リリカル龍騎ライダーズinミッドチルダ   作:ロンギヌス

32 / 160
はい、第29話の更新です。

風邪でも引いたのか、ここ最近鼻水が全然止まらなくて苦労しています。ティッシュが何枚あっても足りませんねぇ……。

そんな作者のどうでも良い呟きはさておき、本編をどうぞ。






挿入歌:果てなき希望



第29話 エクシスの秘密

「はむ、はむ……」

 

「ヴィヴィオ、そんな慌てて食べなくても良いんだぞ」

 

「あはは。頬っぺたにクリーム付いちゃってるよ」

 

街中のとある広場。この日、ヴィヴィオから「お散歩したい」と頼まれた手塚は暇そうにしていた夏希を連れ、クラナガンの街中を3人で一緒に歩き回っていた。現在は噴水広場付近の移動販売車で売られていたソフトクリームのバニラ味を購入し、ベンチでヴィヴィオが美味しく食べているところを手塚と夏希が見守っている。

 

「すまないな夏希。わざわざ付き合わせてしまって」

 

「良いって良いって……それにしても大変だよねぇ。本当ならなのはやフェイトが一緒にいるはずだったのに、こうしてアタシが連れ出されるなんてね」

 

ちなみになのはとフェイトは現在、3人の散歩には同行していない。なのははいつも通り訓練でスバル達フォワードメンバーを扱きに扱き、フェイトは執務官としての業務に勤しんでいる真っ最中。とてもヴィヴィオの面倒を見ていられるほどの余裕はない。

 

「特にハラオウンには、あの狐のライダーの変身者について手掛かりを探して貰っているからな。いつも手伝って貰える訳ではない」

 

「んで、今日は優秀なボディーガードさんに付いて来て貰ったって訳か。ありがとね、番犬さん♪」

 

「……犬ではない、狼だ」

 

そういう訳で、この日は六課からの監視役として同行している人物―――否、生物がいた。3人が座っているベンチのすぐ近くには青色の狼―――“ザフィーラ”が伏せをした状態で静かに待機していた。このザフィーラもシグナム達と同じ守護騎士(ヴォルケンリッター)の1匹で、盾の守護獣という名称を持っているのだが……普段から狼の姿で活動している為、そんなイメージは夏希からは持たれていないようだ。

 

「それにしても、まさか喋る犬だなんてねぇ。はやてから聞いた時は驚いたよ」

 

「だから犬ではない、狼だ……普段は喋る必要がないからな。喋らずとも、新人達を見守る事はできる」

 

「うわぉ、なんてクールなワンちゃんだろう」

 

「だから狼だ……それより白鳥。何か考え事でもしているのか?」

 

「へ? 何で?」

 

「街を出歩いてる中、どこか浮かない顔をしているように見えたからな。手塚はヴィヴィオの面倒を見ていて気付かなかったようだが」

 

「! そうなのか、夏希」

 

「……よく見てるんだなぁ、ザフィーラも」

 

夏希はソフトクリームをスプーンで食べているヴィヴィオの頭を撫でながら、先程までのような笑顔が消え、どこか浮かない表情になる。

 

「昨日、昼ご飯を食べてる時にヴァイスから聞いたんだ。ヴァイスが武装隊をやめて、ヘリのパイロットになった理由を」

 

「!」

 

その言葉にザフィーラが強く反応した。

 

「……聞いたのか、アイツから」

 

「うん……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『妹さんが人質に……!?』

 

『あぁ』

 

前日の昼。昼食を取りながらヴァイスは、夏希とティアナに自身の過去を簡潔ながら語っていた。

 

『上からの命令で、立て籠もり犯の狙撃をする事になってな。それがちょうど、たまたまラグナがいた店で起きた事件だったんだ。その時ラグナはまだ6歳でな。子供だからって理由で人質に選ばれちまった』

 

『そんな、どうしてヴァイスさんが狙撃を……? 身内が人質にされているのに……』

 

ティアナの疑問は尤もだ。ただでさえ多大な集中力が必要になる狙撃手を、身内が人質にされている事件に引っ張り出すなんて普通ならあり得ない。

 

『よっぽど人手が足りてなかったみたいでな、おかげで俺が出張る羽目になっちまった……けど、自分の妹が人質にされてるんだ。失敗したらどうしよう、なんて思うあまり腕の震えは止まらない。そんな状態で狙撃なんかすれば一体どうなるか……わかるだろ?』

 

『……まさか、それで妹さんの目を?』

 

『……デバイスの非殺傷設定も、決して万能じゃねぇ』

 

ヴァイスはコーヒーを一口飲んでから話を続ける。

 

『眼球は人体において特に柔らかい部位、しかもラグナはまだ子供なんだぜ? そこに高速射撃で強度が上がってる弾丸を受けちまえば、そりゃ非殺傷設定じゃなくても失明するってもんさ』

 

『そんな事があったなんて……!』

 

『じゃあ、それで武装隊をやめてヘリのパイロットに?』

 

『それ以来、ラグナとは一度も連絡し合ってねぇ。自分の目を潰されたのに、ラグナは俺を恨むどころか気にしないよう言ってくれてるんだが……ラグナがあんな目に遭っちまったのは、俺の責任だ。そう思うたびに、どうしてもラグナと接する事ができないんだよ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――あの時、ヴァイスが言っていた事はそういう事か」

 

夏希の話を聞いて、手塚はかつてティアナが無理して練習に励んでいた頃、ヴァイスが言っていた「後悔」の意味を理解した。ヴァイスもまた、自分達と同じように後悔を抱えた状態で生きていたのだ。

 

「ヴァイスからすれば余計なお世話かもしれないけどさ……やっぱり、兄妹が口も聞かずに距離を置いたままでいるのは凄く辛いと思うんだ。できる事なら、2人を何とかして仲直りさせてあげたい」

 

「……なるほどな。だが、俺達は当事者じゃないからな。こればかりは俺達でもどうしようもないぞ」

 

「もぉ、わかってるよ……わかってても何かムシャクシャしちゃうんだよぉ~!」

 

夏希も頭ではわかっているが、どうしても納得できない何かがあるらしい。頭をガシガシ掻いて落ち着かない様子の夏希だったが、ソフトクリームを食べていたヴィヴィオがそんな彼女に心配そうな目を向けた。

 

「おねえちゃん、元気ないの……?」

 

「……大丈夫だよぉ~ヴィヴィオちゃ~ん♡ 心配してくれてありがとね~♡」

 

「あぅ……お姉ちゃん、くすぐったい……!」

 

「もぉ~可愛いなぁ~ヴィヴィオちゃん!! 良いかな、キスしちゃって良いかなぁ!?」

 

((忙しい奴だな))

 

……心配そうに見ているヴィヴィオの表情がストライクだったのだろうか。夏希は愛くるしそうにヴィヴィオを抱き締め、ひたすらヴィヴィオの頭を撫で回し始めた。感情の変化が激し過ぎる彼女に手塚とザフィーラが全く同じ思想に至っていた時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……!」

 

そんな手塚達の様子を、少し離れた場所から目撃している人物がいた。たまたまラグナと一緒に買い物目的で外出していた健吾だ。

 

「健吾さん、どうかしましたか?」

 

「……あ、いや。何でもないよ、ラグナ」

 

同行していたラグナが不思議そうに見るが、健吾はすぐに何でもないと告げ、2人は再び歩を進める。しかし健吾は歩きながらも、手塚達のいる方へとチラリと振り返った。その視線は手塚と夏希……ではなく、夏希に抱き締められているヴィヴィオに向けられていた。

 

「ッ……あの子は……間違いない、あの時の……」

 

 

 

 

 

 

キィィィィィン……キィィィィィン……

 

 

 

 

 

 

「「「―――ッ!?」」」

 

そんな時だ。モンスターの接近を知らせる金切り音が鳴り響き、手塚達、そして通り過ぎて行こうとしていた健吾がその音に反応し、周囲を警戒し始める。

 

「健吾さん……?」

 

「……ごめん、ラグナちゃん。また行かなきゃいけないみたいだ」

 

「え、またって……健吾さん!?」

 

健吾はラグナを置いてその場から駆け出し、鏡に成り得る物がある場所へと向かって行く。一方で手塚と夏希の2人も既に、人目がない場所まで移動しようとしていた。

 

「あぁもう、こんな時にモンスターは空気読まないよね……!」

 

「モンスターにそれを期待する方が間違いだ。ザフィーラ、ヴィヴィオの事は頼んだ」

 

「あぁ、任された」

 

「パパ……」

 

2人が戻るまで、ヴィヴィオの事はザフィーラが引き受ける事になった。ヴィヴィオが心配そうに手塚の手を握っており、手塚はその場にしゃがんでヴィヴィオと目線を合わせる。

 

「心配するな。これを終えたら、すぐに戻って来る。ザフィーラと一緒にここで待っていてくれるか?」

 

「……うん、わかった。待ってる」

 

「良い子だ」

 

「海之、急ごう!」

 

手塚は笑顔でヴィヴィオの頭を撫でてから、立ち上がってカードデッキを取り出す。そして夏希と共に人の通りがない場所まで移動し、ビルのガラスにカードデッキを向けてベルトを出現させ、ポーズを決めてからカードデッキを装填する。

 

「「変身!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『―――ゲケケェッ!!』

 

「あ、アイツってあの時の!?」

 

「生き延びていたのか……!!」

 

ミラーワールド、とある高層ビル。外の景色がよく見えるこのビルにやって来たライアとファムは、先日の戦いから生き延びていたゲルニュートを発見した。ゲルニュートは両手の吸盤を利用して壁に張り付いており、2人の接近に気付くと同時に素早く跳び上がり移動を開始。2人を翻弄し始めた。

 

『ゲケケケケ……ゲケェ!!』

 

「ちょ、この……逃げるなコイツ!!」

 

「ッ……一度戦った事があるからわかってはいたが、すばしっこい奴め……!!」

 

ライアは元いた世界でも一度、このゲルニュートと戦った事がある。その時は龍騎と共にこのゲルニュートを倒そうと奮闘したが、その時は今のように素早い身のこなしであっという間に逃げられてしまった。その時の事をライアは今でもしっかり記憶している。

 

「貰った!!」

 

『ゲゲッ』

 

たまたまゲルニュートが地面に降りたところに、ファムがブランバイザーで斬りかかる……が、ゲルニュートは右手から伸ばした粘液を天井に貼りつけ、そのまま天井まで登っていってしまい、ファムの攻撃は空振りに終わってしまう。

 

「あぁもう、また避けられた!? 海之、コイツの動きを何とかして占えない!?」

 

「な……無理を言うな!? 城戸にも同じ事を言われたぞ……!!」

 

いくら手塚の占いでも、戦闘中に占えるほど万能ではない。かつて龍騎からも同じような事を言われた事があるライアは「何でそんな所まで影響を受けてるんだ」と思いながらも、エビルウィップを伸ばしてゲルニュートを捕らえようとする。しかしゲルニュートは粘液をロープのように使って移動し、すれ違い様にライアとファムを攻撃してはすぐに天井や壁に戻っていく。

 

『ゲケケェ~♪』

 

「くっ……完全に遊ばれてるな……!!」

 

「ッ~……あったま来た!! 海之、ちょっとごめん!!」

 

「何……ぐっ!?」

 

ゲルニュートの馬鹿にしているかのような鳴き声に、苛立ったファムはライアに向かって駆け出し……ライアの頭を踏み台にして(・・・・・・・・・・・・)一気に高く跳躍。天井に張り付いているゲルニュートにようやくブランバイザーで一太刀浴びせる事に成功した。

 

『ゲケェ!?』

 

「よっしゃあ、やっと命中!!」

 

「……お前と言い城戸と言い、本当に読めない事をしてくれるな」

 

思いっきり頭を踏みつけられたライアが複雑そうに呟く中、ファムに斬りつけられて落下したゲルニュートがライア達の目の前に落下。せっかく攻撃するチャンスができた以上、あまり愚痴を言っても仕方ないと割り切る事にしたライアは、エビルウィップをゲルニュートに巻きつけ捕獲する事に成功する。

 

『ゲケッ!?』

 

「鬼ごっこはもう終わりだ」

 

「観念しなよ……!」

 

しかし、その時だった。

 

 

 

 

≪SWORD VENT≫

 

 

 

 

「はぁっ!!」

 

『グゲケェッ!?』

 

「「!?」」

 

今まで攻撃するタイミングを窺っていたのか。マグニブレードを装備したエクシスが飛び出し、エビルウィップを巻きつけられ動けずにいたゲルニュートに向けて容赦なく斬りかかったのだ。

 

「お前……!!」

 

「……アンタ達には悪いけど、コイツは僕が貰う」

 

『ゲケェッ!?』

 

「あ、ちょっと!?」

 

「俺達も追うぞ……!!」

 

エクシスが繰り出した斬撃で、ゲルニュートは身動きが取れないままビルの真下へと落下。エクシスがその後を追うように飛び降り、ライアとファムも同じように飛び降りていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――あ!」

 

「どうした? ヴィヴィオ」

 

一方、現実世界。手塚に言われた通り、ザフィーラと一緒にベンチで待っていたヴィヴィオは、たまたま近くのビルのガラスに映っている物を見て気付いた。

 

「! アレは……」

 

ヴィヴィオの目に映っているのは、落下して来たゲルニュートとそれを追って飛び降りて来たエクシス。既にカードデッキに触れさせて貰っているザフィーラも同じようにゲルニュートとエクシスの姿に気付いたが、ヴィヴィオの視線はエクシスの方に向いていた。

 

「あの人……」

 

「ヴィヴィオ、あのライダーがどうかしたのか?」

 

「うん。あの人……」

 

そしてヴィヴィオが告げた次の一言に、ザフィーラは大きく目を見開く事になる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

≪FINAL VENT≫

 

『『グラァァァァァウッ!!』』

 

場所は戻り、ミラーワールド。エクシスがマグニバイザーにカードを装填し、電子音と共にマグニレェーヴとマグニルナールが出現。2体は融合する事でマグニウルペースの姿になり、九本の長い尾から青い炎をゲルニュートに向けて放ち、立ち上がろうとしていたゲルニュートを再度転倒させてみせた。

 

『ゲケェッ!?』

 

「終わりだ」

 

『グガァァァァァァァァァァァッ!!!』

 

マグニウルペースは口から2つの光弾を放ち、片方はゲルニュートに、もう片方はエクシスに被弾。エクシスが高く跳躍した後、マグニウルペースが吠えると同時に速い速度でゲルニュート目掛けて飛来し、ゲルニュートもまるで磁石のようにエクシスの方へと引き寄せられていく。

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

『ゲケェェェェェェェェェッ!?』

 

エクシスの繰り出したキック―――グラビティスマッシュはゲルニュートに炸裂し、エクシスはキックを繰り出した勢いでそのままゲルニュートを壁に叩きつける。壁に減り込んだゲルニュートは呆気なく爆散し、エクシスが着地した後にマグニウルペースがエネルギー体を捕食を完了する。

 

「うわぁ、やっぱり凄い……」

 

「……アンタ達に言っておく」

 

爆炎が燃え盛る中、エクシスは振り返らずにライアとファムに告げる。

 

「あの子から決して目を離すな。あの子は今も、妙な連中に狙われている」

 

「何?」

 

「え、あの子って……もしかしてヴィヴィオの事?」

 

「……」

 

エクシスは何も答えない。しかしその沈黙が、肯定を意味しているのは確かなようだ。

 

「ね、ねぇ、アンタは一体誰なんだ? 何でヴィヴィオの事を知って……」

 

「忠告はした」

 

「ちょ、最後まで聞けよ!?」

 

ファムの呼びかけも無視し、エクシスはその場から高く跳躍。一瞬で2人の前から姿を消してしまった。

 

「……結局何なんだよ、アイツ」

 

「わからない……だがあの台詞からして、ヴィヴィオの事を何か知っているのは確かだな。戻って六課の皆にも伝えよう」

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、ミラーワールドから帰還した2人は変身を解き、ベンチで待っていたヴィヴィオが立ち上がって手塚の足に抱き着いて来た。

 

「ヴィヴィオ、ちゃんと待ってくれていたか?」

 

「うん! ねぇパパ」

 

「ん、どうした?」

 

「さっきの人、どこに行っちゃったの?」

 

「! 見えてたのか?」

 

「手塚」

 

ザフィーラが会話に参加してきた。

 

「お前達の戦いは、俺とヴィヴィオにも見えていた。あの狐のライダーの事なんだが、ヴィヴィオがこんな事を言い出してな」

 

「? どういう事?」

 

夏希の問いかけに対し、ザフィーラが答えた言葉。それは手塚と夏希をも驚かせる内容だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうやらあのライダー、地下水路でヴィヴィオをガジェットに追われているのを助けていたらしいんだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――あ、戻って来た」

 

手塚達がいる場所から少し離れた場所。ミラーワールドから帰還し変身を解いた健吾は、電柱に背を付けて待っていたラグナと合流していた。

 

「ごめんラグナちゃん。待たせちゃった?」

 

「ううん。健吾さんがいきなり鏡の世界に行っちゃうのはもう慣れたから。さ、早く帰ろう♪」

 

「うん」

 

ラグナは健吾と手を繋ぎ、ご機嫌な様子で鼻歌を歌い始める。そんな彼女に微笑む健吾だったが、その脳裏では違う事を考えていた。

 

(あの子は今、あの2人のライダーの所にいるって事か……)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『あれ、どこだ? 道に迷っちゃったな……』

 

ヴィヴィオが六課に保護される前の出来事。モンスターを倒し終えたエクシスは、道に迷った事でたまたま地下水路にやって来てしまい、帰り道がわからず困り果てていた。その時……

 

『はぁ、はぁ……』

 

『!』

 

そんなエクシスが見たのは、ボロボロの服を着たヴィヴィオが地下水路の壁を伝って移動している所だった。

 

何故こんな所に子供が?

 

エクシスはすかさず少女に駆け寄ろうとしたが、そんなエクシスの前にガジェットが複数出現。その内、何機かは変形してトンボの特徴を持ったモンスターの姿になった。

 

『『『『『ブブブブブブ……!』』』』』

 

『!? 何だコイツ等……!!』

 

初めてガジェットを見たエクシスは困惑するが、ガジェットがヴィヴィオを狙っているのは明白だった。エクシスはマグニバイザーを構え、向かって来たガジェットを迎え撃つ。

 

『はぁ、はぁ……だ、れ……?』

 

『君、逃げるんだ!! 早く!!』

 

ヴィヴィオに接近しようとしたガジェットを後ろからエクシスが掴み、無理やり引っ張って他のガジェットにぶつけて破壊。ヴィヴィオを守るように立ち塞がったエクシスは、マグニバイザーによる攻撃でガジェットを1機ずつ順番に破壊していく。

 

『この先にも同じのが……あの子が逃げる時間を稼がなきゃ……!!』

 

しかしその時。

 

キィィィィィン……キィィィィィン……

 

『―――グルァッ!!』

 

『!? 何……くっ!!』

 

そんなエクシスを、水面から飛び出して来たマガゼールが妨害。マガゼールと掴み合いになったエクシスはそのまま水路の方へと落下し、水面を通じてミラーワールドに突入してしまった。

 

『グルルルルァ!!』

 

『くっ……邪魔だ、どけ!!』

 

エクシスはマガゼールを押し退けようとするが、そんなエクシスの周囲にはギガゼールやメガゼールなど、他のガゼル系モンスターも次々と出現。湯村が従えていたのとは別に動いていた群れだろう。

 

『『『『『グルルルルルッ!!』』』』』

 

『ッ……くそ、何でこんな時に……!!』

 

結局、エクシスはそのままはガゼル軍団と戦う羽目になってしまい、ヴィヴィオと完全に逸れてしまった。彼がガゼル軍団を全滅させた後、戦いの過程で先程いた場所からだいぶ遠のいてしまっており、彼がヴィヴィオの捜索を再開する頃には、既にヴィヴィオはエリオとキャロに発見されていたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(―――とにかく、あの子が無事だとわかっただけでも幸いか)

 

あれからヴィヴィオの安否が気になっていた健吾は、ヴィヴィオが無事だとわかり内心ホッとしていた。しかし同時に、ヴィヴィオを狙っていたあのガジェット軍団についても気になっていた。

 

(アレは一体何だ? 何故あの子を狙っていた? いずれにせよ、しばらくあの子から目を離す訳にはいかなさそうだな……)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時空管理局地上本部、とある一室……

 

 

 

 

 

「オーリス。機動六課の臨時査察についてはどうなっている?」

 

「はい。査察の前に一度、機動六課について事前調査をしましたが……アレはなかなか巧妙にできています」

 

地上本部の前任者―――“レジアス・ゲイズ中将”が窓から外の景色を眺めている中、彼の娘であり部下でもある眼鏡の女性―――“オーリス・ゲイズ”はモニターを出現させ、そこに画像を映し出してレジアスに見せる。

 

「然したる経歴もない若い部隊長を頭に据え、主力2名も移籍ではなく、本局からの貸し出し扱い。部隊長の身内である固有戦力を除いて残りは皆新人ばかりで、何より部隊その物が期間限定の実験部隊という扱いになっています。本局に問題提起が起きるようなトラブルがあれば、本局は簡単に切り捨てるでしょう」

 

「ふん……つまりは使い捨て、生贄という訳か。元犯罪者には打ってつけの役割だな」

 

レジアスは元々、突出した能力を持つ魔導師を半ば独占している次元航行隊……本局に対して強い反感を抱いていた。本局は前科のある人間まで積極的に局員として引き入れている為、社会の秩序と平和を重んじるレジアスがそれに反感を抱くのも当然なのだが。

 

「小娘達を叩いたところで、本局や聖王協会に反抗する術には成り得んか……全く、小賢しい事をしてくれる」

 

「ちなみにその六課ですが……実は1つ、気になる点がございまして」

 

「何だ?」

 

オーリスは別の映像を映し出す。そこには手塚と夏希の顔写真が映し出された。

 

「オーリス、コイツ等は誰だ?」

 

「最近、機動六課が保護したという次元漂流者達です。出身世界は地球と登録されておりますが、現在もまだ機動六課の隊舎に留まっているようです」

 

「何? どういう事だ。出身世界が判明しているのに、何故まだ六課に留まっている」

 

「現時点でわかっているのはそれだけですので、今後もこちらで調査を進めていく方針です」

 

「……一体何のつもりだ、あの小娘が」

 

次元漂流者がいつまでも六課に留まっているのはおかしい。恐らく八神はやてが何か絡んでいる可能性がある。そう考えたレジアスは、画面に映っている2人の次元漂流者達についても調べるべきだろうと判断した。

 

「オーリス、この次元漂流者達についても詳しく調べろ。念に念を入れるに越した事はないだろうからな」

 

「はっ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それは少し待って貰おうか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『『グルァッ!!』』

 

「「ッ!?」」

 

その直後だった。レジアスが立っている後ろの窓ガラスから、突然アビスラッシャーとアビスハンマーが飛び出して来た。驚くレジアスとオーリスの前に、続いてアビスが窓ガラスから飛び出して来た。

 

「な、何だお前は!? 一体どこから―――」

 

「おっと待った」

 

「!? お父さ……っ!!」

 

レジアスの首元にはアビスセイバーの刃先が向けられ、オーリスの方はアビスラッシャーとアビスハンマーに取り押さえられる。

 

「警報は鳴らしてくれるなよ。監視カメラも、今はこの部屋だけ作動していない」

 

「ッ……貴様、何者だ……!!」

 

「何者でも構わんさ。そういうアンタの方は、レジアス・ゲイズ中将で間違いないな?」

 

アビスセイバーをレジアスの首元に向けたまま、アビスは言い放った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アンタに警告しに来たのさ。機動六課はまだ、潰される訳にはいかないんでね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

To be continued……

 




リリカル龍騎StrikerS!


健吾「僕が守らなきゃ……ラグナちゃんだけでも……ッ……!!」

なのは「こんな若い子供が、仮面ライダーに……?」

シャーリー「民間人がガジェットに襲われています!!」

手塚「危ない!!」

スカリエッティ「さて、そろそろ初陣と行こうか」


戦わなければ生き残れない!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。