リリカル龍騎ライダーズinミッドチルダ   作:ロンギヌス

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お待たせしました。本編、第27話の更新です。

今回はエクシスの変身者が素顔で初登場。

それではどうぞ。






戦闘挿入歌:果てなき希望



第27話 エクシス見参

「……朝か」

 

聖王協会本部でカリムの予言書を見てから1日が経過。早朝から目を覚ました手塚はベッドから起き上がり、洗顔を済ませていつもの服装に着替え終えようとしていた。その時、部屋の扉をノックする音が聞こえてきた。

 

「手塚さん、起きてますか~?」

 

「あぁ、今出る」

 

ノックしたのフェイトのようだ。手塚は赤いジャケットを着てから部屋の扉を開ける。すると扉を開けた直後、手塚の懐に何者かが飛び込み、手塚は驚きながらもしっかりそれを受け止めた。

 

「おっと……ヴィヴィオか。おはよう」

 

「うん! おはよう、パパ!」

 

ヴィヴィオが告げた“パパ”という呼び方。手塚は口元を少し引き攣らせながらもそれに笑顔に応じ、フェイトに視線を向けてみると、フェイトも少しばかり苦笑いを浮かべている。手塚は小さく溜め息をついた。

 

(やれやれ。まだ慣れないものだな……)

 

 

 

 

何故ヴィヴィオから“パパ”と呼ばれる事になったのか?

 

 

 

 

それは前日の夜の事……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ヴィヴィオって、これから先どうなるんでしょうか……?」

 

それはスバルの一言から始まった。人造生命体であるヴィヴィオには両親がいない。そうなると、誰かヴィヴィオの親代わりになってくれる人間が必要になるのだが、そう簡単に引き取ってくれる家庭がそうそういるようにも思えない。それ故、なのははある程度だが方針を定めていた。

 

「当面の間は、私が面倒を見ようと思うんだ。それがこの子の為にもなると思うから……」

 

「それが良い。ヴィヴィオもきっと喜ぶだろう……俺達もできる事があれば力を貸そう」

 

「うん、ありがとうございます。手塚さん」

 

「う……?」

 

なのはの膝の上に座っているヴィヴィオは、何の事かよくわかっていないのか首を傾げる。そんなヴィヴィオにフェイトが優しく語りかける。

 

「つまり、しばらくはこの人がヴィヴィオのママって事だよ」

 

「ママ……?」

 

「そう、ママ」

 

「……じゃあ」

 

「ん?」

 

するとヴィヴィオが手塚の方に視線を向け、こんな事を言い出した。

 

「……パパ?」

 

「「「「「!?」」」」」

 

「……!?」

 

まさかの発言に、その場にいた六課一同だけでなく、手塚本人も思わず呆気に取られてしまった。

 

「「「「て、手塚さんがパパ!?」」」」

 

「え、えぇ!?」

 

フォワードメンバーの4人はただ普通に驚いているだけなのに対し、フェイトは尋常じゃないレベルで慌てた表情をしている。一方で、まさかのパパと呼ばれてしまった手塚は慌てず頭を落ち着かせる。

 

「俺がパパだと……?」

 

「ま、まさかのパパと来たで……ぷ、くく……!」

 

「まぁ良いんじゃない? 海之なら何も問題ないだろうし……ぶふ、くくく……!」

 

ちなみにはやてと夏希は自分の口元を押さえ、必死に笑いを堪えている真っ最中である。そんな2人の様子には流石にイラっとなる手塚だったが、ヴィヴィオが見てる前で怒る訳にもいかず、ヴィヴィオに優しく呼びかける。

 

「ヴィヴィオ。俺がパパで良いのか?」

 

「……うん、パパ!」

 

「っと」

 

ヴィヴィオはなのはの膝から降り、今度は手塚の膝の上に座り込んだ。そのままヴィヴィオは笑顔で手塚の胸に頭を摺り寄せており、手塚はそんなヴィヴィオを無理やり引き離す事もできない為、彼女を優しく抱きかかえたまま溜め息をつく。

 

「あ、あははは……すみません手塚さん」

 

「いや、問題ない。モンスターが現れない限り、面倒を見れる時間は取れるだろうからな……ただ、親をやった事なんて今まで一度もないからな。流石に俺達だけでは大変だぞ」

 

「ぷくく……ごほん。そこはそれ、この手のケースに一番慣れている人にも頼むのが一番やと思うで」

 

「慣れている人?」

 

「となると……」

 

ようやく笑いを抑えられたはやての一言で、なのはと手塚は一斉にその一番慣れているであろう人物―――フェイトの方へと視線を向けた。

 

「へ、私?」

 

「そういう事だ。すまないがハラオウン、手が空いた時は手伝って貰えないか?」

 

「あ……は、はい! 私なんかで良ければ! 私も、子供の相手をするのは好きですし!」

 

手塚からそう頼まれてしまったからには断る訳にもいかない。フェイトは快く応じたが、笑っているもののどこか浮かばない表情だった。

 

(……ママとパパ、か)

 

なのはと手塚にすっかり懐いたのか、ヴィヴィオは嬉しそうに笑っている。それ自体はとても良い事だ。良い事なのは間違いないのだが……

 

(……ちょっぴり、羨ましいなぁ)

 

ヴィヴィオを抱きかかえている手塚を見るフェイトの心境は、かなり複雑な物だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こうして、手塚はヴィヴィオからパパと認識されるようになり、現在に至る訳である。

 

「パパ、早くー!」

 

「わかったわかった、今行く」

 

「ヴィヴィオ、あんまり走ると転んじゃうよ~!」

 

この日、なのははフォワードメンバー達の訓練で忙しい為、訓練の時間が終わるまでの間は手塚とフェイトがヴィヴィオの面倒を見る事になった。今は3人で六課隊舎の周囲を軽く散歩しており、ヴィヴィオはウサギのぬいぐるみを抱きかかえたまま元気そうに走り回り、手塚はヴィヴィオに呼ばれて笑顔で返事を返し、フェイトは転ばないようにヴィヴィオに注意する。

 

「取り敢えず、元気が戻ったようで何よりだな」

 

「はい。やっぱり子供は、笑って元気に過ごしているのが似合ってますから」

 

「あとは、あの子の親になってくれる人が見つかれば良いんだが……そうそういないだろうな。地球でも、この手の問題はそう簡単には解決しない事が多い」

 

「そうなんですよね。エリオとキャロの時は、私が保護者になる事でどうにかなったんですが……」

 

「……前に占った時から知ってはいたが。モンディアルとルシエも、かつては大変だったそうだな」

 

「……はい」

 

手塚とフェイトは、元気そうに走っているヴィヴィオから目を離さないようにしながら会話を続ける。

 

「実を言うと、エリオも生まれ方が私と同じなんです」

 

「! モンディアルも……?」

 

「はい。エリオの両親はかつて、病死した息子の代わりとしてエリオを生み出しました。それでも結局両親からは受け入れられず、違法研究の実験に利用され続けたんです。そのせいでエリオは人間不信になってしまって、私が初めて出会った時も凄く荒れていました」

 

「今の彼を見た感じでは、とても信じられないような話だ……それなら、ルシエは?」

 

「キャロは昔、ある民族の集落で生まれました。ですが、竜を操る能力があまりにも優れていた事から、それを恐れた集落から追放されてしまったんです」

 

「……酷い話だな」

 

手塚はファーストアラートの際に見た、フリードリヒの巨大化した姿を思い出す。

 

「それで、ハラオウンが2人を保護したという事か」

 

「……それでも、時々思うんです。エリオとキャロが魔導師になった事が、本当に良かったのかなって」

 

「何?」

 

「本当なら、エリオとキャロにはもっと違う道を歩んで欲しかった。もっと平和で、普通の幸せな人生を……それなのに、こうして六課で2人の力を借りる形になってしまっている……そう思うと、2人が魔導師になる事を強く止められなかった自分が情けなく感じてしまって……」

 

「……ハラオウン」

 

「え……あいたっ!?」

 

フェイトの額に、手塚のデコピンが炸裂する。フェイトは何が何だかわからず、涙目でデコピンされた額を押さえながら手塚の方を見る。

 

「話を聞いてみたところ、あの2人は自分の意志で魔導師になったんだという事はよくわかった……それならばハラオウン。お前があの2人の覚悟を、きちんと受け止めてやらないでどうする」

 

「え……?」

 

「俺もあまり偉そうな事は言えないが……あの2人の方から魔導師になる事を志願してきたという事は、ハラオウンの為に魔導師になる事を望んだという事だろう? だったら、そんな2人の思いをお前がきちんと受け止めてやらなければならない。あの2人が覚悟の上で魔導師をやっている事は、初めて出会ったばかりの頃の俺でもわかったくらいだ」

 

初めてエリオとキャロの2人と会話をした時。2人の今後を占ってあげた時。エリオとキャロがその目に見せていた強い覚悟は、出会ったばかりの手塚でも感じ取れた。その時の事を思い出しながら、手塚はフェイトの背中をポンと触れるように叩く。

 

「あの2人の保護者になったのなら、保護者であるお前が迷ってはいけない。もっと自信を持ってあの2人の覚悟と向き合ってみろ。それでも心配だと言うなら、お前があの2人をしっかり導いていけ。それが保護者であるお前の務めだろう?」

 

「手塚さん……はい、ありがとうございます。でも、今のデコピンはちょっと痛かったですよ?」

 

「いつぞやのお返しだ」

 

手塚に後押しされたのもあってか、フェイトはいつも通りの明るい笑顔に戻った。それを見て手塚も同じく笑みを浮かべた直後……

 

「あうっ!?」

 

「「あ」」

 

走っていたヴィヴィオが途中で転び、思いきり地面に倒れてしまった。それを見た手塚とフェイトは急いで倒れたヴィヴィオに駆け寄った。

 

「ヴィ、ヴィヴィオ、大丈夫!? 怪我してない!?」

 

「う……ふぇぇ……!」

 

「ゆっくりで良い。立てるか?」

 

転んでしまったヴィヴィオは今にも泣き出しそうで、駆け寄った手塚とフェイトがヴィヴィオを優しく立ち上がらせ、怪我をしてないかどうか確認する。一応怪我はなさそうだった事から、2人は安堵してヴィヴィオの頭を優しく撫でる。

 

「痛かったよね。でも大丈夫だよ、すぐに痛くなくなるから」

 

「ひっく、ぐすん……うん……」

 

「あまり泣いてると辛くなる……だから泣くな。安心しろ、俺達が傍にいる」

 

「……うん……!」

 

ヴィヴィオは目元を手で拭い、泣き出しそうなのを必死に我慢する。それを見た手塚が笑顔で彼女の頭を優しく撫でる中、フェイトは地面に落ちたウサギのぬいぐるみを拾い、汚れを払ってからヴィヴィオに渡すのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

首都クラナガン、とある公園……

 

 

 

 

 

 

キィィィィィン……キィィィィィン……

 

 

 

 

 

 

「……」

 

子供達が滑り台やブランコで楽しく遊んでいる中、ベンチに座ったままその光景を静かに眺めている少年がいた。キャップ状の帽子を被ったその少年は、どこからか聞こえて来る金切り音に導かれるようにベンチからゆっくり立ち上がり、公園内の公衆トイレに入り手洗い場の鏡を見た。

 

「……何の用かな」

 

『モンスターを倒したようだな。鈴木健吾』

 

手洗い場の鏡に、金色の羽根をまき散らしながらオーディンが姿を現した。帽子を被った少年―――“鈴木健吾(すずきけんご)”は不審そうな目でオーディンを睨みつけているが、当然それくらいではオーディンは怯まない。

 

『まずは倒したモンスター1体分の報酬だな。既に用意してある、存分に活用すると良い』

 

「それはどうも……用件はそれだけかい? だったら早く消えてくれないかな? 僕はアンタの言う計画とやらに付き合うつもりはないって、初めて会った時も言ったはずだけど」

 

『辛辣な物言いだな。むしろ頼もしいと言うべきか……まぁ良い。お前の“探し物”だが、そう遠くない内に見つかるはずだ』

 

「……!」

 

探し物。その一言にピクッと反応する健吾だったが、表情は変わらずキツいままだった。

 

『お前が何の探し物をしようが、モンスターを倒してくれるならそれで良い……だが、お前はこの世界にやって来たばかりなのだろう? ならばまだ、お前の傷は完全に癒えた訳ではないはず。あまり無理を続ければ、いずれまた無理が祟って倒れる事になるぞ』

 

「……余計なお世話だ。僕の体の事は俺が一番よくわかってる。アンタに何か言われる筋合いはない」

 

『その言葉に偽りがなければ良いがな……とにかく、今後もよろしく頼むぞ』

 

それだけ告げて、オーディンはすぐに姿を消す。健吾が不快そうな表情を浮かべてから公衆トイレを出ると、先程彼が座っていたベンチの上に、封筒がポツンと置かれていた。それに気付いた健吾は封筒を拾い上げ、開けてその中身を確認する。

 

(! こんなにも……)

 

封筒の中には札束が入っており、その金額に健吾は少しばかり驚かされた。

 

「……まぁ、確かにこれはこれで困らないけどさ」

 

確かに自分は報酬を欲してモンスター退治を行っている。しかし、今はそれよりも重要な事が他にあった。それが先程オーディンの言った“探し物”である。

 

(あの子、今はどうしてるだろう……あれから無事に逃げ切れたかな……)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は戻り、機動六課では……

 

 

 

 

 

「ヴィヴィオ~!」

 

「ママ~!」

 

フィワード分隊の訓練が終わってから、なのははヴィヴィオと合流し、走って飛び込んで来た彼女を両手で受け止めしっかり抱き締めた。その様子を手塚やフェイト、フォワードメンバー達が温かい目で見守っている。

 

「ヴィヴィオ、良い子にしてた?」

 

「うん! パパやお姉ちゃんといい子にしてたよ!」

 

「お姉ちゃん?」

 

ヴィヴィオの言うお姉ちゃんとはフェイトの事である。その事に気付いたフェイトは、自分もヴィヴィオに懐かれたのだと知って嬉しそうに微笑み、そんなフェイトに夏希がニヤニヤ笑みを浮かべながら肩を叩く。

 

「良かったねぇ、ヴィヴィオのパパにお姉ちゃん? 懐かれたみたいでさ」

 

「ちょ、夏希さん! 恥ずかしいですって……!」

 

「……ところで夏希、お前は今までどこで何をしていた」

 

「アタシ? 面白そうだから離れた位置でずっと3人を見てたよ」

 

「見てたのなら少しは手伝え……!」

 

「ちょ、痛たたたたた!! 耳引っ張らないでってば!?」

 

子守りの手伝いもせず呑気に見物していた夏希には、手塚から耳を引っ張られるという処罰が下された。耳を強く引っ張られ夏希が痛そうに抗議する中、フェイトはヴィヴィオからの呼び名を脳裏に浮かべる。

 

(お姉ちゃん……お姉ちゃんか……個人的には私もママが良かったけど、まぁいっか)

 

手塚に見えていないところで、密かに頬を赤くして嬉しそうにしていた。

 

「それじゃヴィヴィオ、今から皆でご飯を食べよっか」

 

「うん! パパー!」

 

「ん、呼ばれたな。行かなければ」

 

「あだっ!?」

 

ヴィヴィオに呼ばれた手塚は夏希の耳をかなり雑に離し、急いでヴィヴィオの方へ向かおうとした……その時。

 

 

 

 

 

 

キィィィィィン……キィィィィィン……

 

 

 

 

 

 

「「「「「―――ッ!?」」」」」

 

手塚達がいる通路全体に、再びあの金切り音が響き渡って来た。その場にいたヴィヴィオ以外の全員が一斉に周囲を警戒する中、手塚はなのはとヴィヴィオが立っている後ろの窓ガラス……そこに槍を構えてこちらを覗き込んでいるウィスクラーケンの姿を発見した。

 

『グジュルルルルッ!!』

 

「ッ……伏せろ!!」

 

「きゃあっ!?」

 

「あぅ!?」

 

急いで手塚が2人を伏せさせた直後、彼等の頭上をウィスクラーケンの槍が通過。獲物に向けて突き立てた槍が空振りに終わった事で、ウィスクラーケンは槍を引っ込めてすぐに逃走する。

 

「大丈夫か!?」

 

「は、はい、私達は大丈夫です!」

 

「ッ……さっきのモンスター、明らかになのはさんとヴィヴィオちゃんを狙って攻撃して来たわね……!!」

 

「ヴィヴィオに手出しさせる訳にはいかんな……高町、ハラオウン、ヴィヴィオを頼む!!」

 

「わかりました、気を付けて!!」

 

手塚と夏希はカードデッキを構え、ウィスクラーケンの討伐に向かうべく通路の窓ガラスに近付こうとした。しかしその時、手塚のズボンをヴィヴィオが掴んだ。

 

「いや……」

 

「! ヴィヴィオ……」

 

「パパ、行っちゃやだ……パパ、ヴィヴィオのそばにいるって言ったもん……!」

 

「ッ……」

 

先程自分が言った事をヴィヴィオに指摘され、手塚は何て言えば良いかわからず言葉に詰まってしまう。そんな彼にすかさず、なのはとフェイトが助け船を出した。

 

「ヴィヴィオ。パパはね、さっきの悪い怪物をやっつけなきゃいけないの。それがパパのとっても大事なお仕事だから」

 

「その代わり、パパが帰って来たらヴィヴィオのやりたいと思ってる事をやってくれるから。だからヴィヴィオ、少しの間だけ我慢できる?」

 

「うぅ~……!」

 

(……これは帰ってから色々大変な事になりそうだな)

 

急いでヴィヴィオを説得する為とはいえ、フェイトの口から無茶ぶりをされてしまった手塚。後で自分が苦労させられる事を覚悟しつつも、手塚はしゃがみ込んでヴィヴィオに語りかける。

 

「ヴィヴィオ。もし良い子にして待ってくれていたら、お前がして欲しい事を言ってくれ。パパが何でもする。約束できるか?」

 

「……うん。パパ、約束……!」

 

「あぁ、約束だ」

 

手塚は小指を差し出し、ヴィヴィオの小指と合わせて指切りを行う。

 

「「指切り、げんまん、嘘ついたら、針千本飲~ます……指切った!」」

 

しっかり指切りを完了し、手塚はもう一度だけヴィヴィオの頭を撫でてから窓ガラスの方へ向かっていく。窓ガラスの前で待っていた夏希は笑みを浮かべて手塚の肘を軽く小突いた。

 

「すっかり懐かれちゃったねぇ、ヴィヴィオのパパさん♪」

 

「からかう暇があるなら、早くモンスターを倒せるよう手伝え」

 

「はいはい、わかってるって……ヴィヴィオの為に早く戻ってあげなくちゃね」

 

2人はカードデッキを窓ガラスに突き出し、出現したベルトを腰に装着。そして2人は同時に変身ポーズを決め、カードデッキをベルトに装填する。

 

「「変身!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……!」

 

同時刻。公園でも健吾が同じように、モンスターの出現を知らせる金切り音を聞いていた。彼は黒い上着のポケットから狐のエンブレムが刻まれたオレンジ色のカードデッキを取り出す。

 

(あの子の事も気になるけど……今はモンスターの相手が先か……!)

 

健吾は公衆トイレの手洗い場に向かい、鏡の前に立ってカードデッキを突き出す。召喚されたベルトが腰に装着された後、健吾は右手で力強くサムズダウンを行ってからベルトにカードデッキを装填した。

 

「変身!」

 

カードデッキが装填され、健吾の全身にいくつかの鏡像が重なっていく。そして健吾は狐の特徴を併せ持ったオレンジ色の戦士―――“仮面ライダーエクシス”への変身を完了させ、鏡を通じてミラーワールドに突入していく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『グジュルルル……!!』

 

「見つけた……今度こそ仕留めてやる!!」

 

「ヴィヴィオに手出しはさせんぞ……!!」

 

ミラーワールド、川沿いの道。逃走しようとしていたウィスクラーケンが逃げられないよう、前方にファム、後方にライアが立つ事で上手く挟み撃ちにし、追い込む作戦に出た。それは成功したのか、ウィスクラーケンは逃走から戦闘に切り替え、装備していた槍をまずは前方にいるファムに向かって振り下ろして来た。

 

「海之、トドメの準備よろしく!」

 

「任せろ」

 

ファムは予め装備していたウイングスラッシャーでウィスクラーケンの槍を防御し、お互いの武器で激しい打ち合いを開始。その隙にライアはいくらか距離を取ってからファイナルベントのカードを引き抜き、それをエビルバイザーに装填しようとした。

 

しかし……

 

キキキィィィィィィィィィッ!!

 

『グジュアァッ!?』

 

「「!?」」

 

ファムに槍を突き立てようとしたウィスクラーケンが突如、どこからか突っ込んで来たライドシューターに激突され大きく吹き飛ばされた。ウィスクラーケンが吹き飛んだ先の街路樹にぶつかる中、ライアとファムはそのライドシューターに乗って現れた人物に目を向ける。

 

「あ!? アイツだよ海之、アタシが出くわしたの!!」

 

「アレが……!」

 

「……ふん」

 

ライドシューターから降りて来たのはエクシスだった。エクシスはライアとファムには興味を示さず、カードデッキから引き抜いた1枚のカードを左腕のマグニバイザーに装填する。

 

≪ADVENT≫

 

『『グルァウッ!!』』

 

『グジュル!?』

 

電子音と共にマグニレェーヴとマグニルナールもどこからか出現。2体はそれぞれ臀部から刀剣状の尻尾を取り外してから、2体がかりでウィスクラーケンに向かって斬りかかり始めた。エクシスも2体に続くように歩を進めようと動き出したが、そんなエクシスにファムが慌てて呼び止める。

 

「ね、ねぇアンタ! 何者なんだ? モンスターと戦うんなら、アタシ達も一緒に―――」

 

「邪魔、どいてよ」

 

≪SWORD VENT≫

 

「え、ちょっ!?」

 

(! 声が若いな……)

 

しかし、エクシスの返事は素っ気ない物だった。マグニレェーヴの尻尾を模した刀剣―――“マグニブレード”を右手に装備したエクシスは、呼び止めようとするファムと何かに気付いたライアを無視し、すぐにウィスクラーケンに向かって飛びかかっていく。

 

「はぁっ!!」

 

『グジュアッ!?』

 

マグニブレードで背中を斬りつけられ、更にはマグニレェーヴとマグニルナールからも連続で斬りつけられたウィスクラーケンは、溜まらず地面を転がされる事になる。それを見たエクシスはマグニバイザーの装填口を開き、すぐさまファイナルベントのカードを装填しようとしたが……

 

『ケケケケケッ!!』

 

「!? 何……ぐぁっ!?」

 

そこへ突如、赤いイモリ型の怪物―――“ゲルニュート”が跳躍しながら現れ、カードを装填しようとしたエクシスを真横から薙ぎ倒してしまった。思わぬ不意打ちを受けたエクシスはカードを落としてしまい、その隙に体勢を立て直したウィスクラーケンもエクシスに向かって槍を振り下ろそうとした。

 

『ケケケケ!!』

 

『グジュルッ!!』

 

「くそ……!!」

 

しかし、その攻撃が届く事はなかった。

 

≪ADVENT≫

 

『!? ケケッ!?』

 

『グジュッ!?』

 

「……!」

 

「大丈夫か」

 

遠くから猛スピードで飛来したエビルダイバーの体当たりで、ゲルニュートもウィスクラーケンも纏めて弾き飛ばされる羽目になった。2体が転倒する中、エクシスに駆け寄ったライアはエクシスに手を差し伸べるが、エクシスはそんな彼の手を強引に払い、自力で立ち上がってみせた。

 

「引っ込んでくれ。アンタ等に貸しは作らない」

 

「うっわ、素直じゃない奴……」

 

「言ってる場合じゃない……来るぞ!!」

 

『ケケケケケ!!』

 

『グジュルルルル!!』

 

ゲルニュートは大型の手裏剣を、ウィスクラーケンは槍を振り回しながら3人に襲い掛かる。ゲルニュートはエクシスと、ウィスクラーケンはライアとファムと対峙する形になり、エクシスはゲルニュートの振り下ろしてきた手裏剣をマグニバイザーで受け止める。

 

「コイツ……!!」

 

その時……

 

ズドドドドォンッ!!

 

『ケケェッ!?』

 

「!?」

 

別方向から飛んで来た水のエネルギー弾が、無防備になっているゲルニュートの背中に命中した。エクシスはそれに驚きつつも、怯んだゲルニュートを蹴り倒してから、水のエネルギー弾が飛んで来た方角に振り返る。

 

「!! アンタは……」

 

「ほぉ、なるほど。確かにお前とは初めましてのようだな」

 

≪SWORD VENT≫

 

現れたのはアビスだった。ゲルニュートを挟むようにエクシスと対面したアビスは、カードを装填して召喚したアビスセイバーを構えながらエクシスに呼びかける。

 

「オーディンから話は聞いている。せっかくだ、少しだけ手伝ってやる」

 

『ケ、ケェ……ケケッ!?』

 

立ち上がろうとしたゲルニュートを蹴り倒し、倒れたゲルニュートにアビスセイバーを叩きつけるように何度も振り下ろす。ゲルニュートが一方的にダメージを受け続ける中、エクシスはその場に立ち尽くしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「海之、お願い!!」

 

「あぁ!!」

 

≪FINAL VENT≫

 

『グジュルァッ!?』

 

一方、こちらは決着がつこうとしていた。ライアがファイナルベントのカードを装填した瞬間、旋回して来たエビルダイバーの背中にライアが飛び乗り、そのままウィスクラーケン目掛けて突撃していく。それを見たウィスクラーケンは逃走を図ったが……

 

「逃がさないよ!!」

 

『グジュルル……!?』

 

ファムが横からウイングスラッシャーで足を引っかけた事で、バランスを崩したウィスクラーケンはその場に大きく転倒。次に立ち上がる頃には、もうすぐそこまでライア達が迫って来ており……

 

『グジュアァァァァァァァァァァァァァッ!!?』

 

見事ハイドベノンが炸裂し、ウィスクラーケンは跡形もなく爆散。ライアが地面に着地し、遺ったエネルギー体はそのままエビルダイバーが捕食していく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『グケケェッ!?』

 

「逃がすかよ」

 

そしてゲルニュートの方も、アビスに一方的に攻撃され続け満身創痍だった。仰向けに倒れたところを容赦なく足で踏みつけたアビスは、アビスセイバーの先端をゲルニュートの首元に向けている。それらの光景を離れた位置で見ていたエクシスはと言うと……

 

「……そうか」

 

俯いた状態のまま、マグニブレードを握る右手の力が強まっていく。

 

「お前だったのか……オーディンが言っていた協力者というのは」

 

エクシスは顔を上げ、すぐさま駆け出していく。

 

そして……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――お前だったのかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ズガァァァァァァンッ!!

 

「!? 何……ッ!!」

 

飛びかかったエクシスが振り下ろしたマグニブレードは、倒れたまま動けないゲルニュート……ではなく、そのゲルニュートを踏みつけているアビスの背中に命中した。

 

「うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

「チィ……!!」

 

エクシスはもう一度マグニブレードを振り上げ、振り返ったアビスは左腕のアビスバイザーでマグニブレードの斬撃を防御。マグニブレードの刀身を右手で掴み上げ、エクシスと掴み合いになる。

 

「ッ……何のつもりだ、お前……人がせっかく助けてやろうと思ったところを……!!」

 

「許さない……お前だけは絶対に許さないっ!!!」

 

「話が見えて来ないなぁ!!」

 

「ぐっ!?」

 

アビスはエクシスの腹部を蹴りつけ、奪い取ったマグニブレードを投げ捨てる。

 

「何をそんなにキレてるのか知らんが、俺とお前はこれが初対面だ。誰かと勘違いしてるんじゃないのか?」

 

「惚けるな!! お前が忘れても、僕はしっかり覚えてる!! お前が……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前が僕を殺したんだろうがぁっ!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何……?」

 

「僕は仇を討つ……僕自身の仇を!!!」

 

『『グァウッ!!』』

 

「ッ……コイツ……!!」

 

エクシスの背後から跳躍して来たマグニレェーヴとマグニルナールも、同じように刀剣を振るいアビスを攻撃しようとする。アビスは2体の攻撃をかわし、マグニバイザーの刀剣で斬りかかって来たエクシスの攻撃を再びアビスバイザーで受け止める。

 

「!? 海之、アレ……!!」

 

「何……!?」

 

その様子は、ウィスクラーケンを倒し終えたライアとファムにもバッチリ目撃されていた。

 

「何これ、どういう状況……?」

 

「どういう事だ……?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな彼等の戦いを、建物の屋上からオーディンは見下ろしていた。

 

『やはりこうなってしまったか……まぁ良い、これもちょうど良い機会だ』

 

こうなる事が読めていたのだろうか。オーディンは呆れた様子で呟いているが、エクシスの実力を測る為か、敢えて彼等の戦いを中断させるような事はしなかった。

 

『鈴木健吾、仮面ライダーエクシス……お前が我々の役に立つ存在かどうか、この目で見極めさせて貰おう……フフフフフフフフ……!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

To be continued……

 




リリカル龍騎StrikerS!


手塚「戦いをやめろ!!」

健吾「僕の邪魔をするなぁっ!!!」

二宮「あのガキ、やってくれたな……ッ!!」

ヴィヴィオ「パパ、ママ、お姉ちゃん。みんないっしょ……」

スカリエッティ「素晴らしい……仮面ライダー擬き(・・・・・・・・)で、これほどの力か……!!」


戦わなければ生き残れない!
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