いた。
「……本局統幕議長、ミゼット・クローベル。武装隊栄誉元帥、ラルゴ・キール。法務顧問相談役、レオーネ・フィルス。伝説の三提督と呼ばれている方達だったか」
「……ねぇ海之、何でそんなに詳しいの?」
「この世界に来てから、魔法文化や管理局の情勢についても色々勉強しているからな。知っておいても別に損はないだろう?」
「うっわぁ、そこまで付いていけそうにないやアタシ……」
美穂が項垂れる中、ヴィータは三提督の面々を見て呟いた。
「こうして見ると……普通の老人会みたいだな」
「あ、それは確かに」
「こら、失礼だよヴィータに美穂さん。偉大な方達なんだから」
「「は~い」」
フェイトに注意されても呑気そうなヴィータと美穂に、なのは達が苦笑する。その一方、手塚はテレビで演説をしているレジアスに注目していた。
(自分の正義を信じ、時には自分の思想を強引に押し通すワンマンな傾向があり、黒い噂もあるという人物……どの世界でも、正義と正義のぶつかり合いは絶えないようだな……)
その後、少ししてレジアスの演説が終わり、続いてのニュースが放送された。
『昨日の深夜1時頃、ミッドチルダ東部ウェズリア地方第4区内にて、女性が重体で倒れているところが発見されました』
「!」
『被害者は時空管理局地上本部所属の局員メルトリア・クレイス氏、20歳。顔にはガラスの破片で負ったと思われる複数の切り傷が、手足や腹部などには鈍器で殴られたと思われる打撲の跡が複数見つかっており、××××病院に搬送されたとの事です。これについて管理局は現在、何らかの暴行事件に巻き込まれた物として捜査を行っており―――』
「……」
暴行事件。そう聞いて、手塚は脳裏にある男の存在が思い浮かんだ。
(暴行事件……まさかとは思うが……)
手塚は横目でチラリと美穂を見る。美穂もテレビのニュースに意識を向けており、心なしかその手がほんの僅かに震えているようにも見えた。
(……自分の考え過ぎであって欲しいものだな)
そんな彼の思いは、後に裏切られる事になる。今の手塚はそんな事など知る由もなかった。
「―――地上の犯罪の検挙率が35%以上、ねぇ」
オンボロのアパート。ドゥーエがマリア・ローゼンとしての姿で地上本部に勤務している中、二宮も同じように部屋のテレビで、先程までレジアス中将が演説している光景を見ていたところだ。彼は自分で作った昼食のラーメンをズルズル啜りながら、今は他のニュースに耳を傾けている。
(犯罪が増えてくれた方が、俺としては裏で動きやすくて助かるんだがなぁ……)
しかし、ブライアン少将の一件で本局よりも立場が悪くなっている地上本部だが、そのトップに立つレジアス中将は管理局の中でも発言力が高い方の人間だ。頑固で過激な一面も強いが、武力強化もあって犯罪を抑え込んでいるのも事実であり、そのカリスマ性も相まって彼を正義の象徴として英雄視する者も少なくない。
(……やっぱり、あの男もいずれは邪魔になりそうだな)
何やら危険な思想を抱いていた二宮だったが、そんな彼の下にいきなり映像通信が繋がった。通信相手はドゥーエ……ではなく、マリア・ローゼンだ。
「……最高評議会のお付きである局員さんが、こんな時間帯に何の用だ」
『休憩中だから問題なしよ。それより鋭介、テレビのニュースは見てるかしら?』
「飯を食いながらな。それが何だ?」
『今、暴行事件についてのニュースが流れてるでしょう? その事で鋭介に伝えておきたい事があるの』
「何……?」
『今朝、私のところにドクターから通達があったの。戦力として保有しているライダーを1人、ミッドチルダに投入するって』
「とうとう動き出したか……ライダーの詳細は?」
『やっと送られてきたわ。どんなライダーに変身するのかまでは聞いてないけど、顔写真だけ送られてきたの』
映像で送られてきた、ミッドチルダの投入されたというライダーの顔写真。その人物の顔を見て、二宮はダルそうにしていた目を大きく見開かせた。
「浅倉……!?」
『ドクター曰く、昨夜の暴行事件は彼が起こした物みたい。あなた、彼を知ってるの?』
「……知ってるどころのレベルじゃないな」
二宮は大きく舌打ちし、ラーメンを食べていた箸を置く。
「アイツ、まさかスカリエッティの所にいたとはな……おかげで余計に動きにくくなっちまった」
『その様子じゃ、あまり良い関係ではなさそうね。この男にも知られちゃマズいんだったかしら?』
「当たり前だ。俺の事は誰にも知られちゃならないんだ。管理局だけじゃない、スカリエッティにもな……まさかとは思うが、俺の事を連中に告げ口してないだろうな?」
『する訳ないじゃない、そんな事すれば私が喰われちゃうもの。今後もドクターには黙っておくわ。だから鋭介の方こそ、ちゃんと私のお仕事を手伝いなさいよ?』
「わかっている。そういう取引だからな」
『……めんどくさいって気持ちが顔に出てるわよ?』
「放っとけ、元からこういう顔だ」
『まぁ、とにかくそういう事だから。何かあったらまた連絡するわ』
そう言ってマリアが映像通信を切った後、二宮は食べ終えたラーメンのどんぶりと箸を台所の洗い場まで持っていき洗う中、頭の中で今後の計画を練り始めていた。
(浅倉が動き始めたとなると、迂闊に外を出歩く事もできないな……オーディンの話じゃ、奴は手塚海之や霧島美穂とも因縁があるようだし、奴の相手はあの2人に任せれば良いんだろうが……問題は湯村の処分をどうするかだな……)
「……全く、めんどくさいったらありゃしない」
どんぶりを洗剤で洗いながら、二宮はウンザリした様子でそう呟くのだった。
場所は戻り、六課の方はと言うと……
「じゃあ、これなんてどうよ?」
「いや、私達無免ですし……」
スバルとティアナは街に出かけようとしていたのだが、2人は専用の乗り物を持たない為、ヴァイスに何か乗り物を借りようと格納庫までやって来ていた。ヴァイスからは外装の良い車を見せられたが、スバルもティアナも車の免許は持っていない為、これはアッサリ却下された。
「なら、こっちのバイクで良いか? 性能に不備がないか一応確認はするが」
「あ、はい! ありがとうございます!」
「良いなぁ~良いなぁ~2人でお出かけなんて良いなぁ~羨ましいなぁ~」
「……美穂さんはいつまでやさぐれてるんですか」
ちなみに彼女達の近くでは、外出の許可が出なかった事で不貞腐れている美穂の姿もあった。しゃがんで指で「の」の字を書いている彼女にティアナは呆れた様子で溜め息をつく。
「どんまいっすよ姐さん。何なら俺と職場デートでも―――」
「ヴァイス陸曹?」
「……冗談だよ」
ティアナに鋭い目付きで睨まれ、職場デートもアッサリ没になったヴァイス。彼はガックリしつつも、バイクの整備をあっという間に完了させ、スバルとティアナに貸し出す事になった。
「それではヴァイス陸曹、バイクをお借りします」
「行って来ま~す!」
「おう、気を付けて行って来いガキ共!」
「2人共、行ってらっしゃ~い……」
ティアナがバイクを運転し、スバルが後部座席に座る形で、2人は街へと出かけていった。ヴァイスと美穂はそんな2人を見送った後、ヴァイスは小さく溜め息をついた。
「たく、整備し終えた途端に出かけちまうとは、せっかちな奴等だ。世話が焼けるぜ……」
「そう言ってる割には、ヴァイスも面倒見が良いんじゃないの? まるで2人のお兄さんみたい」
「お兄さんねぇ……まぁ、一応妹はいるけどよ」
「え、妹さんいるの? 写真見せて!」
「うぉう! 急にグイグイ来るんだな姐さん……まぁ、別に良いけどよ」
ヴァイスは自身のデバイス―――“ストームレイダー”から写真を画面として映し出す。画面にはヴァイスと一緒に笑顔でピースしている妹らしき少女が写っていた。
「ほれ、妹のラグナだ」
「ラグナちゃんって言うの? すごく可愛いじゃん!」
「はは、姐さんにそう言って貰えるならアイツも喜ぶだろうよ。まぁ、これはかなり昔の写真だけど」
「ふ~ん。じゃあ今の写真は?」
「ない」
「え、何で?」
「ちょっと色々あってな……ま、アイツも今は元気にしてるってのは確かだよ」
「……ヴァイス……?」
目線をズラして誤魔化すヴァイスだったが、その口調は先程までと違いどこか暗い物だった。当然、美穂もそれに気付いていた。
「……妹さんと、何かあったの?」
「……」
そう聞いた途端、ヴァイスの口元から笑みが消える。
「……悪いが、聞かないで貰えると助かる」
それだけ言って、ヴァイスは格納庫を後にしていく。美穂はそんな彼の後ろ姿を見ている事しかできなかった。
一方、別の場所では……
「2人共、お小遣い持った?」
「はい、大丈夫です!」
外出しようとしていたエリオとキャロの服をフェイトが調え、その様子を手塚が眺めていた。フェイトは2人に忘れ物がないか何度も確認するが、エリオとキャロはそんな心配性なフェイトに若干苦笑している。
「ハンカチとティッシュも忘れないようにね。財布はなくさないようにちゃんとカバンに入れて、それからもし知らない人に声をかけられても決して付いていかない事! それから……」
「落ち着けハラオウン、2人が引いてる」
「「あ、あははははは……」」
「だ、だって、もし何かあったら大変だし……」
「少しは2人を信じてやれ。お前は2人にとっての母親のようなものなんだろう?」
「……うん、そうだね。ごめん2人共」
「い、いえ! ありがとうございます!」
「それじゃあ行って来ます!」
そしてエリオとキャロも街へ出かけ、その場にはフェイトと手塚が残された。2人に手を振っているフェイトの後ろでは、手塚が取り出したコインを指で弾いてキャッチする。
「……ん?」
「手塚さん、どうかしましたか?」
「……なるほど」
キャッチしたコインをフェイトに見せながら、手塚は占いの結果を告げた。
「今日この日、俺達には何か新しい出会いが待っている……とだけ言っておこう」
それから数時間後……
「はぁ……はぁ……」
とある下水道。ある金髪の少女が、ボロボロの服を纏って下水道の中を歩いていた。その両足には鎖が繋がれており、それぞれ2つのケースに繋がっている。
「行か、なきゃ……ッ……」
少女が歩いてきた奥の方では、複数のガジェットが破損した状態で転がっている。既に体力が尽きかけている少女は上手く動かない両足を必死に動かしていたが、途中で躓いて転んでしまう。
「あ……」
躓いた拍子に、片足の鎖が千切れケースが下水道に流されていく。それでも少女は構わず、下水道の中を歩き続けていく。
「助、けて……誰、か……ママ……」
キィィィィィン……キィィィィィン……
同時刻、街の中では例の金切り音が鳴り響いていた。しかしカードデッキを持つ者、直接モンスターに襲われた事がある者以外の人間には、この金切り音は全く聞こえていない。
「~♪」
1人の主婦らしき女性が、スーパーで買った食材の入ったビニール袋を持って歩いていた。そしてたまたま近くのお店のショーウィンドウに視線を向けた時、彼女は気付いた。
「……え?」
ショーウィンドウに反射して映っている自身の姿に、白い縞模様が見えていた。そのおかしな映り方に首を傾げる女性だったが、その直後……
『ブルルルルル……!!』
「!? いや―――」
ショーウィンドウから上半身だけ飛び出したゼブラスカル・ブロンズが、女性を捕まえて一瞬でミラーワールドに引き摺り込んだ。そしてお店のショーウィンドウの前には、彼女が先程まで持っていた食材入りのビニール袋だけが地面に落ちていたのだった。
「……!」
その金切り音を、あの男―――浅倉威はキッチリ聞き取っていた。とある民家に無断で侵入し、冷蔵庫の中の食べ物を漁っていた彼はニヤリと笑みを浮かべ、食べ終えて空っぽなヨーグルトの容器とスプーンを放り捨てる。
「来たか……待ちくたびれたぜ……!!」
浅倉はポケットから紫色のカードデッキを取り出す。カードデッキには、コブラを彷彿とさせる金色のエンブレムが刻まれていた。
そして……
『こちらライトニング4!! 緊急事態につき、現場状況を報告します!!』
ある大きな戦いが、ミラーワールドの中で始まろうとしていた……
To be continued……
リリカル龍騎StrikerS!
スバル「下水道から、女の子……?」
シャーリー「来ました、ガジェット反応です!!」
???「嘘と幻のイリュージョンで踊って貰いましょう♪」
浅倉「変身!」
二宮&湯村「「変身!」」
手塚&美穂「「変身!」」
オーディン『この戦い、果たしてどんな結末を迎えるのか……』
戦わなければ生き残れない!