リリカル龍騎ライダーズinミッドチルダ   作:ロンギヌス

28 / 160
今回は本編をお休みして、ちょっとした番外編を載せてみました。メインはサブタイトルの通りあの2人です。

え、番外編なんか書いてないでさっさと本編を進めろって?

……ご尤もな意見です←

それではどうぞ。



番外編① 深淵と二番目

『ねぇ、あなた大丈夫?』

 

意識が戻った時、最初に聞こえてきた言葉がそれだった。閉じていた目を開けた時、最初に見えたのは長い青髪が特徴的な女の顔だった。

 

『……ここ、は……』

 

『あら、意識が戻ったのね。このまま目覚めないのかと思った』

 

この世界に来てから、俺が最初にいたのはオンボロなアパートのすぐ近くにある路地裏だった。それから俺は女にアパートの部屋まで運ばれ、彼女に傷の手当てをされる事になった。

 

『……俺は……生きてる、のか……?』

 

『ふぅん、随分おかしな事を言うのね。まるで自分は死んだはずだとでも言いうかのような口ぶりじゃない』

 

『……』

 

『ま、それはともかくとして……あなた、自分の事はわかるかしら?』

 

『……あぁ』

 

『そう。目覚めたばかりのところ悪いけれど、あなたには色々聞きたい事があるわ。まずは……』

 

そこで女が取り出したのは、俺にとって見覚えのある物だった。鮫の顔を模した金色のエンブレムが刻まれた、水色のカードデッキ。

 

『それは……!』

 

『その反応からして、あなたの物で間違いないみたいね。これには何やら妙なカードが入っているけれど、これが普通の玩具じゃないのは直感でわかるわ。これが一体何なのか……詳しく教えて貰えるかしら?』

 

『……それをアンタに教えたところで、一体何になる』

 

『あなたに拒否権はないわよ』

 

『ッ!?』

 

そこからは一瞬だった。女は普通ならありえないパワーで俺をソファに叩きつけ、ソファに倒れた俺の上に跨ると共に姿を変えた。青く靡いていた髪は金色に変わり、その身は青いボディスーツのような物を纏い、その右手には鋭い鉤爪のような物を生やしていた。

 

『私って悪い女なの。あなたが協力的であろうとなかろうと関係ない。嫌でもあなたには話して貰うわよ。私の目的の為に……ドクターの計画を成就させる為にもね』

 

『ぐ……!』

 

この時、俺は自分がどんな状況にいるのかよくわからなかった。少なくとも、目の前の女が自分に凶器を向けている事だけは確かだった。それから、目の前の女が普通の人間じゃない事も把握できた。

 

『素直に話せば、私がこの体であなたにとっても良い事(・・・・・・・)をしてあげなくもないわ……さぁ、あなたはどうしたい?』

 

『……』

 

このままでは殺られる。そんな思考に至った時点で、俺は迷わず行動に出る事にした。女が持っているカードデッキのエンブレム……俺が今いる部屋にある大きめの窓ガラス……それらを認識できれば充分だった。

 

『……なら、こうさせて貰う』

 

 

 

 

キィィィィィン……キィィィィィン……

 

 

 

 

『……? 何、この音―――』

 

『『グルァッ!!』』

 

『な……がっ!?』

 

形成は一瞬で逆転した。俺がよく知る怪物が2体、窓ガラスから飛び出して女を突き飛ばし、床に倒れたところを怪物共が力ずくで押さえつける。その隙に、俺はまだ痛む体を無理やりにでも動かし、床に落ちたカードデッキを拾い上げた後、テーブルに置かれている水の入ったコップを手に取った。

 

『ッ……な、何なの……コイツ等……!? この……!!』

 

『そいつ等は人間が好物だ。俺の命令1つで、お前の命は簡単に奪い去られる』

 

『『グルルルルル……!!』』

 

『ひ……!?』

 

『……さっきまでの話で、アンタが悪人寄りの人間である事は理解できた。せっかくだ、アンタには色々教えて貰うとしようか』

 

女は俺より立場が上だと考えたんだろうが、実際は逆だ。俺がこの女を利用する立場にあるんだと。まずはそれをわからせてやる必要があった。俺は手に取ったコップを床に叩きつけ、その割れた破片を使ってこの女の体に傷を付けておく事にした。彼女の逃げ道を1つ残らず奪う為に。

 

『痛……!?』

 

『たった今、コイツ等はお前の血の匂いを覚えた。後はお前の行動次第で、お前の命はいつでもコイツ等が奪い取る事ができる。どこへ逃げても無駄だ』

 

『『シャァァァァァァ……!!』』

 

『ッ……あなた……一体、何者なの……!!』

 

『俺か? 俺は……』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『お前と同じ、悪い人間だよ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それがこの俺―――二宮鋭介と、ドゥーエの最初の出会いだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――眠い」

 

首都クラナガン、とある商店街。この日、二宮は休暇を取ったドゥーエの為に買い出しに付き合う事になり、現在は店内にあるベンチに座って読書をしているところだった。自身を買い出しに突き合わせた張本人は今、自分が着る為の衣服を買いに洋服屋で買い物を堪能中だ。

 

(全く。どこで奴等と出くわすかもわからんのに、何であの女の買い出しなんぞに付き合わなきゃならないんだ……)

 

本当ならば、彼は外出をするつもりなど全くなかった。一番の危険要素である浅倉威―――仮面ライダー王蛇はスカリエッティの研究所(ラボ)で拘束中なので問題はないかもしれないが、問題は手塚海之―――仮面ライダーライアと霧島美穂―――仮面ライダーファムの2人だ。こうして外出なんかしてしまえば、どこかでその2人と遭遇し、その2人と行動を手を結んでいる機動六課の面々と接触してしまう可能性がある。それ故、二宮はできる事なら外出はしたくなかったのだ。

 

「鋭介、お待たせ~」

 

「……はぁ」

 

そんな彼の思いはこの女―――ドゥーエによって、呆気なくスルーされてしまっている訳なのだが。ルンルン気分で買い物袋を複数持ち運んできた彼女を見て、二宮はウンザリした様子で溜め息をつく。

 

「お前、ここぞと言わんばかりにいっぱい買ってきやがったな」

 

「せっかくの休暇だもの。買える内にいっぱい買っておかなきゃ損でしょう? あ、服は鋭介の分も買っておいたから」

 

「いらん気遣いをどうも……って」

 

二宮の前に、ドゥーエから複数の買い物袋を一斉に突き出される。それを見た二宮はすぐに察した。今回、自分は荷物運びの為に連れ出されたのだと。

 

「……どうせこんな事だろうと思ってたよ」

 

「よくわかってるじゃない。それとも、大の男がレディにこんな重い荷物を運ばせる気?」

 

「レディねぇ……家事も碌にできんお子ちゃまの間違いじゃないのか?」

 

「む、失礼ね。料理ぐらいならある程度はできるわよ」

 

「掃除や洗濯は雑な癖によく言う」

 

「うぐ……そ、そこ突かれると痛いわね……!」

 

おまけに料理の場合も、ここ最近は局員としての仕事が忙しいせいで、二宮と出会う前はカップ麺などのインスタント食品で済ませる事が何度もあった。それ故に二宮と出会ってからというもの、彼が作る家庭料理が恋しく感じてきているのも事実で、家事に関してはあまり二宮に強く出られないのが現状である。

 

「や、やっぱり駄目かしら?」

 

「……全く」

 

家事の件については悪いとは感じているのか、ドゥーエは申し訳なさそうな表情を浮かべている。二宮は呆れた様子で読んでいた本を閉じ、彼女から突き出されていた買い物袋を手に取った。

 

「あ……」

 

「どうせ他の店にも回るんだろう? ならさっさと済ませて帰るぞ。あまり長引かせる方がかえって面倒だ」

 

口では面倒臭いと言っているものの、要するに買い物の手伝いは一応してくれるようだ。それを理解したドゥーエの表情にも笑顔が戻る。

 

「……えぇ、お願いするわ。これからもう10店舗ぐらいは回ろうと思ってたから」

 

「おい待て、この量でまだ最初の1店舗目なのか」

 

「そうと決まれば、早く行きましょう! 今日は色々買っちゃうわよ~!」

 

(……だから外出なんてしたくなかったんだ)

 

今更そんな事を思ったところでもう遅い。笑顔で次の店まで歩き出したドゥーエの変わり身の早さに、二宮は口元を引き攣らせつつも買い物袋をせっせと持ち運んでいく。その後も2人はいくつもの店舗を順番に回っていったのだが、ドゥーエが食材や日常用品などに限らず色々な物を買ってはどんどん荷物を増やしていく為、気付けば二宮が持ち運ぶ荷物は重量が凄い事になり、その負担もかなり大きくなってしまっていた。

 

おまけに……

 

「よぉ、そこの綺麗な姉ちゃん」

 

「俺達と一緒に遊ばな~い?」

 

「いえ、結構よ。私は今忙し……ってちょ、離しなさいよ!?」

 

二宮にとってはどうでも良い話だが、ドゥーエは変身してもしていなくてもかなりの美人だ。道中で彼女がナンパに出くわす事も1回や2回では済まず、二宮のストレスは更に溜まっていく一方である。

 

そうなれば当然……

 

「……ふん!!」

 

「「ごばぁっ!?」」

 

「うわぉ」

 

……ナンパ野郎共の顔面に荷物が叩き込まれるのも、決して無理のない話と言えよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「鋭介、大丈夫?」

 

「お前のせいで大丈夫じゃねぇよ……」

 

その後、流石の二宮も(主に両腕が)疲れてきた為、道中で見かけたカフェに寄って休憩する事になった。テーブルに頭を乗せた二宮は両腕を休ませ、ドゥーエはそんな彼を眺めながら呑気に紅茶を口にする。

 

「ごめんなさいね。今日だけで何度もナンパから助けて貰う事になっちゃった」

 

「全くだ。ナンパ共に何度も目を付けられたってのに、よくもまぁそこまで買い物を楽しめるもんだな」

 

「人間、自分の欲に忠実な方が人生いくらでも楽しめるわ。あなただってそうなんじゃないの?」

 

「さぁな。俺はそんな事にまで意識を向けちゃいない。とにかく自分が生き延びる事だけに必死だったからな」

 

「欲のない男……ねぇ。ライダー同士の戦いに勝ち残ったら、好きな願いが叶うんだったわよね」

 

「あぁ」

 

「鋭介はさ、それで何か叶えたい願いはなかったの?」

 

「……願いなんぞに興味はなかったからな。強いて言うなら、戦いに勝ち残る事自体が俺の願いだった」

 

「勝ち残る事自体が願い、ねぇ……なら、そこまでして生き残りたい理由って?」

 

「決まってるだろう。死にたくないからだ」

 

「それはもう充分わかり切ってるわよ。その死にたくないと思った理由はないのかって聞いてるの。たとえばその左目を治したいとか、そういうのはないの?」

 

「……逆に聞くが」

 

二宮は突っ伏していたテーブルから顔を上げる。その時に彼が見せた表情に、ドゥーエは少しだけ背筋が凍った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――死にたくないと思うのに(・・・・・・・・・・・)他の願いは必要か(・・・・・・・・)?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その表情は、人間らしさがまるで感じられないほど冷め切った物だった。

 

「……死にたくないって気持ちは、人間なら誰だって考えて当然だろう? だったら、他に理由なんて考える必要もあるまい。死にたくないから戦う、死にたくないから必死に生きようと思う……たったそれだけあれば充分だろう」

 

「……その為なら、他人の命を犠牲にする事も、他人を手駒として利用する事も厭わないとでも言うつもりかしら?」

 

「下手な綺麗事を並べるよりは上等だろう? それにお前が言える話じゃないだろうに。自分の目的の為なら、平気で他人を騙して利用できるお前が」

 

「……否定できないのが悲しいところね」

 

死にたくない。生き延びたい。それは確かに、人として当然の考えなのは事実だろう。しかしドゥーエの視点から見ると、目の前の青年が見せる表情からは、イマイチ人間らしさという物が感じられなかった。だから彼女は気になった。如何にして彼がそんな考えに至るようになったのか、その切っ掛けが。

 

「それなら、どうしてあなたはそんな風に考えるようになったのかしら? お姉さん気になっちゃうなぁ~」

 

「やけに知りたがるな。お前がそれを知ったところで何になる」

 

「減るもんじゃないんだし、別に良いじゃない。それに言ったでしょう? あなたが一体どんな人間なのか、手を組んでいる者同士として知っておきたいって」

 

「……ふん」

 

頬杖を突きながらニヤニヤ笑みを浮かべて見てくるドゥーエに、二宮はめんどくさそうに小さく鼻を鳴らす。

 

「先に言っておくが、聞いてもつまらん理由だぞ。本当に些細な事が切っ掛けだったからな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『お帰りなさい、あなた!』

 

『『お父さん、おかえり!』』

 

『あぁ、ただいま!』

 

俺の家族は元々、それなりに裕福な家庭ではあった。親父と御袋、妹の3人と一緒に過ごしてきた日常。それは少なくとも、当時まだ子供だった頃の俺にとっては、本当に幸せな時間だったんだろう……最も、それも呆気なく終わる事になっちまったが。

 

『―――お父、さん……お、母さん……梨、花……?』

 

ある日、俺達二宮家は交通事故に巻き込まれ、家族は俺を除いて全員死んだ。もちろん俺も無事では済まず、この左目が潰れる羽目になっちまった。そんな俺に対して、死ぬ直前だった親父が言っていた。

 

『鋭介……お前は……生き、ろ……』

 

その時点で御袋と妹は即死だった。辛うじて息があった親父は、せめて俺だけでも生き延びて欲しいとでも思っていたんだろうよ。それだけ告げてから、結局は親父もすぐに死んじまったがな。

 

そうして、俺は天涯孤独の身になった。家族の葬式が開かれた際も、1人になった俺に優しくしてくれるような人間は誰1人としていなかった。

 

『やだよ、うちで引き取るなんて。ただでさえ子供達の面倒見るだけでも大変だってのに―――』

 

『だが考えてみろよ。遺された遺産の金額は相当凄いらしいぞ。上手くやれば俺達がその遺産を―――』

 

それどころか、両親が遺した遺産を巡って争う人間が絶えなかった。その時点で俺は察したよ。

 

 

 

 

 

 

人間は皆、自分を一番可愛がる生き物だって事がな。

 

 

 

 

 

 

もちろん、そんな奴等にくれてやる金は1円もありはしない。俺は誰1人信用しようとは思わなかった。他人を信用すれば馬鹿を見る……そう自分に言い聞かせて今まで生きてきた。

 

そしてある時……俺の前に“奴”は現れた。

 

 

 

 

 

 

『お前の心からは、自分以外の人間に対する強い敵意が感じ取れた』

 

 

 

 

 

 

『この先も生き残りたいのなら、お前に力を与えてやる』

 

 

 

 

 

 

『死にたくなければ……戦え』

 

 

 

 

 

 

ハッキリ言って、俺からすれば非常に迷惑な話だ。しかし、戦わなければ俺がアビスラッシャー達に喰われてそれでおしまいだ。だから俺はやむなく契約し、仮面ライダーアビスとなった。

 

そしてアビスとして戦うようになってから少しの日にちが経過した後、俺はかつて親父が勤めていた大企業……その新たな総帥となった男からこんな事を言われたよ。

 

 

 

 

 

 

『良いか二宮? 人間社会ってのはなぁ、ライダー同士の戦いと一緒なんだよ』

 

 

 

 

 

 

『生きるってのはつまり、自分以外の他人を蹴落とすって事でもあるんだ』

 

 

 

 

 

 

『世の中は弱肉強食だ。他人に情けをかけるな。油断すれば自分が喰われる事になる』

 

 

 

 

 

 

『忘れるな。人間は何の犠牲もなしに生きる事はできない……人間は皆ライダーなんだよ!!』

 

 

 

 

 

 

実際、その通りだと思ったよ。人間なんて皆、自分が良い思いをする為なら手段を選ばない。

 

だから俺は、教えられた通りに他人を貪り、他人を蹴落とし、そして……その総帥すらも喰らってやった(・・・・・・・)。奴は俺を従順な手駒にして利用してやろうとでも企んでいたんだろうが、同じライダーである以上、いずれは敵対する事になるのは明白だったからな。少し不意打ちしてやるだけで簡単に葬る事ができた。

 

その後も俺は、神崎士郎の思うままにライダーの戦いを進めていく為に、様々な策を講じてきた。浅倉を上手く誘導して他のライダーと戦わせたり、戦う気がない城戸真司を上手く騙して仕留めようとしたり色々とな。

 

そんな俺にとって、想定外だったのはオーディンの存在だ。奴は強過ぎる上に神出鬼没だ。だから俺は、何とかしてオーディンを葬ってやろうと隙を窺ってきた。

 

そしてオーディンは龍騎とナイトに敗れ消滅した。ゾルダは脱落と見なされ、王蛇は警察に包囲されている。これで残るは龍騎とナイトを倒すのみ……そう思って気を抜いてしまったのが、俺にとって最大の命取りだった。

 

 

 

 

 

 

『がはっ……何故、だ……何故……お前、が……ッ!?』

 

 

 

 

 

 

『私は何度でも蘇る……何故なら私は、13人目のライダーだからだ……!!』

 

 

 

 

 

 

消えたはずのオーディンが再び目の前に現れた時は、流石に俺も目を疑ったな。結局、俺はその場で成す術なくオーディンに敗れ、奴にカードデッキを破壊された事で俺の敗北が確定した。辛うじてミラーワールドから脱出できたのは良いが、その時点で俺はもう息絶える寸前だった。

 

 

 

 

 

 

『嫌だ……俺は、生きる……生き、て……』

 

 

 

 

 

 

そうして俺は死んだ。そして俺はミッドチルダにやって来て……ドゥーエ、最初にお前と出会ったんだ。今思えば、あの時に死んだままでいられたなら、一体どれだけ楽だった事だろうなぁ。

 

 

 

 

 

 

『私の計画を進めるには、お前の力が必要だ……私に協力して貰いたい』

 

 

 

 

 

 

まさかこっちの世界に来てからも、ライダーとして戦い続ける羽目になるなんて……そんなの一体、誰が想像できると思う……?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――以上、俺の昔話は終わり」

 

「……些細な事って言う割に、充分重い内容な気がするのは私の気のせいかしら?」

 

「今となっては、家族が死んだ事すらどうでも良いと思ってるよ」

 

話を終え、一息つく為にコーヒーを口にする二宮を見ながら、ドゥーエは彼の表情を眺める。

 

(どうでも良い、ねぇ。そう言っている割には……父親の影響を強く受けてるじゃない)

 

父親から告げられた「生きろ」という言葉。それは純粋に二宮に幸せに生きて欲しいと願ったのだろうが、それがまさか二宮をここまで冷徹な人間に変貌させる言葉になろうとは、一体どんな皮肉だろうか。二宮鋭介という人間が今のような性格になったルーツがわかり、ドゥーエはますます二宮に対して興味が湧いてきていた。

 

「俺からすれば、俺以外の人間は利用する為の手駒に過ぎん。それはお前とて例外じゃない」

 

「でしょうね。そうじゃなきゃ……」

 

ドゥーエはクルリと後ろを向き、自身の長い青髪を掻き分けて首元を見せる。そんな彼女の綺麗な首元には……斜めに切りつけられた1本の傷痕が存在していた。それはかつて、初めて二宮と出会った時に、彼によって付けられた物だった。

 

「女の肌に、わざわざこんな傷痕なんて付けないものね」

 

「先に俺を殺そうとしてきたのはお前だ。お互い様という奴だろう?」

 

「……あの時の私は本当に迂闊だったわね。おかげでこうして、あなたの指示に従いながら動く羽目になっちゃったんだもの」

 

「わかってるな? お前の血の匂いを覚えたアビスラッシャー達は、今でもお前の命を狙っている。今更俺を殺そうが、今更どこへ逃げようが、アイツ等はどこまでもお前を追いかけ続ける」

 

「肝に銘じてるわよ。その代わり、あなたも私の仕事で失敗しないでよね?」

 

二宮とドゥーエはそれぞれコーヒーと紅茶を口にし、2人同時に飲み干してカップをテーブルに置いた。

 

「……ところで、スカリエッティからの連絡はどうだ? 何か情報は手に入ったか?」

 

「いいえ、今のところは何も。ただ出掛ける前も言ったけれど、浅倉威は今もドクターの研究所(ラボ)から出られないだろうから、臨時査察の件で釘を刺しに行く事については何の問題もなさそうって事くらいね」

 

「スカリエッティ側の介入はなし、か……全く。いちいち動向を探らなきゃならんとは、お前んとこのドクターは本当に面倒極まりない存在だな」

 

「そりゃもちろん、ドクターはこの私以上に自分の欲望に忠実だもの。おまけに、仮にドクターの身に何かあったとしても、私達ナンバーズがいれば計画には何の支障もないわ」

 

「……お前等ナンバーズの体内にある、スカリエッティのコピー因子とやらか?」

 

「その通り」

 

ドゥーエは右手で自身の腹部を触れる。それも愛おしそうに、優しく撫でるように。

 

「ドクターが死んだ場合、1ヵ月もしない内にナンバーズの誰かがドクターの記憶と人格を受け継ぎ、第二のジェイル・スカリエッティがこの世に誕生する……念には念をって奴ね」

 

「……人工的な命とはいえ、自分の娘にそんな物を仕込むお前等のドクターは、もはや変態なんてレベルじゃないな」

 

「あら、これでもアルハザードって土地では常識レベルだったらしいわよ? 世の中、何があるかわかったもんじゃないわね」

 

「そのアルハザードとやらの常識が、如何にぶっ飛んでるのかは俺にもよくわかった……それで? そのコピー因子によって、お前が第二のスカリエッティに生まれ変わる可能性もあるって訳か」

 

「まぁ、簡潔に言えばそういう事にはなるんだけれど……正直、今はあまり望んではいないわね」

 

「ほぉ、何故だ? お前はスカリエッティの計画を果たしたいんじゃなかったのか」

 

「ドクターの計画を成功させたいと思っているのは事実よ。でも……」

 

ドゥーエは椅子を動かし、二宮の左隣に移動する。それに二宮が表情を顰めるも、ドゥーエは気にせず彼と体を密着させる。

 

「今はただ、あなたと共に行動していたいって感じね」

 

「何……?」

 

「気になってるのよ。全てを敵と認識し、全てを利用してでも生き延びようとする男が、これから先、どのような道を歩んでいく事になるのかね。あなたを待っているのは果たして安寧か、それとも破滅か……私はこの目で見届けてみたいの」

 

「……」

 

「嘘のように感じるかもしれないけど、この気持ちだけは本当よ……と言っても、あなたにとっては到底信じられない話でしょうね」

 

「当然だ。お前が今見せてるその顔も、偽りの可能性だってあるからな」

 

「まぁ、無理に信じてくれなくても良いわ……だから」

 

「? 何を―――」

 

そこで二宮の台詞は途切れた。何故ならドゥーエが顔を近付けた瞬間……

 

「ん……」

 

「!?」

 

 

 

 

 

 

ドゥーエの唇が、二宮の唇と重なったからだ。

 

 

 

 

 

 

「……ッ!!」

 

二宮は驚いた表情を浮かべるも、すぐにドゥーエを突き放す。突き放されたドゥーエは残念そうな表情を見せる。

 

「もぉ、最後まで堪能させなさいよ」

 

「ッ……どういうつもりだ」

 

「どうもこうもないわ。私は任務遂行の為にいろんな男を誘惑してきたけど、キスの段階まで許した事は今まで一度もなかった。だから今のキスは、私にとっても特別……これで少しは本気だって理解して貰えたかしら?」

 

「何が特別だ、訳のわからん事を……」

 

「フフフ……♪」

 

二宮はただ不快そうな表情で自身の口元を拭い、ドゥーエは微笑みながらそんな彼を面白そうに見つめる。そんな彼女の笑う顔に苛立った二宮は、足下に置いていた買い物袋を持って立ち上がる。

 

「……もう買い物は済んだな? さっさと帰るぞ。いつまでも外を出歩いてなんぞいられるか」

 

「せっかちねぇ。女の子に嫌われるわよ?」

 

「嫌われて結構だ。たく、何が悲しくて俺がお前なんぞとキスしなきゃいけないんだか……」

 

ブツブツ呟きながら二宮が歩いていく中、そんな彼の後ろ姿を眺めながらドゥーエは今も微笑みは消えずにいた。

 

(まぁ、どうせそんな反応を返されるとは思っていたけれど……彼が取り乱すところは見られたから、今回はそれで良しって事にしましょうか)

 

普段から散々辛辣な物言いをされてきたのだから、これくらいの事はやったって別に構いはしないだろう。そんな事を思いながら、ドゥーエは会計を済ませるべく自身もレジまで向かう事にした。

 

「せっかく面白い事になってきたんだもの……まだ死んじゃ駄目よ? 鋭介」

 

 

 

 

 

 

その言葉は果たして、単なる個人的な興味による物なのか。

 

 

 

 

 

 

それとも、何か他にも感情が秘められているのか。

 

 

 

 

 

 

その言葉の真意はまだ、ドゥーエ自身もわかってはいない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして翌日、ミラーワールドでは……

 

 

 

 

 

 

「ッ……何のつもりだ、お前……!!」

 

 

 

 

 

 

「許さない……お前だけは絶対に許さないっ!!!」

 

 

 

 

 

 

二宮が変身した仮面ライダーアビス。

 

 

 

 

 

 

彼がまだ見ぬ謎の戦士―――仮面ライダーエクシス。

 

 

 

 

 

 

2人のライダーが、この地で激突しようとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

To be continued……?

 




たぶん、明日か明後日くらいには二宮鋭介/仮面ライダーアビスのキャラ設定&キャラ解説が載せられると思います。

それでは。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。